『ファイナルファンタジーXV』田畑DにPS VR対応やE3試遊版の内容についてインタビュー【E3 2016】

公開日時:2016-06-15 04:00:00

 2016年6月14日~16日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催される世界最大級のゲーム見本市“E3”。スクウェア・エニックスのプレイステーション4、Xbox One用ソフト『ファイナルファンタジーXV』は、巨大な召喚獣・タイタンとのバトルを体験できるデモ版を出展しているほか、PS VR対応を発表するなど、2016年9月30日の発売へ向けて多彩な動きを見せている。そこで、ディレクターを務める田畑端氏を直撃。別途、ブースには未出展のメディア評価版(E3で有力メディアが選ぶアワードの評価用に用意されたもの)で本編の冒頭から試遊させてもらい、その内容に関してもうかがった(聞き手:週刊ファミ通編集長:林克彦)。

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▲田畑端ディレクター。

E3会場で体験できたタイタン戦

――まずは、今回のE3ではバトルをフィーチャーし、試遊にタイタン戦を選んだ理由をおうかがいできればと。

田畑 タイタン戦をチョイスしている理由は、短いプレイ時間で、『FFXV』ならではの迫力やインパクトを感じられ、どんな方でもアクションにすぐなじめるように作っていることを体験してもらえるからです。遊びやすさだけを伝えようとすると、オーソドックスにゲームの序盤を遊んでもらうことになるのですが、それじゃあインパクトがないですからね。バトルにフォーカスに当てている理由は、実機であれくらいのものが実現するということを、ハッキリと伝えたかったからです。去年くらいから、「E3はバトル中心」と決めていたんですよ。

――そうなんですか。確かにタイタンのインパクトは大きいですね。ちなみに、試遊版は製品版の切り出しそのままではないですよね。どのあたりがが違うんですか?

田畑 カメラなど細部の調整はもっと進む思います。それと、タイタンと直接戦っている感覚も引き続きチューニングしていきます。タイタンのほかにその場に帝国の魔導兵がいて、試遊版ではあまり戦況に影響はないのですが、製品版では三つ巴の戦いが展開します。

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本編冒頭からチャプター1の終わりまでを遊んで

――E3のメディア評価版(ブース未出展)では、本編冒頭からチャプター1の終わりまで通しで遊ぶことができましたが、じつにテンポがいいですね。途中、クルマで移動するのが待ち時間になるところも含めて、こういうのもいいなって。いわゆるチュートリアルらしいチュートリアルではない形で、いろいろなことを覚えられるようにもなっていますし。

田畑 いちばん悩ましいのがそこだったんです。制約されることを嫌うユーザーは、海外のゲームが好きな人が多く、制約はされたくないけれどナビゲーションはしっかりしてもらいたいというユーザーは、日本の方が多い。そういう中でバランスを取った結果です。

――キャラクターがよくしゃべるので飽きないし、やめどきがなかなかなくて。序盤なのでお話も切羽詰まってないから気楽にドライブを楽しめて、何か気になることがあったら寄り道できる。チャプター1の最後で物語が一気に動く、あのバランスも絶妙だなと感じました。

田畑 ありがとうございます。最初のゆったりしたところは、ゲームに慣れていただくために必要な時間と考えていて、なるべくプレイヤーのペースで動くことができつつも、道には迷わないようにしています。メインルートをしっかりとわかりやすくして、安心して横道に行けるようにもしてあります。

――探索していると、フィールドにもエレメントの採集ポイントがあって、ほかにも卵を拾ったりとか、そうした発見が楽しいなと。

田畑 そういうの、僕もけっこう好きで(笑)。リアリティーは下がるんですけど、いろいろな物を集めたり、魔法を合成で作っていったりするのは、『FF』らしいシステムにつながるものとして欲しいなと。クルマをカスタマイズするためのパーツなども、そうやって集めたりしますね。

――世界がリアルに作られているがゆえに、どこまでそういう要素を入れてもおかしくないか、悩みませんでしたか?

田畑 それはありましたね。もっとリアルになって、実際に落ちている物のビジュアルをちゃんと作れたらいいんですけど。いまはそこまではいかないので、リゾート地なのに光っているポイントにネジとかが落ちてる(笑)。以前、林さんにおっしゃってもらったことがありますが、“物語の先が気になり、演出に目を奪われ、でもシステムはイジり甲斐があり、バトルが楽しくて時間を奪われてしまう……”、そういう期待に応えるものにならないといけないなって思うんですよね。ゲームを進めることだけが目的じゃなくて、「この魔法が欲しい」と懸命に素材を集めて作ったり、そういう部分が充実していないと。それは『FFVII』からシステムを担当しているスタッフに、しっかりと作ってもらっています。

――そうした部分が作り込まれているのはうれしいですね。ちなみに探索のときに、ダッシュすると途中で疲れてしまいますが、あれはリアルさを求めているからですか?

田畑 そうですね。そのバテかたをどう伝えるかが難しかったところで。

――走り出すと、以前はなかったスタミナゲージが表示されるようになっていましたね。

田畑 デザインはまだ最終的なものになっていないんですが、バテる前にシグナルを出そうという話をして。最初はキャラクターの挙動で知らせようとしていたんですけど、操作感が変わってストレスが増えてしまって、スタッフからかなり不評で。でもシグナルは欲しいということで、それなら潔くゲージを出そうということになりました。

――バトルは武器のタイプが豊富で、登録した4つの武器を一瞬で切り換えられるようになっていて、自分なりの戦いかたを追求できそうなのがいいですね。わかりやすく、いろいろとやりたくなるというか。

田畑 そこは強く意識していた分、本当に手応えがあるところで、ゲームのヘビーユーザーではない人に「ちょっとやってみて」とコントローラを渡したとしても、すぐに楽しめるように作っています。移動もバトルも、好きなようにできる。触れば、ゲームが応えてくれる。たとえば『アンチャーテッド』や『GTA』は、コンセプトは違えどその方向を突き詰めているじゃないですか。『FFXV』も、『FF』でありつつもそういう部分を持つことができたんじゃないかなと思いますね。パッと渡して遊べる、というのは大事ですよ、やっぱり。

突如発表されたVR対応! その内容と狙いとは?

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――PS VR対応が発表されて驚きました! こちらはどのようなコンテンツなんでしょうか。

田畑 『FFXV -EPISODE DUSCAE-』でピックアップしたバトルを、VRでライブ体験できます。ここでのプレイアブルキャラはプロンプトになります。実際にもう遊べるんですけど、公開したトレーラーよりずっと開発が進んだいいものになっていますよ。こちらは価格など詳細は未定なんですが、いまのところDLCで提供しようと思っています。

――Xbox One版はどうなるんですか?

田畑 Xbox OneがVRに対応すれば、出しますよ。

――なるほど。このコンテンツにはストーリーなどはあるのでしょうか。

田畑 いわゆるストーリーが入ったDLCとは別です。これはVR用のコンテンツで、今回の『FFXV -EPISODE DUSCAE-』のほか、ほかのキャラクターで本編のどこかをライブ体験できるVR用のDLCも検討中です。

――全編をVRで遊ばせるというわけではないと。

田畑 そうですね。全部はさすがに(笑)。VRのゲームって、主観視点じゃないですか。『FFXV』は主観で遊べるような仕組みになっていなくて、ただ対応させただけではヒットエフェクトひとつ、まともに出せないんです。けっこう変えないといけなかったので、「全部をVRにするのは無理だな」っていうのがよくわかって。

――では、特定のバトルやボス戦などがVRで楽しめるという認識でいいんですかね。

田畑 そうですね。あと、ドライブがすごくいいんです。

――シドニーが運転してくれるシーンがありましたが、あれですか?(笑)

田畑 戦いに勝つと、エンディングでプロンプトがシドニーとドライブするっていう(笑)。今回はアメリカ開催のショーになるので、かなりエンタメに振った見せかたをしていますが、それができるのも『FFXV』のキャラクターたちのフレキシビリティーというか、キメキメな部分だけではなく人間味があるという部分でのよさかなと。これをきっかけに、さらに彼らに対する親しみを持ってもらえればと思っています。

――以前からVRには興味があって、研究もされているというお話をされていましたけど、実際にやることを決めたのはいつごろなんですか?

田畑 SIEさんから「やりませんか」と機会の打診をされたのは、わりと最近ですね。機材が来てから、まだそんなに経っていなくて。それまでにも研究はしていたので、意外とすんなり対応できたんです。

――このコンテンツは『FFXV』にとってはどんな位置づけのものになるのでしょうか。VR対応した狙いをお聞きできれば。

田畑 『FFXV』のVRコンテンツは、あくまでゲームの世界を体感する手段です。パッとわかりやすく体験するのにすごくいい、カジュアルなコンテンツになっています。先ほどお話した、ゲームをあまり遊んだことのない人にコントローラを渡しても、すぐに遊んでもらえるというコンセプトに、すごく近いものです。あまり考えなくても、敵が襲ってきて応戦していると、仲間が助けてくれて「なんだか楽しいな」と思える。“おもしろさ”より“楽しさ”がフィーチャーされているVRですね。

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予約は好調! 日本のファンにうれしいニュースも……

――今回のE3でタイタン戦が遊べて、6月16日には『ブラザーフッド FFXV』も2話が公開になり、『キングスグレイブ FFXV』も封切が間近。いよいよプロモーションが本格的に動いてきたという感じがしますね。

田畑 ユーザーの皆さんも、一気に実感が湧いたのではないかと思います。発売日を発表していちばん強く感じたのは、「出るんだな」っていうリアリティー。そう信じてくれているユーザーさんがすごく多いんだと体感しています。

――全体の進捗はいかがですか?

田畑 PS4とXbox One、双方の実機で動いているのを見て「いけるな」って感じています(笑)。どちらでもきちんと動くようにしながら、最適化を進めているところで。僕もコンソールでマルチをやるのは初めてなので、驚くことも困ることも本当に多いんですけど。

――PS4版とXbox One版で、何か差はあるんですか?

田畑 ハードスペックが違うので、完全に同じにするのはきびしいですね。とはいえ同じ体験を提供したいので、それぞれに最適化をしています。いろいろな機能をカスタムすると一気に動かなくなったりもして、マルチの難しさを味わっていますよ。3歩進んで2歩下がっている感じ(苦笑)。まあでも、僕らにはDAY-1パッチというものもありますし大丈夫です。

――ああ~(笑)。

田畑 冗談ですよ(笑)。ただこれだけの規模のHDゲームであれば、デバックの面など快適なゲーム体験のためには、DAY-1パッチも含めて設計しないといけないと思います。

――そうした計画含め、9月30日までの道筋が見えてきているということでしょうか。

田畑 そうですね。僕が見えているというよりは、品質管理部から「なんとかなりそうですね」って話がきたので。

――それはリアリティーがある話ですね(笑)。

田畑 でしょう(笑)。ローカライズチームも「なんとかなりそうです」と言っているので、なんとかなるかなと。日本語と英語に関してはほぼできているし、フランス語とドイツ語もボイスを入れていたり、字幕ならポルトガル語や南米の言語もカバーしているので、「どんだけ作ってるんだ」っていう(笑)。

――言語対応だけでもひと苦労ですね。ちなみに、発売日が発表されて予約受け付けが始まりましたけど、手応えはいかがですか?

田畑 あまり反感を買わないようにしておきたいんですが……いまのところ超・絶好調です!(笑)。

――(笑)。そうですか、ユーザーに響いているということですね。

田畑 日本のある小売店さんから聞いた話だと、いま『FFXV』を予約している方の、PS4とXbox Oneの所持率は半分以下だそうです。つまりほとんどは、これからゲーム機を買う人たちということ。これは「日本来るかもな」と。そんなデータは聞いたことがないので、どこまでいけるか期待しています。

――ワールドワイドでの予約数も、今回のE3でブーストがかかりそうですね。

田畑 欧米の予約数は、目標の倍ぐらいいっているんですよね。なので、1000万本売らないと赤字だ、という誤報が出たりもしましたが、結果的に大台もいくかもしれない……というのは冗談です。そんなに甘いとは思ってません。

――とはいえ順調に積み上がっていることはうかがえます。限定版も瞬殺でしたし、あとは同梱版を待つばかり、と。

田畑 本当ですよね。こればかりはSIEさん次第ですけど、発表されてほしいです。

――ちなみに、日本のユーザーが『FFXV』に触れられる機会はありますか? やはりゲームショウになるんでしょうか。

田畑 ゲームショウだと限られた人たちしか体験できないので、ほかにも試遊の機会を作れないか検討してもらっています。

――それは量販店や小売店で、ということですか?

田畑 そうですね。やっぱり触った人たちの声がないと、いくらおもしろそうに見えても客観的なリアリティーに欠けると思うので。ショップに来て体験してもらえるなら、それはすごく有効だなと。それ以外にも積極的に体験機会を作って、もっともっと日本での販促活動をがんばりたいですね。

――では最後に、日本のユーザーに向けて、9月30日の発売に向けて意気込みをいただきたいと思います。

田畑 “UNCOVERED: FINAL FANTASY XV”の後、日本でも大きく注目していただけるようになり、予約も目標以上の数字が達成できています。予約している人たちの多くが、これからゲーム機を買おうと思っていることも、僕らにとってすごく勇気づけられることでした。これまで意識していた以上に、ひとりでも多くの方に知ってもらうための努力をして、期待をもって買ってもらいたいなと。そして、手に取ってくれた人たち全員に「買ってよかった」と思ってもらえるようにしたい。E3以降、実機で動くようになっているものを、日本の多くの方に見てもらい、触ってもらい、知ってもらえる機会を作ろうと思います。その時をご期待ください。

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