2022年11月8日にNintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam)で発売され、好評を博している『ソニックフロンティア』。今回は、同作を作り上げた開発のキーパーソン3人に、『ソニックフロンティア』にかけた想いや開発秘話などを語っていただいた!

『ソニックフロンティア』開発者インタビュー。「世界が驚く新しいものにしよう」という意気込みのもと、本当に挑戦尽くしのタイトルだった

岸本守央氏(写真・左)

セガ ディレクター(文中は岸本)
業務用ビデオゲーム開発を経てソニックチームへ。Wiiでリリースされた『ソニックと秘密のリング』以降、数々の『ソニック』シリーズのタイトルを手掛ける。

川村幸子氏(写真・中央)

セガ プロデューサー(文中は川村)
長らくソニックチームに在籍しているアーティスト。ドリームキャストの『ソニックアドベンチャー』ではチャオのデザインを担当した。本作が初のプロデュース作品となる。

大谷智哉氏(写真・右)

セガ・サウンドディレクター(文中は大谷)
『ソニック』シリーズはもちろん、ソニックチームが制作した数多くのタイトルのサウンド制作を、20年以上にわたって担当してきたサウンドディレクター。

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『ソニックフロンティア』のおもしろさを確信した瞬間

――早速ですが、まずは発売を迎えた率直な感想から教えていただけますでしょうか。

川村「長かったな」というのが率直な感想ですね。私はプロデューサーをやること自体が今回初めてのことだったので、「何をすればいいんだろう」ということから始まり……(笑)。開発にかかった時間も5年近くになり、『ソニック』作品の中で最長だったのですが、岸本とバタバタしながら駆け抜けたという感じでした。

――大谷さんはいかがでしょうか。

大谷これまで数々の『ソニック』タイトルを担当してきましたし、開発がたいへんだったなと思ったタイトルはいくつかあるんですけれども……本作はそれを軽く更新しました。

――軽く! そんなにですか?

大谷開発中、段階的にゲームの仕様が見直されていったので、考えることも多かったんです。

――岸本さんも過去最高のたいへんさでしたか?

岸本そうですね。ずいぶん昔に5ヵ月でゲームを作ったときもけっこうたいへんでしたけど、これだけの長い期間で1本を開発したことは初めてでしたし、たいへんさも過去最高でした。本作は“挑戦”がテーマだったので、発売日が楽しみでもあり、不安でもあり。「やっちゃいけないことを『ソニック』ファンに向けてやってしまったんじゃないか? でも、新しいお客さんに響くようなものになっているんじゃないか?」と期待と不安が入り混じって、ドキドキです。

『ソニックフロンティア』開発者インタビュー。「世界が驚く新しいものにしよう」という意気込みのもと、本当に挑戦尽くしのタイトルだった

――東京ゲームショウ2022ではかなり来場者の反応がよかったですから、不安に思われる必要はないかと思います。

川村皆さんに東京ゲームショウ2022で楽しんでいただけたのは本当にうれしかったですね。これまで『ソニック』のタイトルにずっと関わってきましたが、ブースの規模もお客さんの盛り上がりも過去最高でした。あの光景を見ただけでもちょっと泣きました。

――泣きそうになりましたではなく?(笑)

川村泣きました!(笑)。皆さんに受け入れていただけたということを実感できた安堵感が大きかったですね。

岸本そうですね。本作は本当に挑戦尽くしのタイトルだったのですが、こちらが思っていた以上に皆さんの反応がよくて安堵しました。

大谷正直、「どう受け止められるんだろう?」という気持ちがありましたからね。僕はゲームを試遊してくれた方々とお話をさせていただいたのですが、中には何回も並んでくれたような方もいて。「遊ぶたびに違う発見があるんです!」とおっしゃってくれていたのは、本当にうれしかったです。

『ソニックフロンティア』開発者インタビュー。「世界が驚く新しいものにしよう」という意気込みのもと、本当に挑戦尽くしのタイトルだった

――長丁場の開発だったということですが、振り返ってみて、開発時の印象的なエピソードについてお伺いできればと思います。

川村振り返れば、プレイテストをくり返すなかで、テストの評価がガツッと伸びたタイミングがあったんです。そのときに「あれ? おもしろさの核ってこの要素じゃない?」という、手応えを感じた瞬間が思い出深いですね。

――評価に大きな変化があったのは、どんな要素を追加したときだったのですか?

岸本いわゆる既存のオープンワールドというゲームフォーマットを、我々が “オープンゾーン”と呼んでいる形に落とし込んだときですね。“移動すること自体がおもしろい”という形にしたとき、グッと評価が上がりました。

川村最初は懐疑的だったのですが、つぎのテストでもさらに評価が高くて。「やっぱりこれだ!」と確信が持てました。

大谷じつは音楽の面でもオープンゾーンにブレイクスルーがあったんです。この仕組みが見えてきたとき、作品のトーンを決める静かな島の音楽と、バトル、電脳空間の音楽のギャップがきちんと確立できるな、と感じました。そこから生楽器や歌を収録し、全部整ったのがβ版のロムで、すべてを実装に漕ぎ着けるまではたいへんでしたけど。

――本作は収録曲もかなり多いですしね。

大谷数の多さ自体はたいへんだと思っていませんでした。このゲームの演出に必要な曲を、必要なだけ用意しようと思ってやっていたら、結果こうなったというだけなんです。

――ちなみに静かな曲と激しい戦闘曲のどちらが先にできたのでしょう?

大谷最初に岸本から、「島のBGMは寂寥感のあるものにしたい」というテーマを渡されていたので、島の曲を最初に作りました。作品のトーンはミステリアスですし、島の設定はもちろん、ストーリーでソニックが孤独な状況に置かれるので、必然性のあるキーワードだったんです。なので、曲はすんなりできたんですよ。ただ、バトル曲はギャップを作りたかったものの、ゲームデザインのほうでいろいろ試行錯誤があって(笑)。サウンドチームは遊びの仕様が確定するのを見守っていました。遊ばせかた次第では、曲のテンポ=BPMすら変わってくるからです。

――なるほど。ソニックに寂寥感のある雰囲気というのは、過去作から考えるとかなり大きなギャップですね。

岸本そうですね。ただ、そこは最初の企画書から決めていました。クールでかっこいいキャラクターだからこそ、寂寥感を背負わせられるだろうと。正直なところ、挑戦でしたね。

『ソニックフロンティア』開発者インタビュー。「世界が驚く新しいものにしよう」という意気込みのもと、本当に挑戦尽くしのタイトルだった

世界の土俵で勝負すべく行った“岸本千本ノック”

――本作における、皆さんのこだわったポイントについて教えてください。

川村じつはこれまでソニックチームは「いままでと同じことをやっていても同じ結果しか出ないだろう」という想いをずっと抱えていました。なので、本作ではチャレンジ精神をとにかく大事にしましたし、こだわりました。また、個人的にはゲームファンに響くような、とことんカッコいいソニックを推し出したいと思っていました。

岸本言いかたは難しいのですが、いままでは『ソニック』ファンに向けて、ソニックチームが『ソニック』ゲームの最新作を作ってきたんです。でも、今回はそれをやめた。「AAAタイトルに挑戦状を叩きつけるぞ!」という意識でハードルを上げ、物事を判断をし続けました。

大谷音楽の面でも、「これまでの作品とは違う体験を確立したい」とは思っていました。いままではキャッチーでノリがよく高揚感のある音楽が『ソニック』の基本演出だったと思います。ですが、今回は静と動のメリハリをつけて、変化が起きるときに心が大きく動くような仕掛けをしています。それがよりエモーショナルな、エキサイティングなゲーム体験になったらいいな、と思ってがんばりました。

岸本そんなコダワリを持って作っていたので、スタッフはみんなたいへんだったと思います。先にも述べたように、今回は思いっきりクオリティーのハードルを上げましたし、それを超えるまでは千本ノックのようにリテイクをくり返し出したので。正直、スタッフには申し訳ないと思っていますし、川村はたぶん「岸本、やりすぎだろ」と思っていたはずです。

川村いやいや(笑)。世界に仕掛けるという目標は私も同じというか、そうしたいと思ってきたことです。そして、それを実現するには“岸本千本ノック”は不可欠な気はしていました。

岸本じつは私と川村の“『ソニック』の未来像”がすごく近かったんです。そんなこともあり、拝み倒して川村に本作のプロデューサーになってもらったという経緯があるんです。このタイトルを作るには、どうしても“世界への挑戦”を理解してくれているプロデューサーでないと成し得ないなと。

――そうだったんですか。

岸本会社の要望というのは必ずあるのですが、それと理想の折衷案をうまく導き出して、現場を守り通してくれるプロデューサーじゃないと、こんな無茶なことは崩壊してしまうだろうな、と。

川村たぶん私は、プロデューサーを引き受けた時点でそこまで理解してなかったですね(笑)。ただ、岸本や大谷と長年仕事をしてきましたが、私もアーティストとして『ソニック』を作るのが当たり前になっていたんです。そして、その当たり前を見直したかった。今回のような挑戦は、いちアーティストの立場ではできないので、ポジションが変わることになりました。そうすれば必然的に“ソニックを作ること”を見直すこともできますから。そんな気持ちで引き受けましたが、たいへんさに気付いたのはもっと後でしたね(苦笑)。

『ソニックフロンティア』開発者インタビュー。「世界が驚く新しいものにしよう」という意気込みのもと、本当に挑戦尽くしのタイトルだった

――そういった経緯で立ち上がったチームということは、川村さんと岸本さんのあいだでは、あまり意見の相違みたいなものはなかったのでしょうか?

岸本私の記憶だと、意見の対立が川村とあったとしても、やっぱり根っこで「『ソニック』を将来こうしていきたい」という部分がいっしょなので、落としどころが見つかるんです

川村確かに、どちらかの意見を強引に通すということはなかったですね。

岸本その議論をしたことが、また新しいネタになるんですよ。で、「おおー、また1個おもしろくなっちゃいました!」みたいな。

川村私は抽象的なことを言うだけだけど、岸本がちゃんと形にしてくれるんですよ。ソニックチームというクールな名前は付いていますが、そういう議論もしつつ、わりとドロくさい形でゲーム作りをしてきたと思います。

『ソニックフロンティア』開発者インタビュー。「世界が驚く新しいものにしよう」という意気込みのもと、本当に挑戦尽くしのタイトルだった

何度もプレイテストを行うAAAと同等の開発体制に挑戦

――先にも少しお話がありましたが、プレイテストというのは、『ソニック』シリーズではずっとやり続けていることなのでしょうか?

川村基本的にいままでのタイトルだと、確認の意味合いでプレイテストをすることはありました。ですが、それはβロムが出来てからなどのタイミングで、ご意見に対するフィードバック対応ができないというのが習わしだったんです。ただ、海外ではプレイテストをくり返すやりかたが主流になっていますし、今回は長いスパンでの開発になる前提だったので「これも新しい挑戦だよね」とやってみたんです。セガ・オブ・アメリカのほうと協力して、けっこうな頻度で行いました。

――そこで試行錯誤をくり返して?

岸本ええ。たいへんでしたが……じつは私はソニックチームに来る前は、アーケードゲームを作っていたので、耐性があったんです。

――というと?

岸本私が開発していたころは、ゲームセンターでいろいろなジャンルのいろいろなゲームが競い合っているという時代です。当時のアーケード開発では、ゲームの1面か2面ぐらいができると、すぐロケテストをしていました。で、インカムが入らなかったら、その時点でもうプロジェクトは終わりでしたから。

――きびしい時代ですね(笑)。

岸本プレイテストを頻繁にやるというやりかたは久々でしたが、私自身はプレイテストでどんどんゲームを改善していくというテクニックがある。だからやり直しをもらっても、じつは私個人はうれしかったんですよね(笑)。

――「この感覚、懐かしいぞ」的な?(笑)。

岸本そうなんです! スタッフはもしかしたら、「お前の言う通りに作ったのにやり直しなのかよ!」と思っていたかもしれないですけど。でも、私個人としては「やり直すことでもっとおもしろくできるなら、それは超ハッピー!」と思っていて。だからある意味、今回は得意分野で仕事ができたという感じですね。

川村じつは社内でも、海外のそういう手法を取り入れましょうという声は挙がっていました。で、今回実際にやってみたわけですが、プレイテストで出た意見をフィードバックできたのは、開発にとってものすごくよかったですね。

――あとは数字がついてきて、成功体験になればという?

川村ええ、その通りです。

大谷プレイテストの実施は、音楽の部分にもけっこう影響しているんです。たとえば海外のマーケティングのスタッフが楽曲の思い切った方向性に対して懐疑的な意見を持っている場合などに、プレイテストの結果が客観的な評価の裏付けになってくれたので、結果“音楽も自信を持ってオススメできる要素のひとつ”という共通認識を持つことができました。

『ソニックフロンティア』開発者インタビュー。「世界が驚く新しいものにしよう」という意気込みのもと、本当に挑戦尽くしのタイトルだった

裏テーマとしてあった日本人だからできるモノ作り

――プレイテストをくり返すような開発スタイルだと、シリーズプロデューサーの飯塚さんがいるという点は心強いですね。

川村そうですね。私が新人のころからいっしょにやっているし、困ったときには相談できる先輩です。『ソニック』はワールドワイドで展開しているので、日本だけでものを考えちゃダメなんですよ。欧米との調整も重要ですけれど、欧米側に飯塚がいてくれたのはありがたかったですね。飯塚が欧米サイドでプロジェクトを守ってくれることもありましたし。

――海外をセットで考えるのは、なかなかたいへんそうですね。

川村はい。根本的に条件が国内と海外では違いますから。やっぱり、欧米ってメガドライブのころに『ソニック』が大ヒットしたおかげで、大きな地盤があるんです。なので、たとえばPRなら、欧米だとソニックというキャラクターを全面に押し出します。一方、日本には熱心なファンがいるものの、海外ほどの地盤はない。そこで、今作ではソニック推しというより「ゲームファンに響くもので、カッコいいものだよ」ということを中心に伝えていくことになりました。海外よりもファンの数が少ないので、新しいお客さんに届けることも大事になりますからね。

――日本と海外ではそういった違いがあるのですね! その点、音楽は共通言語というか、地域を問わずに訴えかけられそうですね。

大谷『ソニック』の音楽は古くから洋楽のスタイルを軸にやってきたと言っても過言ではありません。とはいえ、僕は日本人なので「日本の音楽やゲーム、アニメなどに影響を受けてきたバックボーンと憧れでもある洋楽の強さをミックスしたものが、世界の土俵でのオリジナリティーになるのだろう」とずっと思っているんです。本当の洋楽が欲しいなら海外の人に作ってもらうのがいちばん早いですから。

――それはそうですね。エンディングテーマをONE OK ROCKさんにお願いしたのはそのへんの意図もあってのことなのですか?

大谷どちらかといえば、それは楽曲のタイアップという取り組みの部分ですね。過去にはDREAMS COME TRUEの中村正人さんが『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』で作った楽曲のリメイク版『Sweet Dreams - 06 AKON MIX -』が『ソニック・ザ・ヘッジホッグ 』(2006)に15周年記念タイアップとして収録させていただいたこともありましたが、そこから15年が経っていますので、『ソニック』シリーズにとっては、楽曲タイアップをやること自体めずらしいのです。もちろん日本から世界に挑戦しているバンドなので、繋がる部分はあると思います。

――なるほど。ちょっと深読みしすぎたかもしれませんね。

大谷これは本作に限ったことではないのですが、日本のクリエイターという強みを活かしながら、世界基準のものをアウトプットしていきたいという想いがあるんです。

岸本それはゲームの中身も同じですね。本作には日本のアニメや特撮を意識したような演出やシーンもけっこう入っているのですが、それはやっぱり日本人だからできることで、我々の武器のひとつになる要素だと思うんです。

――本作に日本の文化を取り入れているよというのは、裏テーマのようなものですか?

大谷そうですね、ひとつの強みとして作品に活かしていこうということです。それを強く推すわけではないのですが。

――ちなみに、音楽面ではどんな楽曲が裏テーマに沿っている部分だと思われますか?

大谷メインテーマ『I’m Here』のストリングスパートは邦楽のエッセンスだと思っていますし、ストーリーを演出する「劇伴」の中にもそのようなセンスが隠されているかもしれません。とはいえ、基本的にはゲームの内容も音楽も含めて、我々が用意しているフルコースに身をゆだねていただきたいんです。あまり身構えないでプレイしてほしいです。

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映画のヒットがもたらした開発への思わぬ逆風

――開発中に『ソニック』の映画がヒットしたこともあり、ここ数年でソニックを取り巻く環境がかなり変わりましたが、それは本作の開発にも影響を及ぼしたのでしょうか?

川村1作目の映画の制作は内部でもぜんぜん知らされていなくて。ほかのふたりはわからないですけれど、正直なところ……大丈夫かな? なんて思っていました。大成功したものがこれまでなかったので。

岸本そうですね。1作目公開までは、ほとんど開発に影響はなかったです。仮に映画の興行収入が100億円を突破したからと言って、ゲームが売れるかと言ったら、それはまた別の話ですから。けっこう俯瞰で見ていました。それに、過去を振り返るとゲームの映画化ってあまりいい成績を出しているイメージがなかったので。

――そうですね。でも、結果的に大ヒットになった。

川村むしろ公開されて、ヒットしたことの影響はありましたよ。思わぬ逆風も(笑)。

――逆風ですか?

川村私たちの企画は「新しいチャレンジをする、新しい『ソニック』を作る」というものだったわけですが、ベーシックな『ソニック』を初めて映画化した結果ヒットしたので、「あれ? ベーシックなほうがよくない?」という空気感が出てきてしまって……。

岸本ああー。そうでしたね。

川村しかもセガ・オブ・アメリカのスタッフは強烈な『ソニック』ファンが多くて、「オレの『ソニック』はこうだ!」という想いがある。映画のヒットとの相乗効果で、我々が作った新しい『ソニック』に疑念を持つ声も出てきて……。我々もすごく困ったんです。けれど、プレイテストにおける客観的な評価がベーシックさを求める方向にいかなかったし、それで懐疑的な意見も抑えられた。ゲーム内容も大谷の音楽も含め、客観評価で救われた部分は多かったですね。

――しかも、そのテストは『ソニック』ファンとそうではない方との両方の評価ですからね。

川村そうです。その結果が“『ソニック』らしさ論争”にすべて決着をつけてくれました。

岸本ベーシックなソニックの方向に舵を切っていたら、映画のヒットでこれだけ期待値が高まった状況に耐えられなかったと思います。

――挑戦したことで、期待値と釣り合う結果になった形ですね。

川村そうですね。いま思えば当時よくぞ貫いたと思いますし、プレイテストをしてくれた方には感謝しかないですね。なかには3Dで酔って、テスト出来なくなった方もいましたけれど。

岸本いましたねぇ。その姿を見て「これは本格的に対策をしなきゃ申し訳ない!」と、そこから3D酔いへの対策を真剣に行うと決めたことを思い出しました。

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『ソニックフロンティア』を遊ぶ前に知っておくといいことは?

――少し話は戻るのですが、映画の『ソニック』から受けた影響というのはありましたか?

岸本私が見事に映画で刺激を受けちゃいました(笑)。映画で「これはグッとくるなあ!」というアプローチをしていたので、それをオマージュしたシーン入れようと現場に相談して、突っ込んじゃいました。映画の1作目をご覧いただいてからゲームを遊んでいただくと、気付きがあると思います。

――気付きという話題が出たので伺いたいのですが、事前知識として「これを知っていると楽しいよ」みたいなコンテンツやタイトルがあれば、教えていただけますか。

岸本世界観が共通しているわけではないのですが、ソニックのことをまったく知らない方は、映画の1作目と2作目を観ていただければ、より理解が進んで楽しめるかなと思います。あとは、ゲーム中に考察できるような要素をたくさん散りばめてあるので、遊んだ方同士で話していただけるとより楽しくなると思います。

――ああ、確かにそういうシーンはあるかもしれません。映画の『ソニック』以外のオマージュかな? と思うようなものとか。

岸本そういうものもありますね。あとは、ファミ通さんの回し者じゃないですけれど、『ソニックフロンティア 超音速プレイングガイド』に掲載されているちょっとした読みものコーナーが本当にオススメなんです。

――というと?(笑)

岸本チームで校正をしていてすごく評判がよかったところなのですが、「そこに気付いてもらえると、この世界がどれだけ深いものかわかるんだよね!」みたいなことがいくつもあるんです。ゲーム中に考察できるような要素をたくさん散りばめてあるので、遊んだ方どうしで話していただけるとより楽しくなると思います。

 いまはネットやSNSでいっぱい情報交換できると思うので、ぜひ深掘りしていただきたいです。言葉は少ないのですが、じつはすべてに意味がある、というように作ってあるので。

――そこは気にして遊んでみようと思います。では、プレイするうえで、オススメのテクニックはありますか?

岸本新アクションのサイループですね。「困ったらサイループ!」という感じで使ってもらえれば間違いないです。あとは、本作では破格の数のオプション設定を用意しているんです。文字やパラメーターがいっぱい並んでいるのでとっつきが悪いと思うんですが、今回に限ってはそのオプションをどんどんいじって、自分の好きなカスタマイズをしていただきたいです。

――それは3D酔い対策にもなりそうですね。

岸本そうなんです。グルングルン高速で回るのが『ソニック』なのですが、3D酔いを軽減してくれるようなパラメーターもたくさん調整できるようにしてあります。ステージクリアー型のアクションゲームで、こういった設定を皆さんに委ねるのは少し躊躇しましたが、『ソニック』に慣れていない方にも楽しんでいただくには必須だと思ったので、用意しました。デフォルトの設定で遊びがちだと思うんですが、設定を変えて不利にはならないので、遊びやすい形でカスタムしていただければと思います。

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――わかりました。では最後に本作に興味を持っている方へのコメントをいただけますか。

岸本ゲームって、生きていくうえで絶対に必要なものではなくて、嗜好品のようなものだと思うんですけれども。ただ、「このゲームをプレイしなかったら、人生で損をするよね」というゲームは確実にあると思うんです。『ソニックフロンティア』は、そんなゲームになったと思います。人生で損をしたくないという方は、ぜひいまこのタイミングで、プレイしていただくことをお勧めします。

大谷サウンドに関しては、美しい島の音楽と環境音でこの世界に浸り、エキサイティングなスーパーソニック戦の音楽でブチ上がり、釣りのBGMでリラックス、そして最後には……。振れ幅のあるドラマチックな音楽の演出を仕込んでいます。進化したソニックサウンドを体験してもらいたいです

川村本作は「世界が驚く新しいものにしよう!」という意気込みで作りました。『ソニック』ファンだけではなく、『ソニック』に興味がなかった方も気になるものになっています。この記事はもちろん、宣伝などを見て「あれ?」と気になる方もいると思うんですが、いその直感は絶対に正しいので、その直感を信じてぜひ手に取っていただきたいなと思っています。後悔させませんので!

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