“区切り”を迎えた『DARK SOULS』シリーズを総括するインタビュー

 2017年3月28日より配信がスタートした、フロム・ソフトウェアによるプレイステーション4、Xbox One、PC向けの『DARK SOULS III(ダークソウルIII)』第2弾ダウンロードコンテンツ(以下、DLC)、『DARK SOULS III THE RINGED CITY(ダークソウルIII ザ リングド シティ)』。この作品は、2011年から始まった『DARK SOULS(ダークソウル)』シリーズの最後を飾るDLCとなる。すでに最後のエリアを楽しんでいるユーザーも多いと思うが、2017年4月20日には『DARK SOULS III(ダークソウルIII)』本編と第1弾DLCの『ASHES OF ARIANDEL(アッシュズ オブ アリアンデル)』、そしてこの『THE RINGED CITY(ダークソウルIII ザ リングド シティ)』を完全収録したオールインバージョンである『DARK SOULS III THE FIRE FADES EDITION(ダークソウルIII ザ ファイア フェーズ エディション)』が発売される。
 そこで、シリーズの生みの親であり、本作でもディレクターを務めたフロム・ソフトウェアの宮崎英高氏に、シリーズ最後となる第2弾DLCのテーマ、シリーズへの想い、そしてシリーズを支え続けてきたユーザーへのメッセージを訊いた。まだプレイをしたことのない人には、ぜひ『DARK SOULS III THE FIRE FADES EDITION(ダークソウルIII ザ ファイア フェーズ エディション)』で深淵なる世界に足を踏み込んでいただき、世界中のユーザーがこのシリーズを愛するのか、その理由を体感してほしい。値段も安くて、お得なので!

※本インタビューは週刊ファミ通2017年4月13日号に掲載した記事を再掲載したものです。
※本インタビューは2017年3月16日に収録したものです。

「『DARK SOULS』は幸せなシリーズだったと思います」――最後のDLC、そしてシリーズを宮崎英高氏が語る_01
▲宮崎英高(みやざき・ひでたか)氏……本作のディレクター。第1作を手掛けたシリーズの生みの親。『DARK SOULS III(ダークソウルIII)』の前には『Bloodborne(ブラッドボーン)』(発売はソニー・インタラクティブエンタテインメント)も手掛けた。フロム・ソフトウェアの取締役社長。

本編の持つテーマ性に、また別の側面から光を当てるDLC

――DLC第2弾『DARK SOULS III THE RINGED CITY(ダークソウルIII ザ リングド シティ)』(以下、『リングド シティ』)が配信されましたが、それと同時に『DARK SOULS(ダークソウル)』(以下、『ダークソウル』)もこれで完結ということになりますね。

宮崎英高氏(以下、宮崎) そうですね。当初からお話ししていたとおり、少なくとも現状はこれ以降の展開は予定していません。『ダークソウル』シリーズは大きな区切りとなります。

――『リングド シティ』をプレイさせていただいて、第1弾となる『ASHES OF ARIANDEL(アッシュズ オブ アリアンデル)』(以下、『アリアンデル』)との物語のつながりに驚いたファンも多いと思います。

宮崎 それは、今回のふたつのDLCが、最初はひとつの大きなDLCとして計画されていたことが大きいと思います。初代『ダークソウル』や、『Bloodborne(ブラッドボーン)』と同じような形ですね。

――『アリアンデル』のボリュームに対しては、とくに『Bloodborne(ブラッドボーン)』のDLCをプレイしてから『ダークソウルIII』に入ってきたユーザーから見た場合、少なかったという意見もあったと思うのですが、この『リングド シティ』のほうはボリューム感がありますね。

宮崎 そうですね。第1弾DLCのボリュームについては、率直に反省がある部分です。我々としては、第1弾、第2弾を合わせたボリュームで考えがちで、第1弾DLCの位置付けや、実際のボリュームをうまくお伝えできなかった部分があったと思いますし、第1弾DLC単体のボリューム感というか、「1本のDLCをやった」という充足感について、配慮が足りない部分もあったかと思います。たとえばそれは、ボスや強敵の選定であるとか、新しい武器や魔法の選定であるとかですね。

――とはいえ、『アリアンデル』のボス戦もなかなかきつかったんですよね(笑)。

宮崎 フリーデも決して弱いボスではなかったと思います。彼女に関して言えば、数体いるボスの一体であればよかったのですが、第1弾DLCの一体だけの正統派ボスとしては「太さ」が不足していたと考えていますね。いずれにしても、この話は我々の率直な反省点ですし、第2弾DLCでは、可能な限りこの反省点は意識しています

「『DARK SOULS』は幸せなシリーズだったと思います」――最後のDLC、そしてシリーズを宮崎英高氏が語る_02

“絵画世界”、“吹き溜まり”そして“輪の都”それぞれに選んだ意図があります

――第1弾DLCのメインの舞台が“アリアンデル絵画世界”で、今回は、その物語が第2弾DLCで完結しました。本編にも“アノール・ロンド”が出てくるように、ここにも第1作との関連がうかがい知れますが、第1作のエリアの中から絵画世界を選んだ理由は?

宮崎 絵画世界というモチーフは、特に初代『ダークソウル』を懐古したかったということではありません。今回のDLCは、『III』本編の持つテーマ性に、また別の側面から光を当てることを意図しており、そのために最適なモチーフとして絵画世界が選択された、ということになります。

――切り離された世界という部分ですか?

宮崎 はい。それも大きい部分です。抽象的な話になってしまい申し訳ないのですが、『ダークソウル』シリーズ全体を通して、絵画世界は“火継ぎ”の外にある点で異質でして、その異質さが、『III』本編の持つテーマ性に、また別の解釈なり解決なりを提示するために有用だったのです。

――『リングド シティ』の序盤に“土の塔”が登場しますよね。『II』と直接関係するマップが出てきたこともファンとしてうれしかったですし、“砂の魔術師”が出現するところも喜ばれるのではないでしょうか?

宮崎 DLC第2弾の最初のマップである“吹き溜まり”については、過去さまざまな時代、さまざまな場所の残骸が、まさに吹き溜まっている場所です。これはもともと、建物を大きく傾けたり、重ねたりといったように、建物の構造をふつうではあり得ない形で使用し、組み合わせることで、おもしろいマップ構造を作るための設定ですが、せっかくですし、『ダークソウル』シリーズの積み重ねもそこで表現しようと思ったのです。吹き溜まりが『III』のロスリックの残骸から始まり、『II』の土の塔の残骸を抜けるという流れは、そうした意図によるものですね。

――数ある『II』のエリアの中から、土の塔をチョイスした理由は?

宮崎 『II』のエリア選定は、谷村(唯氏。『II』のディレクター)に相談して決めました。『II』のユーザーさんに印象的な場所としてシルエットが記憶されていて、吹き溜まりのマップ設計意図にも沿うもの、ということですね。そして、先ほどちらりと話に出た砂の魔術師については、土の塔を使用すると決まった後に、あるスタッフから要望のあったものです。「土の塔が出るのなら、あの装備がないとユーザーさんは納得しない」ということで、なるほど、それはそうかもしれないな、と考えて採用しました。土の塔の残骸に砂の魔術師が生き残っている、ということもしっくりきましたし、そこから、小さな物語の膨らみを感じることもできましたので。

――いや、その判断はすばらしいです!

宮崎 ありがとうございます(笑)。そういった話もあり、今回のDLC第2弾については、じつは女性装備に力を入れています。「雷の弓」など女性的な魔法もありますので、特に女性キャラクターを使っている方には、楽しんでもらえればうれしいですね。あるいは、女性キャラクターを作るきっかけになればと。

――扉のアーチの崩れかたが同じだったので、もしかしたら第1作目の拠点であった火継ぎの祭祀場も……。

宮崎 はい。じつはそうなんです。最終的にマップがかなり暗くなってしまい、また、ボスが激しく暴れていろいろと壊し、マップも燃えるのでとてもわかりにくいのですが、吹き溜まりのボス部屋は、初代の祭祀場の残骸なんです。つまり吹き溜まりは、『III』のロスリックの残骸から始まり、『II』の土の塔の残骸を抜け、初代の祭祀場の残骸に至るマップ、ということになりますね。わかりにくくて申し訳ない(笑)。

――DLCを含めて、全体的に見ると、第1作から『III』、そしてDLCと、世界観が過去、現在、未来と、輪になっているような印象も受けますね。

宮崎 そうですね。『ダークソウル』シリーズ全体を通して、“火継ぎ”というキーワードがありますが、そこには、火継ぎが始まり、歪み、そして終わる、という流れがあると思います。そうした「世界を継いでいく」というテーマについて、また別の解釈を見出そうとしたのが、今回のDLCであるかもしれません。

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