“強制遠近法”という言葉をご存知だろうか? これは一般的に、影などを無視した場合にその物体の像だけでは大きさの判断があまりつかないことを利用した視覚トリックに使われる。観光地の塔などが手に乗っているようなアングルで写真を撮ったことがある人もいるかと思うが、“遠景にある大きな物体”を小さく見せたり、逆に“近くて小さな物体”を大きく見せたりするアレだ。
Pillow Castle Gamesの『Superliminal』は、まさにその強制遠近法などの錯視を使った一人称視点のパズルアドベンチャーゲーム。本日よりEpic GamesストアでPC版が配信開始されており、日本語にも対応している。
では強制遠近法をどうやって使っているのか? 本作の世界でプレイヤーが干渉できるものは、プレイヤーが掴んだ瞬間にその像の大きさだけが固定され、それが“大きくて遠い物体”か“小さくて近い物体”かは未定になる。そして離した瞬間に周囲の物体との関係で実際の大きさが決まるのだ。
実際に映像を見てもらうのが手っ取り早いのだが、これで何ができるかといえば、物体の巨大化や縮小化だ。物を大きくしたければ近づいて像をデカくしてから掴んで十分なスペースがある方角(例えば天井)を向いて離せば、できるだけ遠い距離で大きい物体となって出てくる。逆に巨大な物体を小さくしたければ、像が小さくなる離れた所から掴んで足元に落としてやればいい。足元で小さく見える物体は実際に小さくなる。
本作では、この性質を使ってパズルを解いていくことになる。例えば頭上数メートルの所に次のエリアへの入り口が、部屋には一切れのチーズの欠片があるとしよう。チーズに近づいてデカくなるようにしてから掴んで離すのを繰り返せば、数回でチーズは巨大なスロープへと変貌する。後は頭上の入り口に繋がるように配置して、歩いて登ればいいだけだ。
作中の舞台は、物理法則が歪むのも納得の“夢を利用したセラピー実験の中”という設定。案の定と言うべきか、実験は次第に妙な方向へ。一定の角度からだけ見える騙し絵から物体が具現化したり、ぶっ壊れたゲームのように触るたびに増殖する物体が出てきたり、強制遠近法以外の錯視やゲーム的な常識を逆手に取ったギミックが続々と登場していく。
クリアーまでは相当早い人で1時間半程度から、初見でそこそこ迷う人で恐らく3時間程度。1箇所だけ力任せな方法が正解になっていて唖然としたが、基本的にはハマるのは「通れないと思った場所に実は通れる道が隠されている」程度のはず。
また記者がプレイした発売前のバージョンでは少しだけ訳抜けがあったりもしたが、仮に発売バージョンで修正されていなかったとしてもストーリーを把握する分には支障ないはずだ。
なおSteamでのPC版販売や家庭用ゲーム機版なども来年に予定しているとのこと。