サイバーコネクトツー(以下、CC2)の自社パブリッシングプロジェクトとして2018年2月に発表された“復讐三部作”。その第1弾となる『戦場のフーガ』が、2019年夏にリリース決定。現在の開発状況や、第2弾、第3弾タイトルの進捗と発売時期、今後の展開などについて、CC2代表取締役・松山洋氏が語ってくれた。

CC2の自社パブリッシングプロジェクト“復讐三部作”

 CC2が新たに掲げる自社パブリッシングプロジェクト“C5”(※)の基本コンセプトは、小規模開発ながら、クオリティーを突き詰めた新規タイトルの創造。“C5”の起ち上げ時には、社員から100本近くの企画が提出されたそうだが、その中から『戦場のフーガ』、『刀凶百鬼門(トーキョーヒャッキモン)』、『CECILE(セシル)』の3本が開発タイトルとして選出されている。いずれもCC2らしい尖ったタイトルとして制作が進められているほか、マンガ展開も同時に進行中。3作とも復讐をテーマにした作品となっていることから、“復讐三部作”と名付けられている。

ケモナー必見の最新作『戦場のフーガ』ほか、自社パブリッシングプロジェクトの進捗をCC2の松山洋氏が語る!_01
C5:サイバー・コネクト・クリエイティブ・チャレンジ・コンペティションの略。CC2の全スタッフを対象にした新規ゲーム企画コンペで、一昨年より実施。選定されたタイトルは自社パブリッシング作品としてのリリースが予定されている。

『戦場のフーガ』

 “戦争×復讐×ケモノ”をテーマにしたシミュレーションRPGで、イヌヒト、ネコヒトたちが暮らす“リトルテイルブロンクス”の世界設定を受け継いだ作品。敵軍に村を襲われ、生き残った子どもたちが巨大戦車を操作して、捕虜にされた家族を救いにいくという、戦争がもたらす希望と絶望がドラマティックに描かれている。

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『刀凶百鬼門(トーキョーヒャッキモン)』

 “女学生×復讐×スチームパンク”をテーマにした、高速パルクール斬撃アクションゲーム。妖怪や呪術が一般的な日本の首都、“刀凶”(トウキョウ)を舞台に、機械の心臓“王牙炎陣”(オウガエンジン)を移植された主人公の陸奥十輪子(むつとわこ)と、地獄とこの世をつなぐ“百鬼門”を召喚した九尾塚幻舟(くびづかげんしゅう)との対決が描かれている。

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『CECILE(セシル)』

 “ゴスロリ×復讐×魔女”をテーマにした、2.5Dアクションゲーム。満月の夜に古城へと呼び出された主人公のセシルは、ある儀式によって3人の姉とともに魔女へと変貌させられ、お互いの心臓を奪い合う過酷な闘いに巻き込まれてしまう。セシルは愛用の傘と仕込み剣を武器に、かつて姉と呼んでいた魔女たちと、壮絶な死闘をくり広げていくことになる。

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“復讐三部作”は海外展開も視野にパッケージ展開も実施! 2019年夏より順次リリース&つぎの新作展開も水面下で進行中

−−2月にCC2の自社パブリッシングプロジェクト“C5”を発表されてからしばらく経ちました。その後の経過はいかがでしょうか。

松山 各タイトルとも、ミーティングをくり返しながら作り込んでいます。ようやくですが、リリースの順番が決まりました。まず、『戦場のフーガ』を2019年夏に発売します。そのあとに『刀凶百鬼門』、『CECILE(セシル)』を順番に出す予定です。

−−『戦場のフーガ』を“C5”の第1弾タイトルとしてリリースされるわけですね。いま現在、どのような進行具合なのでしょうか。

松山 こちらは福岡本社にいる、フランス人スタッフがプロジェクトリーダーとしてディレクターを務め、制作が進行中です。イメージボードや設定、企画書は日本で書いていますが、ゲームのグラフィックアニメーションといった素材はモントリオールスタジオのメンバーが作るといったように、各スタジオで分業しながら進めています。弊社が手掛ける“リトルテイルブロンクス”シリーズ、いわゆるケモノ作品は日本生まれのコンテンツで、国内の“ケモナー”と呼ばれるファンたちが支えてくれて、ここまで育て上げてくれた作品です。でも、この企画が持ち上がったときに「作りたい」って声をあげてくれたのは、モントリオールのスタッフが多かったんですよね。20年以上、コツコツとやってきましたが、ここにきて世界で受け入れられている実感が湧いています。

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公開されたイメージボードからは、登場キャラクターによるほのぼのとした一場面と、戦争によるシリアスさが伝わってくる。
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現在制作中の『戦場のフーガ』のキャラクターと、主人公たちが乗り込む戦車・タラニスのモデリングデータ。キャラクターはトゥーンレンダリング処理によるアニメーションで、生き生きとした動きが描かれている。

−−『刀凶百鬼門』と『CECILE』はどのような状況でしょうか?

松山 6月にアメリカで開催されたE3 2018にも赴き、いろいろな方とお話させてもらいましたが、『刀凶百鬼門』はパルクール斬撃アクションというわかりやすさからか、これはおもしろそうだって声を多くいただきました。機械の心臓“王牙炎陣”を移植した主人公が活躍するという、“厨二病”全開の世界観や、速度が上がれば上がるほど攻撃力が高くなるというシンプルな設定がよかったのかもしれません。

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『刀凶百鬼門』の設定イラスト

松山 『CECILE』は、日本文化のひとつでもある“ゴスロリ”(西洋文化であるゴシックと、日本で独自の進化を遂げてきたロリータファッションをミックスし、発展してきたファッションスタイル)をコンセプトに採り入れた作品です。企画立案時は、ザコを倒しながらステージを進んでいき、途中で中ボス戦があり、またしばらくステージを進んでボス戦という、オーソドックスな横スクロールのステージクリアー型アクションゲームを想定していました。でも、“C5”の短時間でプレイできて遊び応えがあるというコンセプトに合わせるため、現在はボスバトルだけで構成したアクションとして制作を進めています。

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『CECILE』のイメージビジュアル

−−2月にはPS4、Xbox One、ニンテンドースイッチ、Steamへの対応を謳われていましたが、対応ハードの予定は変わらずそのままでしょうか?

松山 プラットフォームは予定通りです。ですが、対応言語が増えるかもしれません。当初はローカライズは英語圏に向けたものを用意すればいいと思っていたのですが、海外からの引き合いや反応が思った以上にあったんですよ。また、“C5”はCC2のパブリッシングタイトルとして開発し、ダウンロードタイトルとしてのリリースを行うのは以前にもお話した通りですが、パートナー企業と包括連携を結んで、パッケージ版の販売も行おうと思っています。

−−復讐三部作のタイトルをパッケージで販売されるということですか?

松山 そうです。世界中のゲームファンに届けるにはダウンロードだけでなく、パッケージ販売スタイルも必要になってくるんですよね。また、作品を愛してくれるファンのために限定版を用意する必要もあります。ただ、我々はゲームを開発することはできても、パッケージ版の制作・流通・販売に関するノウハウは持っていません。そこで、コンテンツをお預けできるビジネスパートナーさんといま、お話をさせてもらっているところです。3タイトルの進捗状況についてですが、現状を紹介する動画を用意させていただきました。

松山 この進捗動画は日本語版だけでなく、英語版とフランス語版も用意しています。全世界に向けて発信するには、英語版は必須です。また、『戦場のフーガ』の素材を作っているモントリオールスタジオはフランス語圏ですので、フランス語も用意しているというわけです。

−−ちなみに、3タイトルの音声収録についてはどのように考えていますか?

松山 『戦場のフーガ』については、(数千年後のフランスを舞台にした)同じ世界観を持つ『ソラトロボ』と同じように、フランス語で考えています。ただ、収録方法に関しては、3つの方法を検討しました。まず、国内でフランス語を話せる人に声を担当してもらう案。つぎは、国内にいるフランス人を声優として起用するというもの。最後は、欧州のスタジオでフランス人に声優を担当してもらうといったものです。でも、本作のディレクターは「(日本人声優がフランス語で演じた『ソラトロボ』と同じように)日本人の声優にフランス語を話してもらうのがベストなんだ」って、強く主張してくるんです。そこで、欧米のゲームファンに向けて簡単なアンケートを実施してみたところ、“日本人が話すフランス語収録”に8割近い支持が集まりました。現地の人に話を聞いてみると、日本で作られたゲームなので、無理やりネイティブなキャスティングをされるより、日本人のキャストががんばってフランス語を話しているほうが、味があっていいそうなんです。

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『Solatorobo(ソラトロボ) それからCODAへ』
2010年10月28日発売のアクションRPG。イヌヒト、ネコヒトたちが暮らす浮遊大陸“シェパルド共和国”を舞台にした、“リトルテイルブロンクス”シリーズ第2弾タイトル。同作の音声言語はフランス語ながら、(フランス語の話せない)日本人が声優を担当。そのため、フランス語を話せる人に一度全セリフを収録してもらい、その音声データを耳コピで演じてもらっているとのこと。
販売元:バンダイナムコエンターテインメント

松山 『刀凶百鬼門』と『CECILE』は、いまディレクターとも話をしているところで、日本語と英語をベースにどれだけの言語を対応させるかといった検討をしています。まずは日本語のキャスト陣を決めるべく、音響制作会社にイメージを伝えて選考していき、今後はオーディションを行うなどしながらキャスティングを決定する予定です。

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−−『戦場のフーガ』は2019年夏のリリースを明言されましたが、ほかの2本はいつ頃リリースされますか?

松山 『戦場のフーガ』のリリースを皮切りに、3〜4ヵ月後に『刀凶百鬼門』を、それから3〜4ヵ月後に『CECILE』をリリースします。パッケージ版や限定版に関しては、パートナーが決まり次第あらためて話をさせていただきますので、それまでお待ちください。

−−今回、それぞれの作品でマンガ展開もされるということですが、これはどのような位置づけになるのでしょうか。

松山 “C5”のタイトルは、ゲーム以外の部分は極力絞り込んで制作するため、物語や世界観といった部分については、あまりゲームで語られません。そこで、それらを補う意味も含めて、それぞれのタイトルの前日譚を描いたマンガ原作を並行して進めています。マンガの続きからゲームが始まるといったイメージですね。

−−これまでの大作ゲームにある、ゲーム開始前に導入されるイベントムービーがマンガになっているようなものですか?

松山 そういうことです。“C5”タイトルでは、必要最低限の情報はゲーム中で与えますが、余計なことはダラダラと語りません。ゲーム外の細かな部分については、マンガで色濃く取り上げるつもりです。

−−マンガ、ゲームと続いた後の展開は考えられていますか?

松山 今回のマンガはプロモーションの一環として作っているわけではなく、完結までのプロットもきちんと用意して、連載〜単行本化できるように考えています。そのため、現在はビジネスをいっしょにやっていただけるパートナーさんと話をさせてもらっているところです。当然、アニメ化といった映像展開も視野に入れながら、現在はストーリープロット、ネームを進めています。マンガ展開の詳細は、また近日中に公開します。

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『刀凶百鬼門』のマンガ第1話のネーム。元漫画家で、現CC2スタッフの星 樹氏によるもので、ゲームの導入にいたる物語が51ページのボリュームで描かれている。

−−“復讐三部作”は、いま現在何人くらいで動いているのでしょうか。

松山 『戦場のフーガ』は先ほど話したフランス人のプロジェクトリーダーを筆頭に、約10人程度で動いています。彼は日本語のほかに英語とフランス語が堪能なので、国内で仕様周りの話を進めつつ、モントリオールスタジオとのやり取りも進めている状況です。『刀凶百鬼門』と『CECILE』は本格始動の前準備段階といったところで、5人程度のメンバーが通常業務の合間にコツコツとブラッシュアップをしています。でもみんな、自分たちなりのこだわりをもって作業を進めてくれているのですが、そんな姿を見ると「モノづくりの楽しさってこういうことだったなぁ」って思いますよね。

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松山 “C5”タイトルはもともと10〜20人程度、追い込み時でも30人程度での開発を目指すプロジェクトです。僕らがゲームを作り始めた20年くらい前は、タイトルに関わるスタッフ全員が顔をつきあわせて「ああでもない、こうでもない」って濃いやり取りをしながらゲームを作っていましたが、まさにそんな作りかたをやっています。いまプロジェクトが動き始めた『戦場のフーガ』でも、まだ10人で動いている段階なので、これからいっしょに作りたいという人がいたら、大歓迎です。我こそはと思う方は、いつでも連絡をください。

−−ちなみに各作品のディレクターは、企画立案者が務めているのですか?

松山 結果的にそうなっています。“C5”の企画募集は、いまから2年くらい前に開始したのですが、通常の仕事と並行しながらアイデアを出してもらうとなると、何本集まるかわかりません。そこで、“C5”は提出された企画の中から10本を私が選び、その企画立案者にはご褒美を用意することにしました。そうしたところ、1年で100本近い企画があがってきたので、その中から10本を選ばせてもらっています。その10本の中から、プロジェクト化できるレベルのものをチョイスしたものが、今回の“復讐三部作”です。ゲームの新規IPを生み出すのは並大抵のことではありませんが、“C5”は今後もこのルールに則って継続していきます。

−−選ばれた10本で、“復讐三部作”以外の企画はどうなりましたか?

松山 基本的には凍結しています。本当は10本すべてプロジェクト化したかったのですが、ほとんどの企画はCC2がこれまでデベロッパーとして作ってきたような、5年くらいの期間とそれなりの予算をかけて作らないと成功しないタイトルだったからです。企画自体が悪いわけではないのですが、若い人間にチャンスを与えて、育成を目指すという“C5”の趣旨とは異なっているので、候補からは外させてもらいました。ちなみに、このあとも“C5”企画は継続していて、じつは4本目はすでに決まっています。5本目以降のタイトルも選定中ですので、これから先も退屈はさせませんよ。

−−準備中のタイトルも気になるところですが、いまは“復讐三部作”のリリースに向けて全力で取り組むということですね。発売前にこれらの作品を遊べる機会(体験会や体験版)は考えていますか?

松山 当然、やるべきだと思っています。また準備ができたら、きちんと報告させてもらいますので、それまでお待ちください。

−−来年は東京ゲームショウといったイベントに、CC2がパブリッシャーとしてブースを構える可能性もありそうですね。

松山 今年はタイミング的に厳しいですが、来年は東京ゲームショウを含めて、いろいろなイベントへの参加を考えています。どのイベントに参加するべきか検討するため、このあともジャパンエキスポ、アニメエキスポ、コミコンなど、世界中のさまざまなイベントに行ってきます。

−−最後に、CC2のタイトルを期待しているファンに向けてコメントをお願いします。

松山 “復讐三部作”の3タイトルに関しては、企画と開発を進めながら、ビジネス面でいろいろなパートナー企業に営業展開をしているところですが、今回のようにプロジェクトの途中経過を報告するのは、これが最後になります。次回は、『戦場のフーガ』のプレイアブルバージョンを用意して、発売日とゲームの内容を含めた具体的な紹介をするつもりです。そのつぎは『刀凶百鬼門』、『CECILE』と、順番に各タイトルの詳細情報を発表していきます。CC2はこれまでデベロッパーとして存在感を示してきたと思いますが、パブリッシャーとしてもCC2らしい、遊び応えのある作品を提供していきます。これからのCC2の活躍にご期待ください。

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