小野氏が語る『deep down』とPS4!

 プレイステーション4(以下、PS4)で、新世代のゲーム開発を進めているトップクリエイターに聞く、連載インタビュー企画。第6弾となる今回は、まだまだ謎が多いカプコンの完全新作『deep down』について、小野義徳エグゼクティブプロデューサーに話をうかがった。

【PS4クリエイターインタビュー】小野義徳氏が語る!『deep down』が見せるPS4時代のオンラインゲーム_14
【PS4クリエイターインタビュー】小野義徳氏が語る!『deep down』が見せるPS4時代のオンラインゲーム_01
『deep down』エグゼクティブプロデューサー
カプコン 執行役員
小野義徳氏

『deep down』は、オンラインの要素を誰でも抵抗なく楽しめるRPG

――カプコンのPS4向けタイトル第1弾となる『deep down』は、どのようなゲームなのでしょうか?
小野義徳氏(以下、小野) このカプコンの新作『deep down』は、これまでのタイトルとはまったく違う世界観のゲームです。舞台は2094年のニューヨークなんですけれども、「2094年のニューヨーク」と聞くと、皆さんは驚かれるかもしれません。今年2月に行われたプレイステーションのカンファレンス(カンファレンスの模様は→【こちら】)で公開した『deep down』の映像は、ニューヨークが舞台には見えないですからね。

――あのとき公開された映像は、鎧を来た男性がモンスターと戦う、という内容だったと思いますが……。どういうことなのでしょうか?
小野 『deep down』に登場する、特殊な能力を持つ人の集団“ravens(レイブンズ)”がカギとなっています。彼らは過去にダイブすることができるほか、物の記憶を読み取ったり、過去の声を聴いたりすることができます。2094年のニューヨークにいるレイブンズは、とある時代に行き、そこで読み取った情報をもとに、過去に起こったことを明らかにしようとしているんです。

――つまり、カンファレンスの映像に映っていたのは、過去の時代の様子だったんですね。では、“記憶を読み取る”ということについて、もう少し詳しく教えていただけますか?
小野 レイブンズであるプレイヤーは、過去にあるダンジョンに赴いて、調査を行います。本作には“感情”というテーマがあるんですけども、過去には喜怒哀楽などの“感情”に対応したさまざまなダンジョンが存在しています。石像をリーディングして、そのダンジョンに入っていくと、過去の思念や怨念が詰まったものが点在している。それらに触れると、その思念、過去の記憶を読み取ることができるんです。僕たちは『deep down』を“記憶を読み取るRPG(リーディングRPG)”と呼んでいますが、“感情を読み取る”、“過去の真実を知る”という本作の目的が、この言葉に集約されていると思います。

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――『deep down』はオンライン専用ゲームとのことですが、本作ならではの楽しみは、どんなところにあるのでしょうか?

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小野 おっしゃるとおり、『deep down』の根底にあるのは、オンライン専用ゲームですし、オンライン環境は必須です。先ほど、過去の真実を知ることがレイブンズの目的だといいましたが、その目的もまずは置いておいて、オンラインとは切っても切れない関係にあるPS4という新しいプラットフォームで、オンライン要素をどれだけ抵抗なく楽しめるかに期待してもらいたいです。カプコンは、これまで『モンスターハンター』や『ドラゴンズドグマ』など、オンラインで狩りができる・旅ができるゲームを発売してきましたが、これまで培ったノウハウを“オンライン”という部分に集約して、『deep down』を作っています。また、限られた時間の中でのプレイでも、できるかぎりテンポよく、楽しさを感じてもらえるように尽力しています。

――ほかのプレイヤーとは、いっしょにダンジョンに潜ることができるのでしょうか。
小野 はい。仲間といっしょにプレイして、「あのダンジョンからは、こういう情報が手に入ったよ」という情報を交換していくことで、なぜ特殊な力を持つ人が集められたのか、なぜ過去の時代を調査しているのかなど、『deep down』の謎が明らかになっていきます。

――ほかのプレイヤーとの関係がカギとなるんですね。
小野 とはいえ、『deep down』はソロでも遊べるようにしていますので、「オンラインゲームは敷居が高いな」と思っている人にもプレイしてもらいたいです。まずソロでやってみて、慣れてきたら、ほかのレイブンズたちといっしょにダンジョンに挑んでみてください。

――オンラインゲームに対して身構えてしまうプレイヤーでも、プレイしやすいものになっている?
小野 具体的なことはまだ言えませんが、なるべくプレイの障壁を少なくしたいんです。もし、これをお読みの方が、僕が作っているほかのタイトルをご存知であれば、「いつのまにかオンラインになってる!」という仕組みを思い浮かべるのではないかと思いますが、そんなステージを用意するつもりです。

――オンラインゲームといえば、発売後の運営についても気になります。
小野 “運営”や“継続”は大切にします。オンラインゲームは長く遊んでいただきたいので、そのための定期的なバージョンアップや大型アップデートをすでに予定しています。『deep down』は東京ゲームショウ2013に出展しますが、触っていただくと「今後、こんなアイテムや、あんな仕組みが増えそうだな」と感じてもらえると思います。その期待を裏切るつもりはありませんので、定期的に変化を感じてもらえるよう、開発・運営していきます。

――βテストの実施時期は決まっていますか?
小野 PS4が発売されてから、なるべく近いうちにやりたいなと思っています。期待していてください。

ゲームの世界への没入感を高めるさまざまな要素

――PS4での初めての開発はいかがですか?

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小野 PS4については、『deep down』の開発をスタートする前から研究を進めていたんですけども、研究初期のころから、“非常に手を出しやすい”、“かゆいところにすぐ手が届く”、“見せたい表現が、比較的早く実現できる”ということが見えていました。2月のカンファレンスで公開した映像も、作り始めてからかなり早い段階であのクオリティーまで到達することができたんです。このクオリティーで、たとえば60フレームをリアルタイムで動かすことも、比較的ラクに実現できそうだということが、それでわかったんですよね。いま開発中の『deep down』の映像は、「やるなぁ、カプコン!」と僕が思うくらいまでのものになってきたので、もっと時間をかければ、もっといろんなことができるんじゃないかな、と思います。PS4に関しては、満足しているというよりも、さらなる可能性を感じていますね。ソニーの皆さんが、やりやすい開発環境を作ってくださっているのもありがたいです。

――なるほど。では、『deep down』について、PS4のおかげで実現できたことを教えてください。
小野 『deep down』のウリのひとつとして、ダンジョンが入るたびに自動生成される、同じダンジョンに二度入ることはない、ということが挙げられます。自動生成といっても、完全なるランダムではなくて、ある規則性に従ったランダムなんです。PS4のスペックはPCにも引けをとっておらず、ダンジョンを生成するための充分なメモリ、生成したものをはき出す演算の速さのおかげで、この仕様が実現できました。

――この細部まで描きこまれたダンジョンが、毎回自動生成されるとは驚きです。
小野 ビジュアル面については、フォトリアリズムに近い表現をしているのですが、プレイヤーが持っている武器や防具の劣化、汚れも描画しています。先ほど言ったように、PS4は演算が速いので、装備のサビやカビ、汚れをテクスチャーで表現するのではなく、計算して反映させているんです。『deep down』の世界にある物体と、テレビの画面を通じて触れ合っているという感覚を味わっていただけるのではないかと思います。

――『deep down』には、DUALSHOCK 4のさまざまな機能を活かした仕様はありますか?
小野 DUALSHOCK 4にはタッチパッドがあったり、上のほうを見ればピカピカ光るものがあったり、耳を澄ませてみれば何か音が聴こえてきたりしますよね。いま、僕が述べた行動を、『deep down』のプレイ中でもリアルタイムにしていただく仕掛けを入れる予定です。ライトバーについて言えば、本作のテーマである感情の“色”を表現します。たとえば、いまプレイヤーがいるダンジョンの感情は、どんな色の感情なのか。ライトバーを見ていただくと、そこに答えがあります。また、レイブンズは過去の声を聴くことができますが、その声がテレビからではなく、コントローラからも聴こえてきたりして。このように、より『deep down』の世界に入っていける仕掛けを潜ませていこうと思っています。

――DUALSHOCK 4の内蔵スピーカーからの音は、実際に体験されましたか?

小野 はい。正直に言うと、もうちょっと大きい音が鳴ってほしいな、と思ったんですけど(笑)。ただ、コントローラの持つ要素、“震える”、“揺らせる”、“いじれる”、“触れる”、“見える”といった要素の中に、“聴こえる”が入ったことで、コントローラだけでも、何かに触れている感触が強く感じられるようになったと思います。プレイする人の没入感を高めたい、ストーリーに興味を持ってもらいたいというときに、非常にいい役割をしてくれていますよ。

――プレイヤーは、『deep down』の世界にどっぷりハマれそうですね。
小野 そうですね。この世界に没入してもらいたいので、できるかぎりシームレスにプレイできるようにしていますし、ソロプレイからマルチプレイ、マルチプレイからソロプレイへの移行もできるだけ自然にしたいと思っています。PS4は、ネットワークにつなげるということが、ハードウェアの設計の根底にあるので、“意識せずともオンラインの要素を体験できる仕様”を作りやすくなっているんです。

――PS4といえば、PS Vitaとの連動も見どころだと思いますが、本作はPS Vitaのリモートプレイには対応していますか?
小野 PS4とPS Vitaの親和性が、PS3とPS Vitaの親和性以上に高くなるのは、大きなポイントだと思っています。PS Vitaを手に、くつろぎながらゲームをプレイできるリモートプレイには対応する予定です。それ以外のPS Vitaの使いかた、また、スマートフォンやタブレットの使いかたについても考えていきます。楽しみにしていてください。

PS4は、違和感なくエンターテインメントライフに浸透してくるもの

――気の早い話ですが、『deep down』のリリース後、小野さんはPS4でどのようなゲームをリリースしていきたいと考えていますか?

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小野 そうですね、「なんで小野が『deep down』なんだ?」と思っている方も少なくないと思うのですが、そんな皆さんの期待に沿えるものもPS4で出したいなと思ってます。それが来年なのか、再来年なのかはわかりませんが、早いうちに出したいですね。

――それは『ストリートファイターV』と思っていいのでしょうか?
小野 いや、『ジャスティス学園3』かもしれません(笑)。

――(笑)。小野さんは、PS4というハードを、どのように見ていますか?
小野 PS4に関しては、国内外のいろいろな方がコメントしていますが、「すごく作りやすくなって開発が早くなった」という人がいる一方、「いや、いろいろなことができるから、まだまだ開発に時間がかかる」という人もいて。僕、これは全部正解だと思っているんですね。やりたいこと、表現したいことに比較的短い時間で到達できるのは確かです。ですが、貪欲に追求していけば、やはり時間はかかります。新エンジンの開発チームは、「小野さん、時間があれば、もっとできますよ!」と言っています。どこまでスタッフが追求していくかによって、PS4から異なる答えが返ってくる。やれることが増えた分、やることを見定めないと、ずーっと作り続けられるハードだな、というのが、僕のいまのPS4への感想ですね。

――そのPS4の可能性を、ゲームを遊んでいるときに、プレイヤーが感じることはできますか?
小野 プレイヤーの皆さんにとっては、「PS4がこれだけのスペックだから、この機能があるから、こうなんだ!」と思うのではなく、自然とコンテンツを楽しめる、そんな状態になると思います。違和感なく、皆さんのエンターテインメントライフに浸透してくるものだと思いますね。

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