異色のソフトの開発エピソードを聞く

『EYERESH for ニンテンドー3DS』の開発事情に迫る! 驚異の“飛び出し型立体視”の実現に、かじゅにゃんも思わずわが目を疑った!?_01

 2016年8月31日よりニンテンドーeショップにてダウンロード販売予定のニンテンドー3DS用ソフト『EYERESH for ニンテンドー3DS』(※定価1500円[税込]。発売記念価格800円[税込])。 “ニンテンドー3DS最大級の飛び出し感”を実現した立体映像によるアイストレッチ効果と、“見るチカラ”を鍛えるトレーニング効果を実装した、異色のソフトの開発エピソードを、開発元のMCF、販売元のリメディアの主要スタッフに伺ってきた。

【インタビュー参加者】

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まかべひろし氏
ゲームソフト開発会社MCFの代表兼プログラマーで、『EYERESH for ニンテンドー3DS』の企画・プロデューサー。MCFでは、おもに大手ゲーム会社のモバイルゲームの受託開発や、リメディアとの共同で、立体映像関連のコンテンツ・システム開発を手掛けている。

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菅雄一郎氏
MCF開発部のプランナー。『EYERESH for ニンテンドー3DS』ではプランナーを担当する。

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田原博史氏
おもに目の健康増進、動体視力に関する研究・開発を行うIT企業、リメディアの代表。1990年代より3D映像関連の事業に携わり、2012年には立体映像技術の特許を取得。『EYERESH for ニンテンドー3DS』の企画段階で携わる。

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雨情華月さん
今回、『EYERESH for ニンテンドー3DS』の立体映像を体験してもらうために取材に同行してもらった。愛称・かじゅにゃんニコニコ動画内のファミ通チャンネルで、『カルドセプト リボルト』の番組や『ハースストーン』のゲーム実況などに出演しているなど、自他ともに認めるゲーム大好きアイドルだ。2016年9月から、新コンセプトのセルフプロデュース・アイドルユニットを始動するとのこと。

ニンテンドー3DS立体視の“真の能力”が発揮される時がきた!

──本作はニンテンドー3DSの立体視、しかも奥行き方向ではなく画面から飛び出すほうの立体視を重視したソフトとのことで話題になっています。まずは、そういったテーマのタイトルを手がけることになった経緯からお伺いします。

田原 もともと静止画の立体映像の仕事をしていたのですが、1990年代後半に、マジシャンの引田天功さんの3Dビデオの特殊効果を任されたことで、本格的に立体視技術を研究開発することになりました。いまでこそ3Dテレビはふつうにありますが、私がやっていた当時は、ブラウン管のテレビに専用のボックスをはめる……という製品を自社制作して販売していました。

──ニンテンドー3DSが登場する、はるか以前のお話ですね。

まかべ そもそもコンシューマーで立体視ができたのは、ファミコンで『とびだせ大作戦』(1987年・スクウェア※当時)から始まり、バーチャルボーイ(1995年・任天堂)、それ以降、ハード単体ではニンテンドー3DSが出るまで(2011年)は、ずっとなかったんですよ。

[2016年8月30日20時10分修正]事実に即して表現を一部変更させていただきました。

田原 その間私たちは、プロスポーツ選手向けの動体視力トレーニングシステムや、自動車ドライバーの視機能をチェックするシステムを開発・販売などを行っていました。

──ゲーム以外の分野で、本作のコンセプトにつながる事業に取り組まれていたんですね。ではニンテンドー3DSが出た時は、「ついに来たぞ!」という感じで。

まかべ 「やっとか……」でしたね(笑)。

──ニンテンドー3DSソフトの立体視というと、手前に飛び出すものよりは、奥行きの方向で生かされているものが多い印象があります。そのあたりに不安要素は、特になく?

まかべ じつは『EYERESH』の企画が動く2年前に、ニンテンドー3DS用ソフトの開発キットを触る機会がありまして、実際に私たちの技術が応用できるのか、3Dムービーの飛び出し具合を検証しました。その結果、問題なくできるとわかった上で、開発を始めました。用いている立体視の原理は他社さんと同じですが、映像が飛び出して見えるようにするための作法やノウハウは、今回、ニンテンドー3DSソフトでは初めて使われているものだと思います。

──飛び出す映像はリメディアさん、MCFさんにとって専門分野だったとはいえ、他社が飛び出す立体視にたいして積極的ではなかったのには、何か技術的な問題があったのでしょうか?

まかべ 技術面というよりは、ガイドラインの問題ですね。ニンテンドー3DS本体発売時は、立体視を強く推すような規定があったようなのですが、現在は立体視を使わないゲームがあることからもわかるように、立体視まわりの規制が、ずいぶん緩くなったようなのです。

──言葉は悪いですが、「(立体視を)使いたいデベロッパーさんはどうぞご自由に」となったということでしょうか?

まかべ 結果的には、そうですね。任天堂さんに、本作の最終チェックをしていただいた時に、「視差つけ過ぎですけど、大丈夫ですか?」という確認がきました(笑)。たぶん、今回の飛び出し感は本当に最大級なんだと思います。

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──任天堂も思わずビックリの飛び出しぶりだったと。

まかべ これまでのニンテンドー3DSソフトの立体視は、3Dコンソーシアム(※3D立体表示機器の開発・普及と3Dコンテンツの拡大促進を目的とした、複数企業で構成された団体)が定める安全ガイドラインにしたがって作られていたので、ここまで飛び出すものはなかったんです。

田原 スペックとしては可能だった表現をあえてしなかった、ということです。そもそものガイドラインの線引きが、“テレビ画面の高さの3倍に対し1度の視差を限界値”という、大型の据え置きテレビに対する視聴距離を基準にしたものですから、それを画面が小さいニンテンドー3DSにそのまま適応していたことがどうだったのか、という面はあります。

まかべ これをきっかけに、ニンテンドー3DSゲームの、飛び出す映像のインパクトを打ち出せたと思います。


かじゅにゃんのEYERESH体験・アイケアムービー編 

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 全9種類のアイケアムービーの中でもっとも飛び出し感をダイレクトに味わえるという、球体が画面の奥と手前を円運動状に行き来するムービーを見てもらうことに。雨情さんにはあらかじめ「そんなに驚くほどでもなかったら、無理にリアクションしなくていいですよ」と断っておいたのだが(MCFさん、リメディアさん、すみません!)、ムービーが始まって数秒もしないうちに瞳がまん丸になっていき、「うはは、すごいですねこれ!!」と声を上げた。さらに、「奥行きだけでもすごいのに、こっちに来た時の飛び出しが……これ、3Dグラスとかかけずに見えるんですか?」と、いままさに自身が裸眼で見ていることが信じられないといった様子だった。右写真は、球体が一番手前に来た場所に手を添えてくださいとお願いした時のもの。これだけで、いかにとんでもなく飛び出してるかが、おわかりいただけるだろう。一連の様子を見守っていたまかべ氏は「これまでにニンテンドー3DSの立体視を体験したことがある人ほどびっくりするはずです」と、雨情さんのリアクションに満足げだった。

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絶対に『脳トレ』になってはいけないゲーム開発

──本作は、目のストレッチと、目の能力のトレーニングを目的としたソフトです。このような形態にしようとお考えになったのはいつ頃でしょうか。

まかべ 企画自体ができたのは、2013年のいまくらいの時期ですね。当時スマートフォン用にリリースしていた『EYERESH』は3Dのアイケア映像を再生するだけのものでしたが、ゲーム機で出すなら遊べないとおもしろくないよね、ということで、「目にはこういう能力があって、こういういう風に動いているんだよ」ということをゲーム形式で啓蒙しようと思いました。

──2007年にリリースされたニンテンドーDS用ソフト『見る力を実践で鍛える DS眼力トレーニング』(開発・バンダイナムコエンターテインメント、販売・任天堂)が、コンセプトの近いタイトルと思われます。ある程度、そちらを意識しての企画だったのでしょうか。

まかべ そうですね。それがあったので、当然、3D版が出てくると思ったんです。でも、なかなか出てくる気配がなくて。同作の監修をされた石垣教授(※愛知工業大学・経営学科スポーツマネジメント専攻教授の石垣尚男氏)とお話しする機会があった時に、「ニンテンドー3DS版、どうですかね?」と訊いてみたところ、「あったらいいですね」と言われたので、あ、これは作るしかないなと思いました(笑)。

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──『EYERESH for ニンテンドー3DS』も、石垣教授が監修されています。石垣教授はどの段階で、企画に参加したのでしょうか。

まかべ 一番最初からです。僕らゲーム会社が「目にいいソフトですよ」といってリリースしても、誰も信じてくれないと思っていました。企画自体が先生ありきというか、石垣教授の監修を得られなかったら、作らなかったんじゃないかと思います、

田原 そもそも僕と石垣教授は、プロスポーツ選手向けの動体視力トレーニングシステムの開発以来、15年ほどのお付き合いなんです。

──なるほど。ある意味、勝手知ったる仲あってこその企画だったというわけですね。ではソフト開発は、比較的スムーズに行われたと。

まかべ ところがそうでもなかったんです。

 私の役割は、まかべさんと田原さんのコンセプトをパッケージ化することでした。ゲームではないソフトを開発したのは今回が初めてだったのですが、トレーニング用ミニゲームのデモンストレーションを先生にプレイしてもらったところ、「これでは効果がない」と怒られました。

──効果がない、というのは?

 ゲームとしてのおもしろさを追求すると、脳トレになっちゃうんです。たとえば瞬間視トレーニングの場合、一瞬に見るものの情報量が多過ぎると、そこで問われるのは、“瞬間の像をとらえる目の能力”ではなく、“多くの情報を記憶する脳のはたらき”になってしまうんです。ゲームとして難しくするのは簡単なんですけど、それによって本来の目的が果たせなかったら、意味がありません。

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▲“動体視力”、“眼球運動”、“周辺視野”、“瞬間視”、“眼と手の協応動作”の5種類の目の能力を鍛えるミニゲームが収録された、トレーニングモード。ニンテンドー3DSの上下画面を見ながらプレイする作りのため、映像の飛び出し感はアイケア映像にくらべて控えめだが、3D映像の鮮やかさ・見やすさに関してはもうしぶんない。

まかべ 私たちは長年先生とやってきたこともあって、「このくらいで大丈夫だろう」と思って作っていたのですが、去年の頭くらいに、「これでは監修できない」とまで言われてしまいました。

 それからは、「これは各能力のトレーニング効果があるものか?」ということを試行錯誤しながら、ひとつひとつ組み上げていきました。難易度は、初めてプレイする人、ゲームになじみがない家族がやっても投げ出さないものを用意しています。プロスポーツ選手などを対象にした、本気で能力を向上させるためのレーニングシステムでは、難易度をどんどん上げる作りにするものですが、それはできるだけ抑えて、最後の最後だけ少し難しくなるように調整しています。

──監修が単なる箔付けではない……ということがよくわかるエピソードですね。

まかべ その甲斐あって、「先生のオーケーをもらっているんだから自信をもって出せる」という安心感があります。

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▲“石垣教授の「見るチカラ」講座”では、石垣教授が本作のために書き下ろした、目に関するおもしろいはなしのコラム70編を読める。「コラムひとつの分量は、3~4ページ程度。題材も日常の身近なことに関連するものなので、ふつうの方も読みやすいと思います」(まかべ氏)

かじゅにゃんのEYERESH体験・トレーニング編

 全12種類のトレーニングの中から“眼と手の協応動作”をテーマにしたミニゲームに挑戦する雨情さん。位置や奥行きの段階が、完全ランダムではなく、眼球運動を促進するように配置された数字を順番にタッチしていく……というもので、ときおり声を上げながらも、ゲーマーならではの手さばきを披露した。その速さは、開発スタッフも思わず声を上げるほどだった。「どのくらいのスコアーを出すと平均的、といった基準はあるんですか?」とたずねる雨情さんに対し、「視力と違って、目の各能力を測る国民的なデータは、ほとんどないんです」と、まかべ氏。ただ、トレーニングを続けることで、対応した目の能力が向上することは間違いないとのことだった。

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“ゲームをプレイして目をいたわる”というパラダイム・シフト

──収録されているアイケア映像、トレーニングはそれぞれ何種類ずつでしょうか?

 アイケア映像は全9種類で、最初に見られるのは3つ、トレーニングのミニゲームは、最初に選べるのは7つで、最終的に12種類となります。毎日プレイしていただくと、解禁要素としてひとつひとつ増えていきます。こちらの狙いとしては、アイケアを歯磨きのような習慣として、夕方や夜に見てもらうことがテーマです。

──新コンテンツを解禁するための、スコアのノルマはあるのでしょうか?

 スコアーはどんなに低くても大丈夫です。おすすめは、ミニゲーム2種類とアイケア映像1種類がセットになった“ツアーモード”。過去のプレイ記録から自動的にメニューを作成してくれます。1セット10分程度のプレイを継続していただくことで、バランスよく利用できます。

まかべ どのトレーニングをやればいいかということは、なかなか自分で選べないと思うんです。極端な話、ゲームを始めたらツアーだけやってもらえればいいというイメージです。毎日、今日はどれにしよう……と悩むと、やりたくなくなるじゃないですか(笑)。

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──それにしても、これまでガイドラインで制限されていた立体映像が、目によいものとして利用されるというのは、不思議なものですね。

まかべ 目に悪い、見ていてつらくなる立体の出しかたも、当然あります。このソフトに関しては、リメディアさんが持つ立体映像の生成技術の特許を使っているので、目に危険がない形で、ストレッチのための特殊な負荷がかかるようになっています。

──特殊な負荷、ですか。

まかべ ふだんからハードにパソコン使っている人はとくにこり固まりやすい、目のピントを合わせる筋肉を、立体視の手前と奥の適切な動きでほぐす……というものです。

──遠くを見て近くを見ての繰り返しということですね。FPSなどの3Dゲームをやっていると、そのあたり、できているような気になってしまうのですが、決してそうではないと。

まかべ それは目ではなく、脳の方の処理ですね。

田原 むしろ現実世界との不一致が、いわゆる“3D酔い”の原因になってしまうんです。

──なるほど。

まかべ 薬事法の関係で“目がよくなる”とは言えませんが、少なくともこのソフトをやることで、目が悪くなることはありません。本作が目の疲労回復にどのような影響を及ぼしているかの検証データはサイトで公開しているので、あとは皆さんで判断していただければと思います。

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▲石垣教授が実施した、アイケア映像の効果検証リポート。2時間のPC作業後にアイケア映像を観た被験者グループと見ていない被験者グループの、ピントフリーズ現象からの回復速度の違いが、数値として示されている。このリポートは、『EYERESH for ニンテンドー3DS』の公式サイトで公開されている。

──リちなみに、メディアさんで取得されている特許(※特許4966941号「3次元映像データ生成方法、3次元映像データ生成システム、及び3次元映像データ生成プログラム」)は、他のメーカーも利用できるのでしょうか?

田原 じつはすでに、各方面で使われています。その権利を主張してどうこうとなると、あらゆる業界が止まるくらいの影響が出てしまうので(笑)、世の中が楽しくなるために皆さんに使っていただければと思っています。ニンテンドー3DSに関しては、独自のSDK(ソフト開発キット)用に開発した自社システムがあります。今後は、興味のあるメーカーさんと立体視に特化したソフトを共同開発できればと考えています。

まかべ 3Dを効果的に見せるには、いろいろなノウハウがあります。カメラアングルを自由に動かせるタイプのゲームは狙い通りの立体感を出せない……など、ゲームジャンルによっても向き不向きがあります。

あらゆる垣根を飛び出していく立体映像事業の未来

──任天堂のガイドライン緩和などもあって、今後は立体視の需要もますます高まっていく……とお考えでしょうか?

まかべ 今後ニンテンドー3DSでソフトを開発する際は、立体視は自分たちが得意なところでもあるので、かならず使っていきたいと思っています。コンシューマゲームとはまた違う分野にはなりますが、現在はこんなこともしていまして……(おもむろにヘッドセットのギアを装着)。

──それはいったい……?

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田原 私たちは現在、日本国内では現在未発売の立体視対応Androidタブレットを用いた、高齢者の認知症予防システムを開発しています。大手介護事業者と提携して、自治体に予算をいただいてトライアルを実施しているのですが、すでに介護現場で、認知症の早期発見に役立っています。

まかべ このヘッドセットは、アルファ波やベータ波といった脳波状況を測定するもので、アメリカではすでに、ゲームのデバイスとして使われています。このシステムは、3D映像の脳トレをやっていただく状況の中で、脳がどのように動いてるかを解析し、記録していくというものです。

──認知症の方の場合、特殊な脳波パターンが計測される、ということでしょうか?

田原 というよりは、過去のプレイ時の平均的な測定値からどれだけ逸脱しているか、ということですね。

まかべ それに、このゲームを集中してやっている時にはこの脳波が活性化するはず……といった一般的な傾向を掛け合わせて、「本来動くべき脳波が動いていない原因は何か?」という角度からの検証も行います。

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▲開発中の高齢者向け認知症予防システムに収録されている、脳トレゲームのひとつのプレイ画面。画面左端のグラフには、おでこと耳たぶの裏側にセットしたセンサーから収集した、8種類の脳波の状態がリアルタイムで表示されている。

──このシステムに関しては、立体視は副次的な役割のようですね。

まかべ 目がメインではないんですけど、立体視にすることで、脳トレの集中度が格段に向上するんです。

田原 電車内でスマホを熱心に操作している人を観察すると、どちらかの目だけ動いている方をよく見かけます。目が疲れるから、利き目ではない方の働きを無意識のうちに遮断してしまっているんです。その状態が続くと内斜視(※片方の黒目の位置が内側に寄ること)の原因になるだけでなく、脳の機能も制限することになります。このシステムで立体視を使っているのには、目と脳をバランスよく使ってもらうという意味もあるんです。

──このシステムの正式リリースは、立体視対応タブレットが日本国内で普及してから……ということなのでしょうか?

田原 アメリカの企業と組んで、オリジナルタブレットを自社開発して、来年の春くらいに正式リリースする予定です。''

──そこまで話が進んでいたんですか……。もはや、ゲームメディアの取材の範疇を超えた内容に、驚いています。

まかべ このシステムも、ゲーム開発畑の技術を大いに使っています。ゲーム開発技術による社会貢献の一例として捉えていただければと(笑)。

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