2018年2月2日、『釣り★スタ』を家庭用ゲーム機に向けてリリースすることを発表したグリーは、同日に2018年度6月期第2四半期 決算説明会を実施。説明会では、決算概要と新たな事業戦略などが語られたほか、コンソール事業参入に関する質疑応答などが行われた。
2018年度6月期第2四半期の決算概要は、売上高195億円、営業利益23億円とのことで、ともに計画を上回って着地。事業概要としては、1月にリリースを開始した『LibraryCross∞(ラブクロ)』が堅調な立ち上がりを見せているほか、5本の開発パイプラインが進行中であること。そして本日発表があったコンソールゲーム事業への参入第1弾タイトルとして、『釣り★スタ』をNintendo Switchに向けてグローバル配信することが、改めて語られていった。
決算概要、事業戦略が語られたあとに設けられた質疑応答の時間は、今期決算の詳細に関する話題や今後の事業見通しなどに加え、コンソールゲーム事業参入に関する質問も多数寄せられることに。ここで、説明会で行われたコンソールゲーム市場への参入に関する質問を抜粋し、質問内容と回答をまとめて紹介していこう。
Nintendo Switch版『釣り★スタ』はダウンロード販売、売り切りスタイルでの提供を予定
−−コンソールゲーム機に参入されるにあたり、これまでの『釣り★スタ』とくらべてゲーム性は変わるのでしょうか。また、販売方法などのビジネスモデルについても教えてください。
荒木英士氏(以下、荒木) Nintendo Switchは、さまざまなセンサーを搭載したJoy-Conが特色のひとつですが、これを用いて釣り竿のキャストやリールの巻き上げといったアクションを盛り込むなど、釣りの定番ゲームを目指して製作を進めています。ですので、これまでの『釣り★スタ』の操作性とは別ものになると思います。ビジネスモデルについてですが、今回はダウンロード販売の売り切り型を想定しています。現状、アイテム課金は考えておりませんが、状況によってはDLCでの展開なども健闘させていただくかもしれません。
−−コンソールゲーム市場に参入する意義と、ビジネスの将来性についての考えを教えてください。
荒木 弊社ではこれまでパブリッシャーとして、モバイルゲームを作って提供することしか行ってきませんでしたが、ゲームアプリの市場は現在、作って提供するだけでは勝負が難しい時代になってきています。また、これまでもさまざまなIP(知的財産)を持つ版元さんと協業させてもらっていますが、弊社のIPも含めてこれらのバリューをいかに高めていくか。そう考えたときに、コンソールゲーム機も含めてマルチプラットフォーム、マルチリージョンでの展開力があげられると思っています。業績面に関しては、今回の『釣り★スタ』だけで大きな収益を上げることは想定していません。ですが、マルチプラットフォーム展開に向けた戦略では、ゼロから新作を作るより、すでにあるタイトルを活用したほうが収益性は高いと思っています。今後のタイトルについては現時点で発表できるものはありませんが、複数のラインが動いており、今後も注力して取り組んでいこうと考えています。
田中良和氏(以下、田中) 私から補足させてください。これは他社にも当てはまると思いますが、あるIPのモバイルタイトルがコンソール版を出すと、モバイル版が売れてくる。反対に、あるIPのコンソールタイトルがモバイル版を出すと、コンソール版が売れてくるといった現象があります。つまり、Nintendo Switch版『釣り★スタ』をリリースすることは、モバイル版『釣り★スタ』の業績を伸ばすことにも貢献できるのではと思っています。また、さまざまなコンソールゲーム機の歴史を紐解くと、どの時代のどのハードにも釣りゲームへの一定の市場というものがあります。弊社は世界最大の釣りゲーム開発会社であるという自負がありますが、コンソールゲーム機への進出で、自他共に認める世界最大の釣りゲーム会社を目指すという心意気も込めています。
−−今回の『釣り★スタ』は売り切り型と言われましたが、今後運営・課金型の提供をされる予定はありますか?
荒木 Nintendo SwitchでのF2P(フリー・トゥ・プレイ)についてですが、これはタイトルごとに判断していかなければと思っています。アイテム課金型にあったゲームと、そうでないものがありますので、それぞれに応じて判断していきます。また、プラットフォームホルダーの意向も出てきますので、今後はさまざまな面を考慮しながら検討していければと考えています。
−−参入第1弾タイトルとして『釣り★スタ』を選ばれた理由と、プラットフォームとしてNintendo Switchを選んだ理由を教えてください。
荒木 これにはいくつか複合的な要因があります。まず、Nintendo Switchがリリースから間もないプラットフォームであり、任天堂さんとしてもハードの特色を活かしたタイトルを揃えたいという強い意向があることを聞いていました。また、釣りゲームは体験性が強いコンテンツになりますが、Nintendo SwitchのJoy-Conでの操作性や、TVモードや携帯モードのように、据え置きと携帯スタイルを行き来しながら遊べるというのは、とても親和性が高いと思っています。そして、先ほど田中が申し上げたようにマルチプラットフォームで定番の釣りゲームを提供していくことで、釣りゲームの第一人者になるという気概もあります。Nintendo Switchではカジュアルなタイトルが人気を集めているというのもひとつの要因です。
−−コンソールゲーム機の開発に関して、モバイルで培った経験は活きてきますか?
荒木 じつはこの数年でモバイルゲームとコンソールゲームを開発するための技術的な垣根は、かなり低くなってきています。我々はモバイルゲームの開発でUnityを使っていますが、これはNintendo Switchのゲーム開発でも流用できますし、ほかのコンソールに向けた開発にも活かすことができます。また、弊社にいる開発者に関して、かなりの割合でコンソールゲームの開発経験者が揃ってきておりまして、昨年はプレイステーション VR向けのタイトル開発も行いました。このように開発面に関しては複合的な要素が噛み合っているので、うまく進んでいると思います。
−−コンソールゲーム市場に参入するにあたって、コスト面の上昇などといったリスクについてはどう捉えていますか?
荒木 弊社としてもコンソールゲーム機の開発は初めての経験になりますので、最初は極力リスクを抑える形で始めていきます。今回の『釣り★スタ』については、昨年『釣り★スタ』をリメイクする形でVR版を作らせてもらったのですが、このときのアセットを活用しながら製作するというアプローチをしています。今後についても、いきなり新規の大型タイトルを作るのではなく、今回のようにリメイクから手掛けていくといったように、リスクコントロールをしながら実績を積み上げていければと考えています。実績を積んでいくことで、自分たちなりの手応えや市場規模感といったものがわかってきたら、それに合わせたリスクの取りかたをしていけると思っています。
−−コンソールゲーム市場への参入に関して、意気込みを教えてください。
田中 私は小学生のころに、父親にクリスマスプレゼントでファミコンをもらったのですが、それからはゲーム三昧の生活を送っていました。小学校か中学校の卒業文集の中の将来の夢で、ゲームを作りたいと書いていたことも覚えているくらいですので、今回の参入は個人的にもうれしいです。ただ、当然ビジネスですので、きちんと結果を出さなければと思っています。