「最高のゴールの興奮を感じるために」新たなステージへ向けて大改革を行った『FIFA 14』プレイリポート&インタビュー【プレE3】_10
▲E3前に来日していた牧田氏。『FIFA』シリーズを統括する。

 毎年進化していくエレクトロニック・アーツのサッカーゲーム『FIFA』シリーズ。E3を前に今秋発売予定の最新作『FIFA 14 ワールドクラス サッカー』の最新デモをプレイし、シリーズエグゼクティブプロデューサーの牧田和也氏にインタビューする機会を得たので、その模様をお届けする。

 なお、プレイしたバージョンは「まだ60%の完成度」(牧田氏)とのことで、プレイヤーがパスを受ける際や、ボールを追う際の判断などに若干の鈍さが感じられ、思ったようにボールが回せず若干フラストレーションを感じる部分もあった。
 しかし本作では、後述するようにとても基礎的な部分にメスを入れているため、詰めの部分はまだまだこれからというのはよくわかるし、これからのパラメーター調整によりクオリティーアップも当然するだろうとは思う(後半に掲載のインタビューでも対処可能とのことだった)。
 そこで本プレイリポートでは、冒頭で懸念を表明しつつも、そもそも今回『FIFA 14 ワールドクラス サッカー』が目指すサッカーとは何なのか、その実像に迫って行きたい。いやー、今回も新しい面白さがちゃんとあるんですよ!

ボール、身体の扱い、シュート……サッカーゲームが次のレベルに進むための新たな基礎

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▲前に出た長谷部選手の背後のスペースにパスが出る……。重心移動はサッカーの重要な要素だ。

 では、本作において大きく変わった部分とはどこか。まずはボールである。新機能の“リアルボールフィジックス”は、その名の通り、ボールを物理学的に扱うということ。
 そして“プレシジョンムーブメント”では、2年間の研究成果として、選手の身体の運動(ロコモーション)を再定義し、一歩一歩をちゃんと計算して、重心の置き方や、より正確な加速・減速などを再現しようと試みている。

 これは、サッカーの土台となる部分まるごとと言っても過言ではない。なぜならばサッカーは、動き続けるボールと自分の身体をどう合わせてどういうボールを蹴り出すかというスポーツだからだ。ボールをちゃんと扱い、身体をちゃんと扱い直すということは、サッカーというスポーツのシミュレーションを根本的な部分から練り直すということなのだ。

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▲ぐいっと前傾姿勢での走り込みや、低い重心での切り返し……。ちなみに急なターン自体はしにくくなるものの、ターンに入る速度自体は早くなっているそうで、プレイスピード全体への影響は確かにそこまで感じなかった(むしろ冒頭で説明したようなAIの反応の鈍さが気になった)。

 昨年牧田氏に前作『FIFA 13』についてインタビューを行った際、サッカーの“予想不可能”な部分をテーマにしたと語っていたが、今回の挑戦はさらに次の段階として、ゲームならではの都合をつけていた部分(どう考えてもプロがそんな撃ちにくいシュート選ばないだろとか)を変えていくために、こうした部分に手を入れたのではないだろうか。

実際、シュートが気持ちいい!

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▲左隅を狙う低い弾道のシュート!

 こうした根本的な部分からの変更は、サッカーの最高の瞬間に違いとなって現れる。それはもちろん、シュートとゴールだ。
 これまではシュート弾道が直線的だったところ(もちろんカーブなどのバリエーションはあったが)、本作ではシチュエーションに応じてさまざまな軌道を描けるようになっている。

 本作の新機能のひとつとして挙げられている“ピュアショット”は、プレシジョンムーブメントによって一歩一歩を正しく処理するようになったことによる産物だ。
 これまでのように強引に脚を合わせるのではなく、ボールの位置・距離・スピードにもっと合わせたシュートを行うようになっていて、これはもちろんリアルボールフィジックスによる弾道のバリエーションの増加とも密接な関係がある。

 実際プレイしてみると、ゴールに結びついた時の気持ち良さはすごくあって、シュートのバリエーションが増えたことにより、いろいろ狙ってみるのが楽しい。
 ボックス外からのシュートもスーパーミドルでなくとも以前より入るようになっていて(ただこれもゴールキーパーのAIがこなれると変わるかも)、シュートを打てば何かが起こるかもしれないという期待とともにプレイできた。

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▲振り抜いた強烈なシュート、小さな振りのこすり上げるようなシュート、GKのタイミングを外して脇を抜いていくシュート……。

 ちなみに空中戦で出るモーションなども増えており、サイドからのフリーキックを走り込みながら飛んで打点の高いヘッドで叩き込めた時には思わず声が出てしまった(さらについでに、ハーフタイムや試合後のリプレイ中に選手名が出るようになったのがとてもいい感じ)。

もちろん競り合いも進化

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 とはいえ、もちろんミドルシュート天国になってしまったというわけではない。本作では全体的にディフェンスがオフェンスとの距離を詰めるようになっており、そもそもそう簡単にスペースが空くわけではないのだ。

 ではどうするかと言うと、ドリブルから切り崩していくのもひとつの手。“スプリントドリブルターン”(スプリント状態から自由な角度にターンできる)、“バリアブルドリブルタッチ”(スプリント中に多彩なボールタッチができる)といったドリブルの新機能を、右スティックだけで出せるようになったスキルムーブと組み合わせれば、一気にブチ抜いてこじ開けることもできるだろう。
 あるいは、こちらもL2(左トリガー)で効果的に出せるようになったシールディングでタメを作ってから上がってきた仲間にパスを展開し、サイドチェンジなども交えつつスペースを作り出していくのもいい(記者はパスが好きなのでこっちが好み)。

 というかここから先はじゃんけんのようなもので、実は裏に抜ける選手へのスルーパス狙いとか、ミドルを警戒させつつドリブルで一気に抜きにかかるとかいろいろあるわけだし、ディフェンスもセカンドプレスでAIを突っ込ませつつ自分は裏のスペースを警戒したり、狭い所を抜けようとするドリブラーを引っ張って精度を下げたり、対抗策はそれなりにある。

 というわけでプレイした感想としては、新たなる挑戦を歓迎し、その方向性の面白さも認識しつつ、これが真価を発揮するのは発売までの期間のブラッシュアップ待ちかな、といった所。フラストレーションが溜まった部分は本当に、パスや50-50のボールにどこまで反応させるか/させないかといった部分で調整できそうな所がほとんどだったと思うので、年々シリーズを成長させてきたFIFAチームの力に期待したい。

インタビューで気になった部分を直撃!

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――トラップのミスやボールへの反応などに違和感があったのですが、そのあたりは今後の詰めで改善されていくということでいいでしょうか?
牧田 そうですね。その辺はチューニングで。AIの動きとかも細かいところまでできていないので。それとトラップのミスですね。毎年システムを作り直すたびにどうしても起きちゃうので、最後に潰していく。そういった辺りはチューニングで対処できると思います。

――リアルボールフィジックスの効果はすごい感じました。「ここでトップから落とせばミドル行けるかな」って所で打つと、いい感じに抑えられた弾道のボールが飛んだりして。
牧田 そうですね。リアルボールフィジックスでゲームの感覚はかなり変わると思います。トラップした時のボールの落とし方なども違ってきて、いろんなパターンを試していただけると思います。

――ヘッドを結構気持ちよく決められたんですが、モーション増やしましたよね?
牧田 増やしました。空中戦は結構弱くて、あまり飛ぶ選手も少なかったのですが、今回はもうバンバン飛ぶので計算できるプレイになっています。それにはやっぱりモーションを足さないと、いろんな角度からいろんなスピードでボールが入ってくるので、そこを埋めるようにしています。
――自分はガンガン決められたので楽しかったのですが、決められた相手にしてみれば「うーん」というところだと思います。空中戦でのディフェンスはどうなんでしょう?
牧田 ディフェンスとオフェンスのバランスって最後の最後までやるところなんですよ。いろんなところを潰していかないとそこに辿りつけないので。ゴールキーパーのバランスなども関わってきますし。なのでそこはまだ調整していきます。
 作っているとまずはオフェンスの方が強くなりがちなんですよ。その方がやっぱり遊んでいて面白いじゃないですか。そこから今度は(差を)潰していく。ディフェンスを強くしていくとか、オフェンスをちょっと弱くしていくといった調整をしていくのですが、まだ時間はあるので、ここから詰めていきます。

――体験版の予定は?
牧田 あります。まだ詳細は決まっていないのですが、そのつもりです。
――そのフィードバックもまた見て、また最後の確認をしたり。
牧田 デモを出す時はもう間に合わないことが多いんですけど、もうプレイテストをやったりはしているので、詰めは今からですね。

――プレシジョンムーブメント(手足や重心をどう置くか)とプレイヤーインパクトエンジン(どうぶつかり合うか)は相互に関係するのでしょうか。
牧田 そうですね。(選手の衝突時に)どういう判定をするかに関わります。

――雨のピッチの影響を結構感じたのですが、リアルボールフィジックスに雨は関係あるのでしょうか?
牧田 はい、それはもちろん物理ベースで調整できるようになっていますので。雨は雨なりにボールが滑りやすかったり止まりやすいところがあったりはできるようになっています。

――プレシジョンムーブメントで選手の個性は変わってきますか? 例えばラームは重心を低くして走るのでいつでも切り返していける感じがしますよね。
牧田 今回はそのへんがやりやすくなっています。あとはアニメーション(見た目上の動き)を調節すれば可能なので、できることはできるのですが、どこまで種類を増やすかという問題はあるので、ある程度のパターンでできるとは思います。

――パターンの中から、各国のリーグを見ているリサーチャーの人が「この選手はこのパターン」と判断していくと。
牧田 そうです、そうです。
――単に足が早い選手でもバリエーションが出てくるわけですね。
牧田 そうですね。走っている時にどれぐらい前傾するかとか、そういう調整もできるので、アニメーションとデータの調整で可能だと思います。

――次世代機で計算できるものが増えたりすると、観客がいろいろ増えたりするのでは?
牧田 (ニヤリとして)いろいろできると思います。

――日本人選手の固有フェイスは増えたりするのでしょうか?
牧田 まだちょっとどこまで入るかわからないんですよ。主要チームにいる選手はぜひやりたいですけどね。スキャンすることもあるんですが、チームによってはなかなかやらせてくれないチームもあったりするので。

――夏のマーケットは反映されるのでしょうか?
牧田 通常通り、8月のマーケットが閉まったものが発売時期には反映できるようにしています。

――選手の調子を反映するライブ機能などは入りますか?
牧田 いままでにあったものですよね。それは大丈夫です。