堀井雄二さんはスゴイ人、そしてつくづくおもしろい人でした

 2013年9月27日、エンターテインメント業界の各所で活躍してきた黒川文雄氏が主催するトークイベント“エンタテインメントの未来を考える会”の第12回が開催された。
 今回のテーマは、“堀井雄二に訊く ~ 人生はロールプレイング ~”。ゲストは、お題の通り、『ドラゴンクエスト』シリーズや、『いただきストリート』、『ポートピア連続殺人事件』などなど、数々のヒット作を生みだしてきた堀井雄二氏だ。黒川氏がメインホストとして質問をぶつけつつ、堀井氏をよく知るゲストとして迎えられた、猿楽庁の“長官”こと橋本徹氏、エレキコミックの今立進による突っ込みを交えながら、大盛り上がりのトークが展開された。

“黒川塾 十弐”開催 『ドラゴンクエスト』の堀井雄二氏が語る“人を驚かせる発想” チー○やス○マのお話も!?_01
“黒川塾 十弐”開催 『ドラゴンクエスト』の堀井雄二氏が語る“人を驚かせる発想” チー○やス○マのお話も!?_02
▲黒川氏。
▲橋本長官(写真中央)、今立さん(写真右)。

 堀井氏は、現役トップクリエイターにして、すでにゲーム界のレジェンドとも言える人物。そのプロフィールや、ヒット作誕生にまつわる逸話については、さまざまな形で広まっているため、ご存じの部分も多いかもしれない。しかし、改めて堀井氏から語られるエピソードはやはり興味深く、また、ゲーム歴約30年の記者にとっても初耳の、驚愕の逸話も多々聞くことができた。その内容を詳しくお伝えするので、ぜひ、じっくりと読んでいただきたい。

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▲「ユージ!」コールに応えて、堀井氏がにこやかに登場!

漫画家志望の堀井青年がゲームクリエイターになるまで

 最初の話題は、堀井氏がゲームクリエイターになるまでの経緯についてだ。堀井氏の飄々とした語り口から、おもしろおかしく明かされたエピソードの数々に、会場は笑いの渦となっていたが、ここではざっくりとあらましを紹介しておこう。

 まず、もともとは漫画家志望だったという堀井氏。高校生時代に描いたマンガを、永井豪氏に持ち込んだりもしたそうだ(ちなみに手塚治虫氏の『ふしぎな少年』など、不思議なストーリーに引かれていたという堀井氏だが、このとき持ち込んだマンガはチャンバラ物だったそうな)。しかし、このときははかばかしい反応は得られなかったため、ひとまず大学に進学することに。
 そして堀井氏は、早稲田大学文学部に進学し、漫画研究会に入会。そこで漫画家の夢に向けて邁進……するかと思いきや、漫画研究会OBには、編集者になった人も多く、そのツテでイラストの仕事などを受けているうちに、徐々にライターとしての仕事を引き受けることが多くなる。そして、月刊OUT、月刊セブンティーン、週刊少年ジャンプなどで記事を書き始める。
 一方で、もともとSFなど、“不思議なもの”への興味が強かった堀井氏は、当時はまだ“マイコン”と呼ばれていた、パソコンにハマり始める。PC-6001を購入した堀井氏は、BASICで遊びながらプログラムを覚えていったそうだ。

衝撃!! 堀井氏は古参のチー○ーだった!?

 このころ、堀井氏がハマっていたのが、“占いプログラム”作りだったという。ただしそれは、占いといっても、じつのところ本当に占いをするわけではなく、家に遊びに来る友人を想定して、その人物に合わせた文章をはき出させるだけの、言ってみればインチキ占い。当然ながら、コレが非常に当たる!(まあ当然だが)。ということで、試した友人は誰もがビックリ。堀井氏は、そのリアクションを見て楽しんでいたのだそうだ。ちなみに堀井氏は、ライターとして、“いたずら全集”といった本を書き上げたこともあったそうだ。堀井氏が、生来のイタズラ好きであることがよくわかるエピソードだ。

 また、当時は、市販されているパソコンゲームのプログラムも、BASICで組まれていることが多かった時期で、プロテクトもかかっていなかったため、LISTコマンドを実行することで、簡単に内容を見たり、書き換えたりすることができた。そこで堀井氏は、「チートもけっこうやりましたね(笑)」と驚きの発言。某名作歴史SLGを改造して、最初からお金をたくさん持たせたり、ライバルの国を強くしたり、工夫していろいろな遊びかたをしていたのだという(その後、PC版『ウィザードリィ』では、アクセス時にディスクを入れ替え、ダンプリストを調べて、お金のケタやパラメータデータの格納場所を調べていじったり……というレベルまで上達(?)したそうだ)。

 こうした経験は、その後のゲーム作りに活かされているそうだ。たとえば『ドラゴンクエストII』の福引き券。薬草を買って福引き券をもらい、それを売却すると利益が出る。そうした、ちょっとした抜け道のような仕組みは、「チートっぽいんだけど、できることに気づくと、人間、すごくがんばるんですよ。ふつうに稼ぐよりもたいへんだと思うんだけど(笑)。だからあえて(修正せずに)残したんです」(堀井氏)とのこと。メタルスライムについても同様で、「ズルというわけではないんだけど、ギャンブル要素で、ついがんばっちゃいますよね」(堀井氏)と、あえてそうした“一発逆転”的な要素を入れ込んでいるのだそうだ。

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さらに衝撃!? 堀井氏によるス○マ発覚!?

 さて、大学を卒業した堀井氏は、企業に勤めることはせず、ライター業を続けることを選択する。そんな折りに登場したのが、あのファミリーコンピュータだ。ファミコンを手にした堀井氏は、インカムに縛られるアーケードゲームと違って、「いつまでもゲームをやらせていい」(堀井氏)ファミコンならば、もともと作りたかったアドベンチャーゲーム、ロールプレイングゲームを作れるのではないか? と考えたそうだ。

 ここで堀井氏のスゴイところは、PCでは流行りつつあったものの、一般的にはまだ馴染みのなかった新しいジャンルのゲームを、いきなりリリースするのではなく、ユーザーに、段階を踏んで理解してもらおうとしたことだ。
 まず、RPGよりもルールがわかりやすく、遊びやすいだろうということで、先にアドベンチャーゲームからリリースすることを決める。そこで作ったのが、かの名作『ポートピア連続殺人事件』だ。ちなみに本作、犯人が○○であることも有名だが、これは「本当にメモリがなくて苦しい中で、どうやって驚かせるかを考えて。それであの犯人になったんですよ」(堀井氏)とのこと。堀井氏は、つくづく人を驚かせることが大好きなのだ。
 そして『ポートピア連続殺人事件』がヒットし、“文章を読み進めて遊ぶ”ゲームに慣れてもらったところで、万を持して、家庭用ゲーム機初の本格RPG『ドラゴンクエスト』の制作に入る。しかしここでも、いきなりポンと発売することはしない。堀井氏が採った作戦は、「ライター業もやっていることだし、まず記事で、“RPGっておもしろいんだよ”と伝えて、ゲームが出るころには、みんなが知っているようにしようと」(堀井氏)というものだった。というわけで、当時少年期を過ごしていた方なら覚えているであろう、週刊少年ジャンプ巻頭カラーページに、『ドラゴンクエスト』の連載記事が掲載されることになる。
 いままで培ってきたライターとしての技量を駆使して、RPGのおもしろさを伝えようとする堀井氏は、「ゲーム画面を載せて、逐一説明していくんですよ。“ここに洞窟があるけど、この先に何があるんだ!?”とか。自分で作っているゲームなんだけどね(笑)。いまで言うと、ステマになっちゃうのかな(笑)」と、RPGを知らない少年たちに、RPGのおもしろさを丁寧に伝えていく。ちなみにこの作業は、ゲームの制作と並行して進められていたため、「街があるぞ! って載せようとしたところで、そういえば街の名前を考えていなかったな、と気づいて、記事を書きながら街の名前をつけたりもしました(笑)」(堀井氏)ということもあったそうだ。

堀井氏ならではの気遣いとイタズラ心

 こうした、わかりやすく、誰にでも遊べるように、という徹底した配慮は、以降の作品でも徹底されている。たとえば『ドラゴンクエストII』は、「今度は『I』の2倍の容量が使えるので、パーティープレイができるだろう」(堀井氏)というコンセプトでスタートしたもの。しかし、最初からいきなりパーティー戦が始まるわけではないのは、ご存じの通り。それは、「『II』から遊ぶ人に、いきなりパーティーはしんどいだろうということで、仲間を集めていくシナリオにしたんですよ」(堀井氏)ということだ。さらにそこに、「サマルトリアの王子を捜し当てたときに、相手に“さがしましたよ!”と言わせてね。“捜したのはこっちだよ!”と(笑)」(堀井氏)というイタズラを仕込むあたりも、堀井氏らしさなのだ。

 そうした気配りは、「僕の特性みたいですね」と語る堀井氏。自身も、面倒なのは嫌いで、「わかりやすくするためとは言え、チュートリアルがいっぱいあると嫌になっちゃう」のだそうだ。堀井氏は、「BASICでも、最初はINPUT、PRINT、IF、GOTOの4命令を覚えただけで、アドベンチャーゲームを作りました。ゲームでも同じで、できることを、少しだけわからせてあげればいいんです。少し教えてわかった気になってもらって、進めていくうちにもっとわかるようにしてあげる」と、堀井氏らしいゲーム製作術を説明した。

クリフトがザキを連発するのは、“頭がいい”から!?

 その後も、『ドラゴンクエスト』シリーズの制作秘話が続々と飛び出す、ゲームファン必聴のトークが展開。なかでも聴衆の興味を惹いていたのが、パラメータ調整のお話だ。
 とくに敵の行動ルーチンは、初期は6種類の攻撃からランダムでどれを選ぶか、という程度のものだったそうだが、これではおもしろくない、といろいろ考えていくうちに、「気づいたら50パラメータくらいになっていました(笑)」(堀井氏)。
 たとえば『II』のころはシンプルで、出現した敵グループが全員いっせいにザキを使ってきたりすることもあるしんどい仕様だったが、「それでは辛いということで、グループ制御を導入しました。1ターンに誰かがこの行動をしたら、3匹目はその行動は取らないようにする、とか、グループで1匹だけしか使わないようにする、とか」(堀井氏)という制御を加えたり、ということだ。
 ちなみに、ゲームファンのあいだでは定番ネタの、“クリフトのザキ連発”は、『IV』がAIを採用していたからこその現象なのだそうだ。ザキは、成功すると、敵のHPがどれだけ高くても0にしてしまう魔法。つまり成功時の効果が大きいため、AI的にも評価が高くなってしまう、というわけだ。ただしその後の作品では、呪文に“先入観”にあたるパラメータを導入することで、こうした現象を解消しているという。イメージとしては、「ザキは効かないだろう」という強い先入観がある状態からスタートし、呪文が効くごとに、先入観の数値を減らしていく……という具合なのだそうだ。

 こうした地道な制作作業を楽しんで進めていたという堀井氏。「息抜きは?」と問われて答えたのが、「ファミコンウォーズをやっていました(笑)。寝る前に遊ぶと、頭が空っぽになってよく眠れるんですよ」(堀井氏)とのこと。数学が得意で、あまり勉強をせずに早稲田大学の入試を突破したという堀井氏、やはり頭脳も並じゃないんですね……。

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「鳥山明氏がゲームを作りたがっている」はウソだった!?

 鳥山明氏のグラフィックデザインも、『ドラゴンクエスト』シリーズの大事な柱のひとつ。そもそも鳥山氏にデザインを依頼することになったのは、当時鳥山氏の担当編集者だった鳥嶋和彦氏(現・集英社常務取締役)から、鳥山氏が『ポートピア連続殺人事件』にハマっていて、ゲームを作りたがっている、と聞かされたからなのだそうだ。しかしじつはコレ、「だいぶ経ってから(鳥山氏に)聞いてみたら、そんなことは言っていないよ、と(笑)」(堀井氏)とのことで、鳥山氏は、『ポートピア連続殺人事件』にハマっていたのは事実だが、ゲームを作りたいとは考えていなかったのだそうだ。これについて堀井氏は、「でも、あれは恐らく、鳥嶋さんが、作家に新しい刺激を与えようと考えたんでしょうね」と説明。確かに、国民的RPGのデザインを一手に引き受けたことが、鳥山氏のクリエイティブに大きな影響を与えたことは、間違いのないところだろう。
 そして『ドラゴンクエスト』にとっても、「不思議なのは、鳥山さんの絵は、ゲームになじむんですよ。これがたとえば高橋留美子さんの絵だったら、高橋さんのゲームに、原哲夫さんの絵だったら、原さんのゲームになってしまうと思うんです。でも、鳥山さんの絵は、『ドラゴンクエスト』にちゃんとなってくれる。これが不思議ですよね」(堀井氏)と、鳥山氏のデザインが欠かせないものであることも、言うまでもない。

堀井氏、舞台俳優デビュー!

 では堀井氏は、いかにしてその尋常ならざる創造力を維持し続けているのだろうか? 50代になってからも、「基本はヒッキーなので、ネットはよく見ています(笑)」と冗談めかしながらも、サバゲーに挑戦したり、スキューバダイビングを始めたり(これはゴルフとスキューバのどちらをやるか迷った末に、「スキューバやってる、と言ったほうがカッコイイでしょ(笑)」という理由で決めたそう)、舞台俳優に挑戦したり(詳しくは→【コチラ】)と、さまざまな経験から刺激を受け続けていると言う。
 ちなみに堀井氏は、ニンテンドー3DSの“すれちがい合戦”(詳細は→【コチラ】)にもかなりハマっていたそうで、兵士を999万人(!)集めたそうだ。しかもなんとそのために、『ドラゴンクエストIX』ですれちがいの聖地とされた、秋葉原ヨドバシカメラ前に座り、延々とすれちがっていたそうな……!

 そんな堀井氏だが、昔と違って、いまのハードは制約が緩く、何でもできるがゆえに、逆に何をやっても驚いてもらいにくくなっていると言う。しかし、「でも、驚かせることは可能です」と語る。そしてそのために重要なのは、やはり「ユーザーになって考えて、何が起きたら面白いかな、と発想すること」(堀井氏)というわけだ。

堀井氏がPC版『DQX』に期待すること

 さて『ドラゴンクエスト』と言えば、つい先日、Windows版『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』 が発売になったばかり(※関連記事→【Windows版『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』 本日9月26日発売! 各種キャンペーンも実施中】)。このPC版について、堀井氏は、“ネットカフェで遊べる”という点に期待しているのだそうだ。いわく、「若い人だと、PCもゲーム機も持っていない人が多いですよね。そんな人たちが、ネットカフェで遊んで、おもしろいと思ってもらえればうれしいです。昔、中国や韓国で、ネットカフェで多くの人がMMORPGにハマっていた時期がありましたが、そういう現象が生まれてくるとおもしろいかな、と思っています」(堀井氏)。
 また堀井氏は、「仕事で発表していくことが今後いろいろあるので、その反応が楽しみですね」とも。それがどんなものなのか、いまはまったく話せないとのことだったが、期待しておきたいところだ。

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 というあたりで、笑いの絶えなかった“黒川塾(十弐)”もお開きに。全編を通して改めて痛感したのは、堀井氏が本当に魅力的な人物である、ということだ。自身の口からも語られている通り、飄々としたユーモアの裏には、学生時代から一貫して、“驚かせてやろう”というイタズラ心が隠れていることが、ひしひしと伝わってくる(ということは隠し切れていないということだが)。
 しっかり王道でありながら、平板で凡庸な作品に堕ちることがなく、つねに驚きに満ちた最高峰のゲーム体験をもたらしてくれる『ドラゴンクエスト』シリーズ。やはりこの作品が、堀井雄二氏ならではのクリエイティブであることを、まざまざと思い知らされたトークイベントだった。

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▲この日は偶然にも、今立さんの誕生日。最後に、今立さんの誕生日をお祝いするひと幕も。

 さて最後に、堀井氏への質問コーナーが設けられた。ここでも、ざっくばらんに答えてくれた堀井氏。興味深い回答の数々を紹介しておこう。

――生涯現役ですか?

堀井氏 おもしろいと思っている限りは。(宮本茂氏もそんな感じですね、との問いに)すごいですよね、僕は遊び手としてはずっと現役だと思います。とくにオンラインゲームは、歳を取って、足腰が経たなくなってもできますから(笑)。いずれ老人ホームで、80歳を過ぎた人たちでパーティーを組む、という時代がくるかもしれませんね。ただそのころには、もっと新しい遊びが生まれていて、「おじいちゃん、ネットゲームなんて年寄り臭いよ」と言われているかもしれないですけど(笑)。

――『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』をプレイされているそうですが、どれくらい遊んでいるのですか?
堀井氏 長い人は4000時間くらい遊んでくれていますよね。僕は、内緒でやっています。じつは、内緒でチームにも入っています。先日、「バザックスを倒そう」ということで武闘家で行ったら、「素人ですか?」って言われました(笑)。いろんなことがあっておもしろいですよね。

――アドベンチャーゲームを作ってほしいです!
堀井氏 時間を許せば作りたい気持ちもあるんですけどね。やっぱり、『ドラゴンクエスト』があるので。いっとき、『ドラゴンクエスト』の中で、街の中を推理ものにして解いていく、というのをやろうとしたこともあったんですよ。でも本気で作ると何年もかかってしまうので、街ごとカットしてしまいましたが。

――まったくほかのジャンル、アクションゲームなどを作ってみたいとは思われますか?
堀井氏 僕が作らなくても、ほかの人がうまく作ってくれるから(笑)。

――率直に言って、『FF』が出てきたとき、どう思いましたか?
堀井氏 僕がびっくりしたのは、(スクウェアとエニックスが)合併したときにいちばんビックリしました(笑)。でも、『FF』は『FF』で、よくできていますよね。とくに『X』は、ボイスが入って、すごく『FF』らしくなったと思います。

――『ドラゴンクエスト』シリーズの中で、とくに気に入っている作品、キャラクターを教えてください。
堀井氏 自分的には、『III』と『V』には思い入れがありますね。『III』はきれいにまとめることができた作品。『V』はシナリオとして壮大になりました。親子3代かかって魔王を倒すお話にしようということで、主人公を変えていこうというアイデアもありましたが、いや、主人公はひとりだと。子どもから大人、親になるということによっておもしろみが出て、キャラが立ちました。キャラクターでは、それぞれに思い入れがありますね。ビアンカも、マーニャも、アリーナも、ハッサンも……。サンディも気に入っています。

――堀井さんらしい気配りの効いた作品は、堀井さんにしか作れないものだと思います。なぜ、堀井さんだけにそれができで、ほかの人にはできないのでしょうか?

堀井氏 うーん、それはわからないですね。でもみんな、「ここがヘンだからこう直してね」と言うと、「ああ」と納得してくれるんですよね。最初のヘンなところが、作り手になると気づかなくなってしまう。それを、作り手になっても、作っていることを忘れてプレイヤーとして見て、ふつうに気づけるのが才能なのかなあ、と思います。プラス、それをどうすればいいのか、考える能力でしょうね。

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