ダイナミック&エキサイティングな一作

 “MODEL2 COLLECTION”と題して、2012年11月28日からXbox LIVE アーケード並びにプレイステーションネットワークで配信が始まった往年のSEGA名作タイトルたち。今回はその中から『ファイティングバイパ-ズ』のプレイインプレッションをお届けしよう。
 『ファイティングバイパ-ズ』といえば、当時社会現象と化していた『バーチャファイター2』に続いて、AM2研が世に送り出した3D対戦格闘ゲーム。実在する格闘技をベースにしたリアル志向の『バーチャファイター』に対して、未来的かつ先鋭的なゲームデザインが本作の特徴だ。加えて、味付けが濃い目なキャラクター、必要以上にド派手なモーションの技、豪快に吹っ飛んでいく演出、バラバラに破壊されるリングなど──そのすべてが豪快で爽快なのだ。
 アーケードタイトルからの移植作品、なかでも対戦格闘というジャンルは、“どれだけ忠実に再現できているか”が評価のポイントになると思う。本作がアーケードで稼働していた当時、筆者はアーケード専門誌・ゲーメストにて“GYU”というペンネームで攻略ライターをやっていた。17年も昔の話なのでおぼろげになっている部分もあるが、掘り起こした記憶と比較しながらプレイしていこう。

あらぶる毒蛇たちが帰ってきた! 『ファイティングバイパ-ズ』プレイインプレッション_01
あらぶる毒蛇たちが帰ってきた! 『ファイティングバイパ-ズ』プレイインプレッション_02
▲初期セレクトキャラクターは8名。いま見ると「やや少ないかな?」と感じるものの、1990年代は“デフォルトキャラクターは8名”という鉄の掟が存在していた。
▲実在の武術を題材にした『バーチャファイター』シリーズとは方向性が異なり、こちらは近未来をモチーフにしたキャラクターデザインとなっている。

あら探しの甲斐がないパーフェクトなデキ

 このプレイインプレッションでは、Xbox LIVE アーケード版でプレイしている。価格は400マイクロソフトポイント……日本円に換算すると600円前後といったところで、当時アーケードで100円玉を湯水のごとく使っていた世代にしてみると、完全に価格破壊。プレイステーション2でリリースされている『SEGA AGES 2500 Vol.19 ファイティングバイパーズ』の約4分の1だし、スマホアプリ全盛のご時世だとしても、オンライン対戦が楽しめる対戦格闘がこの値段で買えるのは断然お得だと思う。
 ゲームを立ち上げるとメニュー画面が表示され、コンシューマゲームらしくアチーブメントなんてのも用意されている。ゲームモードはアーケード、オフライン対戦、オンライン対戦があるが、モードによるゲームバランスの違いは存在しない。ひとまずは1人用のモードであるアーケードで遊んでみることにした。使用キャラはゲーメストで攻略担当をしていた“バン(BHAN)”。豪快な単発技ばかりをそろえた、猪突猛進型のキャラクターだ。
 プレイしてみるといきなり違和感の嵐。思うように技が出せない。こんなはずでは……とのっけから心配になったが、それもそのはず。頭の中で動かしているのは続編『ファイティングバイパーズ2』の“バン”だった。ゲーメストムックを引っ張り出して確認したところ、『ファイティングバイパーズ(1)』の“バン”の固有技は30個ぐらいしかない。対戦相手の技はもちろんのこと、自分のキャラクターの技を覚えることすら大変な、いまどきの対戦格闘ゲームからは考えられないシンプルさだ。『バーチャファイター2』と同様、パンチ、キック、ガードの3ボタンなので操作は簡単。気を取り直して再度挑戦したところ、すぐに感触は取り戻せた。
 移植度に関して第一に気になるのは、やはり技のアタリ判定やコンボのつながりだろう。技のどれかひとつでも性能が違えば、ゲームバランスは大きく変わってしまう。“バン”をはじめ、いくつかのキャラクターで遊んでみたが、筆者にはアーケード版との性能の違いはまったく見つけられなかった。とはいえ、フィーリングだけではちょっと説得力に欠ける。そこで、当時アーケードで猛威をふるった、“バン”の“振り投げ→鉄山靠”という即死コンボを試してみたところ、こちらもばっちり再現できてしまった。よっしゃー!(バン使いの特権だし) また、空中で受け身をとれるタイミングも同じなので、壁際でコンボを決めたときの駆け引きもアーケードそっくりそのままだった。

あらぶる毒蛇たちが帰ってきた! 『ファイティングバイパ-ズ』プレイインプレッション_03
あらぶる毒蛇たちが帰ってきた! 『ファイティングバイパ-ズ』プレイインプレッション_04
▲バトルフィールドは四方すべてを壁に覆われており、壁際に追い詰めたとき、追い詰められたときの攻防が本作の醍醐味である。
▲壁にぶつかった際にはダメージも加算されるため、一気に体力を持っていかれることも。空中受け身をどのタイミングで取るかも死活問題だ。

斬新過ぎた“アーマー破壊”の魅力

 各モードをひと通り遊んであら探ししようと試みたが、結論から言うとまったくといっていいほど違いは見つけられなかった。代わりに改めて印象に残ったのが、本作ならではの斬新なシステム。とくに上半身と下半身それぞれに付いた“アーマー”の採用が衝撃的だ。攻撃を当てていくとアーマーの耐久力が減り、限界が来た状態(アイコンの点滅で表示)でアーマー破壊技をぶち当てると破壊可能。アーマーが壊れた部位に攻撃を当てれば、ダメージが1.5倍になり、本来は連続ヒットしない攻撃がつながるようになるのだ。当時は「新しい!」と何の疑問もなく受け入れたシステムだったが、いまの時代にプレイしてみると強烈のひと言。『鉄拳6』(バンダイナムコゲームズ)には体力が残りわずかになると攻撃力が1.25倍になる“レイジシステム”があるが、アーマー破壊による逆転性はそれ以上! 破壊したアーマーはラウンドをまたいでも復活しないので、一度破壊してしまえば圧倒的優位に立てるのだ。
 最近のゲームと比較してしまうと技が少なめで、地上受け身や横移動もなく、物足りなさを感じるかもしれないが、アーマー破壊のおかげで、プレイヤースキルに多少の差があったとしても“いい勝負になりそう”なゲームバランスになっている。オンライン対戦においては、どうしてもタイムラグが気になってしまうところだが、細かいことを気にせずワイワイと楽しめるのも、本作のいいところだ。フレーム単位の細かい駆け引きにこだわるよりも、いかに“ノリ”で押せるかが本作を楽しむ秘訣なので、オンライン対戦にも向いていると言える。アーケード版からの操作感覚は100%再現と言っていいので、当時、少しでも本作にハマっていた人には間違いなくオススメしたいところだ。
 なお、最初アーケードモードをプレイしていて困ったのが、CPUが思っていた以上に強いこと。難易度ノーマルでプレイしているのに、しばらくスッコスコにやられてしまった。上段攻撃を出せばしゃがんで反撃され、打撃技を無効化しながら反撃できるガード&アタックを出せば、後出しのガード&アタックに負けてしまう。「確か昇り蹴り(ジャンプ上昇中のキック)が強かったよな」と試したら、ラスボスの“B.M.”まで楽々進めるようになった。もし、この記事を読んで初めて『ファイティングバイパーズ』をプレイする人がいるなら、まずは昇り蹴りをマスターするのがいいだろう。また、使用キャラクターが“ハニー”の場合、アーケード版では50連勝、100連勝ごとに上部アーマー、スカートが取れていくといううれしいサービスが存在した。本作においては10連勝を果たすと、アーマーを破壊された時にスカートまで取れるという仕様に変更されているので、各自奮闘して、ハニーのサービスショットを拝んでいただきたい。

あらぶる毒蛇たちが帰ってきた! 『ファイティングバイパ-ズ』プレイインプレッション_05
あらぶる毒蛇たちが帰ってきた! 『ファイティングバイパ-ズ』プレイインプレッション_06
▲各キャラクターが持っている、“アーマー破壊技”を当てながら相手をK.Oすると……。
▲ステージを囲む壁をぶち破って、対戦相手はド派手に吹っ飛んでいく。この“ありえない”演出も本作の見どころ。
あらぶる毒蛇たちが帰ってきた! 『ファイティングバイパ-ズ』プレイインプレッション_07
あらぶる毒蛇たちが帰ってきた! 『ファイティングバイパ-ズ』プレイインプレッション_08
▲体力ゲージの隣にある緑のキャラクターゲージが、アーマーの耐久度を示している。ダメージを受けると点滅し、破壊されると赤に変わる。
▲ある条件を満たすと、ラスボスの“BM”によく似たキャラクターの“マーラー”を使用することもできる。

■筆者紹介:牛澤庸二(トリスター)
ゲームやアニメなどの書籍や解説書,広告制作を行うプロダクション“トリスター”の代表取締役。“ゲーメスト”のライターから、“ザ・プレイステーション”の編集者を経て現在に至る。


ファイティングバイパーズ
メーカー セガ
対応機種 PS3プレイステーション3 / X360Xbox 360
発売日 2012年11月29日(ダウンロード配信)
価格 PSN版:800円[税込]/XBLA版:400マイクロソフトポイント
ジャンル 対戦格闘