フランスの開発会社Kylotonn Gamesに直撃!

 2012年1月30日に更新した『カースド クルセイド』の紹介記事に引き続き、今回は『カースド クルセイド』の開発を担当したフランスのゲーム開発会社Kylotonn Gamesを直撃。エグゼクティブ・ディレクターのロマン氏とゲームデザイナーのアデム氏のインタビューを掲載しよう。

本格派ダークファンタジー『カースド クルセイド』開発者インタビュー_01
ylotonn Games CEO/
『カースド クルセイド』
エグゼクティブ・ディレクター
ロマン・ビンセント

――『カースド クルセイド』の開発を担当したゲーム開発会社“Kylotonn Games”について教えてください。
ロマン・ビンセント氏(以下、ロマン) Kylotonn Gamesはフランスのゲーム開発発社です。私たちはゲーマー向けのタイトルを開発しています。これまでに10本以上のゲームを開発した経験を持つスタジオで、我々が初めて世に送り出したタイトルは、FPS(一人称視点シューティング)の『Iron Storm』でした。そこから『Bet on Soldier』とその続編をふたつ作りました。こちらもシューティングゲームになります。現在はアクションゲームを手掛けることが多いですね。

――ロマン氏は、Kylotonn Gamesでどのような役割を担っているのですか?
ロマン 最近は徐々にクリエイティブな仕事の割合を減らしていて、いまはどちらかと言うとエグゼクティブ・プロデューサーとして作品に関わることが多いです。会社のマネジメントなどでかなり忙しくなりまして。とは言え、Kylotonn Gamesのなかでゲームデザイナーたちがクリエイティビティーを存分に発揮できるような環境を作るように、ちゃんとサポートしています。また、ゲームデザイナーに若い年代が多いので、各プロジェクトにアドバイザーとして参加していますね。

――『カースド クルセイド』の舞台設定について教えてください。
ロマン 『カースド クルセイド』はアクション部分に重点を置いたアクションアドベンチャーで、中世ヨーロッパの第4回十字軍が舞台になります。第4回十字軍の戦いを選んだ理由はというと、十字軍の戦い=聖戦はヨーロッパの歴史と文化に関してとても重要なもので、ゲームの素材としてふさわしいものだからです。中世のいろいろな伝説や神話がそこから生まれました。当時はほかにも“聖戦”と呼ばれる戦いがありましたが、第4回は多くの挫折があり、興味深いものです。

――十字軍の戦いとはどのようなものだったのですか?
ロマン 十字軍=テンプル騎士団にとって、聖戦は神から与えられた使命であり、その目的はエルサレムとその聖地(Holy Land)をイスラム教から取り戻すことです。その裏側で、ヨーロッパでもっとも富と権力を持つ王たちを聖戦に参加させ、キリスト教の勢力を拡大する目的もありました。第4回十字軍は目的であったエルサレムまで行けずにパワーとお金の戦いになり、ヨーロッパ中の有力国どうしの競争になったのです。

――アクションだけではなく、壮大な歴史も味わえそうですね。
ロマン その通りです。『カースド クルセイド』では、アクションだけではなく、歴史的戦いも体感できます。主人公デンズとエステバンのひとつの目的は彼達が参加している聖戦の意味を見出すことですね。それと当時の十字軍の兵士たちの生活を学ぶことも出来ます。だから本作はアクションゲームでありながら、歴史を出来るだけ忠実に描写したかったので、ストーリー部分も興味深い内容になっていると思います。

――主人公たちが織り成す人間ドラマはどうですか?
ロマン 戦火で際立つふたりの生き様は、ストーリーの重要な部分になります。彼らがいっしょに戦って、参加している聖戦の裏にある事実に出会うところがとても大切ですね。デンズは若いテンプル騎士団なので、基本駅にキリスト教の戦士です。対してエステバンはただ儲けたいだけなのです。先ほど説明したように第4回十字軍は“お金の戦争”でもあります。そこに便乗する形ですね。

――歴史のリサーチには苦労しましたか?
ロマン ええ。我々は当時の文化や時代背景を可能な限りリサーチして、それをしっかりゲームで実現したいと考えていました。とは言え、『カースド クルセイド』はビデオゲームなので、楽しくなければ意味がありませんよね? その歴史の正しさとゲームとしての楽しさのバランス調整が大事でした。だから特定のシーンでは、ゲームのおもしろさを優先するために歴史の部分をちょっと変える必要がありました。たとえば、テンプル騎士団は実際にはクロスボウを使わなかったのに、ゲームでは使っていることになっています。テンプル騎士団から見ると、クロスボウは誰でも遠くから敵と倒すことができたので、フェアーではなく、好ましくない武器とみなされていました。当時のテンプル騎士団の兵士たちは名誉がすべてでしたから。

――戦いの舞台は、トルコのコンスタンティノープル(現イスタンブール)以外に登場しますか?
ロマン いえ、コンスタンティノープルにおける十字軍の戦いがゲームのコアーになります。当時のヨーロッパの歴史の中ではとても有名な事件でありながら、トラウマにもなっている。この戦いがある意味では西ヨーロッパの中世の終焉になったと思います。だからゲームではそこを重点的に描いています。ちなみに、ゲームの始めでは当時のフランスをちょっとだけ味わえます。そこからクロアチアを通ってコンスタンティノープルに入ることになります。

――偶然にも、2011年に発売されたユービーアイソフトの『アサシン クリード リベレーション』の舞台もコンスタンティノープルでしたが?
ロマン この質問を聞かれるのは二回目です(笑)。『カースド クルセイド』は、『アサシン クリード』と比べて、あまりにも違うゲームなのです。ちょっとナイーブな答えになりますが、コンスタンティノープルとその時代がやはりゲームの舞台としておもしろいと、私たちが思っていること。そして『アサシン クリード』の開発チームもユーザーにアピールするためにコンスタンティノープルを選んだわけで、結果的に私たちの選択がある意味で正しかったことを示しているかもしれません。

――日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
ロマン 『カースド クルセイド』ゲームのシステムを覚えた上で、その奥深さをぜひ楽しんでください。本当にやれることが多いゲームですので。もちろんゲームが苦手なアクション初心者でもカジュアルに十分楽しめる作りになっています。そしてプレイを重ねて自信がついたら、システムの深さに潜って、ひとつの戦いスタイルをマスターして、このゲームをさらに楽しんでもらえるとうれしいです。それと、ストーリーも重要なので、そこも日本のユーザーに楽しんでもらいたいですね。敵と思っていた人物がいいヤツだったり、仲間と信じていたらじつは悪者だったり、いろいろな驚きがあります。このアクションとストーリーの組み合わせをたっぷり堪能してほしいですね。
 

本格派ダークファンタジー『カースド クルセイド』開発者インタビュー_02
『カースド クルセイド』
ゲームデザイナー
アデム・ベルカドラ

――まずは自己紹介をお願いします。
アデム・ベルカドラ氏(以下、アデム) アデム・ベルカドラ(Adhem Belkhadra)と申します。『カースド クルセイド』のゲームデザイナーとレベルデザイナーを担当しています。このプロジェクトの準備期間から参加しています。ゲームデザイン、レベルデザイン、マップ製作、あと少しストーリーにも絡んでいます。

――『カースド クルセイド』はどんなアクションゲームですか?
アデム 私たちが実現したかったのが、協力プレイがベースになったハック&スラッシュアクションです。昔の『ベア・ナックル』のようにゲームの始めから終わりまでふたりで進められるゲームが現在あまりないと思い、本作を考えました。またアクションゲームとして、多くの武器のバリエーションを用意しました。ずっと同じことをくり返すゲームにならないように武器の組み合わせや、多くのトドメのアクションなどにより、ダイナミックと深さがある体験をプレイヤーに届けたかったからです。さらに“呪い(curse)”というテーマも大事です。ふたりの主人公がふたつの世界のあいだを行き来しながら戦います。

――トドメのアクションはかなりダイナミックですよね。
アデム 中世ヨーロッパを忠実に描きたかったので、その暴力的で汚くて暗い世界をちゃんとゲーム内で描くことに注力しました。キャラクターの動きもモーション・キャプチャーで表現し、本当に当時の戦争スタイルと世界観をできるだけ完璧に再現するよう気を付けたんです。ですので、剣だけの戦いだと物足りないと思い、敵キャラクターへのトドメにダイナミックなアクションがくり出せるようにしました。樽で敵を気絶させたり、井戸に落としたり、ツボを投げたり、松明で相手の顔を焼いたりなど、これらがゲームプレイにバリエーションを与えています。さらに、協力プレイでしかできないアクションも用意していますよ。

――キャラクターのアニメーションはどうやって考えたのですか?
アデム まずスタッフが技のモーションを紙に書き、そしてスタッフどうしで棒を持ちながら、そのモーションを実現して考えて、いろいろな実演を行いました(笑)。そこからモーション・キャプチャーをスタートし、そのなかでクリエイティブ・ディレクターがもっとおもしろくなるアイデアがあれば、その場で細かい部分を変更しました。たとえば、ある攻撃にもっとパワフルな印象をつけたかったので、キャプチャーのスタッフに話して大振りにするよう修正したりしました。今回のモーション・キャプチャーに参加してもらったアクターたちは、映画界で活躍している方々です。アクション映画と格闘の専門家として、このプロジェクトに重要な影響を与えてくれました。

――プレイヤーキャラクターが使用可能な武器はどのようなものですか?
アデム 『カースド クルセイド』には、剣、こん棒、斧などを始めとする17種類の組み合わせがあり、それぞれの武器が特徴がまったく異なります。ある武器は敵のアーマーに対して効果的ですが、別の武器は相手の体力に効果があったり。たとえば、こん棒は体力よりもアーマーにダメージを与えます。剣の場合はHPにダメージを与えます。遭遇した敵の種類によって武器を使い分けて戦うのが重要ですね。さらに、敵のアーマーは、頭、体、足といった3つの部位に分かれているので、武器をうまく使えば、ひとつの部位を集中的に狙い、敵をうまく倒せるようになります。

――“呪い”は、ゲームプレイに何をもたらすのでしょうか?
アデム 呪いはゲームプレイとストーリーで重要なものです。主人公の父親が行方不明になり、すべてを失った主人公デンズが聖戦に参加し、父親の居場所を探しに行く。ストーリーが進むとその呪いのことに気付いて、特別なパワーを手に入れるのです。テンプル騎士団の呪いは、実際にあった話です。当時テンプル騎士団があまりにも強大な権力を持つようになった為、キリスト教から追い出されて、呪いをかけられたというエピソードがあります。『カースド クルセイド』はその話をベースにしました。主人公たちは地獄に落ちないように、呪いを解く方法を探します。ゲーム内ではボタンひとつでその地獄の並行世界に切り替わります。ゲームが進むと、地獄の世界と現世を行き来して先に進むことになります。現世では見えなかったものが、地獄では見えるようになったり、さらに地獄の世界にしか存在しない敵もいます。ある時主人公は自分以外にほかの人も同じ呪いが掛けられていることに気付きます。その呪いをかけられた戦士の話が、ストーリーで重要な意味を持つのです。

――呪いの力はどうやって発動するのでしょうか?
アデム 敵を倒すほど呪いのゲージが貯まっていきます。人の死によって負の力が貯まるという設定ですね。呪いの力がマックスになると、自動的に地獄の世界に切り替わります。地獄の世界にいると時間経過とともにゲージが減り、ゼロになると今度は自分の体力が減り始めます。ある意味でこの呪いはプレイヤーにアドベンテージを与えてくれる存在です。

――死神とはどんな存在ですか?
アデム 本作では、プレイヤーキャラクターの体力がゼロになっても、まだゲームオーバーではありません。死神が出現し、主人公まで歩いて来てトドメを刺します。その短い時間内に仲間が助けに来ないとゲームオーバーになるのです。ゲームを進めると“カース攻撃”を学んで、遠いところから炎による攻撃ができるようになります。炎攻撃で死神の動きをちょっと遅らせることも可能です。この死神のシステムは協力プレイをより奥深くしたかったので採用しました。敵に倒されるとただゲームオーバーになるのはあまりおもしろくなかったので。また、死神を人間のような姿にしたのには理由があって、ゲームのストーリーのためでもあります。死神のホラー的なビジュアルとドキドキ感がとてもよくできていると思います。

――協力プレイの見どころはどこですか?
アデム マップのなかで、リフトアップ、重いものを押す、攻城兵器など、ふたりで協力して進む場面がいろいろあります。攻城兵器の場合はふたりのユーザーがチームワークでその武器を動かします。

――協力プレイの戦闘はどうですか?
アデム 協力プレイのトドメ技は、装備中の武器の組み合わせ次第で変わります。ひとりのプレイヤーが敵を掴んで、もうひとりがトドメを刺すこともできたりします。

――本作に期待しているゲームファンにひと言お願いします。
アデム Kylotonn Gamesの力とアイディアをすべて注ぎ込んだ作品なので、楽しんでもらえるとうれしいです。協力プレイが重要な作品になります。日本のゲームファンの皆さんは集まってプレイするのが好きだと聞いています。『カースド クルセイド』では一台のゲーム機でふたりが協力プレイを楽しむことができます。ですので、友だちといっしょに冒険に出発し、お互いに助け合って遊んで下さい!


カースド クルセイド
メーカー ユービーアイソフト
対応機種 PS3プレイステーション3
発売日 2012年2月9日発売予定
価格 7329円[税込]
ジャンル アクション・アドベンチャー / 歴史
備考 PlayStation Network対応 開発:Kylotonn Games