新たなオーケストラアレンジアルバムの発売も決定!

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 スクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)シリーズ25周年を記念して、2012年9月1、2日の2日間、東京・渋谷の渋谷ヒカリエにて行われた“FINAL FANTASY展”。開催2日目には、作曲家の植松伸夫氏がさまざまなエピソードを語る“FF音楽の父! 植松伸夫トークステージ”が行われた。

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▲『FF』の音楽と言えばこの方、植松伸夫氏。25年を振り返って、「お父さんが子どものころに遊んでいたタイトルがリメイクされて、息子さんが遊ぶというのを聞くと、うれしいですね」とコメント。
▲司会は、週刊ファミ通編集者の世界三大三代川が務めた。
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 名曲揃いで知られる『FF』シリーズは、オリジナルサウンドトラックも人気が高い。最初に発売されたサントラは、初代『FF』と『FFII』の曲を収録したもので、CDとカセットテープで発売された。当時、ファミコンでは3音しか同時に鳴らすことができなかったため、植松氏はプログラマーといっしょに他社のメーカーのゲームの曲を研究しながら曲作りを進めたという。「同じ音を使っているはずなのに、メーカーによって音(個性)が違うのがおもしろかった。制限があったからこそ、作曲者たちが試行錯誤したのだと思う」とのことだ。

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▲当時の週刊ファミ通に掲載されていた、『FFII』の広告。「サントラ発売決定!」と書かれている。
▲これは『FFV』の音楽に関するインタビュー記事。「ゲームのCDって売れているの?」というコラムに記されていた、『FF』サントラの販売枚数は、なんと50万枚! 『FF』音楽の人気の高さが伺い知れる。

 では、植松氏が初代『FF』で最初に作った曲は何なのだろう? 植松氏は、「厳密には覚えてないけど街かフィールドか、バトルのどれかです。と言うのも、その3つを作っておけば、とりあえず事足りるんですよ」とコメント。有名なエピソードだが、アルペジオが美しい「プレリュード」は、坂口博信氏にゲーム完成間際に「いますぐ作ってくれ!」と言われ、30分程度で作った曲。「その場しのぎで作ったら、まさか25年も流れることになった(笑)」と植松氏は笑いながらコメントした。

 『FFIV』から、ハードはスーパーファミコンに移り、音楽もより幅広い表現ができるようになった。これも有名な話だが、『FFIV』開発中、『アクトレイザー』の古代祐三氏が手掛けた音楽を聴き、植松氏はかなりショックを受けたという。「この音には勝てない」と、すでにできあがっていた曲をサンプリングし直したそうだ。だが、それでも『アクトレイザー』には勝てなかった、と植松氏は語った。

 また、近年の『FF』タイトルには、すばらしい主題歌が入っていることにも注目したい。植松氏は『FFIV』のころから主題歌を入れたいと思っていたが、スーパーファミコンでは容量が足りず、入れることができなかった。『FFVI』のオペラは、「歌を入れたい」という思いの表れのひとつの形だという。『FFVII』では、皆プレイステーションをどうやって使いこなすか試行錯誤していたため、歌を入れる余裕はなかったが、セフィロス戦の曲「片翼の天使」にコーラスを入れた。そして『FFVIII』で、ついに歌を収録することができたのだ。

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▲歴代のサントラがずらり。ちなみに植松氏は、『FFVII』の曲の中では「蜜蜂の館」が好きとのこと。このようなポップな曲が好きなのだが、なかなか流す機会がないうえ、いまだに「あ、いいですよね、あの曲!」って言ってくれる人がいないのだとか。それでも「いつか演奏してやろうと思っている」そうなので、いつかどこかで本曲の演奏が聴けるかも!?

■『FF』音楽 今年の展開

 『FF』25年の歴史を振り返ったところで、これからの『FF』音楽に関する最新情報が語られた。まずは、シリーズの名曲をピアノで甦らせたアレンジCD「PIANO OPERA FINAL FANTASY I/II/III」、「PIANO OPERA FINAL FANTASY IV/V/VI」について。東京・大阪・仙台でインストアイベント(→こちら)が、東京・大阪でコンサート(→こちら)が開催され、植松氏と、編曲と演奏を担当したピアニストの中山博之氏(通称:ショパンさん)が各地を巡った。

 コンサート東京公演では、「PIANO OPERA FINAL FANTASY VII/VIII/IX」の企画が動き出したことが語られたが、この企画について植松氏に尋ねると、「(計画は)止まっています(笑)」とのこと。とはいえ、「ショパンにセフィロス、やらせてみるか!」という発言もあったので、ファンは期待して待っていよう。

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 そしてこの東京公演で明かされたもうひとつのニュースが、『FF』のオーケストラコンサート“Distant Worlds”の2012年年末の開催が決定したことだ。本ステージにて、この“Distant Worlds”の日程と会場が明らかになった。

2012年12月26日(水) 東京(東京国際フォーラムA)
2012年12月28日(金) 大阪(グランキューブ大阪)
2012年12月31日(月) 東京(東京国際フォーラムA)

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 “Distant Worlds”日本公演は、2010年の開催以来2年ぶり。今回は25周年記念ということで、初演となる楽曲がいくつかあるとのこと。『FFVI』のオペラでは、ゲームでは流れないラルスとドラクゥの決闘の曲がオーケストラで初めて再現されるそうだ。さらに、物語を解説するナレーターもいるという。

 また、ここで、25周年を記念し、『FF』の新たなオーケストラアレンジCDが発売されることが発表された。CD2枚組+アナログ盤(レコード)1枚という構成になっており、植松氏は「僕はレコードで育った人間で、レコードを出すのが夢だった」と、ようやく夢が叶う喜びを語った。

 このCDの発売は年末に予定されており、会場では、先日プラハで行われたレコーディングの模様が上映された。指揮を務めるのは“Distant Worlds”でおなじみのアーニー・ロス氏。オーケストレーションは、中山博之氏と、植松氏率いるバンドEARTHBOUND PAPASのメンバー、成田勤氏が担当した。

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▲映像から、「愛のテーマ」(『FFIV』)、「とどかぬ思い」(『FFIX』)、そして『FFVI』のオペラが収録されることが確認できた。このCDの収録曲の一部が、“Distant Worlds”でも披露されるというわけだ。

 なお、コンサートと言えば、2012年9月23日(日)に東京、2012年11月10日(土)に名古屋で、ゲーム音楽のコンサート“PRESS START”(公式サイトは→こちら)が行われる。『ファイナルファンタジーXI』メドレーが演奏される予定なので、ファンはこちらもお見逃しなく。

 各種告知も終わり、ステージもいよいよ終了……かと思いきや、時間に余裕があったため、植松氏が急きょ質問コーナーをスタート! ここでは、ファンとのやりとりの一部を紹介しよう。

――私の結婚式では、BGMをすべて『FF』の音楽にしたのですが、もし万が一、もう一度結婚式をするとしたら、どの曲をかけたらいいですか?
植松 ドラクエの曲をかけてください(笑)。

――『FF』音楽のジャズアレンジ集を出してほしいんです。
植松 わかりました! って、僕が言っていいのかな。考えておきます(笑)。

――植松さんはプログレロックに影響されたとのことですが、とくに影響された点があれば教えてください。
植松 左手のベースラインを複雑にしているのは、キース・エマーソンの影響だと思います。

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 最後に、植松氏は「早いもので、自分が作曲で仕事をするようになってから四半世紀が過ぎました。1から最新のものまでを俯瞰できたというのはいい経験になりました。それらが反映されている「PIANO OPERA」と、年末のオーケストラCDをぜひ聴いてください。そして、Distant Worldsは、初演の曲が多いと思いますので、ぜひいらしてください! 次回は50周年記念でお会いしましょう(笑)」と、ファンへのメッセージを述べた。年末に向けてますます盛り上がっていく『FF』サウンド。今後の発表を楽しみに待っていよう。