ララ・クラフトがいかにして一人前のトレジャーハンターになったのか

 スクウェア・エニックスが放つプレイステーション3、およびXbox 360用ソフト『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』。まだ謎だらけの本作だが、開発を手掛けるCRYSTAL DYNAMICSのエグゼクティブプロデューサーに本作の魅力を聞いた。

『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』開発のトップに直撃インタビュー【E3 2012】_01
CRYSTAL DYNAMICS
エグゼクティブプロデューサー
Ron Rosenberg氏

――まずは自己紹介をお願いします。

Ron Rosenberg(以下、Ron)氏 エグゼクティブプロデューサーのロンと申します。『TOMB RAIDER』プロジェクトのクリエイティブや、プロモーションなど、ゲームに関するすべてを統括する立場です。

――マイクロソフトのカンファレンスで披露された『TOMB RAIDER』のデモプレイが好評でしたね。

Ron 皆さんが新しい『TOMB RAIDER』を気に入ってくださったのはうれしく思います。ララ・クロフトは、彼女がいかにして一人前のトレジャーハンターになったのかということが語られていなかったので、今回それを描こうと思いました。具体的には、ただの少女が無人島に漂着していっぱしのサバイバーに成長していくというテーマです。ララはただの女の子なのですが、さまざまな出会いや別れ、感情的なシーンや極限状況を乗り越えたからこそ、皆が知っているララ・クロフトになったのだと思います。私は、昔からアメコミが好きで、バットマンやスパイダーマンがどうしてその力を得たのかという、“オリジン(起源)のストーリー”に興味があったので、今回でもそれを意識しています。

『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』開発のトップに直撃インタビュー【E3 2012】_06

――デモプレイを見て、幼いララ・クロフトの、超人的な身体能力とまだあどけなさが残る精神のアンバランスさがおもしろく、とても魅力を感じました。ララクロフトを再定義するにあたって、気を付けたポイントはありますか?

Ron 本作のララも、もともと考古学者だったり、スーパーマンのような身体能力を持ち合わせているのですが、ただ、人間的には臆病だったり迷ったりと未熟なところがあります。あえてアンバランスなところを作ることで、プレイヤーにもっとララへの親近感を持ってもらいたかったのです。

――ララが傷付き、返り血や泥などを浴びて汚れていく姿も本作の特徴だと思います。こういう仕様にした理由は何ですか?

Ron プレイヤーは、ララを通してストーリーを観ることになるので、ララが状況を表す鏡のような役割を持っています。戦闘シーンでは返り血で、水たまりを通っているときは泥で汚れたり、ストーリーをわかりやすくしています。……もうひとつは技術者がゲームエンジンのすごさをお見せするために作ったという側面もありますね(笑)

『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』開発のトップに直撃インタビュー【E3 2012】_05

――なるほど(笑)。ララの姿が汚れていくのは、サバイバルをしている感覚を表現するためでもあると感じました。そのほかにも無人島でサバイバル感を出すためのゲームシステムはありますか?

Ron 本作は、たとえば、ヘルスメーターがあったりして、それを満たすために行動するハードコアなアクションゲームではありません。とは言え、本作のジャンルはサバイバルアクションなので、その要素を演出するために実際のサバイバルの知恵を参考にしました。その代表的なものとして、鹿やオオカミなどの野生動物をハンティングするシーンがあります。あとは今回はお見せできませんでしたが、あとは草や木の実などを拾って食料にすることもできます。

――ゲーム中、ララの動きに合わせてカメラアングルがこまかく切り替わることに驚きました。カメラアングルはゲームエンジン側が自動で付けているのですか? それともひとつひとつ手付けでしょうか?

Ron 自動と手付けで半々くらいですかね。本作の開発チームには、ダイナミックな演出をするためにカメラアングルをつけるためだけのスタッフもいます。もっと見栄えするように調整していきたいですね。

『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』開発のトップに直撃インタビュー【E3 2012】_04
『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』開発のトップに直撃インタビュー【E3 2012】_03
『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』開発のトップに直撃インタビュー【E3 2012】_02

――デモプレイで、ララは弓や斧を使っていました。ほかにはどんな武器が登場するのでしょうか? たとえば、ララのトレードマークのあの武器だったり……。

Ron ゲームを進めると、ララはいろいろな武器を発見します。もちろんハンドガンも出てくるでしょうね(笑)。とは言え、本作の代表的な武器は、ララが最初に拾う弓矢となっています。武器はただ敵と戦うだけではなく、オブジェに引っ掛けて進んだりと、ステージのギミックを作動させる役割も持っています。いろいろな使いかたを模索してみてください。また、ステージのあちこちには“サルベージ”と呼ばれる座礁した船のパーツが落ちていて、これらを集めることで武器をアップグレードさせることが可能です。ステージの隅々まで探索してほしいですね。

――その武器を使って戦うことになる相手について聞きたいと思います。本作では、誰が敵で誰が味方かわからないというおもしろさがありますよね。

Ron 実在するドラゴンズトライアングルという場所が舞台となっています。ララとしては船が座礁して、船の漂流者たちを助けて島から脱出したいという責任感を感じているとともに、もともとその島にあった文化を発見して、サバイバルと並行して、その土地に隠された秘密に触れていくのです。そこにスカベンジャーと呼ばれる敵に見付かると殺されてしまうので、サバイバルの要素がありますし、謎解きの部分もあります。

――日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

Ron アジア風のモチーフなどがところどころに挿入されていて、もちろん日本の方は楽しめる内容になっていると思いますが、そういうディテールの部分ではなく、できればゲームのビジュアルやゲームメカニクスなどの全体で楽しんでいただけるとうれしいです。ちなみに、開発チームのゲームディレクターは、日本のアニメやマンガも好きなので、日本のサブカルチャー文化のエッセンスが盛り込まれていると思います。ぜひ楽しんでいただきたいですね。

『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』開発のトップに直撃インタビュー【E3 2012】_08
『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』開発のトップに直撃インタビュー【E3 2012】_07
『TOMB RAIDER(トゥームレイダー)』開発のトップに直撃インタビュー【E3 2012】_09