神曲揃い!“『ファイナルファンタジーXV』オリジナル・サウンドトラック発売記念 コンポーザー下村陽子トーク&ミニライブ”リポート

公開日時:2016-12-21 12:00:00

 スクウェア・エニックスから発売中の『ファイナルファンタジーXV』のゲーム内楽曲を収録した『FINAL FANTASY XV Original Soundtrack』が2016年12月21日(水)に発売。それを記念し、『FFXV』のメインコンポーザーを務めた作曲家・下村陽子氏がトークをくり広げる特別イベントが、2016年12月18日(日)にタワーレコード渋谷店にて開催された。

 本イベントでは司会を声優の利根健太朗さんが務め、下村氏が楽曲制作の裏側や、制作中のエピソードを交えたマル秘トークを展開。イベント後半には、ピアニストのピアニート公爵氏が登場し、劇中の楽曲のピアノアレンジ版を生披露と、盛りだくさんの内容となっていた。今回は、その模様をお伝えしていこう。

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▲ニフルハイム帝国軍とのバトルBGM『Veiled in Black』に合わせて登壇した下村氏と、本イベントが開催される2日前に『FFXV』本編をクリアーし、まだまだ感動の余韻が残っているという利根健太朗さん。

楽曲についての貴重なエピソードが満載

 最初の話題は、下村氏の『FFXV』のプレイ状況について。下村氏は『FFXV』のためにプレイステーション4を用意し、セッティングも万全に済ませたのだが、残念ながら新たな仕事が舞い込んできてしまい、準備段階でストップしてしまっているのだとか。ちなみにこのお仕事は、“某『FFXV』関連”とのことで……詳細は、イベントの最後に下村氏の口から発表されることに。

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 トークパートでは、サウンドトラックに収録された全96曲のうちから厳選した楽曲を聞きながら、その楽曲についてや、作曲当時のエピソードなどが語られた。まず1曲目は、タイトル画面などに使用されている楽曲『Somnus (Instrumental Version)』について。この楽曲は、『FFXV』がまだ『FFヴェルサスXIII』だったころ、いちばん最初に作曲した楽曲とのこと。『FFヴェルサスXIII』のときにはボーカル曲だったが、そのときにバイオリンによるインストゥルメンタルバージョンも同時に収録したそうで、それが今回『FFXV』にも採用される形になったそうだ。こうした経緯から、約10年越しに日の目を見た楽曲ということで、下村氏は「温めすぎて、かなりぬくぬくの楽曲なのですが(笑)、非常に思い出深くて感動してしまいました」と続けて語り、非常に感慨深い様子だった。

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▲旅を振り返るように聞き入る観客たち。大音量で聞く楽曲たちには、ノクティスたちの冒険をついつい思い出し、記者も思わず心にジーンときてしまった。

 つぎは、フィールドの移動中などに流れる雄大な楽曲『Valse di Fantastica』。旅のテーマ曲でもあるこの曲を聞くと、ふと利根さんが「旅といえば、ゲーム中で下村さんを発見したんですよ!」と驚きの発言! 利根さんが発見したという、下村氏がモチーフになっているかもしれないキャラクターは、レスタルムの駐車場の近くにいる。彼女が食事をしているところを見ると、イグニスが“ふわとろ親子丼”のレシピを思いつくのだ。下村氏は驚きながらも、「確かに以前イベントで、田畑さん(ディレクターの田畑端氏)からよく作る料理とレシピを聞かれて、親子丼と答えたんですよ」という、まさかの裏付けが取れるようなエピソードを披露! ちなみに田畑氏から尋ねられた際のやり取りは、下記の関連記事に。

[関連記事]伊藤賢治氏と下村陽子氏が、『サガ』や『キングダム ハーツ』の秘蔵音源を公開! SQEXコンポーザートークショーをリポート【TGS2015】

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▲こちらが下村氏がモチーフになっているかもしれない、レスタルムの女性。楽器を持ち歩いているということは、やはり……?

 続いては、PVにも使用されている楽曲『APOCALYPSIS NOCTIS』について。壮大さと激しさの入り混じるこの曲を作曲された際は、制作スケジュールが佳境に入っていたりと多忙な時期で、かなり追い詰められた精神状態で作曲されたのだとか。「そんな精神状態から、さらに自分が逃げられないように心を追い込んで作りました」とのこと。また、開発中には“悲しい曲”と呼ばれていた『Melancholia』を聞き、利根さんは本作における曲のバリエーションを絶賛。下村氏も「私だけではないコンポーザーの方々が参加してくださったおかげで、全96曲という曲数以上に、曲の幅やボリュームがあると思います」と、柴田徹也氏(コンポーザー)、青木佳乃氏(コンポーザー)、鈴木克崇氏(アディショナルコンポーザー、アレンジャー)らを褒め称えつつ、本サウンドトラックに太鼓判を押していた。

 そしてここで、ピアニート公爵氏(以下、ピアニート侯爵)が登場し、3曲の楽曲をピアノアレンジで生演奏。ピアニート公爵は、サウンドトラックの初回生産限定特装盤の特典として封入されているボーナスCD“Piano Arrangement”の演奏を3曲担当している。担当することとなった経緯のお話は、ピアニート公爵がニコニコ動画に演奏動画をアップロードを始めた約8年前まで遡る。そのころから下村氏はピアニート公爵の演奏に心を奪われ、いつか演奏をお願いしたいと思っていたそうだ。そして月日は経ち、『キングスレイブ FFXV』にも使用されている楽曲『LUNA』を収録する際に、偶然にもピアニート公爵を紹介してもらい、すぐにお願いする形になったという。

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▲ピアニート公爵。『FFXV』はまだまだ始めたてで、ガーディナへの旅を満喫中だとか。

 ピアニート公爵が演奏してくれたのは、『晦の夜の夢-Somnus-』、『月華の円舞曲-Valse di Fantastica-』、『心に降りつもる雪-Melancholia-』の全3曲。『心に降りつもる雪-Melancholia-』は、ピアニート公爵みずからピアノアレンジを施した楽曲で、下村氏もその出来栄えを大絶賛。“Piano Arrangement”に収録された楽曲には、すべて日本語名のタイトルが付けられているのだが、それは『心に降りつもる雪-Melancholia-』を聴いたのが一因だそう。下村氏は「この曲を聞いたとき、心の中で、暗い夜に雪がしんしんと降っているイメージが強く残ったんです」と、そのイメージを伝えるために日本語名のタイトルを付けたかったと語った。

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▲ピアニート公爵の演奏は圧倒的な美しさで、会場全体を飲み込むよう。オリジナル楽曲とはまた違った感動があり、演奏終わりにはため息が出てしまうほど……。

 いよいよイベントは終わりも近づき、最後には登壇された3名からそれぞれお別れのご挨拶。その中で、下村氏は「“Piano Arrangement”の全6曲を作っていて、もっとピアノアレンジをしたいなと思いまして……じつはすでに、単体のピアノアレンジアルバムが動き始めているんです」と、驚きの発表が! 『FINAL FANTASY XV Original Soundtrack』を聴きながら、その続報を楽しみに待とう!

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▲イベントの終わりには、下村氏が会場に集まった熱心なファンたちに、タワーレコード渋谷店と『FFXV』のコラボポスターを手渡ししながら、感謝の気持ちを伝えていた。

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下村氏とピアニート公爵のミニインタビューをお届け!

 最後に、イベント終了直後の下村陽子氏と、ピアニート公爵に本イベントの感想や、これからのイベントについての意気込みなどのお話をうかがった合同ミニインタビューをお届けしよう(文中はそれぞれ“下村”、“公爵”)。

――まずは、本日のイベントの感想をお願いいたします。

下村 皆さんのお顔がステージ照明の関係でよく見えなくて、「楽しんでいただけているのかな?」と、ちょっと不安に思っていたんです。でも、最後のポスター手渡し会で、ひとりひとりから熱いメッセージをいただくことができて、こういったイベントを開催できたことを本当にうれしく思っています。

――ファンの方々とはどういった会話をされましたか?

下村 「中学生のころからずっと好きでした!」って、愛の告白ですか!? みたいなメッセージもいただきました(笑)。あとは、「ピアノアレンジアルバムが楽しみです」という期待の声や、「コンサートの開催を待っています!」というお声も多くいただきました。そこはもう、スクウェア・エニックスさんに今後がんばっていただければと!(笑)

――やはりそこはファンの皆さんが期待するところですよね。ピアニート公爵さんは、ファンの方々の目の前でピアノ演奏を披露されて、いかがでしたか?

公爵 普段はグランドピアノで演奏しているので、ステージピアノを使う機会があまりなく、不慣れな点もあり緊張していました。ですが、ファンの方々が集まっている中での演奏というのはすごく光栄なことで、とても気持ちよかったですね。

――今回、下村さんから始動が発表されたピアノアレンジアルバムにも、参加されているのでしょうか?

公爵 はい、参加させていただいています。

下村 いまのところですが、10曲の収録を予定していますよ。

――楽しみです! では、いよいよ発売を迎える『FINAL FANTASY XV Original Soundtrack』の聞きどころなどをお聞かせください。

下村 『FFXV』は本当に世界観が多岐に渡っていますよね。ファンタジーもありながら、リアルな路線もありながら。料理のグラフィックがすごいリアルなのに、材料はベヒーモスの肉なところとか(笑)。そういった不思議な感じは、音楽にも表れていると思うんです。いろいろなジャンルの楽曲を収録していて、私だけではなくほかのコンポーザーの方々も多数参加されていますから、サウンドトラック単体としても楽しめますし、ゲームをプレイしている人にはそのシーンを思い出しながら聞いていただきたいですね。

公爵 僕が“Piano Arrangement”で担当した曲に関しては、ひとつの曲として突き詰めた楽曲で、演奏会などで弾いてもおかしくないくらいのピアノ楽曲になっています。ゲームのことを思いながら、ぜひ聴いてください。

――ちなみに、下村さんも絶賛していた“心に降りつもる雪-Melancholia-”のアレンジの際には、下村さんから注文などはあったのでしょうか?

公爵 いえ、まったくなかったですよ。どうアレンジしようか考えて考えて作って、冷たさや、くり返し来るもの、心に迫るものをイメージしたアレンジにし、お出ししたのものがそのままオーケーをもらえたという感じでした。イベント中でもありましたが、下村さんにも夜の雪を連想していただいて、本当に嬉しかったですね。

下村 収録中も私、ずっと「雪……雪……」って言ってましたね(笑)。ほかのアレンジ楽曲も、とくに注文は出していないんですよ。それなのに偶然にも、“夜”をイメージする楽曲が多いんです。そこが不思議なんですが、『FFXV』は全体的に“夜”を連想させることが多いので、そこが楽曲たちにも反映されているのかなと思います。もちろん限定されたイメージではないので、聴いてくださる方々には、自由にイメージを膨らませてほしいですね。

――イベント中に、ご自身の精神状態が曲にも影響されるというお話をされていましたが、具体的にはどういったことをされていましたか?

下村 たとえば悲しい曲を作らないといけないとき、すぐに完成できたらそれでいいんですが、作ってるうちにもっとしっとりとした感じを出したいなとか、自分の中での要求が出てくるんです。そこに自分の気持ちが付いていかないと中々できないので、そういったときは悲しかった出来事を思い出したりして、自分の気持ちを作っていっています。

――1曲作るのに、どれほどの時間がかかるものなのでしょうか?

下村 本当にピンキリで、平均時間というのはないですね。1曲作るのに20分だったものもあれば、3ヵ月ぐらいかかって完成する曲もありますよ。

――このタワーレコード渋谷店でのイベントを皮切りに、東京・タワーレコード新宿店、大阪・タワーレコード難波店、ディスクピア日本橋店、北海道・HMV札幌ステラプレイス店と発売記念イベントを控えています。最後に下村さんを待っているファンの方々に、下村さんからメッセージをお願いいたします。

下村 こういうイベント自体が初めてですし、仕事で北海道に行くことなんてめったにないので、それが楽しみですね。あとは大阪のディスクピア日本橋店って、私がカプコンに務めていたときに、よくCDを買いに行っていた思い出のお店だと思うんですよ。昔のことなので、間違っていたらごめんなさい(笑)。当日は私自身も楽しみたいですし、皆さんも当日を楽しんでいただけたらうれしいです。

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▲なお、タワーレコード渋谷店8FにあるSpaceHACHIKAIでは、“FINAL FANTASY XV × TOWER RECORDS展”を開催中。『FFXV』のさまざまな展示品に加えて、グッズ販売やサウンドトラックCDの販売を行っている。

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▲来場者が自由に書き込めるメッセージボードには、下村氏のメッセージもあるのでぜひ探してみよう。

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▲ノクティスたちのパネルがズラリ。ちなみに、ノクティスたちの真ん中にあるColemanのキャンプセットには自由に腰掛けることも可能だ。

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▲スペースの奥では、美麗なグラフィックとともに音楽を楽しめる“Blu-ray Disc Music”の視聴シアターが自由に閲覧できる。

▲限定ブロマイドの販売や、ノクティスたちといっしょに写真を撮れるブースも!

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