不良やスケバン系が大好きなので、男性なら緒方、女性なら鷹宮がお気に入りの西川くんです。2019年11月28日に、アトラス×ヴァニラウェアのタッグが贈る最新作『十三機兵防衛圏』が、ついに発売されました。

 本記事では、そのプレイレビューをお届け。ちなみに、僕は全編クリアー済みですが、ネタバレはもちろん一切ナシ。「気になっているけれど、どんなゲームなの?」という人に向けて、ゲームの概要を紹介しつつ、レビューしましょう。

『十三機兵防衛圏』レビュー。ヴァニラウェアらしいグラフィックが13人の謎を包み込む、二度と体験できない壮大な物語_01

3つのパートで記憶をたどる

 物語の舞台は、おもに1985年の学園。平和な日常生活を送る学生たちでしたが、突如出現した“怪獣”の存在により、世界は崩壊していきます。人類の存亡をかけて、13人の主人公たちはさまざまな視点や立場から、大型機動兵器“機兵”に乗り込み、怪獣と戦いをくり広げていく……というのがおもなストーリー。

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 本作は3つのパートに分かれていて、アドベンチャーパートの“追想編”、シミュレーションバトルの“崩壊編”がゲームのメインとなっています。もうひとつのパート“究明編”は、追想編、崩壊編ふたつを進めることで開放されていく、アーカイブパートとなっています。

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 各パートをレビューする前に、まずはすばらしいグラフィックにぜひご注目を。ヴァニラウェアといえば『オーディンスフィア』、『朧村正』、『ドラゴンズクラウン』などのような、まるでイラストがそのまま動き出したかのような、超美麗な2Dグラフィックが特徴的ですよね。

 本作でもその魅力はもちろん踏襲されており、とくにキャラクターアニメーションがより豊かになっているのが特徴です。とくに、キャラクターの表情は本当に細かくて、目線を逸らしたり、頬を染めたりと、作り込みがスゴイ!

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 また、本作の舞台は、ヴァニラウェアが手掛けるタイトルとしては珍しく、現実の世界がモチーフ。教室に差し込む夕日、朝のグラウンドを照らす太陽などなど、現代の情景を美しく映し出すライティングもすばらしいのです。美麗なグラフィックが、壮大なドラマをより盛り上げてくれるわけですよ!

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謎が謎を呼ぶアドベンチャーパート:追想編

 追想編は、2Dスクロール画面で展開するアドベンチャーパート。13人の主人公の中から好きなひとりを選択して(物語をある程度進めていくと、順次主人公が選択可能になります)、各主人公が抱える謎や事件に立ち向かっていきます。

 特徴的なのが、キーワードで行動を選択する“クラウドシンク”システム。通常のアドベンチャーゲームは“聞く”、“話す”というようなコマンドを選択して進めたりしますが、本作は取得したキーワードを使って、その物事について考えたり、そのことに関する情報を人に尋ねたりできます。

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 たとえば“銃”というキーワードがあるとして、その状況に合わせて銃を取り出したり、隠したり、はたまた人に向かって突き付けたりと、そのシーンに合ったキーワードを選択すると、物語が進んでいくんです。

 また、同じシーンでも異なるキーワードを使えることがあり、それが分岐につながったりしていくわけです。そしてその分岐先で、新たなキーワードを入手……というサイクルが基本的な流れ。

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 さて、ネタバレなしと先述したわけですから、追想編についてはふんわりした感想になります。クリアーした感想ですが、……スゴいです(ふんわりすぎ(笑))。感動したなんてもんじゃないんですよ。こんなゲーム、二度と味わえない、出会えない。それどころかゲームの歴史上、金輪際こんなゲームは出ない、出せないんじゃないでしょうか。とにかくラストにいたるまでの展開、体験は唯一無二の味わいです。

 僕の場合、追想編だけでもクリアーまで50~60時間ほど掛かりましたが、一度ゲームを進めたら、続きが気になりすぎてやめられず、ノンストップ状態でした。

 各主人公の展開はさまざまで、バラエティー豊か。たとえば十郎の物語は、平穏ながらも不思議な毎日を送る、ややホラー要素の強いシナリオ。一方で、鷹宮は南の探索や学校の謎を探っていく、探偵もののような物語だったり。緒方はループもののSFらしい展開で、冬坂は女子トークから派生して物語が進行していくなど、ゲームシステム的にもかなり個性的です。

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 一見すると13人の主人公たちによるオムニバスストーリーのようですが、その実、おもしろい試みがなされています。各ルートは、取得したキーワードでほかの展開へとつながるので、基本的にほぼすべてのルートをたどることになるんです。

 そのルートひとつひとつに“謎”が散りばめられていて、毎回「えっ!?」と驚いてルートが終了する……というのが、まるで海外ドラマを観ているかのような感覚。謎が謎を呼び、謎が解き明かされたと思ったら、さらにまた謎が生まれていく。

 しかも、語られる謎や真相の時系列はバラバラで、どの主人公の物語を進めるのかはプレイヤーに委ねられているので、読み進めながら物語全体を把握するのは、正直かなり難しいです……。

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いわゆる“ヴァニラめし”ももちろんアリ!

 膨大な情報量を一気に飲み込むのはたいへんなので、究明編を見ながら情報を整理したり、休憩がてらに崩壊編を遊んで頭を休ませるのがオススメです。難解ではありますが、すべての謎を解き明かし、物語が一直線につながった瞬間、あなたはいまだかつてない体験をすることになるでしょう……!

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機兵の使いかたが鍵を握るバトルパート:崩壊編

 崩壊編は追想編とは完全に独立していて、プロローグではアドベンチャーパートから、バトルパートへと移行しますが、プロローグ終了後は個別に進めていくことになります。追想編の一部の主人公には“崩壊編をここまで進めると、つぎのエピソードが開放されるよ”とい う条件がありますが、全体を見ると、崩壊編が開放条件になっていることはほとんどありません。交互に進めるもよし、一気にクリアーしてもよしと、いろいろな楽しみかたができますよ。

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 ゲームはリアルタイムに各ユニットへ指示を出していくシミュレーションバトル。さまざまな特徴を持つ機兵とパイロットを駆使して、迫りくる機兵を打ち倒すのが基本的な目的です。

 始める前はちょっと難しそうだなと感じていましたが、コツをつかめばサクサクと怪獣を撃破できるようになり、かなり爽快感のあるバトルが楽しめました。とくに、大勢の敵を1発でドーン! と破壊すると、無数の数字と花火のような爆発が画面いっぱいに広がるのが超爽快!

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 敵は基本的にターミナルを目標に迫って来るので、出現した敵の種類に合わせて、対応する機兵を動かして攻撃するのがプレイヤー側の基本戦術。

 敵が大勢の集団で現れたら範囲攻撃が得意な第三世代機兵で迎撃、アーマーを持つような大型の敵には威力の高い第一世代機兵の兵装を使って一撃必殺、その隙や合間を、第二世代機兵と第四世代機兵でサポートしていくのが、基本的な立ち回りです。

 ピンチの際には、敵の撃破などで溜めた“メタゲージ”を消費して、ターミナルから全体攻撃や回復などもできるので、ゲージの使いかたも攻略に重要なポイントになります。

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 機兵の装備開発やターミナルの強化には、メタチップという、バトルで勝利することで得られるポイントを消費します。各ウェーブはクリアーした後も何度でも挑戦できるので、戦力を強化したい場合はくり返して挑戦するといいでしょう。

 また、追想編の各ルートのエンディングを迎えるだけでもメタチップは溜まります。もらえるポイントはかなり多めなので、追想編を進めていくだけでも戦力強化を図りやすいのがうれしかったです。

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 お気に入りの主人公だけ使いたい人もいると思いますが、各主人公は出撃すると疲労度が溜まっていき、最大時には出撃不可能になってしまうので、13人でうまく登板ローテーションを組んでいくマネジメントも重要です。また、1~3機などの少ない数で出撃して、ほかのパイロットを休ませるというのも有効。もし全員疲労が溜まったら、全体休憩も可能ですが、全体休憩せずに連続出撃すればするほどスコアボーナスが入るので、あまり使いたくないというジレンマも……。

 ちなみに鷹宮は、仲間の人数が少ないほどパワーアップするスキルを持っているので、1機で出撃して12人を休ませるのにうってつけ。そのほかにも特定の主人公といっしょに出撃するとパワーアップするなど、スキルから人間関係が見えるのも、個人的には好きなポイントです。

もはや本編!? アーカイブパート:究明編

 本編と言っても過言ではないくらい、重要な情報がびっしりとまとめられている究明編。各キャラクターのイベントのあらすじがズラリと並んでいるので、散りばめられたストーリーの謎を、一気に読み進められます(と言っても、しっかりと振り返るにはすべてをクリアーしてイベントを全開放する必要がありますが)。

 もちろん追想編をプレイしている最中に「あれ、いまのお話はどの段階の、どこだったんだ?」とわからなくなったとき、確認のために見るというのもアリです。先述した通り、本作の物語は本当に難解ですので、究明編を見ながらじっくりと紐解いていくといいでしょう。

 また、究明編で閲覧できる各用語には、小物や、形も出てこないようなアイテムなどのグラフィックまで用意されているので、それらを見ているだけでもかなり楽しいです。閲覧可能なワードは本当に膨大なので、開放に必要なポイントを得るために、崩壊編をガッツリ遊びましょう。追想編で強化ポイントを貯めて崩壊編を有利に。崩壊編で用語を開放して物語を読み進めやすくする。この関係性が、本作の醍醐味なのですよ!

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難しい物語の先に待つものとは

 さて、最後にまとめますと、本作はヴァニラウェアらしい美麗なグラフィックとともに、少年少女たちの群像劇が楽しめるジュヴナイルアドベンチャーです。気になる人は序盤がまるごと遊べる体験版も配信されていますから、気軽に遊んでみてはいかがでしょうか。

 何度も言う通り、物語を理解するのはかなり難しいですが、だからこそエンディングを迎えた際の気持ちの高まりは唯一無二のものですし、逆に難しいお話を解明していくのが楽しい要素でもあったりします。推理ゲームではないのですが、プレイしながら重要なことをメモしつつ遊ぶと、頭が整理しやすくてオススメですよ。

 あと、崎元仁氏(ベイシスケイプ)の音楽はホントに好き! 追想編のノスタルジーな曲も、崩壊編のバトル曲もスゴイ! ずっと聞いていられます。サントラまだですか!?

 ご、ごほん。そしてこちらも先述しましたが、本当にこんなゲーム2度と世に出ることはないでしょう。その理由は……プレイすればわかります(笑)。まあつまり、大事なところは語れないというわけで……。少年少女たちの記憶の断片、そして結末。すべてを自身の手で、ぜひ体験してほしいです。

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すっごくマジメにシメてしまったので、なっちゃんのドキドキシーンでお別れを!