ゲーム開発者のための国際カンファレンスGDC（ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス）に合わせて行われるインディーゲーム賞、“IGFアワード”。その2024年度ファイナリスト作品が発表された。

　IGFアワードでは、海外を中心にしたインディーゲーム開発者たちが審査員を務め、同業者の観点から優れた作品を選出する。今年は南インド料理をテーマに移民家族の人生を描く『Venba』が大賞を含めた4部門でトップノミネートとなっている。というわけで今年も全作品を紹介していこう。

Seumas McNally Grand Prize（大賞）

『Venba』 (Visai Games)　PC/Switch、配信中　※日本語非対応だがSwitch版の国内配信もアリ
　主人公ベンバがキッチンで作る故郷の南インド料理を軸にした料理アドベンチャーゲーム。インドからカナダへと家族で移民した一家の物語を、キッチンと食卓を通じて描く。

『COCOON』 (Geometric Interactive / Annapurna Interactive) PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC、配信中　※日本語対応
　リードゲームプレイデザイナーとして『LIMBO』や『INSIDE』を手掛けたJeppe Carlsen氏によるパズルアドベンチャーゲーム。入れ子状の世界を作り出せる不思議な球体を使ってパズルを解き、謎の機械昆虫生命体のテクノロジーによって動く世界を進んでいく。

『A Highland Song』 (Inkle)　PC/Switch、配信中　※日本語対応未定、家庭用版の国内配信なし
　スコットランドの高地地方を舞台としたリズムアクションアドベンチャーゲーム。海を目指して雄大な自然の中を駆けていく主人公の少女モイラと、道中でのさまざまな出会いがテーマ。フォークソングに合わせてボタンを押すことで進行していき、楽曲とシンクロしながら徐々に盛り上がっていくリズムプラットフォームアクションパートが非常に美しい。

『Mediterranea Inferno』 (Lorenzo Redaelli, EYEGUYS / Santa Ragione)　PC、配信中　※日本語対応。PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch版が配信予定
　コロナ禍のロックダウン期間を経て南イタリアの避暑地を目指す、3人のクィアな若者の旅を描いたビジュアルノベル。“蜃気楼の果実”ミラージュを食べ、享楽的に過ごす中で、彼らの奥底に秘められたものが浮かび上がってくる。

『1000xRESIST』 (Sunset Visitor / Fellow Traveller)　PC/Switch、2024年第1四半期発売予定　※日本語対応未定
　異星からやってきた巨大な存在によって蔓延した病気により人類が壊滅。免疫を持っていた少女“アイリス”のクローンたちが地下で暮らすようになっていた……という設定の3DSFアドベンチャーゲーム。プレイヤーはそのような存在のひとり“ウォッチャー”として隠された真実に迫っていく。

『Anthology of the Killer』 (Thecatamites, Tommy Tone, A. Degen / Thecatamites)　PC、配信中　※日本語非対応
　9本の短編フリーゲームによって構成されたアンソロジー形式のアドベンチャーゲームで、ZINE（同人誌）ライターのBBがさまざまな怪事件や現象に迫っていく。超絶ユルいタッチのイラストが動く3D表現なども特徴的。

Nuovo Award（新奇性のある作品に贈られる賞）

『Cryptmaster』 (Paul Hart, Lee Williams, Akupara Games / Akupara Games)　PC、2024年発売予定　※日本語対応未定
　ウィザードリィシリーズなどのレトロなダンジョン探索RPGにひと捻りを加えた作品。ネクロマンサーの導きにより過去の記憶を喪った状態で蘇らされた冒険者たちがダンジョンをさまよう。

　言葉当てゲームの要素が取り入れられており、攻撃（HIT）や宝箱を“開く”（OPEN）などの単語をタイピングするかボイス入力することで進行。ヒントを頼りに単語を打ち込むことで各キャラの能力も思い出していく。PC英語版デモが公開中。

『Kevin (1997-2077)』 (Kevin Du)　PC、未発売　※日本語対応予定とされているが、そもそも特定の言語に依存していない
　象形文字のようなものによって綴られた“ケビン”の物語を、キーボードとマウスでさまよいながら読み解いていくというインタラクティブ作品。

『NIDUS』 (Caleb Wood)　PC、2024年第1四半期配信予定　※日本語対応未定
　サイケデリックアートのスタイルによる花と昆虫の世界を舞台にしたツインスティックシューティング。プレイヤーは連動する“花”と“スズメバチ”の双方を動かしながら、過酷な生態系を生き延びていく。

『The Forest Cathedral』 (Wakefield Interactive, Brian Wilson / Whitethorn Games)　PC/Xbox Series X|S、配信中　※日本語対応未定
　DDTなどの殺虫剤や農薬の危険性を世に訴えたレイチェル・カーソンの著書“沈黙の春”を原作として再構成したパズルアドベンチャーゲーム。3Dの自然環境を背景に赤黒のドット絵によるアクションゲームをプレイするなど、アバンギャルドな表現が特徴。

『1000xRESIST』 (Sunset Visitor / Fellow Traveller)
『Anthology of the Killer』 (Thecatamites, Tommy Tone, A. Degen / Thecatamites)
『Mediterranea Inferno』 (Lorenzo Redaelli, EYEGUYS / Santa Ragione)

Excellence in Design（ゲームデザイン賞）

『Chants of Sennaar』 (Rundisc / Focus Entertainment)　PS4/Xbox One/Nintendo Switch/PC、発売中　※日本語対応
　バベルの塔から題材を得たアドベンチャーゲーム。古代言語を解読しながら、陰影の美しいカラフルな古代世界の謎を読み解いていく。

『Cobalt Core』 (Rocket Rat Games / Brace Yourself Games)　PC/Switch、配信中　※日本語対応
　デッキビルディング要素とローグライク要素が融合したSFストラテジーゲーム。さまざまなカードを使い、たくみに宇宙船を動かして宇宙船同士のバトルを切り抜けていく。

『Final Profit: A Shop RPG』 (Brent Arnold)　PC、配信中　※日本語対応未定
　実の娘から追放された元女王がファンタジー世界の商店の店主として奮闘する、ドット絵スタイルのショップ運営シム。戦闘要素がないかわりにビジネス面が充実しており、ゲームが進むと株売買や不動産取引なども要素として入ってくる。

『Isles of Sea and Sky』 (Cicada Games, Jason Newman, Craig Collver / Cicada Games, Jason Newman, Gamera Game)　PC、2024年第1四半期配信予定　※日本語対応未定
　漂着した古代の島の謎にさまざまなパズルを解きながら迫っていく、ドット絵スタイルのパズルアドベンチャーゲーム。各エリアを行ったり来たりできるオープンな構造になっており、パズルに詰まったら他のエリアを進めてみるといったことができる。

『COCOON』 (Geometric Interactive / Annapurna Interactive)
『Cryptmaster』 (Paul Hart, Lee Williams, Akupara Games / Akupara Games)

Excellence in Narrative（優れた物語体験）

『The Cosmic Wheel Sisterhood』 (Deconstructeam / Devolver Digital) PC/Switch、配信中　※日本語対応
　小惑星に流刑となった占い師の魔女を主人公とするアドベンチャーゲーム。魔力を込めたタロット風のカードを自らデザインしてデッキを構築していけるのが特徴のひとつ。ほかの魔女と交流し、カードで占いながら、さまざまな選択を行って運命を形作っていく。

『The Wreck』 (The Pixel Hunt) PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Switch/PC、配信中　※日本語対応未定、家庭用版の国内配信なし
　36歳にしてキャリアに行き詰まっている脚本家のジュノンを主人公とする3Dビジュアルノベル。母が危篤に陥ったことが知らされるという最悪の一日を乗り越えるべくもがく。過去のトラウマを深く理解することで行動を変化させて現実を変えていくという、一種のタイムループものに似た仕組みも特徴。

『1000xRESIST』 (Sunset Visitor / Fellow Traveller)
『A Highland Song』 (Inkle)
『Mediterranea Inferno』 (Lorenzo Redaelli, EYEGUYS / Santa Ragione)
『Venba』 (Visai Games)

Excellence in Audio（音響賞）

『Nour: Play With Your Food』 (Terrifying Jellyfish / PANIC)　PS5/PS4/PC、配信中　※日本語対応
　ボタン入力に対してさまざまな反応を見せる食材たちと戯れるインタラクティブ作品。爽やかなビートと連動するオーディオビジュアル的な要素もある。

『Rhythm Doctor』 (7th Beat Games / 7th Beat Games, indienova)　　PC、アーリーアクセス中　※日本語対応
　リズムに合わせてボタンを押すことで患者を治療する“リズムドクター”としてさまざまな患者に対応していくワンボタンリズムゲーム。開発の名前の通り7拍目で押すのが基本なのだが、サウンドはもちろんのこと、ぶっ飛んだ演出やストーリーなどが非常に楽しい作品。

『Tchia』 (Awaceb / Kepler Interactive)　PS5/PS4/PC、配信中　※日本語対応
　父親を救うために奮闘する少女Tchiaがニューカレドニアの自然を駆け巡るオープンワールドアクションアドベンチャーゲーム。特殊能力“ソウルジャンプ”を使うことで、鳥になって空を飛んだり魚になって泳いだり、果てはタイヤになって転がったりもでき、美しい自然を高い自由度で探索できる。

　ニューカレドニアの文化が随所に取り入れられているのも特徴のひとつ。音楽面でもウクレレを弾けたり、BGMも地元の音楽を取り入れたオーケストラサウンドとなっている。

『A Highland Song』 (Inkle)
『COCOON』 (Geometric Interactive / Annapurna Interactive)
『Venba』 (Visai Games)

Excellence in Visual Art（美術賞）

『Clash: Artifacts of Chaos』 (ACE Team / Nacon)　PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC、発売中　※日本語対応
　格闘技の達人“セウド”の冒険を描く3Dアクションアドベンチャー。チリのACE Teamによる『Zeno Clash』シリーズと世界観を共有するスピンオフ作で、同シリーズ特有の奇想天外な背景デザインやアートは本作でも健在。

『Darkest Dungeon II』 (Red Hook Studios)　PC、配信中　※日本語対応
　黙示録の実現を阻止するためにパーティーを編成して過酷な旅に出るローグライクゲームの続編。今作では前作のテイストを残しつつさまざまな部分がブラッシュアップ。各エリアの終点にある宿を目指し、次第に弱まっていく灯火とともに馬車を走らせていく。

『Little Goody Two Shoes』 (AstralShift / Square Enix Collective)　PS5/Xbox Series X|S/Switch/PC、配信中　※日本語対応未定、家庭用版の国内配信なし
　往年の日本のアニメやビジュアルノベルを想起させるイラストが印象的なホラーアドベンチャーゲーム。テキストは英語のみなのだが日本語ボイスが入っているだけでなく、オープニング映像もなんと日本語曲入りで、90年代のアニメ感バリバリの演出が繰り広げられるという代物。

『Phonopolis』 (Amanita Design)　PCほか、発売日未定　※日本語対応未定
　『Machinarium』などを生み出したチェコのAmanita Designによる新作。ディストピア都市“フォノポリス”の強権的な支配から逃れようとあがく青年フェリックスと仲間たちの物語を描く。アート面は段ボールを使ってシーンを組み上げ、秒間12コマのストップモーションアニメの手法でキャラを動かすという凝ったもの。

『Anthology of the Killer』 (Thecatamites, Tommy Tone, A. Degen / Thecatamites)
『Venba』 (Visai Games)

Best Student Game（学生部門賞）

『goodbye.monster』 (Monster Team)　Web、公開中　※日本語対応未定
　朽ち果てた世界で奇妙な生き物たちとともに旅をしていくテキストアドベンチャーゲーム。Webでプレイ可能なのだが、単にテキストが表示されるだけでなく、動的に動き回る独創的なインターフェースもWebで実装されている。

『Once Upon a Jester』 (Bonte Avond / Crunching Koalas)　PC/Switch、配信中　※日本語対応未定、Switch版国内配信なし
　道化師とその友達のドタバタを描いたアドベンチャーゲーム。彼らは王のダイヤモンドを盗むため、まずは王宮に呼ばれようと各地でショーを繰り広げる。子供向けの絵本のようなかわいいイラスト調で描かれる素っ頓狂なキャラクターたちも魅力。

『Pile Up! 』(Remoob / Catoptric Games, IndieArk)　PC、アーリーアクセス中　※日本語対応
　狭い島を土台に上へ上へと伸びていく建築物を作り出していくパズルゲーム。住人たちのニーズを満たすようにしながらユニットを積み上げてアンバランスな多層都市を作り上げていく。

『Planetka』 (TeTerka)　PC、配信中　※日本語対応未定
　意識のある小さな惑星としてプレイするストラテジーゲーム。生態系を発展させつつ新たな能力を獲得し、資源を採掘すべく宇宙船でやってくる人類に対抗する。

『RAM: Random Access Mayhem』 (Xylem Studios)　PC、発売日未定　※日本語対応未定
　他のキャラに乗り換えるギミックを持ったローグライクアクションシューティングゲーム。敵を倒し続けてスコアを稼ぎ、やられる前に敵キャラに乗り換えて戦闘を継続し、アップグレードも行うというサイクルが軸となる。

『TRY AGAIN』 (the Rejects / USC Games, the Rejects)　PC、配信中　※日本語対応未定
　開発中ゲームのテスト用キャラクターが主人公のプラットフォームアクションゲーム。ゲームデザイナーの気まぐれな作業によって変化していく世界の中で、主人公の座を目指して走り抜ける。