ある日、編集者さんからこのようなオファーをいただいた。

「『クアリー ~悪夢のサマーキャンプ』(以下、クアリー)に新モードが実装されたので、プレイレビューをお願いします」

 『クアリー』……。この夏、人気を博している新作ホラーアドベンチャーゲームだ。

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『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
この記事は『クアリー ~悪夢のサマーキャンプ』の提供でお送りします。

 即刻、やんわりと断った。なぜなら筆者はホラーゲームが大の苦手だからだ。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
筆者の素直な気持ちである。

 幽霊や怪奇現象、スプラッターなどの怖いもの全般が苦手だが、怖いもの見たさというやつでホラー映画は好きだ。なぜ映画なら大丈夫かというと、あくまで映画は第三者の視点から主人公たちの行動を見守るものであり、言わば“神の視点”で楽しめるエンタメだから。

 だが、ホラーゲームは違う。コントローラーで主人公を操作し、選択肢や行動を自分で決めなくてはならない。主人公の行動が筆者にとっての他人事ではなくなり、恐怖や結果による責任が我が身に沁みてくるのだ。某バイオでハザードなVRゲームをやらされたときには、途中で気を失うかと思った。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
『クアリー』では選択肢により無数の分岐が起こり、ストーリー展開やキャラクターの安否が変化していく。“自分で決める”の極致だ。

 ところが、今回はちょっと話が違うらしい。『クアリー』には2022年7月の大型アップデートで、マルチプレイができる新モード“狼の群れ”が追加された。

 このモードでは、なんと複数人で同時に本作をプレイできる。いっしょに遊んでくれる人がいるなら、いろいろそちらに任せることで、映画と同じような第三者視点でプレイできるのではなかろうか。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
最大7人までフレンドを招待し、8人同時プレイが可能な“狼の群れ”モード。そんなに集まったらもう、にぎやかで怖さとか忘れそうじゃないか。

 こうした経緯から、筆者もこの依頼を承諾。ライター同業者のタワラ氏とカール大島氏のおふたりとともに、“狼の群れ”モードを実際にプレイしてみる運びとなった。せっかくなので、3人それぞれにレビューを書くことに。題して“悪夢のゲームキャンプ”。

 結果、『クアリー』の物語なみに恐ろしい変化が、我が身に降りかかることも知らずに……。

多数決とQTEが、選択から逃げる者を引きずりこむ

 まずは改めて、ゲーム概要から説明しておこう。本作は、さまざまな選択によりストーリーが変化していく傑作『Until Dawn(アンティル ドーン)-惨劇の山荘-』のクリエイターが手掛けた、ホラーアドベンチャーゲームだ。

 『クアリー』でも、さまざまな選択によってストーリーの展開や登場人物の生死がめまぐるしく変わっていく。本格的なホラー映画のようなストーリーを、プレイヤー自らの手で編纂できるタイトルだ。

 映画のよう、というのは誇張でもなんでもなく、本作のストーリーラインはほぼすべて、ハリウッド俳優陣が演じるムービーシーンで語られていく。本作の舞台となる“ハケット採石場”のキャンプ場にも、古きよきホラー映画の定番がこれでもかと詰め込まれている。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
いわくつきのハケット採石場のキャンプ地に、サマーキャンプのカウンセラーとして訪れていた若者9名が主役。青春を謳歌する彼らが、このキャンプ場で恐怖の一夜を体験する。

 そして本作最大の要となるのが、選択肢による分岐システムだ。随所に入る選択肢のどれを選ぶか、あるいは登場人物のとっさの行動が成功するかどうか。これらが物語の展開を大きく左右する。

 プレイヤーの選択は“QTE(クイックタイムイベント)”で決定。指定された方向へのレバーやボタン入力の成否で、登場人物の生死や物語の結末が変化していく。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】

気軽に観賞できる……と思ったら、やっぱり怖いじゃん!

 さて、“狼の群れ”モードではこの辺はどのように変化するのだろうか。このモードでは、ホストを担当するプレイヤーがゲームを進行し、ほかの参加プレイヤーはそれを見守るのが基本となる。まさに神の視点だ。

 探索中の画面では、参加者は任意の場所にピンを打ち、ホストに「ここを調べて」などといったアピールこそできるが、進行には関与しない。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
このモード内ではさらに“群れの狼”と“一匹狼”というふたつの形式が選択できるが、大まかな進行方法はどちらを選んでも同じ。各モードについては後ほど説明しよう。
『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
探索中や銃を構えた状態など、キャラクターの動きを操作する場面ではホストのみが操作を担当する。

 今回の3人プレイでは、まずは“群れの狼”モードを選び、さらにPS4とPS5の本体にあるパーティー機能で通話しつつ遊んでみることにした。

 筆者は参加者側となったので、ますます映画のウォッチパーティーじみてきた。安心感がハンパない。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
本作の冒頭、キャンプ場へ向かう若者ふたりのシーンには心霊的な演出が入る。筆者は内心ビクビクものだが、通話しながらなら何とかなった。

 これなら本当に映画気分で楽しめるのではなかろうか。ポップコーンとコーラを準備すべきだったかもしれない……などと高をくくっていたが、そこで木の枝をとっさに避けるQTEが発生。チュートリアル的なものなので、まぁホストが失敗することもないだろう。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
えっ、失敗?

 まさかの失敗。様子がおかしい。一瞬だが、QTEの画面に3人のプレイヤー名が表示された。その後のQTEも、試しに参加者側がふたりとも何も入力しないでいたら、やはり失敗。

 なるほど、そういうことか。このモードでのQTEは、ホストを含め参加者全員が挑戦する。そして過半数以上のプレイヤーが成功しないと、失敗扱いになるのである。

 ふつうはまず失敗しないQTEに失敗したことで、この後に筆者が知らないホラー展開が追加されることになった。心臓バクバクである。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
まさかの怖いシーンの追加。やめて。

 さらに、“群れの狼”では選択肢についても過半数の原則が適用される。投票は早い者勝ち。筆者が投票する前にほかのふたりの意見が割れるとどうなるか。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
ホストじゃないのに、私に最終決定権が委ねられた。

 いきなり責任が発生した。「ソロだとこっち選んでたんですけどそっちは初めて見ますねー」などと、ほかのおふたりは興味津々のようだが、筆者は内心、気が気ではない。

 神の視点どころの話ではない。このモード、ホスト以外の参加者もしっかりと選択の責任を担うようになっていた。見ているだけでは終わらず、しっかりゲームに参加する仕組みになっていたのだ。逃げたい。

 と、これは参加者側の話。ホストの場合は、自分の意図とは違う方向性に話が転がっていくからたまったものではない。ソロで一度クリアーしているので心の準備はできていたが、ときおり新鮮な恐怖がやってきて背中をなでていくのだ。すみません。勘弁してください(ホラーが苦手なホスト経験者談)。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
知らない展開を意図せず観賞できるのは、このモードならではのおもしろい点ではある。だが、筆者にとっては苦手な要素が増えていくわけで、もう帰りたくなってきた。でも見たい。この辺の葛藤はいかにもホラー作品である。

ホストの心を揺さぶる“一匹狼”モード

 ストーリーは進み、若者たちがキャンプ場で青春群像劇をくり広げるシーンに突入していった。名作ホラー映画ではお約束の、登場人物たちの人物像を描きつつ、その後のホラー部分を引き立てる冒頭部分のアレだ。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
絶妙に若者らしい無鉄砲さがあふれている。恋と青春の甘酸っぱいやり取りが続く。

 このあたりでモードを切り替えて試してみようということになり、ゲームモードを“群れの狼”から“一匹狼”に変更。すると、選択肢の場面で大きな変化が起きた。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
ホスト以外の参加者が全員選択した後に、ホストプレイヤーが選択。選ばれるのは多数決の結果を問わず、ホストプレイヤーが選んだ選択肢(狼のマークがついているほう)となった。

 一匹狼モードでは、ホスト以外の参加者の選択はあくまで参考程度。最終的な決定はホストに一任される。

 これだけ聞くと、ホストによるソロプレイのような展開を想像するかもしれない。しかし実際にプレイしてみるとそうではないのだ。意見が半分に割れているときはまだしも、ホスト自身が選びたかった選択肢とは異なる選択肢に票が集まっているときの心境は複雑だ。筆者がホストを体験したときは、妙なプレッシャーを感じてしまい、背中にうっすら汗をかきそうだった。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
本当にこちらを選んでいいのか、その選択による結果を非難されたりしないかと、独特の緊張感がある。実際に今回のプレイでも、ホストの決意が揺れる場面が何度もあった。

 たとえば、車を一時的に壊すことで一晩宿泊を追加し、恋の成就のチャンスを得ようとする登場人物ジェイコブの選択肢。車を壊すために、ジェイコブが取った選択は……。

  • 左:燃料パイプを外す
  • 右:ローターアームを取り外す
『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
明らかに左はあかんとわかる。エンジンをかけたら大炎上、ヘタすりゃ大爆発だ。

 このときホストプレイヤーだったタワラ氏が選択する前に、まずはカール大島氏が左のあかん選択肢に投票。ついつい筆者もそれに続き、おもしろがって左に投票してしまった。

 こうなると、ホストプレイヤーの心境やいかに。悪ノリそのままに左に投票するもよし、あえてその期待を裏切って右を選ぶもよし。その選択に、ソロプレイのときとはまったく異なる感触が生まれることは言うまでもない。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
当然、この選択肢によってこの後でえらいことが起きてしまう。ソロプレイのときとは異なるプレイ感覚や楽しみかたが、この辺から芽生えてきた。

 なお、QTEが過半数の成功=成功判定となるのは“一匹狼”モードでも変わらない。ホストに選択肢の決定権を委ね、第三者目線になれるかと思ったらそんなに甘くはなかった。

 そうして、3人が当事者意識を持ちつつ、このモードのプレイにも慣れてきた頃ライターならではの心配ごとが浮上してきたのである。

「……これ、撮れ高が少なくないですか?」

ホラー苦手マン、まさかのサイコパス化

 引き続き、一匹狼モードで遊ぶ我々3人。その選択肢の傾向が、“撮れ高”という不純な意識から明らかにおかしくなっていく。変わったことは起きないか、記事用のネタは落ちていないか。そんな方向に鼻が利く。職業病、いや一種の呪縛である。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
若者たちの不仲が加速。
『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
助けてくれそうな大人の登場人物に、反抗的な態度。

 そう。ホスト以外の参加者は、意見を出すだけならとついついふだんは選ばないような“まずい”と直感的にわかる選択肢を選んでいく。

 そしてそれは恐ろしいことに、ホラー好きにとっては“ホラー映画らしい”選択肢でもあり、ついつい選びたくなるものだった。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
トゥルーエンドを目指すソロプレイなら、絶対に見られないような選択と展開が続く。QTEにわざと失敗するような場面まで出てきた。

 パーティー機能で通話しながらプレイしていることも、この恐ろしい展開に拍車をかけた。そう、選んじゃいけないと思われる選択肢を選ぶたびに、おもしろくてどうしても盛り上がってしまうのである。

「もはや最初の犠牲者を出すまでのRTA(リアルタイムアタック)ですね」

 こんな発言まで飛び出し始めた。この3人が初見プレイならこんな展開にはならなかったかと思うが、3人ともソロプレイでストーリーの大筋を知っていたことも要因だろう。

 むしろ、ストーリーを知っているうえにホラー要素がまだない青春パートなのに、ここまで盛り上がれるのがすごい。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
若者たちの頼れるリーダー格であるライアンのIQが、選択肢によって明らかに下がっていく。もう助かるものも助からない。
『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
謎めいた“ハンター”が、遠巻きに若者たちを見つめる形で初登場するシーン。「ここでひとりくらい撃たれないかな」などと言ってしまった人がいたのは秘密だ。

 ホラーが苦手とビクビクしていた筆者だが、この異様な展開に何やら不思議な高揚感と一体感を覚え始めた。『クアリー』ってこんなゲームだっけ。スピーディーかつアグレッシブな死亡フラグ立てが続いていく。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
キャンプ施設のドアは、全員意見が一致して蹴破った。だけど先にとっとと進みたいので、探索はおざなり。真相や護身手段が全然見つからない。
『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
ソロプレイではじっくり探索する探索パートも、エリアの出口へ一直線。我々は早くホラー展開が見たいのだ。

 ゲーム内の時間が夜を迎え、ホラー展開が始まる直前に至ることで、我々3人の一体感は最高潮に達した。そろそろ重要になってくる選択も、ノリと勢いからホラー映画にありがちな“愚かな若者”側へと傾いていく。

 王様ゲームのような遊びをするシーンでの選択では、筆者は最後の理性を働かせてまっとうな選択肢を選んだものの、ホストの選択は正反対。この辺で筆者も完全に吹っ切れた気がする。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
こちらが問題の、“男性”キャラクターの行動を決めさせたシーン。どちらの展開になったかは、もはや言うまでもないだろう。
『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
別行動している仲間に避難する旨を伝言メモで残すべきかどうか。とても重要な選択に思えるが、誰かが口にした「もう大人なんだから大丈夫ですって」のひと言が我々の選択を決めた。

 さて、こんなプレイを続けていったら、どんなことが起こるか。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
ジェイコブが最速でよくない方向へ誘導され、ほぼ全裸の姿で犠牲になった。哀れ。

 ジェイコブに続きその想い人、セクシー担当のエマもさくっとやられた。

 ガタガタと何かが暴れていて、ここは開けちゃいけないだろうと丸わかりの戸を開ける選択をしたのだから、そりゃそうなる。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
ここでこの戸は、ふつうなら開けさせない。

 この時点でのプレイ時間は、約3時間ほど。ソロプレイで遊んだときには、この時間で死者が出るようなことは一度もなかった。

 過程をすっ飛ばして説明してしまうと、ホラーが苦手で保守的だった筆者が、最終的にはわいわい盛り上がりながら登場人物を破滅に導く、デスゲームの主催側みたいなサイコパスになっていたわけである。

ひとりでは味わえない、別物の『クアリー』がここに

 このようにホラーゲームが苦手なはずの筆者が、別の楽しみかたについつい高揚してしまったこちらの新モード。ホラーが苦手な人でも安心して遊べた、という点は当然魅力として挙げたいが、ホストの視点と参加者の視点の違いや、“群れの狼”と“一匹狼”の違いなども考えると、ほかにもさまざまな魅力がありそうだ。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
ソロでクリアー済みのプレイヤーと、初見のプレイヤーが集まったりしたら、どんな化学反応が起こるのだろう。想像するだけでもおもしろそうだ。

 今回の通話しつつのマルチプレイで、ホラーが苦手な筆者の印象にとくに残った部分をほかに挙げると、“知らなかった要素を教えてもらえる”という点がまず浮かぶ。

 たとえば、エマがスマホで配信用の自撮り動画を撮影しながら歩くシーン。筆者はなんとはなしに眺めていたが、そこで参加者のカール大島氏から、こんなひと言が。

「このシーン、後ろに一瞬“映って”ません?」

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
えっ、どこ(※こちらの画像には問題のものは映っていません)。

 以来、このシーンに何が映っているのか探したい反面、そんな怖いものは見たくもないと目を逸らしたくもなるという、困った状態になってしまった。おのれ、余計なことを。

 今回のマルチプレイでは、冒頭のQTEに失敗すると追加されるシーンの存在や、ふだんとは異なる選択肢による展開など、ストレートにプレイしていたらお目にかかれなかった部分をいろいろと知ることができた。ホラーゲームへの苦手意識から周回を重ねられそうにない筆者には、ありがたくも恐ろしいゲーム体験だ。

『クアリー』レビュー。ホラーゲームのマルチプレイ“狼の群れ”で怖がりライターがサイコパス化し、デスゲームの主催者になるまで【悪夢のゲームキャンプ1】
ホラーが苦手だからこそ無意識のうちに避けていた、未知の部分にも触れられた。『クアリー』の分岐の多さや細かなこだわりに、改めて驚かされる。

 選択次第で異なる展開になることから、何度も楽しめる仕掛けになっている『クアリー』。“狼の群れ”モードはその遊びの幅をより広げてくれるうえに、非常に新鮮なプレイ感覚も味わえるものとなっていた。

 筆者と同じくホラーゲームが苦手という皆さんも、このモードの追加を機会に挑戦してみてはいかがだろうか。いや、べつに他意などはない。各プラットフォームで体験版が配信中なので、親切心からお伝えしているだけだ。

 ホラーゲームが苦手でゲームを進めたくないのに、マルチプレイで知った未知の展開が気になり、プレイしたくなってしまうというこの板挟みの苦境に引きずり込もうなどとは、少しも思ってはいない……。

違う方向性の恐怖もある……恐怖のポッドキャスト

 ホラーものを完全に克服したわけではないが、『クアリー』のマルチプレイは新鮮な気持ちを味わえた。編集者にそう報告したところ、このような返事が返ってきた。

「『クアリー』のポッドキャストがあるんですよ。作業用BGMにどうです?」

 ゲームの舞台“ハケット採石場”周辺で起こる超常現象を別の視点から描いたもので、全6回分が配信されているのだそうだ。

 冒頭でも書いた通り、筆者は自分の体験と結び付く恐怖が超苦手だ。ポッドキャストはどうだろう。怪談みたいなものと考えたら楽しめそうだが、ゲーム本編の記憶が掘り起こされたら……。

 決めた。怖いもの見たさ(聞きたさ)で聞いてみることにします(そして恐怖で原稿が手につかなくなる)。

『クアリー』ポッドキャスト
ファミ通.com『クアリー ~悪夢のサマーキャンプ』特設サイト