しあわせ荘でしあわせ気分

 9月に行われた東京ゲームショウ 2016で、ひときわ注目を集めたタイトルがある。ディースリー・パブリッシャーのプレイステーション4用ソフト『しあわせ荘の管理人さん。』だ。そのタイトル名から容易に想像が付く通り、同作は“しあわせ荘”の管理人として、3人の女の子と交流を深めるという恋愛アドベンチャーゲーム。プレイステーション VR“対応”という点がフックしたのか、はたまた3人の女の子たちが受けたのか、発表されるや大きな話題を集め、ファミ通.comの記事も高いPVを記録し、その週の週間PVランキングでは堂々1位に輝いた

『しあわせ荘の管理人さん。』をひと足早くプレイ! ウワサの彼女たちとVR空間でのコミュニケーションにしあわせ気分_01
▲東京ゲームショウ 2016のブースの模様から。

 タイトル発表直後の東京ゲームショウ 2016に出展ということで、当然のこと来場者の関心は高かったわけだが、試遊できたのは通常のゲームプレイのみ。実際のところ、プレイステーション VRでの体験版は用意されていたものの、諸般の事情により出展されなかったのだ。いわば、“幻の体験版”となってしまったわけだが、それを聞いたらプレイしてみたくなってしまうのが人情というもの。ディースリー・パブリッシャーさんを拝み倒して、試遊することに成功した。VR空間で、ウワサの住人たちに会えるのだ!

 しあわせ荘に住んでいる住人は3名。裕福な家に生まれた女子大の2年生、桜井静香さん(声:中原麻衣さん)とハーフの高校3年生、橘・バルバラ・クリスティーネさん(声:釘宮理恵さん)、そして大学3年生の不思議系女子、竹山日真里さん(金元寿子さん)だ。体験版では、この3人の中からひとりを選択し、プレイヤーは新人の管理人として挨拶。女の子たちに施設を案内してもらうという流れになる。おそらくは、製品版の冒頭部分を体験版用にアレンジしたゲームプレイだと思われる。

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▲桜井静香さん(中央)、橘・バルバラ・クリスティーネさん(左)、竹山日真里さん(右)。
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 実際のゲームプレイでは、3人の女の子からひとりを選択するというシチュエーションはないハズだが、「えー、選べるわけないよー」と思いつつも、橘・バルバラ・クリスティーネさんを選択。直前にプロデューサーの岡島信幸氏が桜井静香さん相手にデモプレイを披露してくれたので、「別のキャラクターでいこう」という記者魂が働いたというのが、大きな理由だ。

 “体験すればわかる”というのは、VRを語るときの鉄則となっているが、実際のところ、月並みな表現ながらもまさに“没入感溢れる”としかいいようのない感覚で、目の前に女子高生がいることにドキドキするのだから仕方がない。やっぱり気になるのは彼女たちの“存在感”だが、2Dで見るよりもずっとかわいい。「テレビで見るよりも実物のほうがかわいいみたいなものか?」とか思いつつ、その造形に感嘆。

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▲ディースリー・パブリッシャー 岡島信幸氏。

 本作の開発を担当しているのは、『ドリームクラブ』シリーズや『お姉チャンバラ』シリーズなど、数々のゲームでディースリー・パブリッシャーと組んでいるタムソフトだが、プロデューサーの岡島氏によると、「もっとも信頼しているデザイナーさんに仕事をお願いした」とのこと。とくにVRにおける“存在感”という意味では、表情がひとつのポイントになると思われるが、本作における女の子たちはとにかく表情が豊か。眉の動きから口角の上げかたなど、細部にいたるまでこだわっている感じがうかがえる。「表情がつかないと親近感が沸かないので、フェイシャルにはものすごく注力しています」(岡島氏)とのこと。その際に役立ったのがこれまでの開発で培ったノウハウで、たとえば『ドリームクラブ』シリーズでは、歯や舌の描写にこだわっており、開発時にモデリングなども制作したそうだが、本作では、そんな『ドリームクラブ』で得たノウハウを踏まえて、開発しているという。

 さらには、そのこだわりぶりは体型にも及んでおり、たとえばクリスティーネさんはハーフであることからお尻の位置がほかのふたりより高くなるなど、頭身や体型などが3人ともそれぞれ異なるのだという。なんともすさまじい熱量。まあ、これくらいの熱量がないと、VR空間で存在感のあるキャラクターは作れないのかもしれません。

 というわけで、試遊ではクリスティーネさんと適宜会話を交わしていったのだが、本作は“恋愛アドベンチャー”ということで、会話の途中で適宜選択肢が出現。どれを選ぶかで女の子の反応やその後の展開に違いが生じるようになっている。

 驚かされたのは、プレイ中に4つの選択肢が出現したこと。この手のゲームで選択肢4つは大盤振る舞いのようにも思われるが、「選択しないという選択肢もありますので、実質5択ですね」(岡島氏)とのこと。それだけ女の子のリアクションも違ってくるわけで……。いろんな反応を見てみたくなるのも人情というもの。ちなみに、選択肢は必ずしも4択というわけではなく、展開にしたがって2~4のあいだで出現するようだ。

 また、リアクションということでいうと、プレイヤーの“視線”によっても女の子たちの反応が生じるようで、たとえば、じーっと見ていると、「やだー、胸ばっかりを見てる」という、女の子たちの心の声が聞こえてくるのだという。こんなインタラクションもやっぱり楽しい!

 いま、しれっと“心の声が聞こえてくる”と書いてしまったが、『しあわせ荘の管理人さん。』ではなぜか、たまに女の子たちの心の声が聞こえてくるときがある(もちろん、フルボイス!)。「禁断のテレパシーか?」とも思ってみたりもする。どうやら何かありそうだが……。

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 ひととおりの挨拶が済んだあとは、やさしくもクリスティーネさんがしあわせ荘の施設を案内してくれることに。しあわせ荘には、フィットネスジムやプール、更衣室といった施設が用意されており、クリスティーネさんが案内してくれたのは、フィットネスジム。いきなりタンクトップにホットパンツ姿で姿を現したクリスティーネさんにドキドキ。「初対面で、その姿は無防備過ぎないか?」とおじさん記者はやきもきするが、そこはハーフの彼女のこと。そんなフランクな姿勢に心癒されます。ちなみに、桜井静香さんはプールに案内してくれて水着姿を披露してくれました!

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 と、ドギマギしているうちに、あっというまに試遊時間は終わってしまったのでした。「もっと、交流したいよー」というのが率直な感想。本作は音声認識には対応していないのだが、たまについつい我を忘れて話しかけてしまうほど、リアルなコミュニケーションを堪能したのでした。

 コミュニケーションが楽しい本作だが、先述の通り、本作は“恋愛アドベンチャー”。“主人公はしあわせ荘の管理人となりながら、3人の住人たちと交流し、3ヵ月のあいだに、仲を深めていくことになる”というのが、本作の概要だが、岡島氏の話をうかがった印象では、“恋愛アドベンチャー”としての基本はしっかりと押さえられている模様。

 ちなみに、岡島氏のもっかの悩みの種は、3人の女の子に対してゲームユーザーのあいだから、“顔が濃い”という意見が上がっていること。ディースリー・パブリッシャーの新作ということで、2D寄りのビジュアルを予想していたファンが多いらしく、「リアルで濃い」という声が挙がっているというのだ。岡島氏は「仮想現実にいるという感覚が大事なのであって、トゥーンタッチでやったら意味がない」と前置きしたうえで、“濃い”というユーザーからの意見が多いことをしっかりと受け止めて、柔軟にマイナーチェンジで調整することを検討中なのだとか。

 岡島氏いわく「基本は、そんなに変わらないですよ。ぱっと見の印象がちょっと薄くなる程度です」とのこと。「私たちとしては、やっていただければ……というのはあるのですが、それはこちら側の独りよがりでもありますし、お客様の意見が少しでも反映されたほうがいいのであれば、私たちのこだわりは脇においておいてもいいのかなと」というコメントには、ディースリー・パブリッシャーの姿勢が垣間見える。なにはともあれ、つぎに彼女たちに接するときには、ちょっと印象が変わっているかも。

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 冒頭でも触れたとおり、やっぱりVRは触ってなんぼ。「『しあわせ荘の管理人さん。』の体験版を配信する予定はないのですか?」と聞いてみたところ、「検討中です。できれば配信したいです」(岡島氏)とのことなので、もしかして触れられるチャンスがあるかも。

 なお、留意点がひとつ。本作はプレイステーション VR対応タイトルではあるが、プレイステーション VR専用というわけではない。1本のソフトでVRも楽しめるし、プレイステーション VRをお持ちでない方は、プレイステーション4でもふつうに楽しめるのだ。1本で遊べるという点も、ディースリー・パブリッシャーらしい親切設計と言えるだろう。

 というわけで、『しあわせ荘の管理人さん。』は、2017年冬発売を目指してただいま開発中。たまに間違われるそうだが、“2017年冬”とは、2017年12月ではなくて、“今冬”のほうなので、そう遠くないうちに、彼女たちにお目にかかれるのではないかと思われます!