2大格ゲーメーカーが“タッグ体制”で制作!

 2014年7月24日に、アークシステムワークスから発売されるプレイステーション3用対戦格闘ゲーム『アンダーナイトイン ヴァース エクセレイト』(以下、『アンダーナイト』)。アーケードゲームとして2012年9月にデビューして以降、長らく家庭用の発売が待ち望まれていたが、この夏、多くの追加要素を引っさげていよいよ登場する。
 家庭用では、もともとのアーケード版を開発したメーカー、フランスパンと、『ギルティギア』や『ブレイブルー』シリーズなど、著名な2D対戦格闘ゲームを多くリリースしているアークシステムワークスとの共同体制で開発。両社の中心人物である、なりたのぶや氏(フランスパン)と森利道氏(アークシステムワークス)に、タッグ体制で開発した経緯から貴重な裏話、そしてシリーズの未来の可能性についてうかがってみたぞ。

2大格ゲーメーカーが“タッグ体制”で制作! 『アンダーナイトイン ヴァース エクセレイト』開発者インタビュー_01
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▼プロフィール
なりた のぶや氏(写真左)
フランスパン代表。本作のプロデューサー&ディレクター.。前身の渡辺製作所より数多くの同人ゲームを制作。中でも対戦格闘ゲーム『メルティブラッド』シリーズはエコールよりアーケード版がリリースされて大ヒットを呼ぶ。『アンダーナイト』は、同社初のオリジナルアーケード対戦格闘ゲームだ。

▼プロフィール
森 利道氏(写真右)
アークシステムワークス、プロデューサー。『ギルティギア』シリーズの開発を経て、『ブレイブルー』シリーズではプロデューサーとして開発を指揮すると同時に、ストーリーやキャラクターデザインも手掛ける。通称“森P”として、多くのファンから親しまれている。

アーケード版開発時から両社の交流が始まった

――オリジナルとなるアーケード版稼動から2年近くが経ち、満を持しての家庭用発売となりました。いまの率直なお気持ちをお聞かせください。

なりたのぶや氏(以下、なりた) 気づいたらアーケード版の稼動からもう2年近くなんですね。ここまで、嘘じゃないかと思うくらいあっという間の2年でした。

森利道氏(以下、森) もう率直に「リリースできてよかった」という思い(笑)。開発中は毎日なりたさんとメールでやりとりしながらドキドキしていたのですが、スタッフががんばってくれて、無事に完成に至りました!

なりた 私も森さんと同様に「無事に出せてよかった!」という気持ちです。当初から今年の夏休みシーズン前にリリースすることを前提にして開発を進めていました。長く家庭用を楽しみにしてくだっている方をこれ以上お待たせするわけにはいきませんからね。

――アーケード版はフランスパンの開発、エコールの販売という体制でしたが、家庭用はフランスパンとアークシステムワークスの共作です。この“タッグ”体制の経緯をお聞かせください。

 もともと、なりたさんの友人と弊社スタッフが知り合いだったんです。それがきっかけでお付き合いが始まりました。本作のアーケード版でも、開発の始動からアドバイスなどを通じて何かと関わらせてもらっていまして、スタッフロールにも名前を載せていただいております。

――当時、森さんからなりたさんへ、具体的にはどんなアドバイスがあったのでしょうか?

なりた キャラクターデザインからゲームの内容まで、もうゲームに関するひと通りのことですね。飲みの席などでお会いするたびに、現状のアイデアにひたすら“ダメ出し”をいただきました(笑)。

――その経緯もあって、家庭用で本格的にタッグを組みことになったということですか?

 はい。家庭用では、快適なネットワーク対戦の実現が欠かせません。その部分に関しては、弊社は『ブレイブルー』シリーズ、『P4U』シリーズ、『アルカナハート3』の開発によるノウハウがあります。なりたさんに快適な対戦の実現にご協力できますよというオファーをしまして、今回のコラボレーションが実現しました。

――家庭用の開発にあたって、両社が担当された作業内容を教えていただけますか?

なりた 簡単に言うと、フランスパン側はアーケード版から新キャラクターを足して、プレイステーション3上で動く段階までを担当しています。

 そして、アークシステムワーク側では、ネットワークモードの実装を始めとしたそれ以降の部分……家庭用として必要となる部分の開発を手掛けました。

――UI(ユーザーインターフェイス。ゲームの情報表示やメニューの操作体系などを示す)もアークシステムワークスさんのゲーム風ですよね。

なりた 今回は弊社も「そろそろ家庭用ならではの開発手法を覚えなければいけないだろう」とがんばっていたのですが、技術的な壁や経験の違いもあって、アークシステムワークスさんにおまかせすることになりました。我々は家庭用ゲーム開発の経験が少ないこともあって、アークシステムワークスさんからは、家庭用ならではの“作法”を教えていただき非常に勉強になりました。

――家庭用の開発が始動したのはいつごろからですか?。

 開発が決まったのがいまから1年ほど前。2013年の東京ゲームショウが終わったあたり……つまり2013年の秋から、本格的に開発作業が始まりました。

なりた さらに、フランスパン側でゲームの基本となる部分を制作して、その後にアークシステムワークスさんに引き継いでいただきました。その時期が2013年末になります。

――思いのほか、という言いかたは失礼かもしれませんが、短い期間で完成できたのですね。

 ネットワーク機能に関しては、弊社が開発したエンジン部分がすでにありますからね。

――アーケード版が稼動して以降からけっこう時間が開きました。その間は家庭用開発の下準備をされていたのですか?

なりた アーケード版のバージョンアップやほかのタイトルの開発作業を進めていて、とてもそんな時間はありませんでしたよ。アークシステムワークスさんが「なぜ移植にそんなに時間が掛かるんだ!」と思われる感覚は非常によくわかるのですが、小所帯の我々からすると、ウィンドウズ上で長年使って使い続けてきた、整理されていないソースコードを家庭用に向けて整えていく作業は初めての経験なんです。これが本当にたいへんでした。

ライトノベル風世界観で展開する“ジャパニーズスタイル”の格ゲー

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――ゲームの世界設定についてお聞きします。本作は“虚ろの夜”という怪奇現象に集う特殊能力者たちの戦いを描いています。この物語やバックグラウンドは、ライトノベル風の世界観を強く感じますが、企画時から意識されていたのでしょうか?

なりた ええ。この企画を起ち上げたのが、『メルティブラッド』(以下、『メルブラ』)の制作後ということもあり、『メルブラ』の原作者であるTYPE MOOM(タイプムーン)さんと再び協業も想定していた“名残り”が、ゲームの世界観にも表れています。

――『メルブラ』、『アンダーナイト』からは同じテイストを感じるというか、どちらもダークな色彩を帯びたファンタジーの世界ですね。

なりた もうひとつ、対戦格闘ゲームに、ライトノベル風の世界観を背負うオリジナルタイトルがなかったということも大きいですね。ここで言うライトノベル風というのは、プレイヤーにとって身近な世界で起こる不思議を扱う物語のことです。あまりに重厚な物語にしてしまうと、(森さんをチラ見しながら)大きなメーカーさんのタイトルと重なってしまいますし、僕らに手が終えないのかなと思いまして(笑)。

――本作のほとんどの登場人物は、“偽誕者”(インヴァース)という特殊な存在。この偽誕者とは何者なのでしょう。

なりた 簡単に言うと、作中世界での超能力者の総称ですね。一度命を失って偽りの命を得た者というような意味合いで名付けました。“inverse(反対の、あべこべの)”という単語ありきだったので、ちょっと強引な名前なのですが(笑)、語感重視ということで許してください。

――ゲーム面では、コンボを駆使するスピーディーなバトルが本作の特徴です。当初からコンボ重視の対戦格闘ゲームとして設計されていたのでしょうか?

なりた 重視というほど、コンボ攻撃を強く打ち出しているつもりはないのですが、現代のプレイヤーさんに支持されている“コンボ攻撃の爽快感”は残しつつも、コンボだけを追求しすぎないように“程よい読み合い”ができるようにしています。「ここぞというタイミングにテクニックを駆使してコンボを重ねていく」ゲームバランスを目指しました。

 ゲームシステムは、これから格闘ゲームを始めようとした人にとっては、非常に取っ付きやすいものだと思います。弊社のゲームだと『P4U』に近いんじゃないでしょうか。『P4U』では“RPGユーザー”という「対戦格闘ゲームを経験したことがない人に楽しんでもらおう」というテーマのもとでシステムを決めていきました。同じようなターゲット層に向けて格闘ゲームを作ると、ゲームの目指す方向も近付くのかなと思いました。どちらもボタン連打でコンボがくり出せる(本作ではこの機能を“スマートステア”(※1)と呼ぶ)ようになっていますし。

――本作の特徴として、プレイヤーのアクションに応じて増減する“GRDゲージ”(※2)という特殊なゲージが存在することが挙げられます。このゲージの役割、搭載した理由についてお教えください。

なりた “攻めどき”、“守りどき”をはっきりさせたかったんです。初心者は対戦中に「いま、何をしたらいいかわからない」ということが起こりがち。そこで、攻めるチャンスが到来していることをわかりやすくしたかったのです。また、状況判断で“適切な行動をする”ことが、対戦で有利につながることを視覚化したかったということもあります。“攻めどき”、“守りどき”は一定時間を経過後、GRDゲージの量によって再び切り替わりますから、「ずっとオレのターン」という状態は回避できます。格闘ゲームでずっとゴリ押しの攻めが続くのは、受ける側からすると心が折れてしまいますからね。

 開発初期に聞いたゲージのアイデアに比べれば、非常によくなったと思います(笑)。

なりた じつは初期のGRDゲージは、防御のためのゲージでした。そもそも弊社の企画者が最初に提案したテーマが「守りを重視するゲーム」だったんです。内部でも、本当にそれでゲームになるんだろうかという若干の不安はあったのですが、その企画を森さんに見ていただいたら「守るほうが強かったら、誰も攻めないだろう!」とカミナリが落ちまして(笑)。

 対戦格闘ゲームの本質とは、「体力を0にすること」にあります。対戦格闘ゲームが、対戦格闘ゲームとして存在し得る絶対的なルールなんです。それに反するものがメインルール、正直言ってありえない。攻撃をしないことでゲージが溜まるのはまったく矛盾しているんです。そんな話が3、4年前の出来事にありましたね。

なりた まだ開発が始まる前の段階で、システムを考えていたころのお話です。

 コンセプトとシステムがどんどん離れていったんですよね。ある程度、初心者向けに作っているはずなのに、なぜか守りのほうが強くなっているんですから(笑)。守りをめぐるシステムは上級者にこそ必要なもの。初心者はレバーをキャラクターの後方に入れるとガードになるということを知らない人がほとんどなんですよ。僕らも『ブレイブルー』のチュートリアルでそのことを丁寧に解説しているくらいですからね。そんな話をなりたさんにすごく優しくお伝えした記憶があります(笑)。

――そのあたりの見識は森さんの経験があってこそのものですね。

 でも、最終的にはユーザーがおもしろいかどうかを決めること。何が正しいかどうかなんて私でもわからないですから、最終的な判断はフランスパンでするべきだ、というお話もした覚えがありますね。

――その経緯があって、アクティブな行動をするほど増えていく現状のGRDゲージになっていたんですね。

なりた そこで助言をいただいたからすぐに直したというわけではなかったのですが、少しずついまの形になっていきました。何かあったらすぐ変更を加えていく“ライブ感覚”で、開発を進めていき、周辺のシステムも同様に固まっていった感じですね。


※1【スマートステア】
 弱攻撃ボタンを連打するだけで、通常技から超必殺技までのコンボ攻撃が自動的にくり出せるシステム。

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▲コンボに迷ったらとにかく弱攻撃ボタンを連打! 初めてプレイするキャラクターの技を知るときにも便利だ。

※2【GRDゲージ】
 画面中央下部に表示される本作独特のゲージ(正式名称はグラインドグリッド)。プレイヤーが積極的な行動をする(もしくは相手が消極的な行動をする)と自分側のゲージが増加する。
中央のタイマー(TSゲージ)が1周するたびに、両プレイヤーのGRDゲージ量をチェック。量が多いプレイヤーは、攻撃力が上がったり“チェインシフト”という特殊なキャンセル行動が可能になる“ヴォーパル状態”になる。このヴォーパル状態はTSゲージが次の周回になるまで続く。

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▲ここで示した拡大写真はTSゲージが青く光っていて、2P側がヴォーパル状態であることを示している。本作の対戦は、ヴォーパル状態を奪い合う戦いともいえる。一定の時間ごとにヴォーパル状態が切り替わるタイミングを迎える。この時点でGRDゲージが多いほうが有利になり、攻守の流れがガラリと変わることもあるのだ。

技術交流の相乗効果が新たな格ゲーの世界を作る

――本作はフランスパン初となるHD画面のゲームですね。『ブレイブルー』でHD画面の格闘ゲームを開発された森さんからは、HD画面ならではのゲームの作りかたについてのアドバイスもあったのでしょうか。

なりた じつは、森さんにはまず最初にそのことをご相談したんですよ。『ブレイブルー』の1作目『ブレイブルー カラミティ・トリガー』(以下、『カラミティ・トリガー』)がアーケードに登場して1年後くらいのことでしょうか。森さんが格闘ゲームのビジュアル水準を大きく上げられて、我々はどうやったら追いつけるのだろう? と。

''森" 『カラミティ・トリガー』は本当に大変でした! デビューした2009年は競合の対戦格闘ゲームもたくさんリリースされている中で放ったタイトルですから。

――ビジュアル制作に関して森さんはどうアドバイスをされたのでしょうか?

 まず「実現までには、とても金が掛かるよ」と伝えました(笑)。

なりた 当時は320×240ドットの環境で『メルティブラッド』シリーズを制作していたのですが、当時の主流は640×480ドットでした。その最中に『カラミティ・トリガー』がHD(1280×720ドット)のビジュアルをひっさげて市場にデビューしました。それを見て我々も次世代の格闘ゲームはもう『ブレイブルー』の水準に合わせるしかないと思ったんです。

――『カラミティ・トリガー』のビジュアルは、プレイヤーにとっても衝撃でしたね。

なりた 試しに弊社でもHD環境でキャラクターを作ってみたんですが、ものすごい莫大な時間が掛かることがわかって、大手さんはどうやっているんだろうと思ったんですよ。森さんなら魔法の解決方法を知っているに違いないと、お聞きしに行きました(笑)。

 魔法も何もありません。やっていたことは人海戦術ですよ(笑)。やはり旧来の画面に比べたらどうしても労力は掛かってしまう。だから“機械的こなす手法”を追求しないと、あの分量のグラフィックをこなすのは難しいんです。かつて『ギルティギア』を開発していた時点では、グラフィックに携わる人間が、みずから持っている能力ですべてをまかなう手法しか知らなかったから、たいへんでした。キャラクターのドットを打って、絵コンテを描いて、背景を描いて……と、ひとりでものすごい量をこなしていましたからね。HD画面は『ギルティギア』の倍の解像度ですから、同じやり方では無理なんです。なりたさんには無償で『カラミティ・トリガー』でのやりかたをすべてそのまま教えました(笑)

――それこそ、経験があるからこそ語れることですよね。

 基本的な部分に関する開発者どうしの技術共有はするのがよいという考えを持っています。周りの同業者がすごいものを作ってくれないと、僕らも先に進めないですからね。なりたさんが10年以上前に作った『メルティブラッド』で僕らは大きく刺激を受けて、『ギルティギアX』ではさまざまな面で参考にさせていただきました。さらに僕らが一連の『ギルティギア』シリーズである種の答えを出したときも、ほかのメーカーさんももっとクオリティーの高いゲームを出されていた。このような流れで、我々の取り組みが周りの刺激になってくれれば非常にうれしいですし、相乗効果で格闘ゲームそのもののクオリティーの向上になればいいなと思います。

家庭用の新規キャラクターは“対をなす”存在

――本作では新規のキャラクターとして、ナナセとビャクヤが加わりました。まずは起用した理由をお聞かせください。

なりた やはり、家庭用ならではの“華”が必要だったということですね。せっかく家庭用が出るのに従来のキャラクターだけというのも少し寂しいですからね。

――アーケード版の追加キャラクターではなく、家庭用での追加を当初から想定していたのでしょうか?

なりた じつは、ナナセに関してはアーケード版でケイアスが参戦したタイミングで出すという案もあったのですが、家庭用制作の話がトントン拍子で進んだので「じゃあ、こちらで出そう」と決めた次第です。

――もうひとりのビャクヤについてはいかがでしょう。

なりた 森さんから「新キャラクターが1体作れたから、もう1体も行けるよ!」とアドバイスを受けまして(笑)。

 そんなノリで言ってないよ(笑)。真相は、その前段階の話がありまして……。なりたさんからある日突然「じつは、ナナセの次にもう1体考えているんですよ」と告白されたのが始まりでした。

なりた もともとキャラクター案はあったのですが、果たして発売までに間に合わせて作れるのだろうかという不安も拭えなかったんです。でも、森さんのひと言が後押しになって実装を決めました。

 ここは大事なことなのですが、家庭用発売というタイミングで『アンダーナイト』というシリーズを継続させる意思表示を皆さんに見せなければいけない、という思いがありました。現状でもアーケード版から楽しんでいらっしゃるプレイヤーさんをかなりお待たせしています。そのうえで、家庭用をアーケード版そのままの形で出して“終わり”というのはダメなこと。新キャラクターを投入することは、世界観が広がると同時に、アーケード版のアップデートや次回作の意志があるというアピールにもつながります。そんな話をなりた君に伝えました。

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ナナセ
<声:飯塚麻結 (いいづか まゆ)>
【プロフィール】
 ハイドを執拗に付け狙う謎の少女。彼女いわく「男なら責任を取れ」とのこと。ここではとてもかけないような男女間のイザコザがあったのかどうか、その真相は当人同士にしかわからない。手にした長剣を軽々と扱い、素早く身軽な動きで相手を翻弄する。
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ビャクヤ
<声:田村睦心(たむら むつみ)>
【プロフィール】
 ツクヨミというクラシカルな様相の少女と、つねに行動をともにしている謎の少年。無数の長く黒い“鉤爪”(つめ)を操り、相手を捉えて顕現を食らう不気味な能力を保有している。ふたりそろって動機は不明だが、どうやらツクヨミの希望を叶えるために、ビャクヤがその能力で戦っている模様。
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――なるほど。新キャラクターにはファンサービスという以上の思いが込められているんですね。開発者ご自身の視点から新キャラクターの特徴を教えていただけないですか?

なりた まずナナセについては、「ウチのゲームって、わかりやすい性格や行動をするキャラクターがいないよね」という反省から始まりました。ダークな世界観で浮かない程度に、コメディタッチで単純明快を活かすことを目指したキャラクターです。コメディ的な役割のテンプレートというか、王道を辿るキャラクターといったらいいでしょうか。たまには“直球”のキャラクターがいてもいいでしょうと。

――そして、ビャクヤはナナセと対をなすように男性の学生という設定ですね。

なりた ナナセの起用は決まっていましたから、もうひとりは若い男性がいいだろうと。家庭用のゲームは若い世代のプレイヤーさんが多いことを考慮して学生という設定にしたのですが、これは主人公のハイドも同じ。その点は被らないよう少し悩んでブレザーに対する学ランキャラにしました。最初期は、つねに行動をともにしているビャクヤの姉、ツクヨミをプレイヤーキャラクターにするつもりだったんですけれど、女の子ふたりではバランスが悪いということで泣く泣く付き添いになってもらいました。

――8つの鉤爪と蜘蛛の糸を操るというビャクヤの攻撃スタイルは、当初から決まっていたのですか?

なりた 武器や攻撃の仕様が固まったのは、かなり後の段階。蜘蛛の糸はビジュアルが汚くなる恐れがあるので、当初、僕は反対していたんですよ。その後、別の能力を考えているうちにアイデアが一周して、結局は「わかりやすいモチーフだから」という理由で蜘蛛の糸がいいという結論になった次第です。この辺は、ビジュアル担当のスタッフが上手く表現してくれたなと感謝しています。

――実際にプレイしてみて、ナナセはスタンダードな性能で、誰にも扱いやすいキャラクターという印象。ビャクヤは特殊キャラクターが多い本作の中でも、とくに個性的というか、テクニカル性が高いキャラクターという印象を受けました。

なりた ナナセは主人公キャラクターのハイドと同等の扱いやすさを意識した、オーソドックスな性能にしています。基本的な能力を備えていて、スタンダードな性能なのですが、ひとつだけ特殊な技“フォースファンクション”を加えて、違いを出しています。そしてビャクヤは、物語の中でも、何を考えているかわからないキャラクターなので、相手にとって嫌な戦いかたをしてくれるとうれしいなと思います(笑)。いわゆる“設置物”として、蜘蛛の巣を仕掛けて、そこに触れた相手を糸で拘束する必殺技(“この辺に仕掛ておこうかな?”、“そろそろ食べごろかな?”)は、きっと相手にとっていい印象を与えないのではないかと(笑)。性能面の調整で二転、三転しましたが、おかげでいいバランスに落ち着いたとは思っています。

 総合的に見ると、「スタンダードな性能を持つキャラクター」と、「クセのあるキャラクター」が並び、追加キャラクターとしては非常にいい形で登場したのではないでしょうか? ほかのキャラクターよりも少しだけアドバンテージがありそうなのもいいこと。“少しだけ”ということが重要なのですが(笑)。新キャラクターは使いやすくて、勝てそうなキャラクターでなければプレイヤーさんに喜んでいただけないですからね。

快適なやり込みや練習ができる家庭用独自の機能

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――家庭用では、待望のネットワーク対戦が実現します。先ほどお話をうかがったように、ほかのタイトルでも採用実績もあるこの機能ですが、実装はすんなりできたのでしょうか?

 いや、たいへんでしたよ(笑)。弊社が最初から開発しているタイトルでは、ネットワークモードを搭載すること前提でプログラムを組んでいるのですが、本作ではもともとアーケード版だけに特化したタイトルということもあり、ネットワークに関する機能が適切に動作するようにプログラムを仕様の段階から変更する必要がありました。おかげでプログラマーがすごく苦労していましたね(笑)。データを読みに行く場所が、バラバラだと読みにいくのに時間が掛かり、そこで余計な遅延が置きてしまうんですよ。

なりた す、すみません! 

 でも、フランスパンさんのプログラマーさんががんばって修正してくれたおかげで、解決できましたよ。その後は、スムーズに開発が進みましたね。ネットワーク対戦でもっとも恐いのは、プレイヤーどうしの同期がずれてしまうこと。そうならないように、開発の努力で遅延は極力解消することを目的に作りました。実際にどれだけ快適に遊べるのか、詳しいお話は近日中にお伝えできるかと思いますので、ご期待ください!

――そして、家庭用の対戦格闘ゲームには欠かせないトレーニングモード。“カユいところに手が届いている”といいますか、ベストのコマンド入力やコンボ練習に役立つ細かい機能が充実していますね。

 この機能は弊社プログラマーの石川のコダワリによるものです! 彼は、一度作ったもの以上のクオリティーにすることを自分の課題にしていまして、そのコダワリによって、弊社の新作格闘ゲームが出るたびにトレーニングモードの情報量が増えています(笑)。本人は、今回は『P4U』以上のトレーニングモードを実現することを目標にしていたと言っています。それでいて、よりプレイヤーに親切に、さらに『アンダーナイト』のプレイヤーによって使いやすいようなUIにして最終形になりました。

なりた アーケード版にも簡素なトレーニングモードはありまして、家庭用でもそれをベースに最初は考えていたのですが、このモードだけは森さんではなく、開発現場のプログラマーさんから「これはいかん!」とご指摘をいただきました(笑)。

 トレーニングの方法は、人それぞれ違います。「あらゆるプレイヤーさんが、最もやりやすい形でトレーニングができるようにする」ことをコンセプトに、さまざまな機能を搭載しています。キャラクターによっても再現したい状況、相手キャラクターが異なりますが、そのような細かいニーズにも素早く応える作りになっていますので、安心して遊んでいただけるとうれしいですね。

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▲特定条件の設定や、複数のレコーディング&再生機能、レバーやボタンの入力フレーム数の表示など、トレーニングを極めたい人に向けた便利な機能が充実している。だからといって、このモード自体がマニア向けというわけではない。コマンド入力やコンボの練習をじっくりこなしたい初~中級者にこそオススメだ。

――今後の展開予定を教えてください。

 現段階では国内だけで発売しますが、アジア圏のリリースも考えていて、可能な限り早く実現できればと思っています。日本のアニメカルチャーのファンが多い台湾、香港、シンガポールあたりの地域や国では、きっと受け入れられるゲームなのではないでしょうか。

――いよいよ家庭用にも登場して新たなスタートを切る『アンダーナイト』。さらに、今後はどんな発展があるのでしょうか? 将来の予定はありますか?

なりた これまでは確実に皆さまのもとにお届けすることを目標にしていて、とにかく必死でしたので、いますぐにというわけにはいきませんが、追加要素の搭載やバージョンアップの可能性は常に考えています。アーケード版については具体的な時期は未定ですが、家庭用で興味を持ってくださった方がゲームセンターでも楽しんでいただけるように、アップデートをしていく予定です。

 先ほどお話したように、本作で新キャラクターが登場したのは、『アンダーナイト』というシリーズはまだ終わらないという開発側の意志の表れです。将来の進化を期待していただきながら本作の世界を楽しんでいただけるとうれしいですね。2年間お待たせしたぶん、発売後も継続的に遊んでいただくためのアクションをしていくつもりです。弊社では毎年大規模な格闘ゲーム大会を開催していますが、家庭用を買ってくださるプレイヤーが増えれば、種目のひとつにきっと本作も加わることでしょう。弊社としてもほかの格闘ゲームタイトルと同様に、大会でも盛り上げたいとも思っています。

――では最後に読者へのメッセージをお願いします。

 今回、本作でフランスパンさんといっしょにお仕事をする機会をいただきました。このご縁をきっかけに、両社で新しいことに挑むことができたら、と思います。これからもご声援のほど、よろしくお願いします。

なりた 本当に長い間お待たせしてしまって、改めて申し訳ありませんでした。ただ、僕らもこのゲームでアーケード版から家庭用版まで、ひと通りの市場を経験させていただき、大きな勉強になりました。家庭用版はアークシステムワークスさんとともに制作をして最高の形でリリースすることができたと自負しておりますので、ぜひご期待ください!

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取材:豊泉三兄弟(次男)、大瀬子ヤエ