『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F』開発者7人がPS3版の新事実を語る!【インタビュー完全版】_11

 セガのプレイステーション Vita(以下、PS Vita)用ソフト『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- f』(2012年8月30日発売)のリリースから約2ヵ月――ついにプレイステーション3(以下、PS3)版、その名も『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F』が始動!

 週刊ファミ通2012年11月15日号(2012年11月1日発売)では、PS3版の始動を記念し、セガのプレイステーション3用ソフト『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F』開発者インタビューを掲載。ミクさんへの想いは誰にも負けない7人によるこのインタビューの模様を、誌面ではスペースの都合で掲載しきれなかった部分を含む完全版でお届け。

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プロデューサー
林 誠司氏 Seiji Hayashi
R&Dプロデューサー
大崎 誠氏 Makoto Osaki
ディレクター
大坪鉄弥氏 Otsubo Tetsuya
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リードプログラマー
田中秀樹氏 Hideki Tanaka
映像演出
廣瀬貴義氏 Takayoshi Hirose
キャラクターモデル
中川雄一氏 Yuichi Nakagawa
リズムゲームデザイン
楠 香奈子氏 Kanako Kusunoki

ミクさんを愛する7人のクリエイターが集合

――最初に、『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- f』、そして『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F』における皆さんのお仕事を教えていただけますでしょうか。では、林さんから。
 何やってるんでしょうね(笑)。ええと、開発のプロデューサーとして、ワガママを言う役です。

――(笑)。では、大崎さんは?
大崎 何やってるんでしょうね(笑)。

――(笑)。R&Dプロデューサーを務められているんですよね。
 大崎さんはチームの大黒柱です。
大崎 本作は、セガのコンシューマー(家庭用)チームとアーケードチームがタッグを組んで作っていますが、アーケードチームのプログラマーとデザイナーの管理をしています。

――大坪さんは、前作に引き続きディレクターを務められていますね。
大坪 みんなのワガママを調整する役割です(笑)。林さんのワガママを聞きつつ、自分もワガママを言い、どうしようもなくなったときに「じゃあこれで!」と着地点を決める役ですね。プロデュースサイドと、現場の開発サイドの状況を見て、お互いに望ましい形を考えます。

――では、田中さんは?
田中 リードプログラマーを担当しております。ほかのプログラマーの陣頭指揮をしつつ、自分でもいろいろやりました。
大崎 サウンド関係のプログラムは田中の担当だよね。
田中 そうですね。そのほかの部分についても、多岐にわたって作業しました。

――廣瀬さんは、映像演出ご担当とのことですが、具体的にはどのような仕事を担当されているのですか?
廣瀬 スタッフみんなから出てくる、「こういう映像が作りたい!」という要望を形にする仕事です。どんな内容のPVにするかを考える役ですね。

――どの曲のPVを担当されたのですか?
大崎 基本、廣瀬が全曲チェックしています。
廣瀬 自分で絵コンテから描いたものもありますし、外部の映像ディレクターに演出の制作をお願いして、いっしょに調整を加えていったものもあります。

――外部のディレクターさんとは、どのように仕事を進めていくのでしょうか。
廣瀬 たとえば「キャットフード」であれば、映像ディレクターから出てきた「サーカス風にしたい」というアイデアに対し、やさしいシーン、演奏シーン、セクシーなシーンがほしい、とこちらからリクエストしました。

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――では、中川さんのご担当を教えてください。
中川 キャラクターモデルを担当しています。
大坪 もちろん、中川ひとりですべてのキャラクターモデルを作っているわけではないのですが、中川がメインのモデラーとして、すべてのモデルのクオリティーチェックを行なっています。ちなみに、本作のミクさんをモデリングしたのは中川です。

――最後に、楠さん、お願いします。
 リズムゲームの企画を担当しています。スクラッチの設定や、難易度EASYからEXTREMEまで、譜面全般のクオリティー管理を行いました。

――この曲はもう少し難しく、逆にこの曲はやさしく……というような調整をされたのですね。
大坪 最初、「ネガポジ*コンティニューズ」のEXTREMEなどはあまりにも難しすぎたので、甘めに調整してもらいましたね。

――えっ、いま以上に難しかったんですか?
大坪 最初から難易度が超絶すぎて、スタートして30秒もしないうちにゲームオーバーになるほどでした(笑)。
 「難しすぎる!」と怒られたので、難しさを落としました。

PS Vita版発売から2ヵ月――プレイヤーからの反響は?

――PS3版のお話を伺う前に、まずはPS Vita版について伺いたいと思います。発売から2ヵ月が経ちましたが、プレイヤーからの反響はいかがでしょうか?
 『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ-』シリーズは、毎回数多くのユーザーさんがアンケートに回答してくださるのですが、今回も大勢の方からご意見をいただきました。とくに、グラフィックやキャラクター、演出については好評をいただき、手応えを感じています。
廣瀬 3人のキャラクターが同時にPVに登場する点は、かなりよろこんでいただけたようです。

――演出面で、そのほかに好評だった点はありますか?
廣瀬 今回、キャラクターたちをより身近に感じてもらえるように、表情のバリエーションを増やしたのですが、そちらも好評でしたね。それから、涙。

――「タイムマシン」のPVの中でミクが流す涙は、印象的でした。
廣瀬 じつは、あの頬を伝う涙は、開発終了まであと1週間という時期に作ったんです(笑)。最初は目の周りにキラキラした涙がある程度だったのですが、「ここは、涙が流れ落ちないとダメだよね」と、プログラマーに無理をいって作ってもらいました(笑)。本当にギリギリの制作でしたが、苦労の甲斐はあったと思います。

――表情といえば、モデリングチームの皆さんも関わられたところですよね。
中川 そうですね。今回のモデルは、これまでのシリーズ作品の雰囲気を残しつつ、グレードアップさせて作りました。皆さんに気に入っていただけているようで、うれしいです。
大坪 じつは、モデリングの方向性が決まるまで、半年以上試行錯誤したんですよ。
廣瀬 これまでのシリーズの雰囲気とはまったく違うものにしてみよう、とか……試作を何度も重ねて、「すでに浸透している今までのDIVAミクの路線を伸ばそう」という結論にいたり、いまの方向性に決まりました。

――今回、カスタマイズアイテムが装着できるようになったのもポイントですね。
中川 カスタマイズアイテムも、反響が大きかったです。
廣瀬 メガネの豊富さとか。

――メガネは、大坪さんの趣味ですよね。
大坪 あれでもぜんぜん種類は足りないですから! あの数まで絞り込むために、何度も開発内で検討を行いました。本当はメガネだけで倍ぐらいの数があったんですが、全体のアイテムの中での割合が大きすぎるだろう、と(笑)。

――(笑)。では、リズムゲームへの評価はいかがでしょうか?
 やはり、新要素のスクラッチ(星型のアイコンに合わせて画面をこする)に対して、大きな反響がありました。「楽器を演奏しているみたいで楽しい」というご意見をいただけたので、よかったです。スクラッチが入ったことで、「難しくなった」と感じた方もいらっしゃるようなのですが、スクラッチは判定を甘めにしているので、何度か練習していただければ、コツを掴んでいただけるのではないかと思います。

――とくに「鏡音八八花合戦」などで、楽器を演奏している気分が味わえますよね。
 はい。また、開発中に、スクラッチの星型アイコンを、演出のひとつとして使えることに気づきまして、さまざまな遊びを仕込みました。「Sadistic.Music∞Factory」の冒頭部分ですとか、「ブラック★ロックシューター」のいちばん最後のアイコンですとか。この演出面での遊びも楽しんでいただけたようで、よかったですね。

――リズムゲームの難易度についてはいかがでしょうか?
 前作(『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- エクステンド』)で、「全体的に難しくなった」というご意見をいただいたので、『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- f』では、NORMALは難しくなりすぎないように調整しました。
大坪 EXTREMEについては、楠を始め、譜面制作スタッフ内でパーフェクトが取れることをひとつの基準に調整していますが、それでも度を超えた難しさにならないように注意しています。
大崎 本作は、セガのコンシューマー(家庭用)チームとアーケードチームがタッグを組んで作っています。コンシューマーチームの楠のほか、アーケードチームにもスーパープレイヤーがいるので、ふたりでバランスを調整してもらいました。
 難しさを抑え目に、と思いながら細かく調整したのですが、それでも大坪さんに「難しすぎる」と言われて、何度もやり直しました(笑)。

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PS3版では、みんなが待ち望んだ人気曲がついに収録される!?

――いよいよPS3版始動とのことですが……“F(エフ)”が大文字になりましたね。
大坪 大きくなりました。

――こちらのタイトルの意味は?
大崎 PS Vita版から内容が大きく変わるわけではないので、タイトルも、大きく変えたくはなかったんです。
 サブタイトルを付けるという案もあったんですけどね。“新たなる旅立ち”とか、これは冗談ですけど(笑)。でも、長くなりすぎると覚えていただきづらいので、やめました。もともと、PS Vita版のタイトルロゴを考えていたときに、大文字にする案は出ていたので、「今回は大文字にしよう」と、すんなり決まりました。

――内容が大きく変わるわけではない、とのことですが、変更点はありますよね。たとえば、スクラッチはPS3では再現できないと思いますが。
大坪 スクラッチやAR機能を利用したモードは、PS Vitaだからこそ実現できたものですので、PS3版には入りません。その代わり、PS3版ならではの遊びやモードを用意しています。

――スクラッチの星型アイコンが、○や×のアイコンに置き換わるというわけではないのですか?
大坪 星型アイコンの配置はそのままです。スクラッチとは違った操作を実装する予定です。

――PS Vitaをコントローラとして使用する、“クロスコントローラー”に対応する予定は?
大坪 いろいろ検討してみたのですが、本作での対応予定はありません。

――そのほかに、PS Vita版から変更された点はありますか?
 PS3にゲームを移植する期間を使いまして、新しく曲を追加させていただこうと思っています。

――新曲ですか!
 はい。ゲーム開発にはそれなりに時間がかかってしまうので、収録曲はけっこう早い段階で決めています。PS Vita版では、入れたくても開発スケジュール的に間に合わない曲もありました。そのため、「どうしてこの曲が入っていないの?」と思われた方もいるかと思いますが……今回はよろこんでいただけるのではないかと思います。
大坪 豪華なラインアップの、新しい6曲のリズムゲームが登場します。

――6曲も!
 現在、リズムゲームの譜面を調整しているところです。中には、EXTREMEで、難易度が限りなく★10に近いものもあるのですが、これまでになかったタイプの譜面になっていますよ。
大坪 変化球というか、魔球と呼べる譜面です。
 とはいえ、EASYやNORMALであれば、初心者の方でも楽しめますので、ご安心ください。

――今度はPVに6人のキャラクターが出たりして……。
田中 「夢の続き」の4人でもたいへんだったんですよ!
廣瀬 いやいや、たとえ限界と言われようと、何をするかはわかりませんよ!
大坪 うちのデザイナーたちは、限界を知ったうえで、その限界を超えようとするんですよね。
廣瀬 皆さんの期待に応えたいですから。新規追加曲については、どれもいままで見たこともないような表現に挑戦しています。
 「これはムリだろう」と思うような表現が実現されつつありますので、楽しみにしていてください。

――曲が増えるとなると、モジュールももちろん増えますよね。
大崎 6体どころの騒ぎじゃない数を用意しています。デザインを担当されている方も豪華ですし。
中川 カスタマイズアイテムも増える予定です。

――メガネも増えますか?
大坪 メガネのアイデアの引き出しはまだまだありますが、やりすぎるとメガネばっかりになっちゃいますので、バランスを考えつつ検討している最中です(笑)。

――追加される楽曲やモジュールは、PS Vita版でも楽しめるのでしょうか?
 ダウンロードコンテンツとして配信するなど、何らかの形で遊んでいただけるよう検討しています。続報にご期待ください。

――PS Vita版のシステムデータを移行することはできるのでしょうか。
大坪 PS Vita版の進行状況を、共有できる仕組みにしたいと思っています。
田中 エディットデータについても、PS VitaとPS3の両方で同じデータが使えるように調整しています。

――お話を聞いて、早くPS3版が遊びたくなったのですが、気になる発売時期は?
 はっきりとは言えませんが、進学や就職のお祝いには間に合うようにしたい……と思います!

――楽しみにしています。それでは、最後に読者へのメッセージをお願いします。
田中 皆さんに満足していただける形で出したいと思っていますので、よろしくお願いします。
廣瀬 追加曲のPVを一生懸命作っていますので、超! ご期待ください。
中川 モジュールとカスタマイズアイテムにもご期待ください。カスタマイズアイテムには、ミク界隈で話題の“あの人”が登場するかも!?
 PS3で楽しく遊べるようにリズムゲームを調整していますので、期待していてください。
林&大崎&大坪 お楽しみに!


初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- F
メーカー セガ
対応機種 PS3プレイステーション3
発売日 2013年春発売予定
価格 価格未定
ジャンル アクション / リズム