主人公から植物まで、すべてがペーパークラフト!

 東京ゲームショウ2013初日の9月19日、特設会場にてプレス向けに『Tearaway(テラウェイ) ~はがれた世界の大冒険~』(以後、『Tearaway』)のプレゼンが行われた。本作は12月5日に発売予定のプレイステーション Vita用タイトル。あの『リトルビッグプラネット』シリーズを手がけたイギリスの開発スタジオ、Media Moleculeの新作だ。

 今回、コミュニティマネージャーのJames Spafford氏が来日。ソニー・コンピュータエンタテインメント、ローカライズ課のアソシエイトプロデューサー片見氏が通訳となり、本作をプレゼンしてくれた。では、その魅力をリポートしていこう。

PS Vitaならではの魅力がたっぷり詰まった意欲作! 『Tearaway(テラウェイ) ~はがれた世界の大冒険~』プレゼンイベント【TGS2013】_01
▲写真左より、アソシエイトプロデューサー片見氏、本作のコミュニティマネージャーであるMedia MoleculeのJames Spafford氏。

 本作は、すべてが紙で作られたペーパークラフトの世界が舞台。プレイヤーは神様のような立場となり、主人公の冒険を手助けしていくのだ。

 本作の魅力のひとつが、主人公はもとより、その世界に登場する動物や植物、果ては道路や橋など、すべてが紙で作られていること。とても柔らかく、暖かみのある世界で冒険を楽しめるのだ。単に映像が紙っぽい、というだけでなく、「ときにはクシャクシャになったり、よく見ると折り目や“のりしろ”があったりと、紙である表現にこだわっています」とJames氏。

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▲紙で作られた世界を冒険していく『Tearaway』。クルクル丸まったり、ときには破れたりと、紙らしさを楽しめる仕掛けが満載だ。

 また、Media Moleculeが得意とするカスタマイズ要素も存在。デモプレイでは、王冠を捕られて悲しんでいるリスに、新しい王冠を作ってプレゼントする様子が紹介された。折り紙のような紙にペンツールで線を引いたり、その線をハサミで切り抜いたりして、まるでゲーム上で紙工作をしているかのような感覚でカスタマイズを楽しめるのだ。

 また、主人公の顔も細かく変更可能。こちらはパーツを選んでカスタマイズする方式で、新しいパーツはゲーム内通貨でアンロックしていくようだ。

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PS Vitaならではの魅力がたっぷり詰まった意欲作! 『Tearaway(テラウェイ) ~はがれた世界の大冒険~』プレゼンイベント【TGS2013】_05
▲本作の主人公である、男の子のイオタと女の子のアオイ。どちらかひとりを選択してゲームをプレイする。じつは彼らは手紙で、プレイヤーに手紙を届けるために世界を冒険するのだ。

紙の世界で神になる!? 現実世界とのリンクも

 本作のもうひとつの魅力が、世界に触れられる感覚だ。本作は、PS Vitaの背面タッチパネルやジャイロセンサー、カメラなど、すべての機能をフル活用している。たとえばスクラッピーという敵が登場したとき、プレイヤーは背面タッチパネルに触れて“地面を指で突き破り”、スクラッピーを倒すのだ。またゲームを進めるとカメラを入手できるが、主人公を撮影できるほか、プレイヤー自身の写真も撮ることが可能。デモプレイでは、プレイヤーの写真が少し進んだ場所でポスターのように登場していて、会場の笑いを誘っていた。

 また、現実世界とリンクする要素も存在する。ゲーム中、たまに色を失った動物が登場するのだが、この動物をカメラで撮影すると色を取り戻すことができる。ご褒美として、その動物のペーパークラフトを入手できるのだ。

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▲背面タッチパネルを使ったアクションの一例。プレイヤーの指が世界の地面を突き破り、敵を攻撃するのだ。この感覚は、本作ならでは!
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▲プレイヤーは世界の神様のような立場。太陽のように開いた穴から、世界をのぞき込むのだ。プレイヤーは主人公を手助けし、少しずつ信頼関係を築き上げていく。

 記者も実際にプレイさせてもらったが、タッチパネルを使った独特の操作が新鮮で、非常におもしろく感じた。さきほどの背面タッチパネルの操作は、当然タッチする場所が見えないため、「何となくこの辺かな?」と想像して触れる。この、少しままならない手探り感が新鮮で、うまく敵を倒せたときの爽快感が増しているのだ。

 もちろん、この背面タッチパネルでの操作はほんの一部。主人公の操作は、左スティックで移動、右スティックで視点操作というスタンダードなもの。閉じられた扉を指で開くという、前面のタッチパネルを使った操作も存在する。カメラを使うときはジャイロセンサーが利用され、Vita本体を傾けてアングルを調整する仕組みだ。

 また、ちょっと外れた場所にアイテムが隠されていたり、何の気なしに転がっている球を動物のオブジェクトに投げ込んだら目になったりと、ゲームらしいギミックも満載。ゲームとしてしっかり遊べる上で、Vitaならではの機能を有効活用して遊びの幅を広げている、そんな印象を受けた。

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▲大前提として、アクションあり、パズル要素ありと、ゲームとしてしっかり作り込まれている。カスタマイズ以外のやり込み要素も充実していそうだ。

触って楽しいから、紙で世界を作った!

 プレゼン終了後、James氏にミニインタビューを行えたので、その模様をお届けしよう。なおプレゼン同様、通訳は片見氏が担当し、さらに一部の質問にも回答してくれた。

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▲本作に込めたメッセージを熱く語ってくれたJames氏。ちなみに日本は初来日で、土曜日は三鷹の森ジブリ美術館へ行く予定とか。「とても楽しみ!」とのこと。

──なぜ、紙で世界を作ったのでしょうか?

James氏 いちばん最初の開発コンセプトは、“地面を突き破る指”でした。そこから発想をどんどん広げていき、“実際に触れて楽しい世界”を考えたとき、紙という素材にたどり着いたのです。ゲームでは鉄のような無機質なものや、トゲトゲであるとか、触っても嬉しくない世界が多いです。その点、紙は触れて楽しいですし、自由に遊ぶこともできます。

──では、本作を開発するにあたって、逆にペーパークラフトで新たな魅力を発見したりは?

James氏 それは絶対にありますね(笑)。紙工作は小学校のときに遊びましたが、本作の開発で本当に久々に紙工作を再体験しました。実際にペーパークラフトを作って懐かしく感じる気持ちは誰もが持っていると思います。本作では、そんなペーパークラフトを作る楽しさも再現していますので、ぜひゲームを通じて体験していただければと思います。

──ちなみに、日本の折り紙は開発の参考になりましたか?

James氏 ええ、折り紙の影響はけっこうあります。ただし、すべてを折り紙で作るのは、デザイナーが考えていた世界観とは異なってしまうため、基本的には切ったり貼ったり、というペーパークラフトが主軸です。“折り紙っぽさ”は、ところどころに見え隠れしていますね。たとえば、さきほどデモプレイを担当したアリスが折り紙で星を作り、それをデザイナーに見せたら、デザイナーがゲームに取り込んだ、なんて秘話がありますよ。

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──ゲームに登場するキャラクターのペーパークラフトを入手できるとのことですが、どのように手に入れられるのでしょうか。

James氏 理想としては、PS Vitaがインターネットに接続されている環境ですね。この場合では、ゲームの進行状況といったデータが専用サイトに反映されます。そこから、ゲーム中で入手したペーパークラフトのテンプレートを、PDFファイルとしてPCにダウンロードできます。またインターネットにつながっていないVitaでも、特殊な方法でダウンロードできるようにするつもりです。その方法は、まだ秘密にさせてください。

──ここをいちばん体験してほしい! というポイントを教えてください。

James氏 作品全体として、現実の世界と関わり合っていることですね。あとは、物語が進むにつれて世界がどんどんおかしく変わっていくことも楽しいです。個人的には、ブタに乗るシーンがいちばん気に入っています。

片見氏 私は個人的に、背面タッチで世界を指で突き破るのがお気に入りですね。

──本作をリリースすることで、世界はどのように変わっていくと嬉しいですか?

James氏 このゲームを通して、子どもの頃を思い出して紙を取り出し、実際に切り貼りしてみたり、そういったアイデアにつながれば嬉しいですね。Media Moleculeでは、誰でも創造性を持ち合わせていると考えています。私たちのゲームを通じてクリエイティビティを発揮できる、そういったプラットフォームを作れればいいなあ、と考えています。でもまずは、『Tearaway』をひとつのゲーム作品として楽しんでください!

──PS Vitaの機能をすべて使っていますが、Vita TVでは……?

James氏 申し訳ありませんが、現在Vita TVへの対応は未定です。

──では最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

James氏 『Tearaway』という新しいゲームを楽しんで、そして糊まみれになってください! でも、紙で手を切らないように気をつけてくださいね(笑)。

片見氏 PS Vitaでこのような世界観を表現しているのは、『Tearaway』だけだと思います。このユニークな世界観と紙の世界の創造性をお楽しみ頂けたらなあ、と思います。ぜひよろしくお願いいたします!

──ありがとうございました!

 紙で作られた、暖かみのある世界を冒険できる魅力。そして、その世界にさまざまな手段で干渉できるおもしろさ。この魅力は、間違いなくPS Vitaだからこそ表現できた作品と断言していいだろう。百聞は一見にしかず、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアブースでは本作の試遊台が設置されているので、東京ゲームショウ2013へ来場予定の人は、ぜひともブースへ足を運んで実際に体験していただきたい。(取材・文:ライター/喫茶板東)

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▲お土産として、開発ラフイラストを1枚いただきました! とってもキュートなキャラクターを、ぜひ本編で触ってみてほしい。