新要素が続々。大会の実施準備も着々と進む

 2017年4月8日~9日にかけて、Wargamingはファンミーティング“Wargaming Gathering”を、台湾・台北にて開催。8日のステージでは、オンラインゲーム『World of Warships』(以下、『WoWS』)について、『ハイスクール・フリート』コラボやパンアジアツリーの実装などの新情報が発表された。それらの新情報を始め、2017年の『WoWS』の展開について、本作のプロデューサーを務める柳沼恒史氏に話を伺った。

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▲『World of Warships』プロデューサー 柳沼恒史氏

『ハイスクール・フリート』コラボについて

――まずは、4月8日に発表された『ハイスクール・フリート』コラボについてお聞かせください。

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柳沼 アニメに登場する“晴風”と“グラーフ・シュペー”がプレミアシップ、駆逐艦“HSF Harekaze”と巡洋艦“HSF Graf Spee”として実装されます。また、作中に登場する各艦の艦長と副長がセットになった、新規録り下ろし特別ボイスが同梱されています。6月頃にゲーム内への実装ができるよう、鋭意開発を進めております。

――艦長と副長のセットというのはどういったものでしょうか?

柳沼 たとえば艦長が「全速前進」と言ったら、副長がそれに合わせて相槌を入れたりとか、マルチボイスになっています。切り替えではなく、2キャラでひとつ分になっています。掛け合いのように、ふたりのキャラクターが順番にセリフを言う感じですね。

――ゲーム中にアニメーションのシーンが使われるといったことはあるのでしょうか?

柳沼 ぜひ入れたいのですが、いまのところはないですね。“!”マークがアニメ風になったりするといいと考えたりしているのですが。ただ、以前にコラボ企画として“はいふりの旗”を配布しましたので、販売時期にはまたそういったイベントを用意したいと思います。配布方法に関しては企画中です。

――アニメに登場する猫の“五十六”も実装されるとおっしゃっていましたね。

柳沼 艦長として実装する予定です。見た目はかわいいんですけど、声がおっさんなんです。この世界観がどういう風にユーザーさんに受け入れてもらられるか興味深いところです。『ハイスクール・フリート』の世界観をしっかり『WoWS』に持ってくると考えたときに、そういったキャラクターもぜひ入れたいと思いました。

――五十六の入手方法はどうなりますか?

柳沼 ゲーム内イベントで手に入るようにしたいと考えています。イベントは現在製作中ですが、アルペジオのときのようなチャレンジイベントに近いものになると思います。いっぱいプレイしていただいて、何かしら目標を達成すると入手可能となる感じですね。難易度はそんなに高くならないと思います。

――五十六は日本艦であれば艦長にできるということでしょうか?

柳沼 そういう実装にしたいと思って作っています。

――グラーフ・シュペーと晴風を購入すると、特別ミッションなどはついてくるのでしょうか?

柳沼 そうしたい、とは考えています。

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▲イベントのステージではアニメのワンシーンを再現した特別映像が披露された。

――Tierと価格はどれくらいになるのでしょうか?

柳沼 晴風は陽炎の姉妹艦という設定なので、そこと大きく変わらないかと。シュペーはゲーム内にすでに通常のシュペーが実装されていますので、そこから変わっても前後1Tierだと思います。通常の艦艇ととアニメでは兵装が違います。レーダーであったり、煙幕であったり、モジュールもありますし、それ以外に主砲の性能も変わりますので、そのへんによってゲームバランスを鑑みて、Tierを調整することになりますね。

――特殊な兵装はあるんでしょうか?

柳沼 特殊なものにしたいと思っています。アニメの世界をできるだけ忠実に再現したいのが、我々の希望ですので、バランス的に問題ない範囲で特殊なものを実装したいですね。

――晴風は、アニメでは逃げる描写が多いので回避力が高いとか?

柳沼 そういう可能性も含めて調整中ですね。

――グラーフ・シュペーは関してどうでしょうか?

柳沼 基本的には晴風と同じように考えていますが、いまあるシュペーとは違うものにしたいですね。

――全リージョンで実装予定はあるのでしょうか?

柳沼 まずはアジア地域での実装になります。一部のほかの地域も興味を示しているので、今後実装の可能性はあります。とくにアメリカでは、『ハイスクール・フリート』のコアなファンがかなりいますね。

――『ハイスクール・フリート』コラボは今後も続けるのでしょうか?

柳沼 アニメシリーズの展開や状況を考えつつ、ユーザーさんの声を聞きながら考えていきたいですね。可能性はゼロではないのですが、まずは今回のコラボを実際に実施して様子を見て、というところです。

――そのほかのコラボ予定はありますか?

柳沼 現在はまだ企画段階なのですが、今回の『ハイスクール・フリート』コラボ以降、別のコラボが控えています。アニメかもしれませんし、アーティストさんとコラボする可能性もあります。『World of Tanks Blitz』ではメカニックデザイナーの大河原邦男氏がデザインした車輌を実装しています。そういったアーティストコラボシリーズは今後もやっていきたいと考えていますので、もしかしたら『WoWS』で行う可能性も考えていきたいですね。

――『蒼き鋼のアルペジオ』のコラボ艦のミッションを再配信する予定はありますか?

柳沼 すでにいろいろなところから熱望する声をいただいています。台湾でもそういう声が多かったです。現状では再配信や『蒼き鋼のアルペジオ』の艦をプレミアシップとして出す予定はありませんが、こちらも皆さんの声を聞きながら、というところです。

大会の実施予定とコメンテーター募集について

――クラン戦や大会の実施についてはいかがでしょうか?

柳沼 予定はあります。まずはそれに先駆けて、クラン戦や大会を実施したときにストリーミングで実況や解説を行っていただくコメンテーターを、アジア全体で募集しようと考えています。コメンテーターに付与される特典としては、自身がコマンダーとして登場したり、もしくはボイスパックを実装したりと、ゲームに関係してくるようなものを予定しています。

――選定基準はどういったところでしょうか?

柳沼 コア層の方が見て「あーそうだよね」と思っていただけることが自分としては重要だと思っていますので、自ずとゲームをたくさんプレイしている方になってきますね。また、会話のテンションや、視聴者の引き込みかただったり、プロ風の実況になるのか、ユーザーに親しみやすい実況なるのか、さまざまな要素を見て選びたいと思います。

――大会実施のアナウンスも同時に行うのでしょうか?

柳沼 それに関しては詳細を固めているとことです。大会の開催時期については、まだ何とも言えません。ただ、コメンテーターの募集はクラン戦や大会を実施するというメッセージでもあります。実施する以上、事前の準備はしっかりとしたいので、実際に大会を行ったときに実況を行ってもらうコメンテーターを先に募集するということですね。『World of Tanks』のときは、そのあたりが後追いになってしまいましたので。

――コメンテーターの募集はいつごろになるのでしょうか?

柳沼 日本だけでなくアジアでも行いますので、その時期をうまく合わせられるよう調整中です。6月くらいにできればとは考えています。

――大会は、日本だけでしょうか? それともAPAC規模か、WGL規模でしょうか?

柳沼 私としては、アジア全体で考えています。国別の予選をやってAPACの大会を行うのが理想ですね。

――公式戦のフォーマットは決まっているのでしょうか?

柳沼 それは現在組み立てているところです。これまでさまざまなイベントで、ユーザーさんに参加いただくエキシビジョンマッチとして試合を行っていますので、そういうところの経験値を高めて、どういったルールがいいのかを毎回研究しています。それをもとに公式のルールを組み立てていきたいと考えています。

――柳沼さんが考えるルールはどのようなものでしょうか?

柳沼 Tier7ですとちょっとバランスが難しいので、Tier8~9かなと。人数として7対7か、9対9ぐらいのバランスだと思います。大会の試合時間を考えると多すぎても難しいかなと。逆に少なすぎてもつまらないですし、その辺のバランスが難しいですね。

フランス巡洋艦ツリーの実装について

――現在テストを行っているフランス巡洋艦ツリーについてお聞かせください。

柳沼 いまはテストフェイズで、実際にプレイヤーさんに触っていただいている状態です。まだバランス調整中で、Tierによって性能が大きく違うため、そのあたりを大きく変えないといけないと考えています。フランス巡洋艦の特徴といえば長い射程で、軍用艦として最大です。ゲーム内でも最大の射程を持っていて、砲も非常に強いので、それを活かすことが基本戦術になってくると思います。しかし、私も実際にテストプレイしてみた感想としては、高いTierのバランスがとくに悪くて……。ここは、何らかの変更を加えます。

――高いTierのバランスが取れていないというのは弱すぎるのですか、強すぎるのですか?

柳沼 高いTierはやや弱すぎるかなと。Tierにもよるのですが、たとえばTier5などはかなり強いです。

――射程が長くて砲撃が強い。その代わりにもろいという感じですか?

柳沼 全般的にほかのクルーザーに比べると、見劣りする印象はあります。

――特筆すべき長所や独自の性能はありますか?

柳沼 エンジンブーストがついている点が特徴で、最大速度をアップさせられます。ただ、低いTierではついてないのですが。当然魚雷やソナーなど、さまざまな装備を備えているのですが、最大の特徴はやっぱり射程です。それを活かせるかどうかが鍵になると思います。

――いろいろなことができるけど、プレイヤーの腕に左右されるということですか?

柳沼 そうですね。いままでの艦艇のような立ち回りでは、たぶんよさを活かせないと思うので、プレイスタイルを考えないといけないかなと。それをうまく使えれば優位に戦えるバランスになるよう、調整しようと考えています。

――射程が長いということは、遠くの敵も目視できるのですか?

柳沼 いいえ。仲間がちゃんと索敵を行い、敵がいる場所の報告などが必要ですね。

――フランス巡洋艦ツリーの本実装はいつぐらいになるのでしょうか?

柳沼 実装日に関しては“近いうちに”としか申し上げられないです。というのも、やはりバランスを変更した場合に、もう一度テストしなければならりませんので。それが数回にわたると数ヵ月先になる可能性も十分あります。とはいえ、2017年内には実装したいです。

――Tierは1~10まで全部揃うのでしょうか?

柳沼 はい。すべて巡洋艦になります。フランス艦としては、ダンケルクという戦艦がすでに実装されていますが、その艦艇を使っていまのうちに艦長を育て、フランス巡洋艦ツリーが実装されたら、そちらに移して使うといったことが可能です。

パンアジアツリーの実装について

――今回のイベントのステージで、パンアジアツリーの実装をアナウンスしておられました。これはどういったものになるのでしょうか?

柳沼 パンアジア各国の艇を集めた、多国籍のツリーの実装を2017年内に予定しています。歴史上、日本から寄贈された艦艇がアジアに散らばっているのですが、そういった艇の情報を集めていまして、ひとつのツリーに集約したいと考えています。現在あるプレミアム艦艇のローヤン(台湾)やアンシャン(中国)がツリーになっていく可能性があります。

――Tierが伸びると国も変わるし艦種も変わるということですか?

柳沼 艦種は変わりません。最初はパンアジアの駆逐艦か巡洋艦のツリーを予定しています。徐々に実装するのではなく、まとめて実装します。

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加賀をはじめとするプレミアム艦について

――加賀の実装日や価格を教えてください。

柳沼 加賀に関してはテスト中ですが、4月中には本サーバーでのテストが始まると思います。価格に関しては未定で、Tier6~7になると思います。Tier7の空母のバランスで言うと、サイパンがかなりいいんですよ。そこへの対抗術として、サイパンを使っている人に「おい、加賀が出てきたぞ」と思わせるようなパワーバランスがベストかなと考えて調整しています。

――プレミアム艦があまり強すぎるのも問題ですよね。

柳沼 ツリーシップとのバランスをどう取るかは永遠の課題というか。私自身、現状Tier1に関しては満足いってないんですよね。たとえばベルファストとか、サイパンとか、もしくは駆逐艦のラインがプレミアム艦にやや寄てしまっています。ただ、現状のプレミアム艦艇の性能を弱体化することはありません。

――武蔵がいつぐらいに実装されるのかも気になりますね。

柳沼 武蔵に関してはいつか出したいと思っていますが、どういった形で出すのかはまだ検討段階です。

――武蔵を大会の賞品にするのもありですよね。

柳沼 非常にいいアイデアだと思いますし、北上に関してはそういった方法で配布する準備をしています。

『WoWS』を取り巻く現在の環境について

――柳沼さんは、日頃どれくらいプレイされているのでしょうか?

柳沼 3300戦くらいやっています。勝率は65~66くらいですね。ユーザーさんにかなり近い位置でゲームを見ていたいという思いがありまして、ユーザーさんに何かが言われたときに即座にわからないといけませんし。その要望をしっかり理解したうえで開発していくことを重要視していますので、ゲームをプレイする必要性をつねに感じています。

――満遍なくさまざまな艦に乗っているんですか?

柳沼 そうですね。テストのフェイズしか乗らないこともありますが、基本的にはユーザーさんがどう感じているかを知りたいので、どの国を開発するときに何が必要なるか、どう感じているかを大事にしてプレイしています。

――ユーザーからの要望はどういったものが多いんでしょうか?

柳沼 いろいろとありますが、マッチメイキングがつねにポイントになってきていると思います。たとえばAFK(無操作状態)のプレイヤーがいるとかなりバランスが悪くなってしまうことが多く著しくゲームバランスを損なってしまいます。AFKや不正行為などを検知することには非常に力を入れていますし、私が主導でやることもあります。それがゲームの満足度を上げるうえで鍵になる部分だと思います。

――対人対戦ではなくCPU戦で遊ぶプレイヤーが多い気がします。そのことについてどう考えているのでしょうか?

柳沼 もちろん対人戦をプレイする方が増えたほうがいいのですが、CPU戦に需要があることも理解しています。
CPU戦をある程度楽しんでから対人戦に切り替える方も多いですし、CPU戦をプレイしていただくのはよろこばしいことでもあります。ただ、個人的にが思っていることなのですが、CPUと人間の動きはかなり違うので、CPU戦に慣れてしまうと対人戦が下手になる可能性はありますね。CPU戦と同じ戦法が対人戦で通じないことが多くありますので。

――対人戦の作法やマナーなどがわからない、取っかかりがつかめないというユーザーもいますよね

柳沼 マナーって難しいですよね。アジアサーバーですと言語の問題もありますし。対戦の始めに会話ができないと、チームでどう動いていいのかわかりません。そういった部分を解決するため、矢印で仲間の誘導を行うなどのコミュニケーション機能の実装を考えています。現状だとショートカットで挨拶するくらいがマナーになっていると思うのですけど、そこをたとえば矢印を出してあげるとか。そういったサポートをするシステムの実装を予定しています。テストがうまくいけば、今年のなかごろか後半あたりには実装できるのではないかと。

他機種での展開について

――モバイル展開の予定はあるのでしょうか?

柳沼 可能性はゼロではありませんが、デザインを根本的に変える必要がありますね。『WoWS』は『WoTS』に比べて1ゲームに時間がかかるので、モバイルのユーザー向きではありません。ルールも仕様もまったく別のものにしないといけませんので、現状ではまだ考えていませんね。

――『WoT』のようなコンソール展開の予定はあるのでしょうか?

柳沼 現状ではないですね。『WoWS』はバランス調整など含めて、まだ開発している段階と考えています。『WoT』の場合も、サービス開始から数年してゲームの完成度が高まった状態でコンソール版をリリースしましたので。

新イベントについて

――新たなイベントの開催予定はありますか?

柳沼 2015年に行った“Project R”のパワーアップバージョンとして、“Crash of Elements”というイベントを近いうちに行います。プレイヤーがふたつのグループに分かれてポイントを競うい合うもので、勝利するといい報酬がもらえます。

――報酬は艦艇になるのでしょうか?

柳沼 はい。艦艇になると思います。

――“Project R”と比べてパワーアップしているポイントはどこでしょうか?

柳沼 プレイヤー間・グループ内での協力ですね。以前は単純にひとりがポイントを稼いでいくものでしたが、“Crash of Elements”では自分だけではなく、ほかのプレイヤーと協力して目標を達成していくことが重要になります。


 盛り上がりを見せる『ハイフリ』コラボを始め、いよいよ実現が近づいてきた公式大会、フランス巡洋艦やパンアジアのツリー実装、新たなプレミアム艦艇やイベントなど、続々と出る新情報についてプロデューサー自らが語ってくれた。サービス開始から1年を迎え、ますますゲーム内容が充実していく『World of Warships』の2017年の展開に期待大というところだ。