松原氏と林氏に裏話をたっぷりと語って頂きました。

『ロボティクス・ノーツ』開発者インタビュー(前編)【よりぬきXbox 360 8月号】_01
『ロボティクス・ノーツ』開発者インタビュー(前編)【よりぬきXbox 360 8月号】_02
プロデューサー
松原達也(右)
科学アドベンチャーシリーズのプロデューサー。発売を迎えたいまも、プロモーションなどで休むことなく多忙な日々を過ごしている。

シナリオ
林 直孝(左)
MAGES.専属のシナリオライター。科学アドベンチャーシリーズの執筆を手掛けるほか、ゲームシナリオ、ドラマCD、ライトノベルなどを執筆。

予期せず強行されたプレゼン&ロケハン

――さっそくですが、改めてプロジェクト全体の流れから教えてください。
松原 『ロボティクス・ノーツ』が始まったのは、じつは種子島でした。志倉に言われて、いきなり開発メンバー10数人ほどで種子島へ行ったんですね。社員旅行にしては唐突だなあと思っていたら、宿泊先のホテルの宴会場で突然「これから科学ADVシリーズ第3弾のプレゼンを開始します!」と言われて企画書を配られました(笑)。それでプレゼンが始まり、そのまま翌日からロケハンです。

――ドッキリみたいですね(笑)。ちなみに、プレゼンが行われたのはいつごろでしょう。
 2010年9月13日です。ちょうど種子島へ行った前日に、ロケットの打ち上げがあったのでハッキリ覚えています。松原 みんな「1日早かったらロケットの打ち上げ1 が見られたのに」って言ってました。でも、種子島にはロケット目当てのお客さんが多くて、打ち上げの噂が出ると全部宿が埋まっちゃうんですよね。それで、打ち上がるとみんな帰っちゃうので空くわけです。おそらく混雑していないタイミングを狙ったんだと思います(笑)。

――プレゼンはスムーズに進みましたか。
 いや、けっこうもめましたね。ロボットがテーマになることは軽く言われていたんで想定内だったんですけど、予想外にスタッフたちのロボットアニメへの思い入れが強くて(笑)。それぞれに思い描いているロボット像があるんですよ。出したいロボットについての議論が白熱しすぎて、ケンカに近かったですよ(笑)。
松原 最終的に宿の人に宴会場を追い出されました(笑)。夜11時くらいまで延々とやっていましたから。とりあえず、ざっくりリアルロボット派とスーパーロボット派に分かれて喧々諤々していた気がします。
 その後もずいぶんもめましたね。
松原 シナリオが進行する中で、ロボットのデザインだけはぜんぜん決まらなくて、去年の夏くらいまでもめたと思います。今回のメインテーマは、"巨大ロボをどうすれば実際に作れるのか"です。実現できるロボットは"ガンつく1"みたいにならざるを得ないんですが、おのおのに先入観があるんですよ。だから、ほかの作品やアニメみたいにかっこいいものを考えちゃうわけです。そういったロボットは見栄えもいいし、ハッタリも効きます。でもこの作品では、かっこ悪いけどちゃんと理にかなっていて、しかも愛着がわくデザインでなくてはならない。そのことを共通認識にするまでがすごく大変でした。さらに、劇中のかっこいいガンヴァレルを再現しようとしたらああなっちゃった、という部分も盛り込まなくてはいけません。ガンヴァレルをいじればガンつくもいじらなくてはいけないし、その逆もしかりで、大変でしたね。

――いまよりもかっこいいガンつくがあったわけですね。
松原 ありました。ガンつく1だけでかなりのデザインがあったと思います。
 新しいデザインが提出されるたびに、「もっとかっこ悪くしてください」と言ってダメ出しして、どんどんかっこ悪くなっていきました(笑)。

――リアルを目指すと、どうしてもそうなりますよね。ロボットに関しては、やはり相当研究されたのですか?
 実際に東工大に行って、ロボットを研究している教授の方にお話を伺いました。また、ホビーロボットを作っている会社の方にも取材してご協力いただいています。その甲斐もあって、技術に関してはかなり正確な描写になっていると思います。
松原 大学の教授もおっしゃられていたんですけど、大きいロボットを動かすには、現在では圧倒的にパワーが足りないんです。そこだけはどうにかして解決しなきゃいけないので、そこに"1%のファンタジー" 2 を組み込む形になりました。

――プレゼンが終わった後、種子島をロケハンしてみていかがでしたか。
松原 種子島に実際に行くとわかるんですけど、JAXAという最先端の施設があるかと思えば、じつは意外に時代に取り残されているところもあります。
そういう独特の空気感は2019年になっても変わってないんだろうなと思いまして、ゲームでも感じられるように気をつけています。そのあたりは前半の主人公たちの日常生活のシーンでうまく再現できたと思っています。

――やはり東京とは違いましたか。
松原 違いますね。たとえばロケットの打ち上げに使っているコンピュータも意外と古いんです。理由を聞いたところ、最先端のものは実績がないのでリスクが大きくなる。古いけど使い慣れたもののほうが安全だという考えかたで、あえてバージョンアップはしていないそうです。学校も取材したんですが、置かれているPCのOSはWindows98でした。

過去2作を否定しない地続きの世界が広がる

――『カオスヘッド』、『シュタインズ・ゲート』から地続きの世界ということで、気を遣った部分はありますか?
 知っていればニヤリとできるけど、基本的には科学アドベンチャーを初めて遊んだ方でもわかるように、過去作の要素は重要な部分には絡ませないようにしています。

――『シュタインズ・ゲート』からは天王寺綯3 が登場していますが、9年後の綯を出すにあたって注意したところは?
 綯は『シュタインズ・ゲート』から引き続き登場しているキャラクターですから、自転車に乗っていたり、格闘ゲームが得意だったり、ツイぽで紅莉栖やダルとつながりがあることを匂わせたりしています。そういうところで、『シュタインズ・ゲート』の世界で生きていた雰囲気は意図的に出してますね。

――そういうキャラがいるだけで、シリーズのファンはうれしいでしょうね。
 2010年の秋葉原から2019年の種子島までの9年間という時間の流れを綯というキャラクターに載せていますので、その歴史も感じ取っていただきたいですね。

――ゲジ姉4 も出てきますが、これは『カオスヘッド』や『シュタインズ・ゲート』にも出てきた、あのゲジ姉という理解でいいんですよね。
 そうです。2009年の渋谷にいたゲジ姉と同一です。かなり前からおもに陰謀面で使えないかと考えていました。ああいう形で出すことまでは決めていませんでしたが、逆に綯は『シュタインズ・ゲート』のころから志倉が出そうと考えていたみたいです。

――綯が公開されたタイミングで志倉さんに伺ったのですが、林さんが好きなキャラクターだから、独断でねじ込んだわけではなかったんですね(笑)。
 ちょ、それは違います。だって成長した綯ちゃんにはあまり興味はないですから(笑)。もちろんいまの綯ちゃんもかわいい子にはなっていますけどね。

――陰謀面では、300人委員会との戦いも、シリーズのテーマになっていますね。
 いまのところはそうですね。ただ、明確に決着をつけるお話に収束することはないと思います。あくまで世界を支配している大き過ぎる敵、かなわない敵として存在しているアンチャッタブルな存在で、その下にいる悪いやつらと直接戦うという構図です。その関係はわかりやすいので、今後も継承していくかもしれないですね。

3Dという新たな表現方法で演出面をさらに強化!

――今回は立ち絵が3Dになりましたが、実際に作られてみていかがでしたか?
松原 最初はトゥーンシェイド5 も考えたんですが、すでに当たり前の技術になっていて、そこまでバリューがないなと思ったんです。そこを一歩超える表現として、"イベントCGみたいな塗り"で描かれた、手書きタッチがちょっと残っているような3Dモデルを作ろうと思ったんです。

――具体的にはどういった表現が使われているのでしょう?
松原 たとえば輪郭線ひとつ取っても、ふつうは均一の色で描くんですが、手書きのニュアンスが出るようにもやもやした茶色いテクスチャーを張ってあります。そうすることで、手書きで鉛筆の線を描いたときのような"よれ"が出ているように見えます。画面で見ると本当にちょっとしたことなんですが、そういうことをたくさん積み重ねていまの絵ができています。そこは本当に時間をかけた部分で、マスターアップギリギリまでモデルの制作会社さんと調整していました。

――フラウのモデルだけは昨年の夏ころに出ましたね。
松原 フラウって3Dにする際の課題がいちばん多いキャラクターなんです。髪はおさげで、しかも金髪なので光の当てかたがじつは難しくて、すぐにハイライトがつぶれたり逆に飛んじゃったりします。とにかく大変そうだということで、フラウを最初に作って見せられる段階まで持っていきました。そこが決まってから、ほかのキャラの作業に入りました。

――マシンパワーをだいぶそこに割かれているのは、遊んでいてもわかりますね。
松原 見た目がイラスト調なので気付きにくいと思うのですが、1体に3万ポリゴン近く使っていて、ふつうのFPSやRPGよりも多いんですよ。というのは、演出上すごく近くに寄ってくることがあるのと、今回は居ル夫。でさらにズームができてしまう。このためポリゴン数をたくさん割かないと荒く見えちゃうんです。さらに、キャラクターは最大で1画面に3人まで出るんですが、プログラム的には居ル夫。の中の世界は別のキャラデータを読み込んで表示しています。ですから、3人いたら実質的に6体のキャラクターを出していることになるんですね。そこの部分で処理速度を稼ぐのが大変でした。

――なるほど。でもそのぶん、演出面はかなり強化されていますね。
松原 はい。苦労も多かったですが、よかったところもたくさんあります。ひとつは、キャラクターの角度を簡単に変えられることですね。2Dの立ち絵では、たとえば画面の中でふたりが会話していると、ふたりとも手前を向いている状況でした。それをちょっと内側に向ければ向かい合って話している形になります。あとは、PHASE01の職員室で教頭先生が出てくるシーンで、あき穂が背を向けて話すところとか。そんなふうに、演出の幅が広がったのはよかったと思っています。

ファミ通Xbox 360 8月号

●表紙&特集:『重鉄騎
Kinect専用タイトルとして発売された『重鉄騎』が表紙&特集!
中盤までの攻略情報はもちろん、本作のコラボレーショントレーラーを制作した、
押井守監督インタビューも掲載。

●特別企画:E3 2012 リポート
6月5~7日にアメリカはロサンゼルスで開催されたゲームショウ"E3"を
ファミ通Xbox 360視点でリポート。
今年もXbox 360タイトルが多数出展されており、それらをひとつでも多く掲載した!
気になるゲームはあるかな?

●総力特集:『ロボティクス・ノーツ』
ついに発売となる科学ADV第3弾、
今回はプロデューサーの松原さん、シナリオの林さんにインタビューを敢行。
ここだけの話をたっぷり聞いてきた。今号を読めば、本作をより深く楽しめるはず!?

●特別付録:Xbox 360版&『モンスターハンター フロンディア オンライン』ファミ通チケット 入手イベントコード
<ガンランス>FMXや<大剣>ディグスソードなど、17種類のオリジナル武具いずれかが生産可能となる、ファミ通チケットの入手イベントコード!

※本イベントコードの入力期間は、2012年6月29日(金)18:00から2012年10月24日(水)定期メンテナンス開始までとなります。

●新作&攻略ゲーム
バイオハザード 6
ロスト プラネット 3
アサシン クリード III
DmC Devil May Cry
ウィッチャー2
DEAD OR ALIVE 5
ゴーストリコン フューチャー ソルジャー
マックスアナーキー
ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ
ラブ☆トレ
マックス・ペイン3
ロリポップチェーンソー
ほか

●連載
Valhalla FREAKS [板垣伴信]
Highスペックマシン;Lowスペックマン [志倉千代丸]
海外ゲームマニアックス
実績解除愛好会
ほか