『雷電』シリーズについて/様式美と伝統性……『雷電』の系譜

 往年のシューティングゲームファン、とくにアーケードゲーム好きならば、『雷電』という名は一度は耳にしたことがあるだろう。シリーズ第一作の『雷電』は、1990年にアーケードゲームとしてデビュー。当時ですら、すでに複雑化しつつあったシューティングゲームにおいて、“縦スクロールで進行”、“基本の武器は無限に使えるショットと、強力だが弾数に限りのあるボムのふたつ”、“登場する敵をひたすら殲滅させる”という、いたってシンプルなルールで大ヒット。とくに1993年の『雷電DX』では、ハイクオリティーなドット絵アニメーションと、初心者から上級者まで対応したステージ構成が支持され、「ひと目見て、すぐ遊べる(かつ、楽しめる)」シューティングとして現在もゲームセンターで見かける機会が多い。
 その後、シリーズは『雷電III』(2005年)、『雷電IV』(2007年)へと進化。描写はポリゴンとなり、アレンジ武器が登場するなどの進化点が加わりながらも、前述の“雷電らしさ”=基本様式は堅持。ショットで戦うわかりやすいゲームシステム、絶妙な弾道と弾速のバラマキ弾、SF風味が加わったミリタリーテイストのビジュアル……など、様式美とも言える部分は初代からかたくなに守られている。時代が変わろうとも、シューティングの王道的存在として、いまなお多くのファンに愛されているシリーズなのだ。

 今回紹介する『雷電IV OverKill』は、『雷電IV』に新モードが追加された“最新作”ともいえるタイトル。しかも、プレイステーション3で『雷電』シリーズの初見参となるタイトルだ。
 『雷電』シリーズに限らず、近年のシューティングゲームは、Xbox 360対応のものが多かったのだが、本作はプレイステーション3ユーザー待望の最新シューティング作。これまで“ガチな”シューティングタイトルが少なかったことから、歓迎する人も多いのではないだろうか。

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【アーケードの『雷電IV』について補足】
 ところで、じつは現在ゲームセンターでプレイできる『雷電IV』は2種類存在する。ひとつは、前述した2007年に稼働開始した『雷電IV』(文中ではオリジナルと表記)。そしてもうひとつは、タイトーのゲーム配信システム“NESiCAxLIVE”(ネシカクロスライブ)で2012年より配信が始まった『雷電IV for NESiCAxLive』(文中ではネシカクロスライブ版と表記)。後者は、オリジナルに加えてXbox 360版『雷電IV』で登場した新ステージや追加機体が選べる強化モード(Perfectモード)も搭載している、という違いがある。

3種類のモードで『雷電IV』を遊び尽くす!

 少し前振りが長くなってしまったが、本作が名門シリーズの看板を背負うゲームの“最新作”であることがご理解いただけたかと思う。
 本作ではオリジナルを忠実に再現した“Arcade Mode”(アーケードモード)、前述のXbox 360版(とネシカクロスライブ版のPerfectモード)を元にした“Additional Mode”(アディショナルモード)、そして完全新規のルールによる“OverKill Mode”(オーバーキルモード)という3つの『雷電IV』がプレイできるのだ。つまり、「これまでの『雷電IV』全部入り」+「新しい『雷電IV』」がプレイできるという、究極の一本となっている。本稿では、このオーバーキルモードを以下でじっくりと見てきたい。

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スコア稼ぎのアツさを重視したオーバーキルモード

 オーバーキルモードの特徴は、ひと言で言うと「スコアアタックを極める楽しさ」を重視している点にある。そのカギを握るのが“オーバーキルシステム”だ。
 中型の敵機を撃破すると、攻撃と動きが2秒ほど止まって非武装状態になると同時に、機体の傍らにゲージが出現する。このときが“オーバーキル”のタイミングだ。爆発するまでのわずかな時間内にショットを追撃すると、ゲージがみるみる上昇。爆発後にゲージレベルに応じた得点勲章アイテムが出現するのだ。

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▲中型機が出現。これが“オーバーキル”の対象となる機体となる。一撃では破壊できないので、しばらく撃ち込む必要がある。
▲ほかのモードならここで撃破となるが、オーバーキルモードではゲージが出現。爆発までのわずかな時間内に追撃してゲージを上げる。
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▲爆発後は追撃ダメージ(=ゲージの量)に応じたレベルの得点勲章が出現。円状の軌跡を描きながらステージ上に漂う。
▲得点勲章を出すだけでは意味がない。安全な場所とタイミングで回収をすることを忘れずに! これでボーナスをゲット!
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▲“オーバーキル”中の敵機に触れてもミスにはならない。ショットがバルカン(後述)ならば、張り付いて叩くのがもっとも効率がよい。

 ゲージのメモリがレベル(LV)に相当。レベルは5段階存在しており以下のようになっている。
[レベルごとの得点勲章スコア]
LV1=10000
LV2=20000
LV3=50000
LV4=70000
LV5=100000
 ……と、このスコアを見てお気付きの方も多いだろう。つまり、いかに“オーバーキル”中に大量かつ強力なショットを撃ち込んで、レベルの高い得点勲章アイテムを出すか(そして回収するか)がハイスコアの最大のカギとなるのだ。

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▲限られた時間内にいかにショットを多く撃ち込むか? 高火力のショットを装備して単独の敵を相手にするならば、高いLVもさほど難しいことではないが……。

 中型機は、各ステージ中でコンスタントに出現するが、“オーバーキル”のあいだもマップは進行しており、ほかのザコ敵や地上敵からの攻撃は継続している。したがって、撃ち込みだけに夢中になっていると、大量の敵弾に囲まれていとも簡単にミスしてしまう。逆にすべての敵をただ倒しまくるだけでは高得点は狙えない。“オーバーキル”のシステムがあることで、「どの順序で敵を倒すか?」、「どの位置で“オーバーキル”状態に持ち込むか?」といった戦略性が求められるようになるのだ。
 従来の『雷電IV』(=本作のアーケードモードとアディショナルモード)で採用されていた“フラッシュショット”システムは、小型・中型の敵機を素早く倒すほど敵機の撃破スコアが上昇し、最大5倍になるというものであり、つまるところハイスコアを狙うには「“早撃ち”をすること」を推奨するものだった。これが、“オーバーキル”システムではガラリとプレイ中の立ち回りを変える必要が出てくるのだ。
 実際のところ、出現する中型機に対して、すべて上位レベルの得点勲章を狙うことはムリ(いや、もしかしたらシューティングは下手の横好きなだけの筆者の技術が、単純に足りないということかもしれないが……)。後半ステージに行けば行くほど、“オーバーキル”の取捨選択や葛藤(「もっと撃ち込みたいのに、周囲の攻撃が激しくて断念」など)が悩ましいところとなる。敵配置も一新されており、やり込み派の上級者にとっては、安全と確実な稼ぎを両立させる“攻略パターン”を研究するおもしろさを感じるに違いない。

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 スコアに関連することについて、じつは基本システムでは追加要素がもうひとつある。敵を撃破すると出現する“得点リング”というアイテムが増えているのだ。これは近年のシューティングではよく採用されている要素。素早く倒すと大型でスコアの高いの得点リングが現れやすくなる。自動回収されるので、とくに意識しなくとも集めることはできるが、この点もスコアアタックを狙うやり込み派プレイヤーには見逃せない大事なポイントとなる。

3種類の自機から選択可能

 本作では自機が3種類から選択可能だ。オーバーキルモードでは、じつはこの自機選びも重要なウェイトを占める。以下、軽く3機体の特徴を示そう。

<ファイティングサンダー ME-02改>
バランスのよいショットとボムの性能を備えた標準的な機体。万人にオススメ。ボムは画面全体にわたって効果があり、ザコ敵と弾を消すことができる。
<雷電Mk.II>
もともとはXbox 360版のダウンロードコンテンツとして登場した特別な機体。ショット性能が全般的に強化されているが、そのぶん、移動速度がやや遅め。敵弾の速い本作では上級者向けといえる。ボムは、発射から発動までにやや時間を要し、さらに自機全面の一定範囲だけ効果があるというクセのあるものだが、威力は絶大。
<フェアリー>
同じく、Xbox 360版のダウンロードコンテンツだった機体。ショットはほかの機体とは大きく性能が異なり、まったく違う戦いかたが楽しめる。また、移動速度は3種類中、最速。

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 いずれも、ショット(メインショット)はバルカン(赤)、レーザー(青)、プラズマレーザーまたはプロトンレーザー(紫)のいずれかをくり出すことができて、カッコ内の色のパワーアップアイテムを取得することで、ショット切り替えと火力強化ができる。この3種類のショットは従来のシリーズを踏襲しており、『雷電』らしさを象徴するものだ。なお、3つ目のプラズマレーザーとプロトンレーザーは、ゲーム開始時にどちらを使用するかを選ぶようになっている(フェアリー以外の機体が対象)。
 オーバーキルモードでの撃ち込みを確実に進めるには、ショットの火力と撃ち込みかたが重要になる。強化するほどショットの火力が上がるが、単発の基礎性能としてはバルカン>レーザー>プラズマレーザーまたはプロトンレーザーという順で火力が高いというということを覚えておくといいだろう。

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▲バルカンを強化すると、前方に大量の弾が広がる拡散弾となる。
▲レーザーは強化が進むと極太になり、火力も大きくなる。ただし、見た目通り、攻撃範囲は真正面のみという最大の短所がある。
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▲プラズマレーザー(敵の位置をサーチして自動的に追尾するレーザー)、プロトンレーザー(自機の横移動と連動して照射の向きが変わるレーザー)ともに広角の敵を複数同時に叩くことができるが、火力が少ないのが短所。ボス戦では撃破までの時間が掛かりがちとなる。
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▲すべてが特殊なフェアリーのショット。これはバルカン。大量の泡を前方に発射する。左右に移動しながら撃って弾幕を張る、前進しながら泡を重ねるなどの使いかたができるので、工夫次第で“オーバーキル”もやりやすくなる。
▲ちなみにボムも“オーバーキル”の撃ち込みに影響する。“オーバーキル”時の敵機に、高火力をほこる雷電Mk.IIのボムとショットを同時に重ねると一気にゲージが上昇というテクニックは、覚えておいて損はない!

完全新規の“ミッションステージ”も登場

 オーバーキルモードは、オリジナルの5面、アディショナルモードからの新ステージ2面に加えて、そしてこのモードのために新規で制作されたふたつの“ミッションステージ”という全9面で構成されている。
 この“ミッションステージ”は、特別ルールのもとで展開するユニークなもの。そのうちのひとつでは、「輸送船にさらわれたフェアリーを救う」というミッションが課せられており、ステージエンドまでにできるだけ多くのフェアリーを救出すれば、大量のボーナスが獲得できるというものだ。マップ終端までいくとステージエンド。ほかのステージでは必ず用意されているボス戦は存在しない。
 意外とこのステージが手強い。フェアリーは大型の船に隠れており、一定数撃ち込まないと出現しないが、大量に出現するほかの敵や船に邪魔されて、ショットが追い付かない、いわゆる“撃ち負け”が発生しがち。
 しかし、このステージならではの問答無用でガンガン敵を倒しまくるというカタルシスは、ストイックなイメージの『雷電』の中では新鮮な感覚。ステージ終了後のリザルト画面では、救出したフェアリーの数と同時に、このステージ内で破壊した船の数も表示されるので、全撃破を狙いたくなるはずだ。

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▲隠れているフェアリーは全部で20体。5体救うごとに大量ボーナスが得られる。救出すると、自機の後ろに追従するようになるぞ。

 以上、新規モードであるオーバーキルモードを軸にレビューを進めてみたが、新モードであっても伝統の『雷電』らしさが受け継がれていることには変わりない。撃つ、避ける、といったシューティングゲームの根源的な楽しさが、だれにも堪能できることは、特記しておきたい。レベル設定やステージセレクト機能も充実しているので初心者にも挑戦しやすくなっている。本作を機に、シンプルで奥深い2Dシューティングゲームの世界を体験してみてはいかがだろうか?

■著者紹介:大瀬子ヤエ(大瀬子屋)
シューティングゲーム歴は、アーケードの『スペースインベーダー』から……と長い経歴ながら、じつは“下手の横好き”エンジョイ勢シューター。『雷電』シリーズはとにかくバルカンを選ぶ派。かつては、月刊アルカディア誌編集部にて“編集ヤエ”という名で在籍。現在は週刊ファミ通、シューティングゲームサイド(マイクロマガジン社)などで執筆するフリーライター。


雷電IV OverKill
メーカー モス
対応機種 PS3プレイステーション3
発売日 2014年5月13日配信
価格 2750円[税抜](2970円[税込])
ジャンル シューティング