“小学生の手書きRPG”『RPGタイム!』作者を直撃! 発売時期やコンシューマー版も? 3冠を果たし11年かけてTGSにリベンジした……だと!?【TGS2018】_05
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 2018年9月20日(木)から9月23日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催された東京ゲームショウ2018(20日・21日はビジネスデイ)。インディーゲームコーナーに出展され、多くのアワードに輝き、ゲームファンやメディアから高い期待を集めたiOS、Android、Steam用のRPG『RPGタイム! ~ライトの伝説~』(以下、『RPGタイム!』)をご存じでしょうか。

 いきなりですが、上に並んだまるで手書きのノートや机のラクガキのようなゲーム画面をご覧になって、どんな印象を抱かれましたか? もしかしたら……あなたもこんなふうに、ノートに手書きで迷路だとかダンジョンの絵なんかを描いたり、工作したりしてオリジナルRPGを作った経験があったりしたのでは……と、そんな子どものころの経験をゲームにしたのが、小学生が自作した大作RPGをプレイするというコンセプトで開発されているインディーゲーム『RPGタイム! ~ライトの伝説~』です。本作は、東京ゲームショウ 2018(以下、TGS 2018)に出展されるやいなや、TGSで例年開催されている、出展タイトルから驚くべき作品を発掘する国際企画“センス・オブ・ワンダーナイト 2018”にて、アートの賞、Best Art Awardと、プレゼンテーションの賞であるBest Presentation Award、そして観客からの投票で決定されるグランプリBest Audience Awardを獲得し3冠を達成! 5月に京都で開催されたインディーゲームの展示会“BitSummit Vol.6”で初出展して以来、印象深い作風でゲームメディアから注目を集めた作品でしたが、いよいよTGSの大舞台でもスポットライトを浴びることとなりました。

 ここで、少しだけスクロールを戻してもらって、もう一度先ほどの画面をご覧になってみてください(何度もすいません!)。どうでしょう、こうして改めてゲーム画面を見ても、やはり否応なく気になってくるビジュアルですよね? 本作は、学校の放課後に工作やノートに書いたフィールドやダンジョン、さらにはマンガ風のイベントシーンなど、すべて手作りで作り上げてしまった小学生のケンタくんがゲームマスターを務めるRPGの世界を冒険するというメタフィクションな視点も魅力です。“見た瞬間、コンセプトを聞いた瞬間に、自分の世界が何か変わるような感覚(=センス・オブ・ワンダー)”を引き起こすようなゲームを評価するセンス・オブ・ワンダーナイトで3冠を達成するのもうなづけるというもの。

 印象的な本作を制作しているのは、スタジオDESKWORKSを立ち上げた、プランナーの藤井トム氏と南場ナム氏のおふたり。なんと構想11年以上、制作は6年を費やし、1万枚を超える鉛筆の手書きイラストや工作を作り続けてきたというのだから驚きです。そんなおふたりは、じつはTGSへ出展することを悲願として掲げてきたと言います。何やら、出展することが非常に重要な意味を持つ感慨深いものだったのだとか……現在インディーゲーム通からアツい視線を注がれている『RPGタイム!』。今回、さっそく開発を手掛ける藤井トム氏にお話を伺ったところ、制作の舞台裏に秘め続けたTGS出展にかける因縁とも言うべきお話が……!

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藤井トム(ふじい とむ)

クローバースタジオのインターンとして『大神』の開発に関わったのち、いくつものオリジナルRPGの企画を経てプレイステーション3『rain』のリードプランナーを担当。盟友、南場ナム氏とともにスタジオDESKWORKSを結成。(TwitterID @DESKWORKS_TOM)

きっかけは11年前のTGS……日本ゲーム大賞アマチュア部門に!?

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――今年の5月に発表されたばかりにも関わらず、『RPGタイム!』は、現在ゲームメディアから注目を集めていますよね。東京ゲームショウ 2018でもインディーゲームコーナーに出展されていましたが、センス・オブ・ワンダーナイト 2018でも3冠を達成されて驚きました。

トム 本当に今回のTGSでは、立て続けに賞をいただくことが重なって、いまはひたすらに恐縮しています。このゲームは、僕と南場ナムのほぼふたりで開発をしてきたのですが、もともとのアイデアは、ゲーム専門学校の卒業制作の一環として制作した『バトルクエスト』でした。ノートに手書きで書いた世界を冒険するRPGなのですが、この卒業制作で作ったゲームを11年前の東京ゲームショウの日本ゲーム大賞アマチュア部門に応募したんです。そうしたら、大賞を獲りまして。

――11年前の日本ゲーム大賞のアマチュア部門で大賞を受賞していたのですか!

トム はい。この受賞経験から、さらに作り込んだゲームを出したいという気持ちになり、『RPGタイム!』開発のきっかけにつながったんです。

――では、ある意味で11年ぶりにトムさんたちの作品が、ゲームショウの会場に出展されたことになるのですね。

トム そうなんですよね……なので、今回東京ゲームショウで再び多くの賞をいただいたことは、非常に感慨深いです。

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こちらがその『RPGタイム!』の前身であり、11年前に大賞を獲得した卒業制作作品『バトルクエスト』! ノート風のパッケージアイデアが秀逸。“中村健太”との名前は『RPGタイム!』の作者であるゲームクリエイターに憧れる天才小学生“ケンタくん”のルーツだそうな。
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裏面も手描きテイスト満載。ノートを再現するデザインも徹底している。

トムそうなりますよね。ありがたいことに、今年は東京ゲームショウのインディーコーナーに出展できたのですが、じつは去年、おととしは選考で落ちてしまって、出展できなかったんです(笑)。

――なんと……では今年の出展や、センス・オブ・ワンダーナイトでの受賞には、並々ならない喜びですよね、きっと。

トム ええ、それはもう言葉にできないほどの(笑)。いま『バトルクエスト』を卒業制作で作っていたころのことを思い出すと、こんな未来が待っているとは思いもよらなかったです。学生時代は、卒業制作の提出期限が9月だったので「学生最後の夏休みだし、海外へ行こう!」などと気楽に話していたのですが、手書きのRPGの物量はすさまじく……けっきょくのところ、卒業制作に僕たちの夏はすべて捧げることになりました(笑)。毎日、朝10時に僕の家に集まって、みんなで1個の土鍋にインスタントラーメンを入れて煮て食べて……。まあ、それでも締切には間に合わなかったのですが。

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卒業制作でも快挙を達成!?

――海に行くどころか、壮絶な学生最後の夏になったわけですね。

トム しかも卒業試験は、学校の売店で制作したゲームを“実際に売る”というものでした。2週間の販売期間で、売り上げがそのまま成績に反映されるといった、ストイックな試験だったのです。

――そんな内容の試験があるのですか……卒業制作にふさわしいシビアなジャッジです。

トム そうなんですよ。恐ろしいですよね。ですが、販売についてはかなり自由でして、値段設定も自分たちで決められるし、パッケージなども自作できるんです。でも、発売日だけは絶対に遅らせることができなかったのですが……遅れまして(笑)。結果、発売できたのは試験終了日の5日前でした。

――短か! 5日しか販売期間がなくなってしまったのですか。締切は大切ですね……。

トム そうなんですよ。でも、自慢話みたいになってしまうのですが、そこからの巻き返しがすごくてですね。今までの歴代売り上げでトップの記録を叩き出したほどで。

――なんと、5日間でトップとは! そのときには、手ごたえは感じられましたか。

トム はい。想像以上に反応してもらえて。とくに『バトルクエスト』で、「ノートに書かれた敵のヒットポイントを、消しゴムで消す」といったギミックが、かなり反応がよかったです。ライバルたちの卒業制作作品には、レベルの高い気合が入りまくった3Dポリゴンの作品や、センスがよくてかっこいいドット絵の作品もあったので、正直自分たちの作品では太刀打ちできないだろうな……と、勝手にビビって過小評価していました。日本ゲーム大賞への応募を決めたときも、自分たちからではなく、周りから推されたのがきっかけだったほどに自信がなくて。でも、結果的には大賞をもらえたので、「もしかして、僕らは魅力的な作品を作ったのでは?」と、そのころから、うっすらと手ごたえを実感し始めました。

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書いたり消したり。消しゴムのギミックは、『RPGタイム!』にもしっかりと受け継がれている。

――卒業制作でのトップ売上記録と、日本ゲーム大賞のアマチュア部門大賞受賞の自信が、『RPGタイム!』を制作する大きな動機になっていたのですね。そして、結果的に東京ゲームショウに出展を果たしただけでなく、ゲームショウがオフィシャルに開催しているセンス・オブ・ワンダーナイトでも3冠を獲ることに……その手応えは、たしかなものだったわけですね。

センス・オブ・ワンダーナイト公式サイト

トム そうですね。ですが、そのあとも苦難の日々でした。いまはDESKWORKSという制作スタジオを立ち上げて、『RPGタイム!』の開発を始めてから、今年でもう6年目になるのですが、その前はそれぞれがゲーム会社に勤めて、働きながら作っていたんです。DESKWORKSを立ち上げる1年前は、『RPGタイム!』の企画だけをひたすら練り上げていた期間でした。なにしろお金がなかったので……。

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