ジバニャン、レイトン、円堂守! 人気キャラクターを生む方法とは? キャラクターデザイナー長野拓造氏の初講演を完全リポート【CEDEC+KYUSHU 2016】_01

 2016年10月22日に九州大学大橋キャンパスにて開催された“CEDEC+KYUSYU”。その講演のひとつとして開催されたのが、レベルファイブの人気キャラクターづくりの秘話。登壇するのは日野社長と、レベルファイブの人気キャラクターを生んだキャラクターデザイナーの長野拓造氏。個性を放つ魅力的なキャラクターの登場は、ヒット作には欠かせない重要な要素のひとつだ。

 ゲームやアニメなどで見た人を喜ばせ、思わず口元をほころばせてしまうようなチャーミングなキャラクターたちは、いったいどのようにして生まれてきたのか。その秘密は、日野社長と長野氏による生き生きとしたセッションから作られていたことが、今回の講演で明らかにされた。

 さらに、講演中には実際に日野社長からのお題をもとに限られた時間でイチからキャラクターを描くライブドローイングも披露! 人気キャラクターの制作過程をリアルに見られる貴重な講演、その一部始終も併せて、リポート形式でお届けしよう。

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▲写真左が、日野晃博(ひの あきひろ)氏。レベルファイブ代表取締役社長/CEO。クロスメディアプロジェクトで国民的大ヒットを連発。現在新たなクロスメディアプロジェクトとして、『スナックワールド』や『メガトン級ムサシ』を制作中。
写真右が、長野拓造(ながの たくぞう)氏。レベルファイブのキャラクターデザイナー。『レイトン教授』や『イナズマイレブン』、『妖怪ウォッチ』など数々のヒット作に関わり、人気キャラクターを生み出してきた。現在も最新作『メガトン級ムサシ』や『スナックワールド』などのメインキャラクターデザインを担当。

長野氏、初めての講演。入社2ヵ月でメインデザイナーに!?

 登壇するやいなや、「初めての講演で緊張しています」と語った長野氏。日野氏も「この講演はデザインに関する内容なので、ふだんのように、ゆるくやらせていただければ」と、お堅い雰囲気ではなく、リラックスムードで講演がスタート。レベルファイブの人気キャラクターたちは、こうした雰囲気の中、ふたりでやりとりしながら生み出されてきたのだという。

 講演は、長野氏の最初の仕事を振り返るところから始まった。なんと、長野氏は入社後たった2ヵ月ですでに『レイトン教授と不思議な町』のキャラクターデザインの仕事を担当していたのだという。それほど、長野氏の描くキャラクターにはインパクトがあったと語る日野氏。当時の開発スタッフたちも新しいゲームを作るうえで、デザインを見て全員が「これでいこう」と、ゲームのイメージが浮かんだほどだったらしい。

 確かに、『レイトン教授』シリーズの登場人物たちは、主人公のエルシャール・レイトン教授を始め、誰もが強烈な個性を放つキャラクターばかり。長野氏は、「まさかいきなりキャラクターデザイナーに決まるとは思わなかった」、「入社して2ヵ月だったので、手伝いをするのかと思っていた」と当時の大抜擢を振り返る。

ちなみに、2007年に第1作が発売された『レイトン教授』シリーズだが、なんと続編が同じ年に発売されている。本作は当初から3部作として企画されていた作品だったので、日野氏は「3作目も同年に発売するつもりだった」と驚愕のプランを明かしたが、長野氏からは即座に「ムリですよね」とのツッコミが。

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 そんな『レイトン教授』シリーズは、瞬く間にヒットを飛ばし、レイトン教授や相棒の少年ルークを初めとする登場人物も、人気キャラクターになっていくこととなる。その後、長野氏は『イナズマイレブン』シリーズのキャラクターデザイナーを担当。サッカーRPGという『レイトン教授』とはまったく異なる新作でも、さらに個性的な人気キャラクターを生み出していくこととなる。

 だが日野氏によると、『イナズマ』シリーズのキャラクターデザインについては、『レイトン教授』シリーズのときに一気に抜擢してしまったこともあるので、今度は社内で正式なデザインコンペを開催したと明かした。だが、結果はやはり個性の溢れるキャラクターを描いた長野氏が勝ち残ったのだという。

レベルファイブ式デザイン術 設定はゆるく決めてデザイナーの創造性とセッションする

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 入社まもなく、人気作品のキャラクターを次々に生み出す長野氏だが、じつは日野氏と長野氏がまるでバンドでセッションをするかのような、わいわいと楽しげな、生のやりとりで生み出されてきたことが明かされた。

 まずは日野氏から、短い設定とともにキャラクターイラストが発注される。この設定を元に長野氏がイラストを描き、日野氏に提出。

 レベルファイブのキャラクター作りでは、この最初に上がってくるイラストが重要になる。日野氏はこの最初のイラストを見ることで刺激を受けて、さらにキャラクターが生き生きと想像できるようになるのだという。

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▲日野氏から、長野氏に設定とともに発注。それを受けた長野氏が、デザインを制作し、日野氏に返す。こうした流れでキャラクターが生み出されていく。
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▲日野氏がキャラクターデザインを発注するうえで行う設定には、このスライドにあるように3つのポイントがあるという。

 この最初の設定は、完全にできあがったものではないのがポイント。ゆるい設定で想像の余地があるものだからこそ、長野氏の手によりビジュアルイメージとなり、それをもとにさらにキャラクターとして豊かに性格などが膨らんでいく。

 もちろん、最初に日野氏に提出したさいに、リテイクが何度も挟まれることもしばしばだという。また、たとえば長野氏から上がってきたデザイン画が悪そうなイメージに仕上がっていたのを見て、「こんな悪そうなんだから、悪いセリフを吐きそうだなあ」などと、セリフや性格にも影響を与えるというのだ。こうしたやりとりを何度も交わすことで、その中から次第にキャラクターが立ち上がってくるのだ。こうしてしっかりと立ったキャラクターが生まれると、自然と物語が動いていくのだと日野氏は語る。キャラクター同士が自然と仲良くなったり、いざこざをはじめたりしていくような現象が起きる。生きたキャラクター構築をしていれば、物語が自然と形作られていく。

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 日野氏から「設定を渡されたときに、どんなことを考えてキャラクターを描くの?」という質問がなされたが、それに対して長野氏は「アイデアを絵から提案して、喜んでもらいたいと思いながら描く」と語る。「どうですか日野さん?」と絵で提案をするイメージらしい。

 ものすごくこだわっているキャラクターのデザイン発注では、詳細な設定をすることもあるそうだが、「とりあえずかっこいいやつで」などと、軽いオーダーをする場合もあると日野氏。でも、そうした軽く発注したキャラクターが、意外と人気になったりする場合も多々あるのだとか。