『新生FFXIV』は本日より正式サービスを開始

 本日8月27日の正式サービスインに先駆け、『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』(以下、『新生FFXIV』)のプロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏を取材。現在の心境やゲームのコンセプト、中身についてなど、サービス開始にあたっての、胸のうちを語っていただいた。

『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』吉田直樹氏インタビュー ── 山の頂に『新生FFXIV』の旗は挿せたと思います_01
▲「ぜんぜん終わった感がないですね。前日まで調整は続きますし、運営も始まりますし」と吉田氏。取材当日の朝にこの巨大なMMOの全チェックを最後まで終わらせたとか。

『新生FFXIV』のコンセプトは“ハイファンタジー”

──あらためて『新生FFXIV』の世界観のコンセプトを教えてください。
吉田直樹(以下、吉田)氏 ハイファンタジーです。これは『FF』シリーズのなかでもひさしぶりだと思うので、設定も細かく複雑に、かなり作り込みました。『FF』シリーズは単語も造語も多く、組織もたくさん出てきますが、いまの時代、どうしてもプレイヤーの皆さんの選択肢が多いため、最近の非オンラインゲームのクリア時間を短くせざるを得ません。すると語りきれない部分がどうしても出てくるんです。それがMMOだと、ゲームのボリュームが膨大だし、遊びのフィールドがとても広いので、そのひと拠点やひと集落、周辺にあるものすべてをストーリーのなかに入れ込み、メインストーリーを作り上げました。テキストを読むのが面倒な方は、サブクエストを読み飛ばしてメインクエストだけ追っていても、話がわかるようにしています。逆にサブクエストの一字一句を読み進めると、いろいろなことがわかります。物語の舞台エオルゼアはひとつの世界のように聞こえますが、じつは世界にある地方のひとつでしかなく、そこには6つの強大な都市国家があります。スタートの3つの都市国家に加え、イシュガルド、アラミゴ、シャーレアン。それぞれに理由があって、国をなくして流れてきた人たちが世界中でどういう扱いを受けているか、その扱いも地域によって異なります。世に出ている人もいれば、ずっと疎外感に苛まれている人もいる。世界観は冒険するうえでテンションを上げる重要な要素だと思っているので、冒険者として旅するなかで、エオルゼアという世界がたったひとつのキーワードで構成されているわけじゃないということを感じ、楽しんでほしいですね。そこは『FF』シリーズのナンバリングタイトルであるからこそ、いちばんプッシュしたいところ。あらゆる部分を徹底して作ったつもりです。『新生FFXIV』にも、単語や造語、組織名などが出てきますが、重要なものはくり返し登場するので、きっと覚えていただけると思います。

『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』吉田直樹氏インタビュー ── 山の頂に『新生FFXIV』の旗は挿せたと思います_02

プレイヤーの目標は、シンプルで掘り下げると深く

──『新生FFXIV』の当面の敵、プレイヤーの目標となるものは何ですか?
吉田 3つあります。まずは『新生FFXIV』では蛮神と呼んでいますが、『FF』の世界でいう召喚獣。その存在と、召喚獣との直接的な戦いというのがいちばんわかりやすい目標ですね。ついでエオルゼアを侵略しようとするガレマール帝国という存在があり、このふたつが敵なんだと思っていただければいいです。そして、その両者のあいだで暗躍しているかのような黒いフードの、いかにも敵という感じのキャラクターたちがいます。"天使い"という存在ですが、それがどうストーリーに絡んでくるかに注目していただければと思います。ガレマール帝国がいるので戦おうと思ったら、一方で神様が降りてきたので倒さなきゃ、というのがプレイヤーの直面するわかりやすい話。こいつらを影で操っている奴らがいるっぽいなぁ、と柱になるストーリーはとてもシンプルにわかりやすく作りました。ですが、ひとりひとりのキャラクターの掘り下げもしたつもりでいるので、それぞれの要素に人の思惑が絡んでくると、「これは深いかも」となるはずです。

──『新生FFXIV』のシナリオをβテストで見たところ、大人向けの深い物語が語られていますね。
吉田 ふつうに考えつきそうなことはふつうに入れ込みました。上辺はきれいにした部分もありますが、貧民街に死体のひとつも転がっていないのは、おかしいだろうと考えたり。

──βテストでプレイしたなかでは、グリタニアの街で、冒険者のNPCが婚約者の○○を持ち帰る話が心に残りました。
吉田 そのへんは手を抜かず、隠していないです。わかりやすさは大切にしたつもりで、メインストーリーはとてもわかりやすいはずです。単語を覚えていなくても、こいつらは悪いやつだから倒せばいいというのがわかるようにしてあります。βテストフェーズ3公開範囲後のシナリオでも、サブクエストは単純な勧善懲悪ではありませんね。メインストーリーではこいつらが悪そうだとありますが、サブストーリーでは錯綜していますよ。こいつはいいやつだけど、相手からしてみれば親の敵だとか、過去の英雄が出てくるけど、絶対に協力しない理由がいろいろあったりとか。そこらへんは僕が松野(泰巳)さんのファンであるのもあるし、松野さんに鍛えられたスタッフたちが、いまシナリオをやっていることもあって、かなりメリハリがついています。

間口は広くでも最後は先鋭化して

──クラスとジョブという概念が『新生FFXIV』にはありますが、このコンセプトを聞かせてください。
吉田 何の前知識もなくゲームを進めると、ジョブという言葉はゲームにいっさい出てこないので、最初にゲームシステムを語るとちょっと違うなと思うんですよ。ジョブは単なるモードチェンジ。今回クラスは19種類からスタートしますが、それらがベースになっていると思ってもらえればいいです。レベルを上げていったとき、ジョブクエストが発生すると、より先鋭化して戦わないかい? と尋ねられるだけのこと。クラスはいろいろなクラスの性能を少しずつ持ち寄って汎用的なプレイができるぶん、ひとつのことを極めようとしてジョブという選択肢を選んでもいいよということです。ソウルクリスタルを外せばすぐクラスに戻れるので、ジョブという着ぐるみを上から着たり脱いだりしながら、その日暮らしをしてくださいということですね。

──そもそものアーマリーシステムのコンセプトはどういったものだったのでしょう?
吉田 従来のオフラインのRPGでは、ひとりでパーティを扱いますよね。MMORPGというのは、あれをひとりずつのプレイヤーが担当したらおもしろいんじゃないかという、シンプルな発想なんですね。1キャラクターは1ロールというのがずっと続いてきたのですが、『新生FFXIV』では、ひとりのキャラクターが途中で職を変えてもいい、だったらぜんぶできるようにしたほうがいいという考えが根本にあります。それがアーマリーシステムの正体。別のクラスをやりたかったら、別のキャラクターを作り直して1から挑まなければならないわけではなく、その日気が向いた職業を務めあげてもらえればいい。MMORPGって、むしろコンビネーションを取るときにほかのクラスの知識があったほうがいいんですよ。海外のレビューを読んでいても、その日暮らしで職業を切り替えられることが、新鮮な気持ちで遊べていいという話が多いです。ジョブに関しても、ソウルクリスタルを手に入れてジョブになったから
といって、裏でクラスのレベルも育っているので育て直すわけではない。少しほかのクラスを試してみて、やっぱりレベルが低いからつらいと思ったら、すぐほかのクラス・ジョブに戻せる。今回はレベルシンクもありますので、レベル差があっても幅広いコンテンツが遊べます。たくさんの人と世界を共有するという意味では、間口は広く、でも最後は先鋭化したジョブで強大な敵にみんなで立ち向かう。先鋭化するロールも、「今日はヒーラーがいないから僕がやるね」という振り替えができるのは、ひとつの大きな利点だと思います。『新生FFXIV』は好きに遊んでいただけるゲームになっていると思うので。

──いろいろできますよと言うと、ぜんぶやりたくなりますよね。そのとき、一方が上がれば一方が下がる、いわゆるシーソーになるような要素は?
吉田 いまの時点ではありません。将来的に、二者択一なのでどちらかを選んでください、というジョブはないとは言いませんが。ただ、その二者択一がいまの世代に合うのかなと考えています。そういう話をしていると、開発のポリシーはどこにあるのかという話になるのですが、ポリシーは長くたくさん遊んでもらうことにしかないので。二者択一が苦しい不幸な世界を作ってもしかたがない。シナリオで思い悩んでもらうのはRPGなので僕らが提供するものだと思っていますが、プレイスタイルにそれは求めません。現実にも悩みはいっぱいありますよね。ゲームに求められるものが世代によって変わっているとは思います。僕はシビアなものが好きですが、全員がそうではないと思っているので、そのバランスは悩みながら間違えずに進めたいと思っています。エンドコンテンツはひどくシビアなので大丈夫です(笑)。

──バトルについてもう少し。通常のフィールドを徘徊している雑魚モンスターとの戦いは一瞬ですね。ボス戦とのメリハリはどう作るのでしょう。
吉田 フィールドの敵との戦いは、時間で指定しています。同レベル、装備が揃ってない状態で戦った場合は20秒と言っていて、装備が整っていたら12~15秒で倒せるというふうにバランスを指定して作っています。サブクエストで、5匹の敵を倒してこいといわれたときに何分かかるか。1クエストあたり9分という時間を設けていて、レベル50の上限までの総プレイ時間を決めると、おのずとクエスト数とバランスが出てきます。これは最終的にプレイ感に関わる大切な部分なので、絶対にブレさせてはいけないところ。パーティを組んだ場合、連携が悪くて全滅するなど、不測の事態も起こるわけですよね。リアルタイムだからこそ、ひとつのモンスターで苦労などしたくないし、ひとつのボタンを押すだけのゲームに慣れている人も多い。パーティプレイをしたときに、プレイヤーには自分の使えるアクションを覚えていてほしいんです。だから、自分の強さが気持ちよくなる設計にしています。同じ強さのモンスターを6連続で倒そうとすると、だいたいTPが枯渇したり、HPがなくなったりするので、そこで1分くらい待つ状況になるようにしています。

──すべてはテンポ感のため?
吉田 そうですね。飽きないようにと、疲れすぎないように。後はゲームの寿命をビジネスとしては考えないといけない。クエストが何個足りないか、というときも計算が成り立ちます。F.A.T.E.で得られる経験値は全体の何割、ギルドリーヴは何割と。ギルドリーヴは最初のクラスをレベル50にする経験値のうちに含めていません。1クラス目はF.A.T.E.と討伐手帖とクエストだけでカンストを想定しています。2クラス目からF.A.T.E.とギルドリーヴが入ります。ダンジョンすら入れてないくらい。ただ、ダンジョンを1回まわる時間はクエスト何個分だから、そのダンジョン内で得られる経験値はここまでといううえで成立しています。

──ほかの遊びとの時間の取り合いが前提にある。
吉田 そうですね。ゲーム機を起動して、ゲームに入るまでで10分くらいかかるのは、しんどいと思うんですよね。コンテンツファインダーでどこからでも飛べるのはそれを考慮していますし、開始して30~40分で刺激が得られないと、続けてくださらないと思うので。4人攻略のダンジョンだったら40分。中ボスを倒すとショートカットが開き、リトライするときはそれを使えばいい。移動だけのムダな時間にならず、満足感が得られるようにしています。

──遊園地のアトラクションのように緻密ですね。
吉田 ファストパスを使う人と使わない人がいていいと思うんですよ。並ぶのが楽しいじゃん、という人もいると思います。でもそれはひとりではないから言える。逆にひとりでも遊園地を楽しみたい人は、行ったからには少しでもその世界を楽しみたいから、ファストパスを使っていろいろなところを回るんですよね。でもお昼くらいからアトラクションには立ち寄らず、歩いて雰囲気を楽しんでもかまわない。手段はいくつあってもかまわないんです。

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山の頂はつねに作り続けなければ

──以前、開発過程を山登りにたとえて質問していますが、『新生FFXIV』正式サービス開始は、吉田さんが手掛け始めてから、山にたとえると何合目に当たるのでしょう?
吉田 ひとつの山というより、山を変えていくという表現のほうが正しいと思います。僕はプロデューサーである以前に、どちらかというとディレクターですし、開発の人間。皆が道に迷わないように、山の頂上をつねに作らなければと考えています。僕らが2.0と呼んでいる『新生FFXIV』の、αテストの山。βテストフェーズ1という山。βテストフェーズ3というかなり高くなった山。βテストフェーズ4という山。2.0ローンチという山。想定した2.0ローンチの頂上には登ったし、むしろよく登ったなという感じがします。想定していたものより、エンドコンテンツもかなりの量がある状態でスタートできるので、2.0の山の頂に『新生FFXIV』の旗は挿せたと思います。ただ、「つぎの山はこっちだよ」とパッチ2.1の山を指し示し、まだ頂がはるか遠くに見える3.0と呼んでいるエクスパンンション(拡張ディスク)の山を指しつつ、「つぎはあの山だから。それにはこの山を越えていかなければならないから」という話をしないといけない。でも、そういう意味では着実に進んでいますね。

ユーザーインターフェース(UI)に対するふたつの考えかた

──とにかくUIでこだわったポイントは?
吉田 MMORPGは、情報量の多さを避けて通れないゲーム。なのでUIを作るときに考えかたがふたつあります。ひとつは表示を極力排除して作るというものと、もうひとつはMMOである以上、絶対に情報量が多いから、これをいかに見やすく、フレキシブルにカスタマイズできるようなものにするかというもの。こうした大きな分岐が出発点にあったのですが、僕は後者を選んだんです。それは国産のMMOで、世界と戦えるユーザーインターフェイスを持つものがまだないと思ったので。だからまずはしっかりとしたものを丁寧に作ろうと。『新生FFXIV』はカスタム性を高く、レイアウトも変更可能にして、表示したければ表示して、不要だったら消せばいいというスタンスにしました。どうやって最低限のUIからMMOの世界になじませられるか、シンプルなデザインに落としたうえで『FF』らしさをどう損なわないようにするか、そういう部分に気を配りました。とくにPS3で家庭用ゲーム機から入ってくるゲームパッドのお客さまが、どこまでマウス&キーボードと分け隔てなくプレイできる状態を用意するか。クロスホットバーという発想がなかったら、こんなにスムーズにいってなかったと思います。バトルログを観なくてもいいようにフライテキストを採用して、画面の中央を見ていればゲームができるようにしようということは最初に決めました。後はどこまでこだわるかですよね。このオプションの数は、本当にギネスに申請しようかという感じです(笑)。

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ギャザラーとクラフターの位置付け

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─製作と採集はどういう位置付けでしょう?
吉田 『FF』の最新作である以上、まずは戦って世界を救ってほしいです。真っ直ぐにストーリーを楽しんでもらいたい。よちよち歩きの人もいれば、超絶猛者の人もいると思いますが、世界を脅かす存在に対しては打ち勝ったなと思ってもらいたいですね。そのかたわらで、人のために物を作ったり、人のために経済活動したりという方法はたくさん置いてありますが、その世界から職業がひとつでも欠けると世界が成り立たないというふうにしてしまうと、いつものRPGしか知らない人たちがこの世界に入ってきたときに、「剣が欲しいけどショップがない。でもどこにも売ってない」というように、何もできなくなります。ダンジョンに行ってもよくわからないアイテムしか出ず、敵には勝てない。で、ある日、「自分で作るか、ほかの人から買うんだよ」と言われる。そんなの初心者の方はわからないですよね。MMORPGを遊んだことのない人は、チャットすら怖いと言っているのに、これでは続けられない。これが『FF』でなければ、最初からそういうゲームです、それが楽しめる人たちだけ来てくださいと言えますが。ですから僕は、レベル35を過ぎるくらいまでは店売りで、1クラス目カンストまではほとんどの装備がクエストやダンジョンで揃うようにしました。強い敵と戦いたい、ダンジョンに行きたいという動機はアイテムが手に入るからです。なぜアイテムを手に入れたいのかは、強くなりたいからですよね。少しでもいいものを着て、誰かに見せびらかしたい。それこそがオンラインゲームの根本なので。1クラス目まではそれでもいいという設計ですが、ほかのクラスをやり始めたとき違ってくる。誰かから買ったほうが早くないかと。そのころにはゲームに慣れているはずです。レベル40くらいになって、ジョブクエストに挑んでいるとき、ほかのクラスも当然レベル15くらいまでは上げないといけないので、1クラス目で貯めたお金もあるから、もちろんお店から装備を買ってもいいですが、お店に揃っているものは地味だったりする。1クラス目をやっていれば、あそこはあのアイテムがあったほうが早い、買おうかという発想が出る。そこを見越してほしいんですね。もしギャザラーやクラフターで経済を牛耳ってやるぜ、と思っている方は、1クラス目ではなく2クラス、3クラス目に需要があると思ってくださればいいのかなと。この手のことは市場の独占のヒントになってしまうので、フォーラムではいっさい言っていません。僕はよく生産・採集系に興味ないだろうと言われますが、僕がいちばん考えているし、大切さは知っているつもりです(苦笑)。なぜバトルを大事にするのかというと、そこが最大の消費活動だからです。そこでモノが消費されないとアイテムが回らない。だからこそどんどんバトルをしてもらうゲームにしないと、経済が停滞するんです。「クエストやダンジョンでアイテムがもらえたら、クラフターやギャザラーはどうやって生きていくの?」と言われます。ですが、生きていく道はそこじゃないはずで、こればかりはプレイしてもらわないと感覚がわからない。でも、需要は生まれてくるので、だんだんとわかっていただけるんじゃないかなと思います。そういう意味だと、データが削除される前提で、レベル35で制限されていたβテストフェーズ3では、それは感じられないと思います。

ソロプレイとコンテンツファインダー

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──ひとりでも遊べますか、と尋ねるお客さんがいると思いますが、どんな返答をなさいますか?
吉田 ある程度はひとりで遊べますと答えます。ただ、パーティを組まなければクリアできないシナリオもあります。ですがそれは、システムが勝手にプレイヤーをパーティにする仕組みがあるので、気にせずにいていいですよと。それでもパーティに抵抗のある方は、コンテンツファインダーでマッチングしたキャラクターはほとんどNPCだと思ってください。「こんにちは」、「よろしく」、「おつかれさまでした」程度の最低限の基本的な挨拶をすればいいし、それを狙っていたので。パーティを嫌っていた人たちからしてみれば本当に楽だと思いますよ。あの気楽さだからこそファインダーを使って、そこで「パーティプレイはおもしろい」って思っていただければと。それを感じる手前で脱落してしまう人々がいるわけで。でも、なかにはおしゃべりな人との出会いもあるんですよ。たまたまその日はおしゃべりな人に会って、最初は面倒だと思ったかもしれないけど、怖い人ではないなと感じる。その人がつぎにマッチングしたところで自分から声をかける。いちばん最初に「よろしくお願いします」と言うかもしれない。そこで初めてだった人が挨拶をする。そうやって、皆がちょっとずつオンラインゲームでのコミュニケーション能力が上がっていく。だからこそ、目的リストに書いてある、ダンジョンの中ですらいちばん最初は会話なんてなくていいんです。あれはパーティプレイではない、ソロですと。それくらい気楽にしたつもりです。

──大切なのは機会があるということですね。
吉田 以前のインタビューでもずっとお話をしてきましたが、コンテンツファインダーはソロの延長でしかないと。でもあれがあるからこそ、毎日ログインしようという人がたくさんいると思うので。ひとりでクリアできないんですかと言われたら、「ひとりではできません。でもほぼひとりでできます」と答えます。まずは試してみてください、ゲームもお求めやすい価格なので、という言いかたをします。

──βテストフェーズ4から、コンテンツファインダーの仕様が変更されていますよね。
吉田 単純にファインダーでマッチングされたときにそれぞれのプレイヤーの進行度を見て、準備が整った瞬間にダンジョンの中に全員入りますよね。そのときに中央に大きな文字で、"このコンテンツを未制覇の方がいらっしゃいます。クリア時にはボーナスが付きますのでがんばりましょう"というようなメッセージが出ます。それをきっかけに「初めてなのは僕です」と言ってもらえれば気が楽になると思うので。

──パーティ必須のコンテンツにはすべてファインダーが入りますか?
吉田 ほぼ入ります。バハムートだけ外したほうがいいかなという話をしている程度ですね。討滅戦もファインダー対応にしてあります。だから、僕らのバランス調整時の合言葉は「ファインダー対応だぞ!」です(笑)。

The Lodestoneの役割と機能の拡充

──公式SNSとなるThe Lodestoneの今後の役割と機能拡充についてお聞かせください。
吉田 基本的にはプレイヤーのコミュニティをサポートしていく機能プラス、データベースサイトとしての役割が大きいです。理想はゲームにログインしていないとき、出先からほかのプレイヤーは何をしているか、自分のキャラクターはいまどうだったか、などを確認したり、ほかの人の冒険譚を見たりできるというもの。それを通じてコミュニケーションやコミュニティが広がればいいな、というのがひとつめ。できるだけ、ゲームをログアウトしてから何かを書くのではなく、ゲームのなかでこれはネタにしたいと思ったものをどんどん反映して、ログアウトしたと同時にその日に自分が上げたかったものが上がっていて、確認することなく寝て、それをネタに朝起きたら皆からコメントが付いているというのが理想ではあります。

──その実現までにどれくらいかかりますか?
吉田 そんなにかかりません。もともとそれを目指して計画していたので。だから『旧FFXIV』のThe Lodestoneの日記機能が消えたといいますが、逆にゲームからどんどんアップできるようにしているので。インゲームからTwitterとFacebookとThe Lodestoneに直接アクセスできるようにする。そうすれば1個の言いたいことを労力ひとつで3つに送れるんです。そのためには日記という機能を複雑化するよりも、機能を簡便にして、ゲームとの連動性を高めたほうが利用率が上がるので、結果的に閲覧数が上がるという見かたをしています。もうひとつはデータベースですね。多種多様なwikiがありますが、弊社にデータベースがあるので、外部のサイトをまとめている方も、うちのタグを入れてくれればそのままデータが転用できます。ダンジョンの攻略記事は書けるようにしているので、そこはプレイヤーの皆さんでわいわい書いていただけたらなと。

PC版とPS3版そしてPS4版

──PC版とPS3版でいちばん気をつけたことは?
吉田 ゲームの体験に差を出さないということです。PCではこれができるのに、PS3ではやりづらいなどですね。パーティを組んで、別のマシンからでも同じサーバーでゲームをする以上、優劣が付くとは思います。グラフィックの優劣だけはどうしようもありませんが、ユーザーの体験の差を生まないことだけは気をつけました。とくに重要なのはコンテンツにおいて差を生まないこと。ダンジョンへ行っても、8人のコンテンツになっても、アライアンスレイドと呼んでいる24人のコンテンツでも、プレイをできることを保証するのが絶対条件だという話をスタッフにしていて、このマシンだからこれでいいだろうという話はいっさいしていません。

──PS4版の動向を気にしているユーザーには?
吉田 ゲームの画面クオリティは基本的にPC版と同じレベルになります。後はPS4独自の機能の対応がありますが、やはりゲーム体験に差は出さないように注意しています。コントローラに付いているタッチパネルはマウスと同じような挙動をすると思いますが、お楽しみにしていてください。

サービスインのその後と吉田氏のアタマの中

──先のことはどのくらいまで吉田さんの頭の中にあるんでしょうか?
吉田 3.0スタート時点のざっくりとしたものまでは僕がプロットも書いたので、計画が立っています。パッチ2.Xのラストでこんな衝撃の展開を迎え、エクスパンションへ続くというもの。第七霊災というものがあっていまの『新生FFXIV』があるように、いまの『新生FFXIV』があって、つぎの展開があります。ほかのタイトルがやらないような驚きを仕掛けるのが『FF』らしさのひとつだと思っているので、つねに驚きをプレイヤーの皆さんに味わっていただきたい。開発からも「えっ!?」という反応をされたプロットだったのでご期待ください(笑)。あくまで2.0はひとつの大きな区切りではあるものの、始まりでしかない。もちろんエンドロールを観た後もエンドにつながるストーリーはあるので、そこをまずは楽しんでください。「このゲームはまだまだ終わらないんだ」という感触をまずは持ってもらえればいいのかなと思います。

──生きている世界が続いていくんですね。
吉田 そうですね。与えられた物語をプレイするというより、ドラマじゃないですが「どうなるの、この展開」というものをつねに提供したい。しかもプレイヤーの皆さんが取った行動がエオルゼアの歴史を紡いでいくという感覚。つまりライブ感は引き続き大切にしたいなと思っています。

サウンドに関してもMMORPG史上最高だと思います

──サウンドへの指示はどんな方向性を?
吉田 ただ鳴っているのは止めようと。長時間遊ぶゲームだからこそ、音がないときも必要だと。僕らの生活には、BGMがないときのほうが圧倒的に多いですし、ハイファンタジーでモンスターが徘徊している世界なので、環境音だけで怖さを感じる状況も大切だと思うので。音はその場で行われている何かを盛り上げるために必要なもの。それをコンセプトにやってきて、いい結果になりました。ですが、そうは言っても状況に合わせた曲作りは必要で……。ふつうある程度は曲に汎用性を持たせますよね。ところが1ショット1シーンの曲が多いんです。サウンドディレクターの祖堅(正慶氏)に、「俺の作れって言った曲数じゃないじゃん。もっと汎用化して、ゲームとマッチしているか確認を」と言っているのに、勝手に曲数を増やしてきて、僕の前で「こんな時間のないきびしいプロジェクトは初めてだ」と言うんですよ(笑)。言うだけ言って「俺は曲を作るだけ。吉田さんがプレイして合うか合わないか判断してくれ」というテンションで戻っていく(笑)。できた曲に関してはMMORPG史上最高だと思いますね(笑)。こんなに極まったものもないと思います。

吉Pが巴術士、召喚士、学者を解説

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──巴術士はヒーラーではないのでしょうか?
吉田 ケアルではない回復魔法を持っていますがDPS(※1)です。カーバンクル・エメラルドは、キャスター系のペットなので巴術士ともども魔法を使います。一方、カーバンクル・トパーズは完全にタンク。ペットを召喚すると、EXホットバーというペット専用のバーに12個のアクションが表示されます。ペット用のバーにあるアクションのうち4つが、ペットの使えるアクション。"フリーファイト"を使っておくと、カーバンクルがアビリティを選んで攻撃します。"セミオーダー"にすると、プレイヤーがオーダーできます。たとえば、イベントバトルで帝国兵3人に襲われたとき、「トパーズの輝き」でまとめて敵視を取ってもらうなどはセミオーダーでできます。"ピース"にしておくとプレイヤーが命令しない限り絶対に手を出さない。"インターセプト"にしておくと、プレイヤーが戦闘を開始するか、ペットが敵に敵視されると、反撃を開始します。巴術士自身はDoT(※2)が戦いの軸。たいがいは即時発動される毒であるバイオで始めます。それからバイオラ。これはバイオと別にかけられます。しかも継続時間が違うので、まず全種類の毒を効かせ、その後、キャストのあいだにエナジードレインをかけ、ダメージを重ねながら、さらに毒を放ちます。スペルは上書きすると効果時間が延びるので、つねに相手を毒漬けにして、敵が多数いるようなダンジョンでは最後にベインを打つと、周囲にそれまでにかけたDoTの効果がばらまかれます。これが巴術士の戦いかたの基本。いままで経験したことのない戦いかたをするクラスになります。

──なかなか難しそうですね。
吉田 ですが巴術士レベル1だと、カーバンクルの召喚すらできません。まずはルインというダイレクトダメージの魔法で魔法の打ちかたを覚え、街でレベルを上げ、街の外でモンスターをたくさん倒して街に戻るレベル4でやっとサモン(召喚)を覚えます。そのこには、魔法の使い勝手を覚えるはずです。そうしてひとつずつ覚えますが、カーバンクルがかわいいから使いたいという動機で始めると、ペットとふたりで一人前ですから困惑するかもしれませんね。ただし、シナリオのバトルを進めるのは敵視をぜんぶペットが持っていくので楽です。ペットの体力が減ってきたら、ペット用のリジェネをかけておく。緊急時はフィジクで回復してあげて、敵が巴術士自身に来ない程度のDoTをばら撒き、最後にベインを放てばいい。

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──召喚士と学者はどんな戦いかたなのでしょう?
吉田 巴術士の攻撃を特化させたのが召喚士。タンク、近接DPS、遠隔DPSの3種類のペットをコンテンツによって使い分けることが必要です。このダンジョンはスペルのほうがDPSを稼ぎやすいと思えば、ガルーダを。ここはタンクが欲しいと思えばタイタンを。近接DPSならイフリートですね。学者はDoTを放つところまではいっしょですが、ヒーラーなので回復がメインです。学者の回復魔法はHP回復効果に加えて、ダメージ吸収効果のバフ(※3)を付与できます。また、陣が組めます。グランドにサークルを作り、その中にいる人に被ダメージ低下などのバフをかけられる。だから、タンクやDPSが戦っている中心に陣を設置し、自分は外から支援する。陣と呼ばれる場を作り、指揮をしていくという考えかたです。


※1[DPS] Damage Per Secondの略で、1秒あたりに与えるダメージ量の意味。吉田氏は、このDPSで高い数値を叩き出せるアタッカーをDPSと呼んだり、ダメージ量そのものの意味で使用したりしている。ダメージを叩き出すアタッカーは、別にDD(ダメージディーラー)と呼ばれることもある。
※2[DoT] Damage over Timeの略で、ある程度の時間に渡って、継続的にダメージを与え続けるものを指す。吉田氏の話のなかでは、バイオがそれに相当し、毒の影響によって、食らったキャラクターはじりじりとHPを削られることになる。
※3[バフ] Buff。キャラクターを強化する魔法やスキルおよび、強化する行為そのものを指す。プロテスなどが該当。反対語はデバフ(Debuff)。

『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』吉田直樹氏インタビュー ── 山の頂に『新生FFXIV』の旗は挿せたと思います_09

(2013年8月1日収録)