サイゲームスのカスタマーサポートに直撃取材

 『グランブルーファンタジー』や『シャドウバース』、『プリンセスコネクト! Re:Dive』など、数々の人気スマホ向けゲームを世に送り出し、ゲーム業界においてその存在感を大きくしているサイゲームス。近年、同社タイトルの問い合わせへの回答が“神対応”であるとSNS上で話題に上がることをよく見かける。

 たとえば、ある作品では自分の使用しているキャラクターの能力が低く感じるというユーザーが、そのキャラクターになりきって問い合わせをしたところ、サイゲームスのカスタマーサポートからの回答がキャラクターに対して語りかけるようなものになっており、その対応を多くのユーザーが称賛した。

 そんな遊び心のある対応は、どのようにして運営されているのか? サイゲームスのカスタマーサポートマネージャーの金原成男氏と、サブマネージャーの副島達矢氏に話を訊いた。

SNSで頻繁に話題に上がるサイゲームスの神対応――そのカスタマーサポートはどのように運営されているのか?_03
カスタマーサポート マネージャー
金原成男(きんばらしげお)氏(左)

カスタマーサポート サブマネージャー
副島達矢(そえじまたつや)氏(右)
SNSで頻繁に話題に上がるサイゲームスの神対応――そのカスタマーサポートはどのように運営されているのか?_04
SNSで頻繁に話題に上がるサイゲームスの神対応――そのカスタマーサポートはどのように運営されているのか?_05
サイゲームスといえば『グランブルーファンタジー』などの人気作のほか、2018年9月には任天堂と共同開発を行う『ドラガリアロスト』を配信開始し、話題となっている。

 まず、前述したような対応を行うためには、自社のゲームに相当精通していなければならないだろう。もちろん、ユーザーからの意見を直接受け取る部署だからこそ、自社のタイトルに詳しくあるのは当然のこと。しかし、その詳しさがゲームのシステムの理解といったところに止まらず、キャラクターの設定にまで及ぶということに驚く。なぜここまで詳しくなれるのか? そこには非常にシンプルな答えが用意されていた。それは、“スタッフが全員ゲーム好き”ということ。

 サイゲームスの掲げる“ミッションステートメント”には、“みんなでたくさんゲームをやる”というものがある。これが実践されているそうで、「今日の朝礼でも、“今週は必ず業務時間中に時間を取ってゲームで遊んでください”と話してきたところです(笑)」と金原氏は笑う。自社のゲームをユーザー視点でプレイすることでシステムの理解だけではなく、ユーザー間で使われている単語や略称の理解にもつながる。とくにユーザーからの問い合わせでは、正式名称でない単語や略称が使われる場合もあるため、ゲームをプレイしながら、ユーザー目線の知識を身につける必要があるという。

 さらに、プレイするゲームは自社のゲームにとどまらず、他社のゲームや家庭用ゲーム機の作品、ボードゲームなどさまざま。多彩なゲームで遊んでいることで、ゲームの仕組みに関して、ユーザーにどのように伝えるのがわかりやすいかといった相談を開発側から受けた際に、自社だけでなく、他社のゲームをも参考にして知恵を貸せるというわけだ。

 また、サイゲームスには“CS対応最優先”という言葉があり、カスタマーサポートと運営は、同じ目線でコミュニケーションをしているのだという。前述の通り、開発側からカスタマーサポート視点での助言を請われることも多いそう。そんな中でカスタマーサポートから機能の改善の提案を行うことも。カスタマーサポートには日々さまざまな問い合わせが届いており、頻繁に届く問い合わせに関して、仕組みの変更や新機能の実装を開発チームに提案するという。これらの提案が実際にゲーム内に反映され、問い合わせがピタっとなくなった際に達成感ややり甲斐を感じると金原氏は語る。

 これだけ話を聞いていると、カスタマーサポートもまるで開発チームの一部のように感じてしまう。そんな想いを伝えると、金原氏は「カスタマーサポートもまた、最高のコンテンツを作ることの一翼を担う部署だと考えています。ゲームを続ける理由には作品のおもしろさや驚きなどが挙げられますが、ゲームを止めてしまう理由にはカスタマーサポートの対応の遅さや障害対応、機能面の不便さなどが挙げられます。要するに、開発チームはプレイヤーの皆さんの満足度を上げること、我々は不満足度を緩和・解消したり、不満に思うことにならないよう予防することがおもな使命なんです。だから、カスタマーサポートのメンバーに、問い合わせの返信だけをしていればいいと思っている人は、ひとりもいないと思いますね」と力強く話す。そのためにも、「カスタマーサポートもいつまでも同じバージョンのままではいられないです。開発チームは最先端のゲームを作っているのに、カスタマーサポートだけ旧時代の対応をしているとなれば、サービスはよくならないですから」と副島氏も付け加える。つねに進化を止めず、さまざまな対応を模索し続ける姿勢が、神対応につながっているというわけだ。

 最後に、SNSなどで神対応と称賛されている同社の対応の秘訣をうかがった。「もし神対応というものがあるとすれば、それはプレイヤーの皆さんの協力あってだと思います。プレイヤーの皆さんの問い合わせを我々が開発チームに届け、不満を解消する機能が実装されて皆さんに喜んでいただく。その起点となるのは、声を上げていただいたプレイヤーの皆さんの“神問い合わせ”があってこそですから」と金原氏は締めくくった。

キャンペーンポスターで運営の課題を見える化

 サイゲームスのカスタマーサポートでは、半年に一度程度のペースで業務改善施策を行っている。“キャンペーン”と呼ばれる同施策では、キャンペーンポスターを制作して社内に貼り出しているのだとか。「社内にポスターを貼って周知することで、開発チームの皆さんにもカスタマーサポートの活動に興味を持ってもらい、改善活動をしやすくしています」と、副島氏はその意図を教えてくれた。

SNSで頻繁に話題に上がるサイゲームスの神対応――そのカスタマーサポートはどのように運営されているのか?_01
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