2018年11月22日、前作から数えると約9年ぶりの続編発売となった『絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』。発売日当日の秋葉原・エンタバアキバ by WonderGOO/SHINSEIDOでは、本作の発売を記念するステージイベントが開催された。

 会場には『絶体絶命都市』シリーズ統括プロデューサーの九条一馬氏と、声優の村井理沙子さんが登場し、さまざまなトークをくり広げた。

 さらに、イベント後半では、シンガーソングライターの飯田舞さんによるミニライブも行われ、会場は大いに盛り上がった。本イベントは全2回の公演となっており、本記事では1回目の模様をお届けしよう。

約9年ぶりの新作『絶体絶命都市4Plus』発売記念イベントにファンが集結! 本編のその後を描いた後日談の配信も……!? _02
左から、村井理沙子さん、九条一馬氏、飯田舞さん
約9年ぶりの新作『絶体絶命都市4Plus』発売記念イベントにファンが集結! 本編のその後を描いた後日談の配信も……!? _01

 まずは九条氏による開発秘話からトークはスタート。

 本作の開発には紆余曲折があり、まず2010年にプレイステーション3用ソフトとして『絶体絶命都市4』が発表されたが、その後開発中止が決定。2011年に九条氏は独立し、グランゼーラを発足した。そしてその後、『絶体絶命都市』シリーズの販売権、知的財産権をアイレムソフトウェアエンジニアリングから譲り受け、開発が再スタートしたという複雑な経緯がある。

 九条氏は『絶体絶命都市4』の開発は中止になったものの、いずれは必ず災害をテーマにしたゲームを出そうと考えていたそうだ。そしてできれば、災害をテーマにするのであれば、『絶体絶命都市』シリーズとしてやはり出したい、という強い思いから版権取得に至ったのだとか。

 また、これまでの『絶体絶命都市』シリーズは閉鎖的な地域で、少人数の人たちが逃げ惑う機微を描いていた。しかし、本作の前身である『絶体絶命都市4』では、プラットフォームがプレイステーション3となったことで大人数の人物を描けるようになった。そんな登場人物たちが、災害に巻き込まれたとしても、そこで暮らしていかなくてはならないというリアルな問題を描きたい、ということで『絶体絶命都市4』は企画されたという。

 村井さんが「8年前から、心を折らずに開発が続いたのはスゴいことですよ」と称賛すると、九条氏は「逆です」と返す。「8年間も、ファンの皆さんが待ってくれたことがスゴい。僕はもうすでに倒れてて、後ろからファンの皆さんが支えてくれていただけですよ」と、ファンへの感謝の気持ちを述べていた。

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 続いては、そんな『絶体絶命都市4』が、『絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』となり、何がプラスされたのか? というトークテーマへ。まずは『絶体絶命都市3 -壊れゆく街と彼女の歌-』でも好評だった、防災マニュアルの追加。そして、VR機能の搭載だ。『絶体絶命都市4』のころは、物体が飛び出して見える3D映画などが流行していたため、3Dモードというのを考えていたのだとか。昨今はVRが流行しているということもあり、本作の再開発が始まる前からVRへの研究を進めていたそうだ。

 また、『絶体絶命都市4』時代(2010年前後)の当時としては、携帯電話業界ではスマートフォンがまだそこまで普及しておらず(※ちなみに、iPhone 4の発売が2010年)、物語の中で登場させている携帯電話がいわゆる“ガラケー”だったので、すべてスマートフォンに変更したそうだ。

 このほかにも、ゲームの中で会社の株券を取引するシーンがあるが、当時はまだ紙の株券でやり取りしていたが、現在はデジタル化が進み、紙の株券でのやり取りがほぼないそうで、ゲーム中では仕方なく契約書という形に変更したという。このほかにも法律が変わったことによる弊害など、本作ならではのさまざまな開発の苦労があったようだ。

 続いて、『絶体絶命都市』シリーズの魅力のひとつでもある豊富な選択肢の話題へ。村井さんが「あれを考えるのは大変じゃないですか?」と聞くと、九条氏は「考える人より、作る人が大変(笑)」と開発の裏側を暴露。

 たとえば、「汚い手で触るな」と口に出して嫌がるのか、(汚い手で触るな……)と、心の中で思うだけなのかという少しだけニュアンスの違う選択肢が選べるのは、本シリーズならではの特徴。

 それを開発スタッフに伝えると「この選択肢、おもしろいんですけど、ふたつ必要ですか?」と、開発工程が増えるのを嫌がるのだとか(笑)。そこを九条氏は「おもしろいと思うのならやってくれ!」と説得していくそうだ。

 複数の選択肢は、勝手に主人公を喋らせたくない、というポリシーのもとで作られたもの。“この選択肢、意味あるの?”というようなものもあるが、それらもじつは膨大な選択肢の数が用意された中から、九条氏が厳選してゲーム内に搭載しているのだとか。

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 ここからは、エンタバアキバ by WonderGOO/SHINSEIDOの店舗に約2週間設置されたアンケートBOXの中から、ファンの質問を投げかけるというコーナーへ。最初の質問は、“九条氏が本作でいちばん力を入れたポイントは?”というもの。クリエイターとして作品全体に力を込めたと前置きしつつ、強いて言うならば九条氏は悲しいシーンは悲しく、笑えるシーンは笑えるようにと、エンターテインメントとしてのメリハリを付けたことをアピール。

 続いては“九条氏がいちばん気に入っているゲーム内のコスチュームは?”という質問。本作にはさまざまな衣装が用意されており、さらに購入店舗によって特典衣装が異なっている。会場となるWonderGOOで購入すると、青いメイド服がゲットできるということもあり、九条氏はメイド服(男)をチョイス。

 ちなみに、グランゼーラのベテランのスタッフにメイド服の発注をすると、そのまますんなり男女が着れるメイド服を制作する。しかし若手のスタッフに発注した場合は「女性はメイド服で、男性は何にするんですか?」と質問が返ってくるのだとか。それに対して九条氏は「え? メイド服って言ったよね?」という感じで真顔で答えるのだそうだ(笑)。

 また、Ver.1.04パッチを適用すると手に入るレオタードもお気に入りとのことで、開発中はよくレオタードを着させてチェックなどを行っていたことを明かしていた。

 おつぎは“プレイステーション4になったことで、苦労された点は?”という質問だが、九条氏は「プレイステーション3より、プレイステーション4のほうが開発しやすかったですよ」とアピール。続けて九条氏は、性能が高くなったおかげで、さまざまな表現方法を盛り込めるため作りやすいということを言いつつ、ごまかしが効かなくなったというデメリットも語っていた。

 アンケートBOXの中には、“九条さんの描いたイラスト付きQUOカードが欲しい!”という要望も。バンダイナムコエンターテインメントより発売された『巨影都市』(開発:グランゼーラ)では、ディレクターを務めた九条氏のイラスト付きQUOカードがプレゼントされるキャンペーンがあった。九条氏も同じことを考えていたそうで「QUOカードやろうか?」と聞いたそうだが、会社から止められたのだとか(笑)。

 またかつての『絶体絶命都市4』には、予約特典として“カップ麺フタ押さえタイマー~3分ガンバレ!絶体絶命くん~”というものが用意されていた(発売中止のため、この特典グッズも世に出ていない)。この特典グッズが再度出ることがあるのかも問われたが、残念ながら今後出ることはないそうだが、九条氏からは「通販担当にお願いしてみます」との発言も。

 最後の質問は“季節を決める基準は? 『絶体絶命都市』シリーズは何作目まで作ってもらえますか?”というもの。まずは季節についてだが、九条氏はまず舞台となる季節を決めて、タイトルロゴの色を決定するという。季節が決まることで演出や物語も変わるので、とても重要な要素なのだとか。

 後者の質問については、九条氏は「皆さんが望まれる限りは作り続けます」と、ファンにはうれしい発言。しかし「ただ、『絶体絶命都市10』とかはさすがに……(苦笑)」と、あまりにも通そうな未来については、あまり考えたくないとのこと(笑)。

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 トークコーナーが終わると、飯田さんが登場し、ミニライブパートのお時間へ。ミニライブでは、飯田さんが生で弾き語りを披露。主題歌の『約束の日』、挿入歌『君は君のままで』、『涙のかわりに』をしっとりと歌い上げた。なお、飯田さんは『絶体絶命都市4』時代からすでに主題歌や挿入歌を担当されていたそうで、ようやくゲームに使われることを喜んでいた。

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 約1時間の本イベントも、そろそろお別れの時間へ。最後に九条氏は『絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』本編のその後を描いた、後日談を追加配信することを発表。価格や配信方法は未定とのことだが、九条氏は「できるだけ無料で出したいです」とのこと。

 このほかにも、VRモードのステージや、コスチュームなどもどんどん追加していくそうで、「このゲームが、ゲーム内で『絶体絶命都市5』になってしまわないように気を付けます」と、アップデートに対する意気込みを語り、イベントは終了となった。

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イベントの最後にはサイン会も行われた。

 なお、エンタバアキバ by WonderGOO/SHINSEIDOでは、試遊台や資料の展示など、発売記念展示会も行われており、貴重なキャラクターの原画などを見ることができる。また、イベント同日より発売となった多数のグッズも販売されている。

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試遊すると、販促ポスターがプレゼントされる。
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週刊ファミ通2018年11月8日号(2018年10月25日発売)の記事も飾られている。個人的な感想ですが、この記事も筆者が制作したので、思わずウルっときました。いやぁ……ようやくマジで発売されたんだなぁと……。

 なお、イベント&本作と同日発売となった週刊ファミ通2018年12月6日号(2018年11月22日発売)でも、九条一馬氏へのインタビューなどを行っている。今回語られたような、深い開発秘話などをお聞きしたので、ゲームと合わせてぜひ購読してほしい。