究極神拳はないがウルトラスゲー超必殺技はあるぞ!

アメコミヒーローが『モータルコンバット』スタイルでスーパーバトル! 格闘ゲーム『Injustice』インタビュー【TGS 2012】_01

 2012年9月20日から23日まで、幕張メッセで東京ゲームショウ 2012が開催中。『Mortal Kombat』最新作(日本未発売)を開発したNetherRealm Studiosによる『Injustice: Gods Among Us』について、同スタジオでシニア・プロデューサーを務めるAdam Urbano氏に話を聞いた。

 本作を簡単に説明すると、『Mortal Kombat』スタイルでスーパーマンやバットマン、キャットウーマンやソロモン・グランディらDCコミックスのヒーローと悪役が激突するオールスター格闘ゲーム。モーコンシリーズには『Mortal Kombat vs. DC Universe』(日本未発売)という、DCヒーローとモーコン戦士たちが激突するタイトルがあったが、本来のモーコンの良さもDCヒーローの良さも引き出しきれずじまいだった(まぁ要はDCヒーローを究極神拳で八つ裂きにすることはさすがにできなかったのだ)。しかし今度は違う。『Mortal Kombat』の過激なゴア表現こそないが、その分のパワーを「いかにスーパーヒーローらしい格ゲーにするか」に注ぎ込んだ注目タイトルなのである!

(※この記事のジャンル表記は海外版も含めたものです。)

――僕は『Mortal Kombat』(以下『MK』)が好きで昔からプレイしています。昨年出た最新作もすごくいいゲームでしたが、スゴすぎて日本では発売されませんでした。しかし、この作品はようやく日本でも出せそうなゲームですね。
Adam Urbano(以下、アダム) ドウモアリガトウゴザイマス(日本語)。

――以前、『MK vs. DC』というゲームがありましたが、お互いのいいところを打ち消してしまうような感じで残念でした。今回はフルスロットルでヒーローをどうかっこよく見せるかに集中できるタイトルになりそうですね。
アダム その通りです。DCコミックのキャラクターに100%の力を注ぐことができるタイトルだと思います。

――宇宙までぶっ飛ばすようなアッパーやド派手なシーンが満載で、思わず「こういうのが見たかったんだよ!」と叫びたくなりました。スーパーヒーローがスーパーヒーローらしく表現された格闘ゲームになっていますが、開発中、DCコミックスとのやりとりや監修はうまくいってますか。
アダム ありがたいことに、基本的にDCのサイドは「どんどんやっちゃってくれ」というスタンスなんです。「これはやっちゃダメ」、「あれはやっちゃダメ」という制約はほとんどなし。とてもいい関係性で、『MK vs. DC』とはプロセス自体が違います。

――自由に任されているというのは、コラボレーションがうまくいく予感がしますね。
アダム これまでさまざまなパートナーと仕事をしてきましたが、我々が作ったものに対してDCからは「これ最高だよ」と反応が帰ってくるので、どのパートナーよりも最高のパートナーシップを築けていると思っています。

――『MK』の制作経験を本作にどのように生かしていますか。当然キャラクターがまったく違うので、見せ方なども違ってくると思いますが。
アダム 具体的には『MK』に匹敵するくらいのクオリティーのものができてきていると思います。ストーリーモードもしっかりできていますし。『MK』で蓄積した経験ですが、ゲームのコア、ストーリー、大会を行なっても問題ないバランスなどに活かせていると感じています。

――格闘ゲームというジャンルは、競技性が強いですが、この作品の場合、ステージによって利用できるオブジェクトがあったりして、選ばれたステージによってプレイのスタンスが変わってくると思います。同じ環境(公平性)を求める競技性を重要視するプレイヤーもいるかもしれませんが、この点についてはどのように考えていますか。
アダム 我々は格闘ゲームに革命性をもたらしたいと思っています。ステージによってプレイのスタンスが大きく異なることもこの革命性のひとつだと思っているのですが、いかにバランスを保つかを開発初日から重要視しています。格闘ゲームはバランスが崩れてしまうと全部が崩れてしまうので、とくに気をつけています。キャラクター対キャラクターだけでなく、環境を含めたバランスの調整に細心の注意を払っていますよ。

――革命性の部分をプレイヤーが体験できるけれども、それによってプレイヤーに不公平が生まれないようにということですね。
アダム そうです。たとえば、あるキャラクターがミサイルを撃ったときに、カウンターとしてそのミサイルに乗ることができるようにしている。つねに技に対するカウンターを用意してバランスを保っています。

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――アメリカのアメコミファンの反応はいかがですか。
アダム 原作のコミックと違ってて最高という人もいるし、逆に違うからダメという人もいます。ファンの反応は真っ二つに分かれていましたが、どうして我々がこのようにキャラクターを表現したのかを理解してもらえれば、もっと広く受け入れてもらえると思います。そのために今後いろいろと伝えていかなくてはいけないことが山積みですが。

――長い歴史のあるキャラクターをゲームに落としこむうえで、いまいったようにキャラクターをどう作りこんでいますか? 見せ方の面と、ゲームプレイの面で重視していることはなんですか。
アダム 各キャラクターのコアになる要素、つまりキャラクターを形作っている要素にだけは絶対に手を加えないことですね。そこは絶対に変えないようにしています。スーパーマンなら、強くて正義のヒーローであること。バットマンなら、ガンを使わないことですね。彼が使うのはグラップルガンとかそういったガジェットですから。

――どこを見てもスーパーヒーロー、スーパーヴィラン(悪役)だらけです。『アベンジャーズ』みたいにトッププレイヤーばかりが集まるからこそ、まとめて扱うことの難しさがあると思いますが、その点はいかがですか。
アダム 個人としてもスタジオとしても、スーパーマンがパンチで敵を宇宙まで飛ばせるなら、じゃあフラッシュはそれに絶対負けないだけの個性はなんだろうということを考えています。「じゃあフラッシュは本当に世界一周走ってアタックさせよう」とかね。それぞれのベストは何かということに注意を払って創りあげています。

――オンライン対戦モードについて教えてください。
アダム 現時点で公式にアナウンスしているのはオンラインモードがあるということだけで、具体的なモードについては公表していません。ただ、オンライン要素のデザインドキュメント(仕様書)がかなり分厚いものだということだけお伝えしておきましょう(ニヤリ)。

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――ストーリーモードには各キャラクターのシナリオが必要です。どのような体制で作っていますか?
アダム 我々のスタジオのライターチームに加えて、著名なアメコミのライターである、ジミー・パルミオッティ氏やジャスティン・グレイ氏を招いています。

――この作品のストーリーを書くにあたって、DCの原作コミックスを大量購入したんじゃないですか?
アダム DCから大量に贈られています。1000冊近いんじゃないかな。オフィス一面がDCコミックスだらけです(笑)。

――『MK』ではフレディがDLCキャラクターとして登場しましたが、今回もこのようなサプライズは期待できますか。
アダム そうですね。ユーザーにサプライズは用意したいと思っていますが、いま話してしまったらサプライズにならないですよね(笑)。

――そのとおりです(笑)。今回の『インジャスティス』のために作ったゲームの核となる仕組みを紹介してください。
アダム まずは入力。ヘビー、ミディアム、ローと3つの攻撃ボタンに加えて、各キャラクターの特徴を生かしたユニークなスペシャルアクションをボタンひとつで出せるようにしました。バットマンであれば、エレクトロニックバッツを出せます(帯電したコウモリを呼び出す。相手に飛ばすことも、バットマンの周囲に高速で飛ばして恐らくカウンター技にもできる)。あとはステージのオブジェクトがインタラクティブに使えることです(端っこにミサイル発射ボタンがあったり、吊り下げられあモーターにブチ当てたりできる)。最初にいたステージから飛び出して、違う場所まで戦って行っちゃうのもそうですね。

――コンボは『MK』に近いプレイ感と考えていいですか?
アダム 感覚的には『MK』にすごく近いと思います。ただ、コンボの種類が『MK』よりも多く、ステージ固有のオブジェクトを活用することで、コンボのバリエーションが無数に広がるのが違うところです。

――バランス調整が大変そうですが、テスターの規模は?
アダム インハウスでもたくさんいますし、適宜プロのテスターを連れてきてやっています。また、つねにデータがとれる環境なので、いつでもテストをしている状態ですね。

――好きなキャラクターと好きなムーブを教えてください。
アダム 好きなキャラクターは、子どものころから大好きなスーパーマンですね。それとディテクティブ・チンプというキャラクターも好きですが……頑張っているけどたぶんゲームには入らないですね(笑)。好きなムーブはハーレイ・クインのタントラム・スタンスです(寝転んで隙を作ってから銃を連射するというトリッキーな技)。

――このような、そのキャラクターのファンでなくても「おもしろい!」と思えるようなムーブが各キャラクターに用意されているのですか。
アダム はい。最初からDCキャラクターをよく知らない人でも楽しめるようにすることを重要視していました。

――画面の表示されているバーについて教えてください。
アダム 上のバーはライフゲージです。一般的なラウンド1、2といった見せ方ではなくて、映画的な演出を意識しています。ですので、画面の上に表示されている2本のバーは、1本目(ブルーのバー)がなくなるとラウンド1が終了。2本目(レッドのバー)がなくなるとラウンド2が終了、つまり負けということになります。下のバーはスーパーメーター。3つのレベルに分かれています。ひとつ消費すると特殊技が出せますが、2つだとコンボブレイカーになります。相手がコンボをしてきたときにカウンターすることができます。3つを使うとシネマティックな演出が挿入される必殺技(超必殺技)をくり出します。

――スーパーメーターの横にある小さなゲージは?
アダム 丸ボタンを押すと各キャラクター固有のスペシャルな能力を使います。スーパーマンの場合はスペシャルストレングス(たぶん力が増強する)。ハーレイ・クインの場合はプレゼント(ランダムで何のアイテムが出てくるかはわからない攻撃スキル)です。

――各キャラクターが個性を生かしたファイティングスタイルを持っているということですね。
アダム Yes!

――本作が気になっている人を結構見掛けるのですが、メッセージをいただけませんか?
アダム 日本でようやくリリースできそうなので、とても興奮しています。日本はとても重要なマーケットなので、ファンの反応を楽しみにしています。これまで我々のタイトルを日本でリリースすることがなかったので、やっと実現しそうですね。決まっていないのは発売日ぐらいです。私が日本(TGS)に来ているのは、日本で発売できるからなんです。

――大気圏アッパーを食らう日が来るのを待ちきれません!
アダム Soon!(もうすぐさ!)