クリエイターインタビューを実施!

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 スタジオリポートの3回目は、Quantic dreamの創始者で『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』のディレクターを務めるDavid Cage氏と、チーフプログラマーのDamien氏、アートディレクターのChristophe氏へのインタビューを掲載しよう。

David Cage氏
Quantic Dream CEO兼 創設者
1997年にゲーム開発会社Quantic Dreamを設立。これまでに『Omikron: The Nomad Soul』、『ファーレンハイト』、『ヘビーレイン -心の軋むとき-』を手掛けてきた。現在は『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』のディレクターとして開発を進めている。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その3】_07

――まずは基本的な部分からうかがいます。『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』を制作するにいたった経緯を教えてください。

David Cage氏(以下、David) 『ヘビーレイン -心の軋むとき-』は、息子ができて父親になったという私の体験にもとづいて開発しました。同様に、今回の『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』も私の個人的な体験がベースとなっています。最近、親戚を亡くして初めて身の回りの人の死に直面し、インスピレーションを受けたことがきっかけです。

――ー主人公に少女を選択した理由はなぜですか?

David 主人公を女性にしたのは、マーケティング的な視点よりも私のインスピレーションによるところが大きいです。私は、女性キャラクターは男性よりも感情表現が豊かで、物語を描きやすいと感じています。今回の『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』では、ひとりのキャラクターの15年間を綴るという部分が大事だったので、女性の主人公ジョディがどのような困難に立ち向かい、どのように成長を遂げるのかに重点を置きました。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その3】_01

――本作では“成長”という要素が重要になるのですね。

David ええ。誰かの人生を追体験できるゲームというメディアは、『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』にぴったりです。本作はプレイヤーにユニークな体験を提供するでしょう。

――“15年間”という数字に特別な意味はあるのでしょうか?

David 実際にひとりの女性の人生すべてを語るとなると、とても長い時間が必要になります。『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』では、ジョディというキャラクターの人生の中で、意味のあるポイントをチョイスしていったら、15年間という期間になったのです。

――今回のスタジオツアーで実機によるゲームプレイが公開されました。長年暖めていたコンセプトが形になり、こうして世界に発信することができたことについて、どう思いますか?

David プレゼンテーションは始まるまでは、まるで我が子を送り出すような気分でしたね(笑)。『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』は多くの方に愛されるゲームになってほしいという思いを込めて開発していたので、記者の皆さんが実際にどんな反応をするか、すごく気になっていたのです。本作のスケールを考えると、さまざまなシーンがあるので、その中からどの部分をお見せするか非常に迷いました。今回メインで公開したのが、ジョディが都市でのホームレス生活を送るシーンですが、ここには『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』のエッセンスが詰まっていると思います。

――あのシーンでは、短い時間の中にいろいろな要素が凝縮されていて、言いようのない感情を味わうことができました。ネタバレを避けたいので具体的には言えないのが残念ですが、“いのち”の誕生にまつわるシーンがとくに印象に残っています。このシーンを表現した意図を教えてください。

David 生命と死というのはつねに隣り合わせで起きていることです。どんな環境でも“いのち”は芽生えるものだということ、何よりもまして“いのち”は大事であるということを表現したかったのです。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その3】_02

――“いのち”の営みと言えば、“愛すること”が思い浮かびました。ストーリーの中でジョディが恋愛したりすることもあるのでしょうか?

David 『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』は人生そのものです。人生には誕生、死、愛、諍いなどがつきものなので、『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』もそれらの要素が内包されていることでしょう。

――なるほど。楽しみにしています。ストーリーのほかに、ゲームの部分で気になったのが新しくなったUI(ユーザーインターフェース)です。ジョディがオブジェクトに近づくと白い点のみが表示され、プレイヤーが右アナログスティックを入力することで、ゲームが進んでいくというシステムが斬新に感じました。これはどのような経緯で採用されたのでしょうか?

David 新しいUIは、開発チームが一年かけて編み出したシステムです。我々はさまざまな試行錯誤の結果、理想的なUIにたどり着きました。それが今回の白い点です。『ファーレンハイト』では画面の余白に入力ボタンを表示し、『ヘビーレイン -心の軋むとき-』はそれを縮小しました。今回はさらなる省略を試みたというわけです。将来的には、画面にほとんど何も表示されず、流動的かつ直感的なUIを実現させたいですね。

――新UIによる操作には決まりごとはあるのでしょうか?

David 状況に応じたアクションを用意しています。たとえば、テーブルの上に水が入ったグラスが置いてあるとして、ふだんはグラスの水を飲むアクションになりますが、緊急時にはグラスを持って敵に投げつけることになります。

――新しいUIをどんな人に体験してもらいたいですか?

David 我々は『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』をできるだけ多くの人に遊んでもらいたいと思っています。しかし、UIというのはときにバリアーとなります。ふだんからゲームを遊ばない“カジュアルゲーマー”は、ゲームに対して期待するものがゲーマーとは違いますよね。じつは『ヘビーレイン -心の軋むとき-』は女性のユーザーが多く、彼女たちは自分ひとりではなく、ボーイフレンドや夫たちといっしょに遊ぶという意見が多かったのです。今回はそんな人たちに向けて、オプションでもっとやさしいUIを選べるようにすることも予定しています。

――最後に、『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』の発売を心待ちにしている日本のファンにメッセージをいただけますか?

David 私は、子どものころから日本製のゲームを遊んで成長してきたので、日本のゲームとそれを作ったクリエイターにリスペクトを持っています。また、ゲームだけではなく、宮崎駿さんのアニメや漫画など、いろいろなものを見てきました。今回は、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンが日本語でローカライズしてくれるので、日本のより多くの方に『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』を遊んでもらえると思うと、とても光栄に思います。最後に東京に行く機会があれば、ぜひ皆さんにお会いしたいです。東京ゲームショウの時期に実現したらうれしいですね。


Damien Castelltort氏(写真左)
チーフプログラマー
Quantic Dreamに参加して12年。さまざまなタイトルでその経験を活かし、現在は『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』のチーフプログラマーとして活躍。

Christophe Brusseaux氏(写真右)
アートディレクター
2001年にQuantic Dreamに参加。同スタジオの特徴あるアートスタイルを構成する基礎を築きあげる。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その3】_08

――おふたりは、いつごろからQuantic Dreamで働いているのでしょうか?

Christophe Brusseaux氏(以下、Christophe) 私たちは2000年に入社したので、13年間Quantic Dreamにいることになります。

Damien Castelltort氏(以下、Damien) Quantic Dreamの1作目である『Omikron: The Nomad Soul』(※日本未発売)をリリースしたあと、『ファーレンハイト』の開発に加わった形です。

――『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』を作るにあたって、『ヘビーレイン -心の軋むとき-』のころと比べると、どの部分が大きく変わっているのでしょうか?

Damien 『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』は、『ヘビーレイン -心の軋むとき-』とは完全に違うゲームを目指しているので、ゲーム内のグラフィックやゲームエンジンなど、すべてイチから作り直しています。

Christophe 3Dモデルを担当した役者の身体や表情の動きを“パフォーマンスキャプチャー”というシステムでキャプチャーできるようにしました。『ヘビーレイン -心の軋むとき-』のときは最大ふたりまでしか演技をキャプチャーできず、さらに身体と表情の動きを別々に読み取る必要がありましたが、今回は6~7人の演技を一気に読み取れるようになったのが大きいです。それと、エレン・ペイジやウィレム・デフォーといったハリウッドで活躍する役者をふたり連れてきたのが挑戦でしたね。収録ではこちらも非常に緊張しました(笑)。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その3】_03
キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その3】_04

――Quantic Dreamの作品は、キャラクターの感情表現が非常にリアルですが、パフォーマンスキャプチャーをする際のポイントを教えてください。

Christophe 今回は、役者の演技が重要な要素を占めています。まずはデヴィッドが書いたシナリオをもとに、Quantic Dreamの中にあるパフォーマンスキャプチャーのスタジオで役者の演技をキャプチャーします。そして、それらをもとにアニメーションやセッティング、カメラアングルや音声などを調整して、シーンごとに表現したい大事な部分に焦点が当たるようにします。まるで虫眼鏡で一部分を拡大して見るような感覚ですね。このあたりは映画の作りかたと似ていて、穏やかなシーンでは優しい光で表現し、激しいアクションシーンでは陰影が強いドラマチックなライティングで盛り上げようとしています。

――映画の収録とは違う部分はありますか?

Christophe すべてが違います。というのも、パフォーマンスキャプチャーのスタジオにはセットがありませんからね(笑)。

Damien 映画の尺はだいたい2時間程度ですが、ゲームだとその何倍もありますよね。単純に覚えるセリフが増えたり、撮影時間が伸びたりと、役者側の負担が大きいのも特徴です。

――ところで、役者の瞳の演技はどうやって表現するのでしょうか? 瞳の動きは感情を表すのに重要ですよね。

Christophe もちろん、瞳の動きというのは、人間の感情表現をするのに重要な役割を果たします。ただし、実際に役者の眼球の動きをキャプチャーするのではなくて、まぶたの動きのポイントをもとに手つけのアニメーションで再現していく感じですね。ちなみに、ジョディが泣いているシーンでは、彼女の顔のシワを少し足したり、目の反射などを調整して、感情の動きを表現しています。

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――それだけ細かい表現をするためには、身の回りの人の表情をつねに注意深く観察する必要がありそうですね。

Christophe ええ。毎日観察しています。地下鉄に乗っていて、ライティングによって人々の表情がどのように表情が変化するかなど、チェックしています。完全に職業病ですね(笑)。

――なるほど(笑)。Quantic Dreamのゲームは、創始者であるDavidさんの思想や個人的な体験が色濃く反映されていますが、どんなプロセスでゲーム開発が進むのでしょうか?

Christophe Davidとの対話は、Quantic Dreamの文化のひとつになっています。私たちは、13年間Davidといっしょに過ごし、ゲームを作ってきました。Quantic Dreamのスタッフは、毎日Davidとコミュニケーションを取ることで彼の考えかたを理解し、それをゲーム内容に反映できるように作業を進めていくのです。

Damien Quantic Dreamにおける我々の仕事は、Davidがイメージしている明確なビジョンに向かって、ゲーム開発を少しずつ進展させていくことです。自分たちが作っているのは、ゲームそのものではなく、あくまでビジョンを実現させるためのツールであるという認識があります。

Christophe 私が担当しているグラフィックに関しても同じで、おおもとのストーリーをもとに“見えない物語”とでも言いますか、グラフィックでキャラクターの心象風景を作り上げていくのです。たとえば、友だちの家に遊びに行ったとき、置いてある家具や商品から、彼の人となりをある程度理解することができますよね?

――確かに。住まいからその人の趣味嗜好が見えてくることがありますね。そういえば、スタジオツアーのプレゼンテーションで、Davidがホームレス生活を送るジョディの姿を見せてくれましたが、あのときもホームレスの住居の作り込みがすごかった気がします。

Christophe その通り。ホームレスの中には若い女性もいますが、彼女の寝床の周囲をよく見ると、ポスターや広告などが貼られているのがわかります。広告には、ビーチや椰子の木などが描かれており、雪に閉ざされた都市部でホームレス生活を送る彼女の憧れを表しています。我々は、Davidのビジョンを読み取り、こうした形で表現していきます。

キーパーソンへインタビュー『BEYOND: Two Souls』Quantic Dreamスタジオツアーリポート【その3】_06

Damien Davidのビジョンを目に見える形で表現するのはグラフィックですが、テクニカルディレクターの私としては、ビジョンをプレイヤーに体感してもらうためのツールを作っている感覚です。私とChristopheのコミュニケーションも大事になってきますね。

――グラフィックと言えば、『ファーレンハイト』は雪、『ヘビーレイン -心の軋むとき-は』雨といったように、印象的なモチーフがありましたが、今回のグラフィックのテーマはなんでしょうか?

Christophe 『ファーレンハイト』と『ヘビーレイン -心の軋むとき-』数日間の出来事でしたが、本作はジョディの15年間に及ぶ人生を描いたものです。ですので、明確なモチーフはありません。

――連綿と続くひとりの女性の壮大な人生を、グラフィックでどう表現しているのでしょうか?

Christophe 本作のストーリーは時系列順で語られないので、プレイヤーがジョディのどの年代を体験しているのか、視覚的にわかりやすいように表現しました。たとえば、季節や背景はもちろん、ジョディのヘアスタイルや服装も変えたりしています。

Damien ジョディの服装を見て時代の流れを感じたりします。また、ジョディのまわりにいるキャラクターも年を重ね老いていくので、それで時代の流れを感じるでしょう。

――時の流れとともに、ゲームプレイはどのように変化しますか?

Damien ジョディの操作は、幼少期と成人後ではアクションがまったくことなります。小さいころは、おもちゃをつかんだりする程度ですが、成長するにつれていろいろなことができるようになります。また、霊体のエイデンの能力も変わってくるので、操作感が変わってきますね。

――最後に、『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』を楽しみにしているゲームファンにメッセージをお願いします。

Christophe 皆さんに最高の体験を提供したいと思っています。途中で投げ出さずに、続きが気になって全部通して遊べるようなゲームを目指します。ともだちや家族の皆さん、お婆ちゃんも子どもも孫など、すべての人に『BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー・ソウル)』を共有してもらいたいですね。それで最高のゲームだと思ってほしいです!(笑)

Damien 情報を公開するまでのあいだ、ずっと周囲に秘密にして開発し続けてきたプロジェクトだったので、やっと世に出すことができたのがうれしいです。発売を楽しみに待っていてください。

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BEYOND: Two Souls(ビヨンド:ツー ソウル)
メーカー ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン
対応機種 PS3プレイステーション3
発売日 2013年発売予定
価格 価格未定
ジャンル アドベンチャー / ドラマ
備考 開発:Quantic Dream