2023年6月12日に、Xbox関連の新作情報などを発表する配信イベント“Xbox Games Showcase”が、マイクロソフト主催により開催。当日は、初お披露目を含む27タイトルの新情報が公開され、Xboxファンを喜ばせた。

 ベセスダ・ソフトワークスの『Starfield』にフォーカスした“Starfield Direct”と合わせて、2部構成で行われた今回の配信において、わけても充実ぶりを見せたのが、Xbox Game Studiosによるファーストパーティータイトルで、『Fable』がオープニングアクト飾ったのを筆頭に、10月10日に発売日が決まった『Forza Motorsport』やObsidian Entertainmentによる新作RPG『Avowed』などが公開された。

 また、日本メーカーのタイトルも注目を集め、アトラスのRPG『メタファー:リファンタジオ』やカプコンのアクション『祇 - Path of the Goddess -』などが発表された。

 ちなみに、マイクロソフトでは、このXbox Games Showcaseに合わせて、アメリカ・ロサンゼルスThe Novo Theaterにて、Xboxファンを招いてのウォッチパーティーを開催したのだが、まさに続々と発表される新作をファンどうしで祝うという雰囲気に包まれていた。

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“Xbox Games Showcase”は現地時間で6月11日(日)午前10時からスタート。開始2時間前から会場には長い行列ができていた。
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“Xbox Games Showcase”の開始前にはフィル・スペンサー氏が登壇して挨拶。会場は歓声に包まれた。
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番組の配信後はフィル・スペンサー氏やベセスダ・ソフトワークスのトッド・ハワード氏らが姿を見せ、Xboxファンにメッセージを送った。

 ウォッチパーティーに合わせて、世界中のメディアを対象とした関係者への取材の機会が設けられていたのだが、ファミ通ではXbox Games Showcaseを終えたあとの、マイクロソフト ゲーミング CEOのフィル・スペンサー氏にインタビューをする機会を得た。Xbox Games Showcaseを経て、気になったことのあれこれをフィル・スペンサー氏に聞いてみた。

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フィル・スペンサー氏

マイクロソフト ゲーミング CEO

作ろうとしているものに対して野心的になれる自信をチームに提供したい

――Xbox Games Showcaseで怒涛のXbox Game Studiosのタイトルラインアップが発表されましたが、手応えを教えてください。

フィルチームはこれらのゲームをファンやゲーム関係者に披露するために、昨年11月から一生懸命やってくれました。ファンの肯定的な反応はチームにエネルギーを与え、彼らはより一層がんばろうと思ってくれていますので、私はとてもうれしく、彼らの仕事を誇らしく思います。

――ファーストパーティータイトルが潤沢に供給されない時期もありましたが、何か理由があったのでしょうか。

フィル理由はたくさんあります。その中にはコロナ禍に関係したことやいくつかのスタジオを取得したので、意思疎通などに多少時間がかかったことなどがあります。現在のラインアップには自信を持っていますし、Xbox Game Studiosとベセスダ・ソフトワークスがショウケースに姿を見せてくれてうれししく思いました。

――Xbox Game Studiosのタイトルを展開するにあたっての、ここ数年の戦略を教えてください。

フィルすばらしいゲームを作ること!(笑)。これはとても重要です。チームには新しくすばらしいことを目指してほしいです。これは続編など、いままでに取り組んできたこと以外に、という意味ではありません。作ろうとしているものに対して野心的になれる自信を、チームに提供したいと考えています。そして今日のステージで、すでにそのよい例が見られたと思います。

 その一例が新しいIPであるinXile entertainmentのRPG『Clockwork Revolution』です。本作はinXileらしいスタイルになっています。異なるカメラロケーション、ファーストパーソン、プレイの仕方など、チームがよりクリエイティブなイノベーションを目指していて、すばらしいと感じます。それ以外には、おなじみのレギュラーゲームを毎年リリースして、今後すばらしいらしいゲームが出てくるとゲーマーが期待できるようにしたいです。

――どちらかというと、既存のIPより新規IPを展開することに魅力を感じているのですか?

フィルそういうことではありません。ただ今日は新しいIPをたくさん発表したことは認識しています。それは予定したことではなく、現状そうなっているということです。過去に作ったゲームの続編を作っているチームもあることは知っていただきたいですし、新しいIPと、皆さんが愛してくださっている既存のゲームの存続が程よくミックスされている必要があります。

――今回お披露目されたXbox Game Studiosタイトルで、とくに期待しているタイトルを教えてください。

フィルすべてのタイトルです(笑)。というのが本音ですが、そうですね……。私が初めてXboxの仕事をしたときに、最初に担当したのが『Fable』でした。今日、『Fable』でショウケースを開幕できて、とてもよい発表になりうれしかったです。心の中で昔のことを思い、自分のキャリアや費やした時間に思いを馳せ、特別な時間を過ごしました。

――今回の『Fable』の開発は、それまでシリーズ作を手掛けてきたライオンヘッドスタジオから変わって、Playground Gamesが引き継いでいますが、『Fable』らしさは受け継がれているのですか?

フィルPlayground Gamesのチームは『Fable』を作りたいと希望していました。『Fable』には英国風のユーモアが入っているので、Playground Gamesのクリエイティブチームはそれをうまく操ってくれると思います。彼らはフランチャイズに対して彼ら自身の願望を持っています。現在『Fable』を作っているのはこのチームだけですが、進捗状況に満足しています。

――「このタイトルは、将来Xboxを支えるフランチャイズになりそう!」と期待する新規IPは?

フィル今日発表した中では Obsidian Entertainmentの『Avowed』は大きな可能性を持っています。これまでに彼らが構築した『Pillers of Eternity』のワールド、従って奥深いワールドですが、ここで異なるゲームを展開しているわけですが、このようなアイデアは長期に継続できるのではないかと思います。

――Xboxを支えるIPと言えば、『Halo』や『Gears』の新作が発表されませんでしたが、両シリーズの今後はどうなりますか?

フィル今後もショウはあります。私たちは現在20以上のスタジオを持っており、それぞれのチームには彼らが見せたいものきちんと作れる時間を持ってもらいたいと思っています。『Halo』や『Gears』だけでなく、id Softwareが開発しているものは今日見せできませんしたし、多くのスタジオのアップデートがありますので、これからさらにショウを展開していきます。今回は27タイトルを紹介する充実したショウでしたが、全部のタイトルは紹介しませんでした。ストーリーとプロダクションを充実させるため、チームに時間の猶予を持ってもらうのはよいことだと思います。

――ベセスダ・ソフトワークは『Starfield』を筆頭に、今回のショウケースでも大きな存在感を放っていましたが、いっしょに仕事をしてみて、どんなところを評価していますか?

フィル ベセスダ・ソフトワークスとの仕事は楽しいです。40分以上にわたる“Starfield Direct”のアイデアはベセスダ・ソフトワークスが提案してきたものですが、Xbox Games Showcaseとフィットしていました。私たちが作っているものに彼らがアイデアを提案して、私たち全体がチームとして向上するのはとてもよいことですし、重要だと思います。『Starfield』でトッド(トッド・ハワード氏。『Starfield』ディレクター)といっしょに仕事をしてきて、2022年11月からゲームをプレイしています。プロダクションやクリエイティブについてよく話をしますが、本当に楽しい時間です。これは自分の仕事の中でも大好きな部分なのですが、クリエイターと時間をともにしてゲームを作ることについて話すのはとても楽しいです。今日このゲームに対する皆さんの反応を見て、とてもうれしく思いました。

――そういえば、トット・ハワード氏が、Xbox Games Showcase後のイベントで、「いまはマイクロソフトの一部になったので、さらなる野心を持って、ゲーム開発に対してもリスクを背負える」と発言していたのが印象的でした。

フィル傘下に入った小規模なスタジオ、独立系スタジオはゲーム数が少なくプラットフォームを持っていないためつねに困難を伴います。彼らには複数の収入源がある大きなチームの中で安心感を持ってもらうようにします。彼らのゲームだけが全体を左右するわけではないので、ゲームからの収益を確実にすることで新しいものを試してもらいたいと思います。トッドが『Starfield』で取り組んでいることは、これまでベセスダ・ソフトワークスが手掛けてきたどのゲームよりも規模が大きく、システム、スケール、ストーリーも驚くべきものです。これはXboxにとってもファンにとってもよいことだと思っています。

――同じイベントで、マット・ブーティ氏が「ファーストパーティータイトルは年間4タイトルが目標」とおっしゃっていましたね。

フィルファーストパーティーを率いるマット・ブーティとは、年間最低でも4つの大型タイトルを出すという話をしました。現時点でも(2023年は)そこまでいっていると思います。今年はこれからさらに、『Starfield』、『Forza Motorsport』のほかに、数には入れていませんが(入れるべきかもしれません)『Sea of Thieves』、『The Elder Scrolls Online』、『Microsoft Flight Simulator』、『Doom』のアップデートなどたくさん出ます。来年(2024年)のラインアップでは、すでに公開し発表したものがあり、まだ未発表のものがいくつかあります。Xboxプレイヤーの皆さんに今後安定した流れでゲームがリリースされていくことを知ってもらえたのではないかという自信はあります。

小島監督の作品の開発は順調。いずれ発表の場を設けたい

――Xbox Games Showcaseでは、日本のタイトルも多数発表されました。フィルさんと日本のゲームクリエイターの良好な関係がうかがえます。その手応えをお教えください。

フィルご存じの通り、サラ(サラ・ボンド氏。Xboxゲームクリエイターエクスペリエンス統括)と私は、とにかく信用していただけるために、長きにわたって日本を訪れてきました。開発チームがゲームを発表する際、どこで発表するかには多くの選択肢があります。私たちのステージで発表するのは、彼らがいちばん重要なゲームを発表するということについて、私たちを信用してくれているということです。

 カプコンの『祇-Path of the Goddess-』とアトラスの『メタファー:リファンタジオ』という日本の新しいゲームがふたつ私たちのステージで発表されたことは非常に重要です。過去のショウで、『ELDEN RING(エルデンリング)』、『DARK SOULS III(ダークソウル3)』などで、パートナーさんにステージに登場してもらった瞬間を思い起こします。もちろん、まだまだ努力をしなければならないと思っていますし、とくにスクウェア・エニックスさんとのお付き合いは進捗させたいと思っています。

フィル しかし、アトラスのゲームがXboxで遊べるだけでなく、『ペルソナ』がXbox Game Passにも入っているということは、5年前には想像もできなかったことなので、感慨深いです。これは、努力をしたからこその結果だと思いますし、日本のゲームがXbox Games Showcaseにたくさん登場したこと、そして当社プラットフォームでプレイできることをとてもうれしく思っています。

――今回発表されたなかで、とくに期待している日本のタイトルを教えてください。

フィルその質問はフェアじゃないですね(笑)。すべてです。『ペルソナ3 リロード』や『ペルソナ5 タクティカ』は、これまでの経過から言えばXboxでは期待できなかったものですので、努力して実現できたことを誇りに思います。

フィル しかし、カプコンとアトラスから新作が発表されたことは、私にとっては重大事です。これらのゲームのクリエイターたちと話をしますが、パブリッシャーのチームも含め、今回ゲームへの反応がすばらしく、本当によかったと思いますし、世界的にXboxを一層盛り上げてくれることは明らかです。これらの日本のゲームは、Xboxだけではなく、他機種でもリリースされるものもありますが、Xboxのプレイヤーは、Xboxがこれまで以上に日本のゲームコミュニティの一部になっているということを理解してくれていると思います。これはとても重要だと考えています。

――小島監督の作品は今回発表されませんでしたが、どうなっていますか?

フィル順調です! 小島さんとは長年お付き合いがありますが、いっしょにゲームを作るのは初めてです。ご存じの通り、昨年(2022年)スタジオを訪問し、現在の野心的な取り組みについてお話を聞き、ゲームも少しプレイしました。小島さんのすごいところはイノベーション、クリエイティビティに関する目標を非常に高く設定されているところです。そしてすばらしいチームを持っておられます。今日のショウには入っていませんでしたので、何人かに聞かれましたが、「さらにショウを開いて、発表の場を設けていきます」とお答えしています。このようなイノベーティブな作品で小島さんとお仕事がいっしょにできることをとてもうれしく思っています。

――いつころに動きがありそうですか?

フィルそれは小島さん次第ですね(笑)。今回のショウには登場しませんでしたが、ジェフ(ジェフ・キーリー氏)が開催していたSummer Game FestのPlay Daysで拝見した『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(アーマード・コアVI ファイアーズオブルビコン)』は私にとって重要なタイトルです。フロム・ソフトウェアのスタジオはよく存じ上げていますが、任天堂の『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』やカプコンの『ストリートファイター6』などが非常に好調な中、『アーマード・コアVI』最新情報発表のワクワク感、そして私たちのショウで日本のゲームが多数発表され、コンソールでの日本のゲームクリエイターの成功と前進を目の当たりにして、とてもうれしく思っています。

――1TBのブラックバージョンのXbox Series Sが発表されました。改めてとなりますが、本ハードをリリースするにいたった経緯を教えてください。

フィル一定のプレイヤーからですが、Xbox Series Sについてもっとも多かったフィードバックはドライブのサイズでした。Xbox Series Sは特定の価格を目標にデザインしました。できるだけ低価格に抑えたいと思いましたが、コンソールのドライブは高額のパーツになります。プレイヤーには選択肢を提供し、ストレージの少ないホワイトはそのまま継続します。ユーザーからのフィードバックには対応しています。私が聞いたふたつのフィードバックは、“ほしくても見つからないのでXbox Series Xの供給を増やしてほしい”ということと、“Xbox Series Sのストレージを増やしてほしい”ということでした。ハードウェアチームはいい仕事をしてくれましたし、市場に出た際に512GBと1TBの区別ができるようにカラーも変えることにしました。

――E3が開催されなかったことについてどう思いますか?

フィル私はまだ今回E3と呼んでいます。業界にとって取材陣が訪れて、すべてのゲームを見る、そしてファンやコミュニティーが来る時間は重要だと思います。Summer Game Festもジェフのショウもとてもよかったと思います。明日のUbisoft Forwardにも出席しますがとてもワクワクしています。私たちがここにいっしょにいてゲームをお見せして、ゲーミングと業界を祝福することは重要だと考えます。ここにいることをうれしく思いますし、業界のためにはよいことだと思うので、ほかの人たちも諦めずにがんばるよう励ましていくつもりです。

――最後に日本のゲームファンにメッセージをお願いします。

フィル昨年(2022年)は東京ゲームショウに行き、多くのファンに会いました。ファンイベントを開催することができたのですが、多くのXboxファンはいまもメッセージを送ってくれて、私たちの進捗状況についていろいろと意見を聞かせてくれます。今日もショウについて感想を送ってくれました。コミュニティーには、私がこうした意見を聞いていることを知ってほしいです。これからも皆さんの信用を得られるよう努力していきたいと思っています。日本のゲーム業界においては、私たちがXboxでやろうとしていることに賛同いただいていると感じていますし、ご期待に添えるようにしたいです。