目を覚ますと見えたのは、じぶんちとは違うおばあちゃんちの天井。外からは「ザー」っと切れ目のない雨の音が聞こえてくる。ぼくはすごく嫌な予感がして、階段を駆け下りて居間に飛び込む。今日は遊園地に行く日なのに!

 Inasa Fujio氏の『梅雨の日』は、雨で遊園地に行く予定がなくなり、祖母の家で母や弟と過ごす一日を描く短編ゲーム。SteamでPC版の配信が予定されている。

 先週アメリカのサンフランシスコで行われたインディーゲームイベント“Day of the Devs”で本作のデモを試遊してきたのでご紹介しよう。

『梅雨の日』約束だった遊園地は雨で行けなくなった。退屈に過ごしたあの日に流れていた魔法のような時間を思い起こす短編ゲーム_05
思いっきり日本向けの内容に思えるが英語対応を予定しており、今回は海外インディーゲームイベントに堂々出展。遊んだ人に話を聞いてみたら、ジブリアニメなどを連想するようだ。

 さて、ゲームは一人称視点のアドベンチャーゲームスタイル。テーマから『ぼくのなつやすみ』シリーズなどを連想する人もいるかもしれないが、あそこまでノスタルジックを凝縮せず、雨が降りしきる中の家での時間の流れが静かにゆったりと描かれる。

『梅雨の日』約束だった遊園地は雨で行けなくなった。退屈に過ごしたあの日に流れていた魔法のような時間を思い起こす短編ゲーム_01

 首振り式の扇風機に、蚊取り線香、みんながダラダラ見てる朝のバラエティ番組、キッチンに残された近所のスーパーのチラシ、遠くから聞こえてくるサイレンに、仏間に飾られた会ったことはないおじいちゃんの写真。

 どこにでもありそうな老人の家の誰にでもあったような退屈な一日の光景なのだが、情景描写に特化しているだけあって、自分もかつて聞いたような祖母や母のセリフや、“昼ごはんがカップラーメンになってちょっと嬉しい”といった描写になかなかグッと来るものがある。

『梅雨の日』約束だった遊園地は雨で行けなくなった。退屈に過ごしたあの日に流れていた魔法のような時間を思い起こす短編ゲーム_03

 そしてやがて雨の中の暇な時間は空想を呼び起こし、いつの間にか水が増してすっかり池のようになった庭に光る鯉が泳ぎだす……。全体で40分程度の内容を目指しているとのことで、完成の際には祖母が出してくれたようなお菓子とお茶でも用意して、じっくり腰を据えて通しでプレイしてみたい作品だ。

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