探索型ローグライトアクションゲーム『Dead Cells』と『悪魔城ドラキュラ』シリーズとのコラボダウンロードコンテンツ(DLC)がパッケージになった『Dead Cells: Return to Castlevania Edition』が、Nintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4向けに2023年9月14日に発売される。同作発売にあたっての思いを関係者を直撃。ここでは、開発を手掛けるEvil EmpireのCOOであるBenjamin Laulan(バンジャマン・ローラン)氏とのやり取りをお届けしよう。

Benjamin Laulan氏(バンジャマン・ローラン)

Evil Empire COO

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KONAMIは、子どものころの何でもやらせてくれるやさしいおじさんみたいな感じ

――『Dead Cells』のDLCとして、『悪魔城ドラキュラ(Castlevania)』とコラボすることにした経緯を教えてください。『Castlevania』のどのような点を魅力に感じたのでしょうか。

ローランすべては2019年に京都で開催されたBitSummitで始まりました。私はそこで我が社Motion Twinの『Dead Cells』を紹介し、日本でのパッケージ版販売の可能性について商談を行っていました。もちろんゲーム業界でも重要なパブリッシャーであるKONAMIさんともお話する機会をいただき、その会話の中で『Dead Cells』のインスピレーション源である『Castlevania』を作った方々とお話しているのだから、日本でのリリースに向けて「アルカードのスキンや武器を作らせてもらえるのでは?」と思ったのです。

 望みは薄いかもしれないけど、失うものは何もなかったのでお願いしてみたところ、意外にも彼らはそのアイデアを受け入れ、正式なピッチのリクエストがありました。『Dead Cells』は、鞭、城のキーアート、壁に隠された食べ物、“ローグヴァニア”のオチ(笑)など、すでに多くのインスピレーションを得ていたので、その方向は変えずに、興奮に任せて徹底的に取り組んだ結果、企画はあっという間に完全なDLCの提案へと変わりました。

――『Dead Cells』と『Castlevania』が、とくにマッチすると思った点を教えてください。

ローラン先程もお話ししたように、『Castlevania』、とくに『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』は、Motion Twinが『Dead Cells』を作るにあたって、直接的なインスピレーションを受けた作品のひとつです。『Dead Cells』の“クロック・タワー”エリア、多くの武器、ダークファンタジーの設定、そして『Castlevania』で育ったゲーマーなら誰でもピンとくる音楽で表現されています。私たちのゲームの“父”に敬意を表する一生に一度の機会に、両者が似てくるのは自然なことでした。この機会を逃す手はないでしょう。

『Dead Cells』と『悪魔城ドラキュラ』コラボ秘話を開発者に直撃。「私たちのゲームの“父”に敬意を表する一生に一度の機会」

――『Castlevania』のDLCを開発するにあたっての方針を教えてください。もっとも注力したポイントはどのへんですか? 

ローラン今回のDLCの制作は、従来の『Dead Cells』とそれほど大きな違いはありません。このDLCは、ビデオゲームの歴史を象徴するフランチャイズに敬意を表するもので、私たちのゲームのおもなインスピレーション源でもあります。そこで「もっともかっこよくて、ふさわしい方法は何だろう?」と考える中で、目指すべき理想は、『Castlevania』から取り出した要素(ボス、モブ、武器、キャラクター、レベル、音楽など)をどう『Dead Cells』に反映させるか、かつそれを“公式に”考えるということでした!

 『Dead Cells』のライブオペレーションとDLCに携わるEvil Empireのチームメンバーは、シリーズの評判だけを知っている若い開発者、Netflixのテレビ番組のファン、そしてこの作品で育ったハードコアなファンまで、とても多様です。『Castlevania』の大ファンからマニアックな初心者まで、それぞれに重要で意味のある『Castlevania』の特別な魅力を、かなり自由にDLCに盛り込むことができました。

――『Dead Cells』のアートスタイルやサウンドで、『Castlevania』を表現しているようですが、『Castlevania』を『Dead Cells』ふうにアレンジするにあたって、こだわったポイントを教えてください。

ローランほかのDLCと同様に、『Dead Cells』の方程式を変えずに、『Castlevania』と融合させることを心がけました。アートスタイルに関しては、『Castlevania』シリーズから選んだエリアやそこに再現される環境に、『Dead Cells』のアートディレクションを適用しました。つまり、ピクセルアート、コントラストの強い色使い、エリアごとに設定されているひとつのメインカラーとひとつのマイナーカラー、地表の霧、はっきり区別される壁と地面などです。こうして『Castlevania』風の『Dead Cells』が完成し、それぞれを尊重する融合に成功しました。

『Dead Cells』と『悪魔城ドラキュラ』コラボ秘話を開発者に直撃。「私たちのゲームの“父”に敬意を表する一生に一度の機会」

――(ついいじわるに聞いてしまいますが)『Castlevania』DLCで、思わず苦戦してしまったところなどありましたら、教えてください。

ローラン階段です!『Dead Cells』にはもともと階段がなかったのですが、『Castlevania』フランチャイズのもっとも象徴的な要素は何かというブレインストーミングのセッションで、とくにファミコンやスーパーファミコン時代の『Castlevania』の階段は間違いなくそのひとつだという結論にいたりました。

 『Dead Cells』エンジンでそれを作るのは悪夢になる可能性があるとわかっていたので、最初は「あったらいいな」程度の機能として考えていました。しかし、プログラマーに「完全にオマケ的な意味のない階段を作るなんて難しいよね?」と伝えたら、その間違いを証明するために、彼らはすぐに取り掛かってくれました。まあ、やってくれるに違いないとは思っていたのですが……(笑)。そして彼らは期待に応えてくれました。彼らの努力のおかげで『Dead Cells』ではドラキュラの玉座の間に入る前に、ほかの『Castlevania』のように月明かりの下で豪華な階段を上ることができるようになったのです。

――KONAMIとのやりとりの中で、印象的なフィードバックなどありましたら教えてください。

ローランKONAMIさんには、開発期間中、とてもオープンで敬意を持ってサポートしていただきました。子どものころの何でもやらせてくれるやさしいおじさんみたいな感じで、いっしょに楽しんでくれました。基本的に「おもちゃ箱は開いている」という感覚で、私たちのトリビュートDLCのビジョンにとって意味のあるフランチャイズの要素は、すべて使用許可をいただきました。彼らのフィードバックは、つねに私たちといっしょにこのゴールを達成することに集中していました。

 ほぼ最終版のDLCをプレイするために彼らがボルドーに来て、開発チーム全員が集って様子を見たときのことは、とてもよく覚えています。谷口さんにとっても非常に緊張する瞬間だったでしょうし、我々チームにとっても緊張の瞬間でした。このような象徴的なフランチャイズに対する自分たちの仕事をライブレビューされるのですから。また、フランス人にとって日本はビデオゲームの母国であり、日本の文化的な作品をたくさん見て育ったので、日本のアーティストや開発者が自分の作品をレビューしてくれることは、ちょっとしたシンボルになっていることも忘れてはいけません。

 ですので、谷口さんやKONAMIの皆さんが 「Wow!」とか「すごい!」と言ってくれたり、新しいイースターエッグや昔の『Castlevania』への言及を発見して、アーティストにサムズアップしてくれるたびに、開発陣がほっとし、自信を持つことができたのがよくわかりました。興奮と誇りが入り混じった特別な瞬間でした。

『Dead Cells』と『悪魔城ドラキュラ』コラボ秘話を開発者に直撃。「私たちのゲームの“父”に敬意を表する一生に一度の機会」

――DLC『Return to Castlevania』を配信して、ユーザーからの印象的なフィードバックを教えてください。

ローラン2022年12月のThe Game Awardsの授賞式でサプライズ発表した後のフィードバックは素晴らしいものでした。もちろん、私たちが取り組んでいることをコミュニティに伝えることができたことを誇りに思うと同時に、ショウで観客の反応を聞いて、私たちがアニメーショントレーラーに込めたファンサービスの仕掛けをすべて感じてもらえたこともうれしかったです。

 ショウの翌日、チームはYouTubeにアップされているほぼすべてのリアクションビデオを見たのではないでしょうか。そしてもちろん、DLCがリリースされると、プレスやプレイヤーから寄せられた10点満点中10点という異常な数の批評を発見し、私たちは信じられないようなさまざまな感情を味わいました。

――開発者の方の中には、きっと『Castlevania』の熱烈なファンもいらっしゃるかと思いますが、印象的なエピソードなどありましたら、お教えください。

ローラン『Castlevania』は、いまもなお存在し、これからもさまざまなファンが生まれていく、数少ない特殊なフランチャイズのひとつだと思っています。あなたが最初に出会い、そのシリーズを好きになるきっかけとなったゲームは、たとえそれがすべての人に最高傑作と認識されなくても、永遠にあなたの記憶に残ることになるでしょう。

 たとえば、『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』と『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』の両方のファンである私にとっては、リヒターとアルカードに重要な位置を与えなければならないという個人的な思いがあり、ブレインストーミングで開発チームをその方向に少し押しやってしまったかもしれません……。とはいえ、大切なのはこのトリビュートへの我々のビジョンが理にかなっていたことです。ちなみに、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』のオープニングシネマティックは、いま見ても最高だと思います。

『Dead Cells』と『悪魔城ドラキュラ』コラボ秘話を開発者に直撃。「私たちのゲームの“父”に敬意を表する一生に一度の機会」

――このたびパッケージ版が発売されますが、率直なご感想をお教えください。

ローラン今回の新パッケージ版には、非常に満足しています。今回も、『Dead Cells』で『Castlevania』へのオマージュを惜しげもなく、ジョークを交えて表現するという、私たちのビジョンに完全に沿ったモノになっています。私たちは、『Dead Cells』と『Castlevania』の両方のプレイヤーがこのエディションを楽しんでくれることを心から願っています。また、『Dead Cells』をまだ知らない方には、これまでのすべてのアップデートとDLCを収録していますので、ぜひ体験していただきたいと思います。

 『Dead Cells』の評判についてですが、Motion Twinは、最初にとんでもなくよいゲーム、中毒性のあるゲームを作ることができましたが、このゲームがプレイヤーにとって特別なのは、“与え続けるゲームである”ということだと考えています。 これは、私たちがアップデートやDLCをリリースする際に、すべてのコメント欄で読むことができる文章です。6年近くライブオペレーションを続けているいまでも、私たちがコンテンツを追加し続け、ゲームを発売初日のように磨き続けていることに、プレイヤーは驚いてくれているのです。

――『Dead Cells』の今後予定している展開をお教えください!

ローラン『Dead Cells』の将来についてですが、5年間のライブオペレーションと1000万本以上の売上を達成した後も、Evil Empireチームはまだゲームのアイデアが尽きておらず、少なくとも2024年末までのコンテンツのロードマップを持っていて、ぶっとんだ新しいアイデアも含まれています。だから待っていてね!

――最後に、本作を楽しみにしているゲームファンにメッセージをお願いします。

ローランはい! このゲームをプレイして、『Dead Cells: Return to Castlevania』のいちばん最後までたどり着けば、ドラキュラの最終形態を吹き替えた、私の深い声を聞く喜びを味わうことができるでしょう! この点については、部分的に客観的かもしれませんが、私の非常に謙虚な意見としては、間違いなく挑戦する価値があると思います。そして、もしあなたがすでに『Dead Cells』のプレイヤーなら、こうお伝えしたいです。「ありがとう、そしてこれからも倒され続けてね!」

【今回のインタビューにあたってご提供いただいたコンセプトアートを紹介】

『Dead Cells』と『悪魔城ドラキュラ』コラボ秘話を開発者に直撃。「私たちのゲームの“父”に敬意を表する一生に一度の機会」
『Dead Cells』と『悪魔城ドラキュラ』コラボ秘話を開発者に直撃。「私たちのゲームの“父”に敬意を表する一生に一度の機会」
『Dead Cells』と『悪魔城ドラキュラ』コラボ秘話を開発者に直撃。「私たちのゲームの“父”に敬意を表する一生に一度の機会」
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