同一IDでの横断的なタイトル提供も目指す
アイスランドのレイキャビクで行われていたCCP Gamesのオフラインイベント“Fanfest 2014”が閉幕した。
オンラインゲームの『EVE Online』を中心に、FPS、VR専用タイトルと、ユニークな展開を見せる同社が、どんな方向に向かっていくのか。それを端的に示しているのが、最終日の基調講演で発表された新テーマ“EVE UNITED”ではないだろうか。
テーマの発表に先立って言及されたのは、昨年の基調講演で出た「来年の基調講演ではみんな携帯電話に“EVE Mobile”を持っているだろう」という予告。当の発言主であり、モバイル分野での立て直しを行っていたジョン・ランダー氏は、先月に退職した。もちろん今年“EVE Mobile”なんて誰も持っていない。
CCP Unifex signing off. It has been a blast. Fly dangerous and I will see you in space.
o7
— Jon Lander (@CCP_Unifex)
2014-04-15 22:32:09
それだけではない。あれから一年、さまざまなことが変わった。コンソール(家庭用ゲーム機)への進出を狙ってプレイステーション3向けにリリースされた『DUST 514』は、今年のFanfestでPC向けの新プロジェクト“Project Legion”を発表。『DUST 514』が終了するわけではないのだが、PvE(AI操作の敵との戦い)や探索要素など『DUST 514』で将来の構想としていたいくつかの要素は、“Project Legion”で実装が進められることになる。
また傘下のWhite Wolf PublishingのIPを使ったゴスなオンラインRPG『World of Darkness』は先月開発中止が発表された。
一方で、昨年のFanfestでは、実験的プロジェクトから始まった余興として披露されたVRヘッドマウントディスプレイ向けタイトル“EVR”が、一年の間に本格的な製品を目指すようになって、『EVE: Valkyrie』へと進化。開発スタッフも増え、いまやOculus RiftだけでなくソニーのProject Morpheusにも対応。E3、CES、GDCなど、さまざまなイベントでデモ出展されてきた。
“EVE United”という新テーマに従って見ていくと、これらの動きの繋がりがよく見えてくる。それまでのテーマである“EVE Everywhere”(あらゆる場所にEVEを)は、マルチプラットフォームにマルチIPを展開していこうというものだった。
“EVE United”が目指すものはもっと明確で、『EVE Online』の宇宙世界“EVEユニバース”にとにかく集中し、タイトル展開もユニバースに従って行っていくという方針だ。マルチプラットフォーム戦略やモバイル展開をもうやらないというわけではないだろうが、選択と集中を行う上で、まず他社にない最大の強みであり、幅広い年齢層のプレイヤーを惹きつけているEVEユニバースにフォーカスするというのはわかりやすい。
基調講演ではこれに関連して、同一IDでEVEユニバースを共有するタイトル群にアクセス可能なランチャーも構想として示された。
イベントの最後に上映されたトレイラー“Prophecy”(予言)も、『EVE Online』のプレイヤーによるスターゲート建設をめぐる戦闘を、『Dust 514』の歩兵戦や、『EVE: Valkyrie』のドッグファイトなどをフィーチャーして描いたものだ。
この映像にあるようなことが、シナリオライターが書いたり、CCPが仕掛けたりするのではなく、本当にプレイヤーの行動によって勝手に発生するような世界。そこを目指すために、今年はどんなことを発表したのか? イベントのハイライトをお届けしよう。
EVE Onlineハイライト: 新たな時代を目指すための整備
今年のFanfestで『EVE Online』は例年と比べると比較的地味な発表内容となったが、一方で年2回出していたエクスパンション(大型拡張)の配信体制を変更し、6週間隔でよりフレキシブルに提供していくことを表明。
将来的な目標である、プレイヤーがコントロール可能な部分を増やし、スターゲートなどあらゆるものが生産/破壊可能な世界へと作り変えていくために、しばらくは土台を作り変えていく作業を行っていくと述べている。
6月3日に実装予定のKronosでは、すでに公式ブログで公開されているようにインダストリー関連の変更が行われる。ユーザーインターフェースなども変更される予定だ。
Mining Barge(採掘艦)がある程度自分の身を守れるようになり、Freighter(輸送艦)やJump FreighterなどではRIGスロットがつくように。
また、OREの新しい艦Prospectも発表された。種別としてはExpedition Frigateと呼ばれており、OREの艦としては初めてクローキングデバイスを積むことができて、カーゴも大容量でMobile Depotを積載可能。。
Caldari Moaなどは外見がリデザインされる一方、海賊仕様の艦の変更もあり、Blood Raiderの艦にエネルギーを吸い取る機能がついたり、Guristasの艦にはドローンのボーナスがついたりする。そしてMordu's Legionにもついに専用の艦が登場することが発表された。
DUST 514ハイライト: Project Legionで真のサンドボックスFPSを目指す
すでにインタビューも交えてお伝えしているように、今年のFanfestで、『DUST 514』をベースに新要素を加えたPCタイトル“Project Legion”が発表に。詳細はそちらの記事を見て欲しいが、“『DUST 514』のPC版(移植版)”ではなく、「真のサンドボックスMMOFPS」を目指すとしており、『EVE Online』とのますます強い結びつきが期待できそう。
一方で当然「DUST 514はもう終わりなのか」といった声が既存プレイヤーからあがったのを受け、最終日の基調講演で若干の説明が行われた。
まずProject Legionの発表が『DUST 514』の開発終了を意味するのかという部分では、「それはない」とのこと。『EVE Online』との連動要素がある以上、両方が同時に存在すると整合性が取れない部分も出てきそうな気がするが、Project Legionがまだリリースタイミングなどが決まっていない初期段階のプロジェクトということもあり、少なくとも当面は続いていきそう。
そして『DUST 514』からProject Legionへの“移民”、つまりデータ移行については、やれる方向で進めていると明言。会場は『EVE Online』のPCゲーマーが多いということもあって、好反応を受けていた。
EVE Valkyrieハイライト: VRを通じたEVEユニバース体験の実現
プロトタイプの出展から1年を経て、製品化に向けた開発にあたってのアンリアルエンジン4の採用や、「バトルスター・ギャラクティカ」のケイティー・サッコフの出演発表など、プロモーションを含めた動きも出つつある本作。
「世界観の共有にとどまらない、EVE Onlineとのゲーム的な連動は本当にないのか?」、「VRタイトルをメーカーとしてどうPRするつもりなのか?」といった部分は後日インタビューでお届けするつもりなので、そちらもお楽しみに。
そのほか: EVEユニバースのグッズ展開などなど
昨年発表されたEVEユニバースを描くTVシリーズについては、「監督の手も空いたので現在製作快調」という以上のアップデートはなし。その代わりに、新たなコミックシリーズやアートブック、モデル(フィギュア)などの発表が行われた。