いま、esportsの事業に積極的に取り組んでいるセガゲームス。esportsの専用部署を設けた同社は、この4月から『ぷよぷよ』を用いたesportsの大会を定期的に開催。さらには、esportsに特化したプレイステーション4/Nintendo Switch向け『ぷよぷよeスポーツ』を2018年10月25日より配信するなど、つぎつぎと施策を打ち出している。そんなセガゲームスのesports事業のつぎなる一手とは? 同社にてesportsの事業を取り仕切る、国内アジア事業部 副事業部長の宮崎浩幸氏に聞いた。

いま『ぷよぷよeスポーツ』をリリースする深いワケ。 セガゲームス 、esportsのつぎなる戦略を宮崎浩幸氏に聞く_10

セガゲームス
国内アジア事業部 副事業部長
宮崎浩幸氏

見るだけでルールを理解できる『ぷよぷよ』だからいい

――まずは、セガゲームスがesportsに参画した経緯、そしてタイトルとして『ぷよぷよ』を選ばれた理由を教えてください。

宮崎esportsとひと口に言っても、実際のところ何をもってesportsとするかという点において、海外が先行しているイメージの中、日本はこれから構築していく段階だと思っています。たとえばアメリカで開催されているEVOという格闘ゲームを中心にした大会では、『ストリートファイター』や『鉄拳』など大きなタイトルのメイントーナメントが7つほどある一方で、ユーザーコミュニティベースで開かれるサイドトーナメントがいっぱいあって、そこに『ぷよぷよ』もあるんです。

――日本で『ぷよぷよ』のプロになった選手も参加していましたね。

宮崎僕らとしてもそういう動きを盛り上げたいという気持ちはあって、『ぷよぷよ』がEVOのメイントーナメントになるようにがんばろう、という話を社内でしたんですよ。でも、「なんでパズルゲームの『ぷよぷよ』でesportsなんだ?」、「EVOって格闘ゲームのお祭りでesportsとは関係ないでしょ?」なんて言われてしまう。それだけesportsに対する認識の違いがあるんです。たとえば『League of Legends』や『オーバーウォッチ』などだけがesportsだと思う人もいれば、格闘ゲームや『ウイニングイレブン』もesportsだと考える人もいるのが現状なんですよ。

――確かに、esportsの定義は曖昧なところがありますね。

宮崎弊社は多くの対戦ゲームを持っているメーカーになります。また、そのプレイヤーたちが腕を競う大会も多く開催してきました。そのプレイヤーの皆様のためにも、日本のesportsの文化を構築するためにもセガとして立ち上がらないと、という気持ちでesportsに参画しました。

――なるほど。

宮崎セガホールディングスの社長である岡村が中心になったJeSU(Japan esports Union/一般社団法人日本eスポーツ連合)という組織もできたことですし、「何かやりましょう」となって、4月に“eスポーツ推進室”というものができました。そこで何をするか話し合ったときに、まず最初に動くべきタイトルが『ぷよぷよ』でした。弊社のIPのなかでも知名度が高くて、スマホアプリの『ぷよぷよ!!クエスト』も100万単位のユーザーがいて、何よりルールが見ているだけでわかるんですよ。『ぷよぷよ』を知らない人でも、とりあえずぷよを消していけばよくて、ぷよがいっぱいになったほうが負ける、ぐらいの勝ち負けがわかるじゃないですか。

――勝ち負けが目に見えるという意味では、格闘ゲームの体力ゲージと同じですね。

宮崎そうですね。どんな年齢層のプレイヤーでも対象にできるというのが大きかったです。そういった意味で、『ぷよぷよ』は障壁がないんです。そこで、多くのプレイヤーの参加が見込めて、コミュニティーもずっと活動をしてくださる『ぷよぷよ』で、esportsへのチャレンジを始めようということになりました。

――4月にesports大会として“ぷよぷよチャンピオンシップ in セガフェス2018”を開催されて以降、手応えのほどはいかがですか?

宮崎参加者の意識は間違いなく変化してきています。最初はいきなりプロプレイヤーに認定されても、まだ一般選手との境目がわからなかったんです。でもその後、プロプレイヤーになるためには一般選手の人々が参加する“ぷよぷよカップ”というリーグ戦を勝ち抜き、さらにトーナメント戦でベスト4に入賞すればプロになれる。そして、プロだけが参加する“ぷよぷよチャンピオンシップ”で賞金をかけて競うという仕組みを作ったんです。そうして何回か運用していくと、一般の上手な人が「つぎの大会でプロになってやる!」というモチベーションで参加してくれて、あと1勝すれば……というところで負けてしまったりする。すると、そこには最初のころにはなかったくやしさがあるんですよ。プロプレイヤーになるという指標ができたことで、勝ち負けに意味が生まれる、いわゆる“絶対に負けられない戦いがそこにある”の状況を作ったんですね。

――勝ち負けに大きな意味が生まれるのは、甲子園にも似ていますね。

宮崎甲子園も、甲子園自体に歴史が生まれて、ゴールとしての価値があるからこそ皆必死になるんですよ。地方大会の優勝と準優勝にものすごい違いが生まれるじゃないですか。たとえば明石商業高校の野球部は、3年連続で地方大会の決勝に敗れていて、その3年を経ての地方大会優勝を果たしました。こういったドラマがあると、同じ1勝でも喜びや興奮がまったく違いますよね。

――その仕組みをプロ資格の取得にも持ち込んだということですね。

宮崎開催頻度やレギュレーションを保って開催するというのも大事で、そうすることで大会が各選手にとってのマイルストーンにもなるんです。いま『ぷよぷよ』では2ヵ月に1回、同じ形式の大会を開催しているのですが、偶然同じ相手と3大会連続で対戦することもあって、2連敗した相手に3回目で初めて勝つ、というようなことも出てくるんです。

――まさに甲子園のドラマと同じですね。

宮崎甲子園に限らず実際のスポーツを参考にすることは多くて、たとえば2ヵ月に1回という大会の頻度も相撲の年6場所制みたいなイメージなんですよ。あとはいわゆる天皇杯(JFA 全日本サッカー選手権大会)のような、プロと一般選手がいっしょになって戦うカップ戦も開催しています。

――一般選手も参加するということは、賞金は出ないのですか?

宮崎賞金は出ませんが、年間のランキングを決めるポイントが手に入ります。いまプロプレイヤーは20人いるのですが、そのうちのランキング上位7名と、一般選手だけでトーナメントを行って、その優勝者も加えた8名でトーナメント戦を行うんです。これはテニスにある仕組みですね。

――賞金の出る大会ではポイントは出ないのでしょうか?

宮崎賞金が出る場合はポイントは出ません。ただ、ポイントを得られるのはカップ戦だけではなく、弊社主催ではないコミュニティ大会でも、条件を満たせばポイントを出すようにしています。もちろんカップ戦で優勝したほうが得られるポイントは大きいのですが、コミュニティ大会に細かく出場してポイントを稼ぐこともできるんですよ。そうすると、トーナメント出場がかかる7位と8位のあいだでせめぎ合いが起きて、少しでもポイントを得るために地方の大会に遠征したり、という選択肢も生まれます。

――それも熱意の表れですね。ちなみにコミュニティ大会はこれまでに何試合ほど承認されたのでしょうか?

宮崎まだ仕組みを作って1ヵ月程度なので実際にポイントを付与したのは3大会だけですが(10月15日現在)、大会については“ぷよぷよキャンプ”というWEBコミュニティサイトで絶賛募集中です。

――大会の仕組みなどはいつごろから考えていたのですか?

宮崎2月にJeSUが発足して、プロの参加するトーナメントを公認していきます、という話があったときから大会の仕組み自体は考えだしていました。今年の2月に開催された闘会議で各社さんが初めてプロ大会を開催されましたけど、そのときはその後の展開をイメージできる段階ではなかったので、闘会議ではなく4月のセガフェスで初めての大会を開催して、その後の大会で予定を出した、という感じですね。

――仕組み作りには試行錯誤がありましたか?

宮崎いまでも試行錯誤ですね。先ほどお話ししたように、実際のスポーツは、プロはどうしているかを考えて、やっぱりプロは1回の大会で終わりではなく、そのつぎを目指すだろう、と。ですので、こちらも大会の長期的な計画を考えないといけないし、勝ってただ賞金がもらえるだけでなく、ランキングのように強さの目安が必要だし、それを発信する場所も必要です。それらをいま組み立てているところですね。

――ところで、esportsとして取り組むことで、既存の『ぷよぷよ』シリーズ作品の売り上げが伸びたりはしましたか?

宮崎『ぷよぷよ』は2016年に出た『ぷよぷよクロニクル』以降新作が出ていなくて、2017年の3月に『ぷよぷよテトリス』のNintendo Switch版が出たぐらいで、1年以上ソフトが出ていないんですよ。それらのソフトについて言えば、爆発的にではありませんが、esportsを展開することで、少しは影響があったと思います。そもそもまだesports化することで売り上げにどれだけ影響するか、というデータすらない状況だったので、そこはあまり重要視してはいないです。

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プレイヤーにとっては、プロ化は高いモチベーションに

――『ぷよぷよ』をesports化して実際に大会を開催されてきましたが、参加者からはどんな反応がありましたか?

宮崎環境を気にする声が多かったですね。「大会ではどんな機材を使うのか」、「実況の声で連鎖の始まるタイミングなどが伝わってしまうので、ヘッドホンを着用して戦うべきだ」などのほかにも、公認の大会は試合の記録を取るためにゲーム機とモニターのあいだにひとつ記録用の機械をつないでいるのですが、それによって操作に対する微妙な反応の違いがある、といった声もありました。

――勝ち負けの価値が大きくなったぶん、気になる人も多いんですね。

宮崎最初の大会が終わった時点でそういった声があったのですが、その日プロになった人のなかには、「環境の違いも克服するのがプロだ」と言う人もいました。やはりプロとして認めらたことで、いわゆるプロ意識みたいなものが目覚めたのかもしれないですね。

――選手間で設備に差があったら問題ですが、同じ条件で勝負するのなら克服するべき、という意見は筋が通っていますね。プロ選手の意識はやはり一般選手とは違ってきますか?

宮崎一概に言うことはできませんが、どちらかと言えば一般選手の方のほうがesportsというよりは従来の意味でのゲーム、趣味の一環としてプレイしている側面は強いかもしれないです。JeSUの定義では、プロというのはゲームをプレイして、それを人に見せて賞金を得ることを生業にする人を指します。ですので、ゲームを生業として、20年、30年先の人生を担っているわけですよね。甲子園のように3年間という限られたチャンスしかない状況とは違うので、一般選手ならではのよさ、みたいなものはこれから見つけていくものかもしれないですね。

――大会の参加者など見て、やはり「プロになるぞ!」という意気込みの強い方が多いのでしょうか?

宮崎もちろん人にはよりますが、大会に負けてすごく残念がっている人はいましたね。先ほど話に出た“ぷよぷよキャンプ”ではツイッターアカウントを登録できるので、各選手の投稿で大会回顧録みたいなものが見られるのですが、やっぱり悔しがっている声や、負けて泣いてしまったという声もあります。

――Webコミュニティサイトで参加者の声を閲覧できるのはおもしろいですね。

宮崎“ぷよぷよキャンプ”はまだできたばかりなのですが、プロ、アマチュア問わず皆さんのアツい想いがリアルタイムで流れてくるので、見ていておもしろいですよ。プロにだけ付与されるプロマークというものもあるので、それもひとつのモチベーションになるかもしれないですね。

――“ぷよぷよキャンプ”を作ったのは、esportsとして展開するうえでユーザーのコミュニティが必要だという判断から?

宮崎そうですね。イベントのページではコミュニティ大会の開催時期が書いてあったり、esportsのページにはランキングや大会の案内が出ていたりします。これまでのように個々人でモチベーションを持ってプレイしてくれている人はたくさんいるのですが、やっぱり最終的なステータスやゴールをこちらで用意してあげたいと思ったんですよ。

――公認のポイント大会になろうとして、コミュニティ大会も運営などを整備する動きが出てきそうですね。

宮崎そうなってくれたらうれしいですね。プロの方はポイント大会でポイントを集めて年間ランキングに載ろう、といった目標もできると思いますし、「ランキング1位の〇〇さんですね!」と言われることで達成感も得られるようになります。もちろんそれとは別に、草野球のようにのんびりと楽しむスタイルでもぜんぜんいいですし。

――ちなみに、“ぷよぷよキャンプ”という名称はどういった経緯で生まれたのでしょうか?

宮崎ポータルだとありがちですし、人が集まってくる場所、という意味でキャンプ。省略して“ぷよキャン”と呼べるのもいいかなと思っています。

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“ぷよぷよチャンピオンシップ”2018年度8月大会の模様から。

『ぷよぷよeスポーツ』をこのタイミングでリリースする意図、アーケード版での展開も

――さて、先日『ぷよぷよeスポーツ』のリリースが発表されましたが、同作をリリースすることにした意図を教えてください。

宮崎まずは量的な拡大を目指しているので、もちろんスマホも視野には入っていますが、まずはいま一番普及しているプレイステーション4とNintendo Switchで、手軽に入手できる『ぷよぷよ』をリリースしよう、と思いました。そのうえで、値段をなるべく抑えたかったので、ダウンロード専売のソフトとしています。

――そもそもどのようなきっかけでリリースが決定したのですか?

宮崎やはり地方の方は東京の大会に参加するのが大変ですし、プロの方々からももっと簡単にオンラインで対戦したいという声があったんですよ。そこでesportsとして対戦の見栄えがよくなるように調整を加えた対戦特化の『ぷよぷよ』を出したほうがいいね、となったんです。

――タイトル通り、esportsを意識しているわけですね。

宮崎esportsという遊びかたを提唱したからには、それに最適な『ぷよぷよ』を提供しよう、ということになったんです。対戦に特化した相殺演出などを強化しているので、大会で見ていても盛り上がると思います。

――対戦に特化しているとのことですが、モードはどのようになっていますか?

宮崎オンライン対戦やオフラインでのトーナメントモードは入っていますが、これまでの『ぷよぷよ』にあったすべてのルールを網羅するのではなく、とくに対戦ツールとして評価されている『ぷよぷよ通』、対戦がドラマチックに展開する『ぷよぷよフィーバー』のふたつのルールに絞りました。あまり多いと、逆にマッチングが分散してしまいますからね。

――外や友だちの家で対戦がしやすくなると、コミュニティも活性化しそうですね。

宮崎先ほどもコミュニティ大会にポイントを付与するというお話がありましたが、いまだとやはりどこかの会場にゲーム機を持ち寄って大会を開く形になるんですよね。そこでカラオケ館さんにサポートしていただいて、“ぷよぷよeスポーツ大会応援パック”という、『ぷよぷよ』の大会用に部屋を借りることができるキャンペーンを開いています。

――タイトルに“eスポーツ”と入っていますが、プロを目指すわけではない人も対戦ツールとして楽しめますよね。

宮崎そうですね。esportsのユーザー、というものがそもそもはっきりしていないので、「『ぷよぷよeスポーツ』で持っているような魅力がesportsにありますよ」というメッセージのある作品になっています。たとえば、プロ野球も草野球も高校野球も、全部野球じゃないですか。同じようにesportsも、賞金のかかる大会だけでなく、遊びとしての対戦も含めてesportsですよ、というイメージですね。

――まずはアマチュア層を広げていかないとプロを目指す人も増えないですからね。

宮崎本作のオンライン対戦などで自信がついたら、ぜひリアル大会に応募して、プロたちと手を合わせてみてください。「プロの壁を越えれば、あなたたちもプロです」といったところです。そう簡単には越えられないのがむずかしいところであり、おもしろいところなのですけどね(笑)。

――初心者用の救済措置として、1本取られたプレイヤーがつぎの対戦で有利になるように設定できる、とのことですが、こちらはどういったものなのでしょうか?

宮崎プロと身近に対戦できる機会ができたとして、ふつうに戦ったらやはり敵わないですよね。でも、1本負けた後の2本目は相手に送るおじゃまぷよが増えたり、連鎖しやすい組み合わせのぷよ“連鎖のタネ”が降って来る、などの仕組みをひとつの挑戦として導入しているので、2本目は勝てるかもしれない……という気持ちで挑めると思います。

――従来のハンデシステムとはまた違うのですね。

宮崎それよりも、いま負けたこの瞬間にブーストがほしい、という思いに応えるようなものです。ニュアンスとしては接待モードに近いですね。もちろん大会の試合では使用しませんが、エキシビションでプロの選手がゲストユーザーと勝負するときや、あるいはふだんゲームを遊ばないお友だちとの対戦、親子での対戦で楽しんでもらえると思います。

――今後は『ぷよぷよeスポーツ』を大会でも使用していくのでしょうか?

宮崎『ぷよぷよeスポーツ』の配信は10月25日なのですが、10月27日開催の大会“ぷよぷよチャンピオンシップ”から早速使用します。

――対戦ルールは『ぷよぷよ通』と『ぷよぷよフィーバー』のどちらを採用されるのでしょうか?

宮崎いまのところは、ずっと『ぷよぷよ通』のルールで行っています。ただ、アマレスで言うグレコローマンスタイルとフリースタイルのように、“通部門”と“フィーバー部門”のふたつを作ってもおもしろいかもしれないですね。あるいは両方のルールで戦った点数で勝ち負けを決めるのもいいかもしれません。

――そのあたりは追々、ということですね。

宮崎esports的な絵面としても、『ぷよぷよ通』のシングルマッチだけでなく『ぷよぷよフィーバー』やタッグ戦が入ってくるだけでも大きく変わってくるのではないかと思いますね。

――『ぷよぷよeスポーツ』はアーケード版としても展開していくというお話を聞きました。

宮崎アーケード版の『ぷよぷよ』は、もう15年近く新作が出ていないんですよ。でも、やはりゲームセンターから『ぷよぷよ』を初めて遊んでくださった方はたくさんいて、いまでも大昔の『ぷよぷよ通』の筐体で遊び続けてくれて、大会まで開いてくれているコミュニティもあります。そういう方々にも綺麗な画面で遊んでいただきたいということで、アーケード版も出していきます。esportsという言葉をアーケード版に使うかは未定ですが、内容としては基本的に同じものを予定しています。

――アーケード版ユーザーがesports大会に参加することを考えると、ゲームセンターにも同じバージョンの作品があったほうがフェアですよね。

宮崎もしかしたら将来的には戦うことがあるかもしれないですからね。『ぷよぷよ』の最強を決めるとなったらアーケードから参入してくる方もたくさんいると思いますから、もしかしたらアーケード用の大会を開くということもあるかもしれません。ただ、アーケードの場合は家庭用ゲーム以上に大会の開催に関する規制も多いので、コミュニティ大会はコンシューマー版のほうが開きやすいかもしれないです。

――『ぷよぷよeスポーツ』を出すことになった時点でアーケード版も考えていたのでしょうか?

宮崎タイミングとしては少しずれますね。まず対戦に特化したシンプルな形で現状のスタンダードを出そう、となって、タイミングもいいしアーケード版の最新作も出そうじゃないか、という感じで決まりました。

――アーケードの稼動時期は決まっていますか?

宮崎2019年の春以降を予定しています。まずはコンシューマー版を楽しんでいただければと思います。

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『ぷよぷよeスポーツ』では、『ぷよぷよ通』と『ぷよぷよフィーバー』のルールを採用。画面は『ぷよぷよ通』の4人対戦。

大会から大いなるドラマが生まれる

――esportsにおける今後の『ぷよぷよ』シリーズの戦略を教えてください。

宮崎ひとつは地域的な拡大。いまのところ公式大会が東京でしか開かれていないので、ほかの地域、あるいは海外での開催も検討しています。あとは、ユーザーをどう広げていくか。まずはesportsというカテゴリで、『ストリートファイター』や『パズル&ドラゴンズ』など、ほかのタイトルを見ている人に興味を持ってもらえればと思います。

――そういったところから入る人が対戦を楽しみやすいという点でも、初心者救済措置があるのは大きいですね。

宮崎そこで対戦ルールを覚えてもらって、慣れてきたら救済措置なしで戦って、という流れになってくれるとうれしいです。『ぷよぷよ』自体にも興味を持ってほしいですし、開催されている大会もぜひ見てほしいです。たとえば20年以上遊び込んでいるベテランが現役バリバリの高校生に勝つこともあって、第1回の大会では実際に“Kamestry”さんと“くまちょむ”さんというベテラン勢が優勝争いをしたんですよ。

――おもしろいですね。

宮崎でも第2回になると、第1回で負けた高校生ふたりが優勝、準優勝を奪って、ベテラン勢は全員敗退してしまったり、第3回では第1回でくまちょむさんに負けたKamestryさんがリベンジを果たしたりと、すでにドラマが生まれているんですよね。

――そういったストーリーを“ぷよぷよキャンプ”で読めるようになるといいですね。

宮崎なかなか試合の解説がむずかしいですけどね(笑)。でも、そういったコンテンツも用意できたらおもしろいと思います。

――海外での大会開催も検討中とのことですが、海外での『ぷよぷよ』人気はいかがですか?

宮崎『ぷよぷよテトリス』は『テトリス』のおかげもありますが、アメリカだけでも30万本以上、アジアでも20万本ほど売れているので、十分なユーザーの数はいます。自分たちで大会を開いてくれたりしているので、そこに我々が刺激を与えていけたらいいかな、と考えています。

――最後に、esportsについてのセガゲームスさんの展望をお聞かせください。

宮崎セガという会社は大きく言えばアーケードゲーム、テレビゲーム、モバイルゲームの3つの柱があります。いまはテレビゲームを中心に『ぷよぷよ』を進めていて、まだ詳細を発表できる段階ではありませんが、他タイトルの検討やほかの分野での展開というのは、つねに考えています。

――それは既存のコンテンツをesportsに展開するのか、あるいは新しくesportsのコンテンツを作っていくのか、どちらですか?

宮崎どちらもありますね。何かの形でモデルケースができれば、そのフォーマットに既存のコンテンツを展開することもできますし、新たにesportsというエンターテインメントに適したタイトルを作ることもできますから。

――今後はどのような展開を?

宮崎段階を追ってですが、2019年の春ごろに『ぷよぷよ』のつぎの展開、あるいは別のタイトルがあるのか、といった発表ができればいいなと思っています。2020年には我々がゲームのライセンスを取得した東京オリンピックもありますから、その年に向けて何か流れは作っていきたいですね。

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『ぷよぷよeスポーツ』には、シリーズから総勢24キャラクターが参戦。

『ぷよぷよeスポーツ』期間限定で500円[税込]で発売

 定番の『ぷよぷよ通』のルールに加えて、一発逆転も狙える大連鎖が気軽に楽しめる『ぷよぷよフィーバー』のふたつのルールを採用。おなじみのキャラクターたちはもちろん、『ぷよぷよ!!クエスト』、『ぷよぷよクロニクル』などから総勢24キャラクターが登場する。もちろん、インターネット対戦やオフライン大会モードなども搭載。今後の公式大会に採用される予定だ。

 『ぷよぷよeスポーツ』の配信を記念して、セガゲームスでは10月25日(木)より、同作を500円[税込]で購入できる期間限定セールを開始。期間は11月30日(金)23:59までとなっている。

■ハード Nintendo Switch、プレイステーション4
■配信日 10月25日配信予定 ※ダウンロード専売
■価格 1851円[税抜](1999円[税込])
※10月25日~11月30日23:59までの期間限定で、500円[税込]で購入できるセールを実施。

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上が『ぷよぷよ通』で、下が『ぷよぷよフィーバー』。“相殺”演出の可視化や、リザルト画面のリニューアルなど、esportsならではのフィーチャーや新機能を多数盛り込んでいる。