主人公はスパイとして海賊になった!?
ユービーアイソフトより本日(2013年2月28日)発売されたプレイステーション3/Xbox 360用ソフト『リズン2 ダークウォーター』。本作は海賊をモチーフとしたアクションRPGで、開発を手がけるのはドイツのディベロッパー、Piranha Bytesだ。もともとPCゲームの『Gothic』シリーズで名を馳せた開発メーカーであり、『Gothic』ファンには要注目の作品といえる。
ちなみに、タイトルの『2』からうかがえるように前作が存在する。初代『Risen』はファンタジーRPGとして、2009年に海外でWindows、Xbox 360版が発売された。とある島で、支配者やモンスターと戦う内容だったが、『2』はその10年後が舞台、主人公がいくつもの島で戦いをくり広げる大冒険劇が描かれる。
本作の主人公は、島の安全を守る警察のような組織“審問団”の大尉。ある夜、魔物に襲われた船の生存者を探していると、かつていっしょに冒険した女性パティを発見。彼女は強大な魔物であるクラーケンを倒せる武器を、ついに見つけたというのだ。その武器は彼女の父にして偉大なる海賊のひとり“鉄ヒゲ”が探しているらしい。
至急、鉄ヒゲと接触したいところだが、主人公は海賊とにらみ合っている審問団の一員。そこで、“審問団を追放された海賊”と身分を偽り、スパイとして海賊に接触し、伝説の武器を求める旅に出る……というストーリーとなっている。
一本の剣だけで成り上がってやる!
個人的にもっとも魅力を感じたのは、主人公の“成り上がり感”。まず、海賊としての第一歩を歩み始めた主人公は、武器一本しか手にしていない。それ以外の装備は何もなく、上半身は裸。片目の眼帯とも相まって、どう見ても下っ端海賊にしか見えない外観なのだ。
ここからさまざまなクエストをくり返し、力を貸した対価としてお金をもらったり協力を得て、少しずつ身なりを整えたり、能力を伸ばしていく。最初期がみすぼらしかったぶん、その成り上がりっぷりを存分に楽しめるのだ。
世界観も魅力的だ。冒険に赴く島々では、荒くれ者はもちろん、ブードゥー魔術を使う現地人、人語を理解する妖精ノーム族など、ファンタジーならではのキャラクターが多数登場する。彼らと協力し合い、時には反目して戦う、そんな非日常的な生活を存分に満喫できるのだ。
ちなみに、一口に海賊といってもちょっと前に話題になった現代のソマリア海賊、はたまた映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』や漫画『ONE PIECE』など、作品ごとにイメージは大きく異なる。本作での海賊……というより主人公は、どちらかといえば冒険家としての一面が強い。そのため、宝探しも楽しめるのだ。
たとえばジャングルの奥には、不思議な神殿が存在する。恐る恐る足を踏み入れてはみたが、待ち受けていたのは仕掛け扉やモンスターなどの多彩なトラップ。なんとか突破したその先には、価値の高いお宝が眠っていた……ってな具合だ。このほかに、宝の地図から財宝を見つけたり、断片的な情報から秘宝を探し出すなど、トレジャーハンター気分も堪能できる。
5種類の能力値で主人公を強化
ここからは主人公の成長要素について紹介しよう。主人公には“剣”、“銃器”、“頑強”など5種類の能力値が存在する。敵を倒したときやクエストをクリアーすると入手できる“栄光値”(いわゆる経験値)を使って、能力値を伸ばしていく仕組みだ。
能力値にはそれぞれ3種類の“タレント”が設定されている。たとえば剣には“切り裂き武器”、“突き刺し武器”、“投てき武器”という3つのタレントがあり、これが直接的な強さを表している。タレントの値は、能力値を上げるほか、特定の装備を身につけることでも上昇する。
さらに、各能力値に“スキル”が存在する。これは特殊能力といえるもので、その内容も多岐にわたる。たとえば頑強にある“キック”を取得すると、戦闘中に蹴りをくり出せる。また“剣耐性”というスキルを覚えれば、剣攻撃に対する耐久力が上昇するという仕組みだ。なお、スキルはそのカテゴリの能力値が一定以上あるとき、住人から有料で学ぶことができる。
注目したいのは、いかにも海賊らしい能力値の“狡猾”だ。狡猾には、忍び足やスリ、錠前破りといった盗賊系のスキルがあり、これらを活用すれば看守からカギを奪って、牢獄に捕らわれている海賊を逃がす、といったことが可能になる。錠前破りを使えば、各地にある鍵が掛かった収納箱からお宝を拝借することもできる。欲しい物は自力で奪い取る、これぞ海賊!といったプレイを楽しめるのだ。
もうひとつの異色な能力である“ブードゥー”は、ポーションや魔除けを作成することが可能。クエストの展開によっては、ブードゥーを活用して他人を操ることもできる。よくわからぬ未知の力で困難な局面を乗り切る、いかにも冒険者らしいイベントがくり広げられる。
歯ごたえを存分に感じられる熟練者向けの作品
さまざまな冒険が楽しめる本作だが、じつはかなり難度が高い。個人的にもっとも困ったのは、つねに資金が不足すること。
本作ではスキルの取得にそれなりの大金が必要。加えてクエスト中にも「じゃあ、このアイテムを1000ゴールドで売ってやろう」なんてお金を要求されることも多々ある。それじゃあ盗み取ってやろうかと思っても、スリや錠前開けのスキルを学ぶにはお金が必要……という堂々巡りになってしまうのだ。ちなみに敵を倒しても大した稼ぎにはならず、地道にコツコツ稼ぐのも膨大な時間がかかる。
最終的にどうしたのかというと、筆者の場合はなんとかクリアーできそうなクエストを見つけ出し、何度もチャレンジしてクリアーするという体育会系な解決策。ちなみに戦闘も難しく、とくに装備が整っていない序盤ではすぐにゲームオーバーになってしまう。筆者はわりとすぐに音を上げて難易度を“イージー”にしてしまったが、それでも難しく感じたほど。序盤から槍を持った蛮族が3体も出てきたら、苦戦につぐ苦戦になるっちゅーの!
だが、苦労の大きさは達成したときのうれしさに比例する。難しい戦闘に勝利したときはカタルシスを感じるし、金銭的にも苦労する本作では宝物を見つけたときの喜びは筆舌に尽くしがたい。フラフラとさまよっているうちに古代の遺跡を発見し、金目の財宝を見つけたときは心拍数が跳ね上がったものだ。
重厚な世界観と、海賊ならではの冒険活劇を思う存分楽しめる本作。難度は高く、またユーザーフレンドリーとは言いがたいため、万人向けではないかもしれない。それでも、幾多のRPGを乗り越えてきた腕に自信があるコアユーザーに、じっくりと腰を据えてチャレンジしてほしい作品だ。サルを操ったりオウムを飼ったり、敵を騙したり騙し返されたりと、本作でしか味わえない冒険を楽しめるはずだ。
■著者紹介 喫茶板東
ファミ通Xbox 360で海外ゲームマニアックス、実績解除愛好会などを担当していたフリーライター。最近はニンテンドーDS版『ドラゴンクエストV』をやり直したり、発売されたばかりのニンテンドー3DS版『ドラゴンクエストVII』を堪能したりとプライベートではRPG漬けの日々。そんななかでも、本作は群を抜いて個性的かつ難しかったッス!