エレクトロニック・アーツが発売を予定している、メカFPS『Titanfall』。昨日βテスターの募集も開始され(日本はPC版のみ)、発売に向けて期待が高まる本作のプレスイベントに出席し、ガッツリプレイしてきたので、その模様をお届けしよう。
イベントが行われたのは、アメリカのカリフォルニア州のハリウッドにある貸しスタジオ。数十台のXbox Oneがセットされ、プレイを撮影しながら思う存分遊ぶことができた。
どんな感じに仕上がっているかはプレイ動画を見てもらうのが一番早いと思うのだが、その前に一応おさらい。
本作がとにかくヤバい3つのポイントをおさらい
本作『Titanfall』は、Xbox One/360/PC対応の対戦型FPS。高機動な歩兵戦と、巨大なメカ“タイタン”に乗ってのバトルが融合した、今年前半の最大の注目タイトルだ。
開発したのはRespawn Entertainment。本作が処女作となるが、同スタジオはCall of Dutyシリーズの生みの親をはじめ、トップクラスのFPS開発の経験に長けたメンバーばかり。
かといってフツーのミリタリーFPSなどとはまったく違う、とにかく尖った要素を盛りまくった、「大作かくあるべし!」と言いたい刺激的なタイトルとなっている。どこがヤバくてスゲーのか、プレイした上で3つのポイントにまとめてみた。
1.高機動な歩兵戦と巨大なタイタン戦の融合
先にさらっと書いてしまったが、これがまず第1のポイント。巨大な人型搭乗メカが主人公のFPS/TPSは結構あるが、終始メカに乗って戦うことが多い。しかし本作では歩兵戦も重要な要素で、両者が深く融合している。
一部モードを除き、プレイヤーは歩兵状態でスタートし、ダブルジャンプや壁走り、クローク(光学迷彩)などのギミックを駆使しながら戦っていく。
タイタンは一定時間が経つと投入可能になるのだが、敵プレイヤー(敵NPCでも可)を倒したりすると投入可能になるまでの時間が短縮されるので、「俺はタイタンを早くゲットしたい!」というプレイヤーならば、まずは歩兵状態で活躍するのが大事というワケ。
そしてタイタンを投下してもらったら、強力な兵装を使って暴れまくるわけだが、無敵というわけではない。歩兵状態で使える対タイタン兵器は結構強力だし、頭上から飛びついて頭部のコアを直接撃たれると結構脆い。マップは結構立体的なので、機動力をフル活用して戦われると、タイタンでも結構キツい。
さらに敵のタイタンも強力なので、棒立ちで無双できるわけもなく、前方に展開できるバリヤー(開放時に止めた弾丸やロケットを撃ち返せる)、連続で使える回数が決まっているショートレンジのダッシュなどを駆使して立ち回らなければいけない。これらの要素の絡み合いとバランスが絶妙なのだ。
2.シングルプレイのような劇的なシーンを体験できるマルチプレイ
本作はマルチプレイ専用のFPSだ。しかし、マルチプレイが重要な時代とよく言われるが、『Titanfall』のような超ビッグタイトルで、マルチプレイ専用のゲームというのは、実は意外と少ない。なんだかんだでシングルプレイのキャンペーンモードは大事なのだ。
では本作がダメなのかというと、そんなことはない。様々な工夫により、マルチプレイなのにキャンペーンモードのクライマックスのような興奮を味わえるからだ。
“巨大なタイタンが戦場で激突し合う”という本作の根幹の部分もそうなのだが、戦闘中に状況に応じてNPCの通信士から「チャーリーが敵の手に落ちた、すぐ向かってくれ!」といった連絡がガンガン入ってくるし(キャンペーンモードにありがちな演出)、両軍からNPC兵士が結構な数投入されているので、6人対6人の戦いとは思えないほど、賑やかで視覚的に飽きない。
3.動きまくりで、ギミックありまくり!
これまでに書いたことと重複してくるが、『Titanfall』の戦闘におけるギミックの数はハンパじゃない。ザッと書くだけでもこれだけある。
歩兵 ダブルジャンプ・壁走り・クローク・3種類の武器(メイン・サブ・対タイタン兵器)・近接攻撃・敵タイタンへの飛びつきからの攻撃・仲間タイタンの頭部付近にしがみついての移動など
タイタン 2種類の武器(メイン・サブ)・近接攻撃・弾を止めて撃ち返せるバリアー・ショートレンジのダッシュ・降機時のAIモード(護衛・追尾)・タイタンからの脱出・攻撃力が上がる特殊モードなど
このほかにも、歩兵/タイタン双方の兵装のカスタマイズや、戦闘前にセットしておいて、ここぞという時に使って特殊能力や武器を得る使い捨ての“バーンカード”システムなどがあり、やることはとても多い。
長くなりましたが早速プレイリポート
前説がずいぶん長くなってしまったが、さて実際のプレイはどうだったのか。デモでは、チュートリアルモードをプレイしたのち、3種類のゲームモードを遊ぶことができた(マップはすでに公開されているAngel CityとFractureの2種類)。
まずはATTRITION。本作におけるチームデスマッチ的なベーシックなモードで、敵を倒したりするとポイントが入っていき、一定ポイントを超えると勝利する。NPC兵士を倒しても1点なのが、タイタンを倒すと5点だったり、入る点数が違うのがミソ。
そしてHARDPOINT DOMINATIONは、いわゆるDomination系のモードで、A・B・Cとあるポイントを占拠することでポイントが入っていき、リミットに到達すると勝利。タイタンに乗ったまま占拠できるポイントがあったり、あえてポイント付近で降機して待ち、タイタンを攻撃している敵を倒すといったテクが使えたりといった辺りも面白い。
最後のLAST TITAN STANDINGは、いわゆるLast man Standing系のモードを本作流にアレンジしたもの。全員タイタンに乗って出撃し、死亡したらそのラウンドは復活なし。最後に残ったタイタンのチームが勝ちとなる。爆発寸前に脱出した場合でもタイタンは減るものの歩兵として戦闘自体は続けられるし、あえてタイタンを降りて戦うという技も可能。
で、感想としては月並ですが、スゲー面白い! なかでも大きかったのが、ギミックが多いし、やられ役的なNPC兵士も一杯いるので、“出撃すれば絶対に何かできる”ということ。
FPSのマルチプレイ対戦なんかで、“復活→走り出した矢先、30秒もせず死亡”をくり返して「もうやらねぇ!」と思ったことがある人は結構いると思うのだが、『Titanfall』なら落ち着いて立ち回りさえすれば絶対に何かできるし、強くなった気分になれると断言しよう。
まず、そんなに致命的な攻撃をしてこないNPC兵士を狩っているだけでも上手くなった気分になれるし、さらにNPC狩りでもタイタンの投入可能時間までが短縮され、そして乗ってしまえばまぁちょっとぐらいは活躍できる(少なくとも一発も撃たずに死亡はない)。
1キルも撃破できずに壊しちゃったとしても、脱出するタイミングさえ逃さなければ、「くっ、ここは撤退だ!」とちょっとかっこよく戦いを続けられる。敵タイタンへの飛びつきでも決まった日には「貴様の! せいで! 俺の! タイタンが!」と叫びながらコアを撃ちまくるといい。
それに、オートでターゲットを合わせてくれるメイン武器“スマートピストル”なんてものもある。FPS初心者で、目の前を通るこっちに気がついていない敵を発見したにも関わらず、盛大に弾を外して倒しきれず、逆にやられてしまうなんて人もいると思うが、そんな人はまずスマートピストル。範囲内にさえいればアバウトな照準でロックオンできるので、落ち着いて引き金を引けば、夢の1キル。復活地点に敵NPC兵士がいたら、復活後数秒でキルをゲットという玄人ぶり。
毎回何かを起こせるから、ちょっと負けがこんでもあんまり引き摺らずに出撃できる。そして落ち着いて考えれば、もっといい立ち回り方も見えてくる。それがとてもいい感じで、仕事を忘れて満喫してきた次第。
あえて気になった所を挙げるならば、マップや新タイタンなどのコンテンツアップデートのスピードだろうか。
本作ではシングルプレイをクリアしてとりあえず一回満足ということがなく、全員がマルチプレイ対戦のみをやり続けるわけで、いかにその一戦一戦にクライマックス級のど派手さがあったとしても、どうしてもいずれ飽きや慣れが出てきてしまう。
そこに有料か無料かはともかく、新マップやモード、そして新武器やタイタンをどう投入していけるか? 追加コンテンツについての詳細は明かされていないが、的確なコンテンツ投入を期待したい。もうね、プレイするかしないかというレベルの話は、FPS好き、メカ好きなら圧倒的に前者なんですよ。
「メカの国日本で受け入れられたら光栄」――リードアーティストに聞く『Titanfall』
リードアーティストのJoel Emslie氏にショートインタビューを行ったので、その内容もまとめてお届けしよう。
――威圧感があるぐらいには大きく、無敵というほど巨大でもないタイタンのサイズが良く考えられていると思いました。ゲームデザイナーからの要求も当然あったと思いますが、どのように決まっていったんですか?
Joel 最初に考えたのは、人間サイズのアーマー・スーツでした。そこからデザインの検討を進めていく中で、スケールを変えられたらいいなあということになったんです。
パイロットがいて、それがタイタンに入って戦う(というサイズ)。アーティスト側はクールなマンガやアニメ、例えばロボテック(マクロス、サザンクロス、モスピーダが混ざったアニメ)など、子供のころに親しんだものを入れたいと思ったので、ぜひスケールを変えたいと主張しました。
ただ、動かして自然なスケールじゃないといけない。そこでモーション・モデルを作って検討しました。タイタンが大きすぎると、マップが大きくなりすぎて環境を管理できなくなるし、パイロットもお互いを見つけられなくなる。マップ全体の環境・タイタン・パイロットが調和して動けるサイズはどこなのか?
結果としてタイタンは6メートルほどになりました。これならタイタンがしゃがんでビルの後ろに隠れることが出来る。最初に行ったのはタイタンと兵士のモーションキャプチャー・テストなんですが、タイタンが2階建てのビルに走り寄って隠れ、様子を見た。その時にこれだ!と思い、そのまま進めることになったんです。
――例えばタイタンから緊急脱出できますが、そのためには脱出できるようなデザインじゃないといけないわけで、当然アーティストも関係してきますよね。逆にアーティスト側からこういう機能があったらカッコいいと提案することはあるんですか?
Joel Respawnのアート・チームはどんなゲームプレイを可能にするか、そのサポートに集中しています。『Titanfall』を開発するにあたって、みんなと同じようにクレイジーなビジュアル競争をするか、それともきちんとしたゲームにすることに集中するかという選択肢がありましたが、自分たちが選んだのは後者です。
もちろん美しく、かつ滑らかなフレームレートで遊べることも目指しています。大事なのはゲームプレイのバランスがとれていることです。
脱出については、ある日皆でプレイしながらあれこれ試していて、1人のゲームデザイナーが入れたら、とてもカッコ良かったので採用しました。
「でも、高く飛び上がって、なんで足が折れないのか?」アート部門は、こういったことについて、きちんと説明がつく、納得がいく形にしなければなりません。パイロットが飛び出した時にどんな風に見えるかを検討し、パイロットが生存出来るようにアニメーターと相談して、結局、重力を緩和するジャンプキットをデザイン的につけました。このゲームにおいて、ゲームデザイナーの発想を“正当化”するのがアーティストの仕事のひとつでしたね。
――よく見ると、タイタンの動きにはちょっと可愛い感じがありますよね。
Joel ロボットデザインは世界に無数にあって刺激を受けます。
『Titanfall』では、自分たちはまずロボット・ゲームから離れようと思ったんです。そしてアニメーション、動き、パーソナリティを通じて表現できるものに可能性を感じました。アニメーターと一緒に努力して、タイタンのモデルそのものに動きと性格を与えたんです。あと、指を付けたり。後になってやったことだと、彼らがどこを見ているかもよくわかる。
タイタンには人の心をひきつけるようなパーソナリティを付けました。まぁゲーム中では、古いクルマに保険をかけて火の中に投げ込むようなことをしているわけですけど、ペットのように感情的な繋がりを持って接してもらえるとうれしいですね。
――日本にはメカのファンが多いですが、アーティスト側からここは注意して見て欲しいというようなところはありますか?
Joel 日本で温かく受け入れられることを夢見ていたので、そうなったら信じられないほど光栄です。個人的にも、自分の家族には日本人の親戚もいるので、彼らに認めてもらえたことはとても重要な意味があります。チームにとっても大事なことで、巨大ロボは日本で生まれたと思っているので、日本人に満足してもらうことが目標でした。
どこを特に見て欲しいというより、アプローチとして伝統的なアメリカン・スタイルのメカではなく、敏捷なものにしたかったんです。攻殻機動隊などを参考にしています。
――いやぁ、これを求めてましたよ。メカのゲームはメカのことばかりになりがちですが、ロボットアニメはメカと人間の話で、『Titanfall』にはどっちも入ってますからね。
Joel その通り! メカのスケールを表すには、人間の要素を入れないといけないですしね。話を戻すと、アニメーターもアーティストも、アニメ、マンガ、「アップルシード」とか「ガンダム」で育っていますし、大事に思っています。日本の人たちが誇りに思っているようなデザインを追求したかったんですよ。
――ちなみに、新しいタイタンがDLCなんかで出てくる可能性は?
Joel 今はまだ話せないです。ローンチ時には3機種ということだけですね。
――本当に大きなIPに育って欲しいですね。発売が待ち遠しいです!
Joel ありがとうございます。ボクたちの子供のようなものなので、大事に育てていきますよ。
(取材・写真・文:ミル☆吉村)