ファミ通Books

ゲーム関連書籍の専門部隊“ファミ通コンテンツ企画編集部”のページ。
ゲームのプレイ日記やプレイ漫画、イラスト集などバラエティ豊かな本、作ってます。

  • ファミ通BOOKS>
  • ファミ通BOOKSがやってみた>
  • インディーゲーム関係者たちの憩いの空間 月にいちどのクリエイティブな飲み会『Tokyo Indies』

インディーゲーム関係者たちの憩いの空間 月にいちどのクリエイティブな飲み会『Tokyo Indies』

公開日時:2017-02-09 20:00:00

S__30466346

 インディーゲームの制作は、時として孤独な戦いである――。

 “インディー”という言葉は、“independent(独立した)”に由来する。
大きな企業の中ではなく、独立した個人として、あるいは少数のチームで、自由な表現を追求する者たち。“インディー”とは、ゲームのジャンルであると同時に、彼らのマインドそのものを指している。

 しかし、自由とは同時に制約でもある。

 忙しい仕事の合間を縫っての開発は思うように進まない。会社を辞めてゲーム制作に専念すれば、こんどは金銭面での不安がおそいかかる。そして、個人や少数のチームという開発環境では、そんな心境を相談できる相手も限られてしまう。

 だからこそ、悩みや経験を共有できる他のクリエイターとのつながりは、RPGの頼れる仲間のように、ゲーム製作という旅路を冒険するうえで欠かせない存在となる。

 本記事では、そんな仲間づくりの場のひとつとして誕生し、インディー・商業の垣根を越えて注目を集めているイベント“Tokyo Indies”を紹介したい。

……なんだか仰々しい導入になってしまったが、あまり構えずに読んでいただきたい。なぜなら、RPGで仲間と出会える場所は“酒場”と相場が決まっているように、“Tokyo Indies”もまた、気軽にふらりと足を運べるような、笑顔の絶えない“飲み会”だからだ。

Tokyo Indiesとは?

S__30466313

 “Tokyo Indies”は、毎月1回、渋谷で開催されるインディーゲーム開発者のための集いだ。開発者といってもプログラマーばかりではなく、イラストレーターや作曲家も多く参加している。ゲーム開発に興味さえあれば、誰でも気軽に顔を出せるような(公式サイトいわく)“ゆる〜い飲み会”だ。

bl dw

主催者は『Block Legend』のAlvin Phu氏。

そこに『Downwell』のもっぴん氏らが加わり、現在は5名で運営している。

S__30466348

 活動拠点は渋谷にあるイベントスペース。ピンクの照明がおしゃれなその空間では、制作中のゲームを見せ合ったり、雑談を楽しんだり、黙々と作業を進めたり……、思い思いの時間を過ごすことができる。前から横から後ろから、どの方向に耳を向けても興味深い会話が聞こえてきて、刺激を受けることは間違いない。

 人数の多い回だと、100人近くが参加することもある。外国出身者が多く、日本人との割合は半々くらいだろうか。初めて参加した方は、その国際的な雰囲気に少し驚くかもしれない。

 だけど、“英語が話せないから(あるいは日本語が話せないから)”という理由で参加をためらう必要はない。中学校レベルのあやふやな英語でも案外会話は成立するし、そもそも、外国人参加者も日本語が達者な方ばかりなので。

「欧米版ではヒロインのセクシー衣装が規制されちゃってさ、オリジナルの日本版が遊びたくて日本語勉強したのよ」「あの規制はマジF○CKだった!!」なんてサイコ―の会話が飛び交う場所はなかなか無い。

S__30466353

ビール片手にゲームの話をしていると、作業で疲れた身体が一瞬で活力を取り戻すのがわかる。

snack

テーブルの上には、だれかが差し入れてくれたアメリカンなお菓子が。疲れが取れたほんとうの理由は、舌が痺れるほど甘いチョコバーで糖分を補給したからかもしれない。

Block Legend(C)Dot Warrior Games
Downwell(C)2016 OjiroFumoto.All Rights Reserved.

恒例のプレゼンテーションタイム

S__30466346

 Tokyo Indiesの“目玉”は、希望者によるプレゼンテーションタイムだ。毎回3~4組のプレゼンターが、作品やイベントについて発表するのが恒例になっている。

 機材の準備が整い、会場も十分に温まったころ、主催者の合図と共にプレゼンタイムは始まる。「待ってました」とばかりに前方のスクリーンをぐるりと取り囲む参加者たち。3時間ほどの飲み会の中で、ワクワクがピークに達する瞬間だ。

 毎回、発表者の顔ぶれは様々。常連のメンバーが満を持して新作を発表することもあれば、ここでプレゼンするためだけに遠方からやってくるクリエイターもいる。聞き手も全員がゲーム関係者ということもあって、会場の反応は非常にあたたかい。おもしろそうなゲームとあれば、ちゃんと遊んで周囲にも紹介しなければ気が済まない人たちばかりなので、宣伝効果は十分といえるだろう。

 この日(2017年1月17日)の発表は3組だった。せっかくなので、簡単に紹介したい。


<欧米的ゲームデザインと日本の様式美の融合。和洋折衷の骨太パズルゲーム『KYUB』>

S__30466334

KYUBは、XboxOneWindowsで発売中のパズルゲーム。正六面体のキューブを操作して1000面以上のステージでゴールを目指す。 

プレイヤーの分身となるキューブは、赤・青・緑のパネルに乗ることで、それぞれ火・水・草の属性を得る。この属性は有利・不利の“3すくみ”関係にあり、水を纏うことで炎のトゲを突破するなど、属性の相性を補完しながらトラップを攻略していく。

ほかにも、べつのキューブと連結すれば盾や武器として使えるなど、プレイヤーを飽きさせないためのさまざまなギミックが盛りこまれている。

S__30466328

日本人には馴染み深い3すくみ。「そこに3色のパネルがあるじゃろ?」

S__30466331

フランスで開発がスタートした本作は、いかにも芸術の国らしい、おしゃれでエスプリの効いたステージクリア型のパズルゲームだ。しかし、“属性の3すくみ”という和製RPGチックなエッセンスが加わり、四季折々の日本庭園を舞台に採用することで、独特のケレン味のあるタイトルに仕上がっている。

“フランス生まれ日本育ち”の本作。興味を持った方は、ぜひプレイしてみてほしい。 

それにしても、日本と海外のインディー文化の交差点として機能しているTokyo Indiesで、こういった和洋折衷なタイトルが発表されるのはおもしろいなあ、と思う次第である。 

Kyub (C)NextNinja


<ゲームを遊ぶにはテレビも必要でしょ? 斬新な発想のゲームジャム『Tiny-TV Jam』>

S__30466320

主催者のひとりである三原氏からは、非常に独創的なゲームジャム(短い期間内にゲームを完成させるイベント)の紹介があった。それが、”Tiny-TV Jam”である。たいにーてぃーびーじゃむ。まずは声に出して読んでください。音の並びが気持ち良いので。

Tiny-TV Jamは、開発ツール『PICO-8』を使ったゲームジャムである。ルールはシンプルでありながら、とってもキャッチー。

10×11ピクセルの小さな平面上で動作するゲームを作ること 

②そして、①のゲームを遊ぶためのテレビもデザインすること!!

作品一覧をみてみると、某ゲーム機風のテレビや、ゲームセンターの筐体を模した2画面テレビ、ゲーム内容に合わせたハンバーガー型テレビなど、個性豊かな作品が並んでいる。

1
2

お手本通りの順番でハンバーガーの具材を重ねる落ちモノゲーム。

 Tiny-TV Jamで使用する『PICO-8』は、“空想上のゲーム機”という設定の開発ツール。レトロ調のゲーム制作に向いており、ノスタルジーあふれるデザインに魅了されるインディー開発者も少なくない。

 残念ながらゲームジャム自体は終了してしまったが、参加作品はこちらの掲示板にてダウンロード不要で触ることができる。力作ばかりなので、ぜひ覗いてみてほしい。

 また、PICO-8の公式サイトはこちら

S__30466318

「Tiny-TV Jamは、“ゲームの中のゲーム機の中で動くゲーム”を作るイベントです」という、一休さんのとんちみたいな内容に困惑する会場。

S__30466316

通訳しながら思わずニッコリ。

 また、三原氏は『Gesuido』というローグライクゲームをスマートフォン向けに開発中。こちらもいつか紹介したいなあ。(公式サイト)


S__304663401

 また、昔懐かしの○○を現代に復活させるため、××を△△する……という最高の企画をプレゼンした方もいたのだが、ここでは書けなさそうなので伏字にさせていただく。ごめんなさい。事情は察してほしい。

S__30466336

ちなみに、会場は拍手喝采の大絶賛だった。事象は……察してほしい。(トンデモ企画の楽しさを共有できるのも、リアルイベントならではである)

 以上だ。“仲間との出会いの場”であり、“情報発信・収集の場”であり、そして単純に“最高に楽しいお酒の席”でもあるTokyo Indiesの魅力が伝わったなら幸いだ。最後に、主催のAlvin Phu氏への簡単なインタビューを掲載して〆とさせていただく。

主催者のAlvin Phuにインタビュー

6Ow8Hhhe

Alvin Phu 
ボストン出身。来日後、勤めていたゲーム会社から独立し、HanajiGamesを立ち上げる。代表作は『Block Legend』。オリジナルゲームの開発以外にも、ローカライズや受託制作も行っている。

――まずは、Alvinさんについて教えてもらえますか。ボストン出身なんですよね。どういうきっかけで日本にいらしたんですか。

Alvin 4年前に旅行で日本に来たときに、ゲームクリエイターの飲み会に参加したんです。そこで知り合った方にゲーム会社を紹介していただいて、日本で就職することにしました。それから2年後に独立して、直後にTokyo Indiesの第1回を開催しました。

――なぜTokyo Indiesを始めたんですか。

Alvin ボストンに住んでいたころも、Boston Indiesというセッションをやっていました。その集まりも、最初はFacebookのメッセージから始まった5人くらいの飲み会だったんです。「部屋にこもって朝から晩まで作業をしていると、頭がおかしくなっちゃいそうになるよね」「じゃあ、近くのバーでゲーム開発の話でもしようか」って。でもいつの間にか100人くらいの大所帯になって、ヒット作を出すクリエイターも生まれて……。それと同じようなコミュニティが東京にも必要だと思ったんです。

――そういったコミュニティに参加するメリットはなんだと思いますか。

Alvin やっぱり、共通の目線を持った方とお話ができることですね。ゲームを作っていると、途中経過を人に見せて、意見を貰いたくなることがあります。そういうとき、Twitterにアップするクリエイターもいますけど、ぼくは苦手なんです。中途半端な状態の作品をユーザーに見せて「つまらなそう」「買うのやめようかな」って思われたらどうしようって。

――SNSは開発者ではないファンもフォローしていますからね。

Alvin その点、開発者だけのコミュニティなら気兼ねなく意見を求められます。それに、もっぴんみたいに、すでに成功しているクリエイターも参加しているから、ゲームの内容だけじゃなくて、プロモーションや海外展開についても相談できます。

――ノウハウが蓄積されているんですね。では、「ぜひ、こんな人に来てもらいたい」というのはありますか。

Alvin ものづくりへのやる気がある方なら誰でも大歓迎です。名前に“インディーズ”とありますが、べつに同人ゲームでもいいし、ボードゲームでもいいんです。大切なのは、「自分のゲームを作りたい」という想いを共有できることだと思っています。

――インディーゲームと同人ゲームの境目が、そもそも曖昧ですよね。

Alvin そうですね。でもその話をするとすごく長くなってしまうので。

――またの機会に(笑) ほかになにかありますか。

Alvin あとは、やっぱり交流会なので、いろいろな価値観を受け入れることができるオープンマインドがある人。ぼく自身はどちらかというとシャイな人間だから、ほんとうは主催者なんて向いてないって思うんだけど……。

――いやいや。Tokyo Indiesがこんなに大所帯になったのも、Alvinさんの人柄あってのことだと思いますよ。

Alvin でも、嬉しいこともたくさんあるんですよ。やっぱりTokyo Indiesに参加してくれたクリエイターがゲームをリリースできると、最高にハッピーな気分になります。最近だと、iOSで発売された「Missileman」がそうです。

――「Missileman」めちゃめちゃおもしろいですよね!! すっげー難しくて、まだクリアできてないですけど……。

Alvin 実は、ぼくもクリアできてないんです(笑)

――お互いがんばりましょう(笑) 最後に、メッセージがあればお願いします。

Alvin くり返しになりますが、やる気さえあればどなたでも大歓迎です。うまく馴染めるか不安という方は、事前にTwitterやメールでお声掛けいただければ対応できます。次回の開催は2月14日(火)です。詳細な日程や場所はTwitterやfacebookをご確認ください。

――今後とも注目しています!! ありがとうございました。


S__30466310

 イギリスのBBC(NHKみたいな公共放送局)もインタビューに来ていた。テレビ局に取材される飲み会。すごい。


S__29573264

戸部マミヤ(仮)
ファミ通コンテンツ企画編集部・新人。
ファミ通BOOKS更新担当。
南米のジャングルで遭難したことがある。

  • ファミ通BOOKS>
  • ファミ通BOOKSがやってみた>
  • インディーゲーム関係者たちの憩いの空間 月にいちどのクリエイティブな飲み会『Tokyo Indies』

この記事の個別URL