名越総合監督が語る『龍が如く6 命の詩。』

 2016年7月26日、“桐生一馬伝説、最終章”という衝撃のメッセージとともに、新情報が公開されたPS4ソフト『龍が如く6 命の詩。』(2016年12月8日発売予定)。シリーズの区切りとなるという本作への想いについて、シリーズ総合監督を務める名越稔洋氏に話を聞いた。

【ロングインタビュー】いま聞けることをすべて聞いた! 名越総合監督が語る『龍が如く6 命の詩。』_01
セガゲームス
『龍が如く』シリーズ総合監督
名越稔洋 氏
(文中は名越)

※本インタビューは、週刊ファミ通2016年8月11日号(2016年7月28日発売)の『龍が如く6 命の詩。』記事内に掲載した内容に、加筆・修正を施した完全版です。

――本作はどのような挑戦をされているタイトルなのか、というところからお聞かせいただけますか?

名越 対応ハードをプレイステーション4のみに絞るという決断を、ファンの皆さんによい決断だったといってもらうためには、やはり中身が伴っていないといけない。ですので、その決断に対して、説得力のあるクオリティを示すということが、まずひとつの挑戦ですね。正直、(プレイステーション3版を含む)マルチプラットフォームのほうが、ユーザー数を考えると、ビジネスの面でも安心感はあります。ただ、タイトルそのものの魅力を高める、ということにおいては、やっぱりプレイステーション4専用に特化したかった。ハード性能の向上は、ゲーム開発者にとって非常に魅力的な話です。『龍が如く』シリーズは過去作との比較がしやすいタイトルだと思いますが、プレイステーション4に特化した作品にすることで、日本のゲームの代表としてふさわしいクオリティを実現するんだ、という想いは、開発陣みんなが持っていました。

――プレイステーション4専用にするタイミングの決断は、難しいものだったと思いますが。

名越 『龍が如く6 命の詩。』(以下、『龍6』)の開発をスタートするよりも少し前になるのですが、プレイステーション4の性能に関する情報が我々の手に届き、新エンジンの制作に着手する時期がありました。これは、プレイステーション2からプレイステーション3に以降する時期にも感じたことですが、新ハードと旧ハードのマルチ展開では、やっぱりクオリティの面で諦めざるを得なくなることが多いんですよね。最新のハードで、最高のクオリティを目指すうえでは、どこかでマルチ展開をやめる必要が出てくる。

――『龍6』の開発前から、プレイステーション4専用になったときのためのエンジンを開発していたと。

名越 はい。現場は『龍が如く 極』を一生懸命作りつつ、プログラマーのメンバーの何人かは、プレイステーション4に絞ったときに最大限にパワーを発揮するエンジンを作っていました。そこに磨きをかける時間が生まれたので、とてもクオリティの高いものになりました。じつは、マルチ展開を止めることについては、その後もギリギリまで迷っていたのですが、新エンジンで実現された絵のクオリティを見たときに、プレイステーション4単独でいく決断をしました。

――体験版の段階でも「すごい!」と感じたのですが、名越さんとしては、「あれはまだテスト段階で、実際はさらにクオリティが上がる」とお話をされていましたよね。これは、お言葉の通りになりそうでしょうか。

名越 そうですね、映像のクオリティは体験版よりもずっと上がっています。9月の東京ゲームショウでは、プレイアブル出展の予定ですので、街に人が溢れて、何よりシームレスに遊べるおもしろさを実感していただければと思います。

――いまお話にも出ましたが、『龍6』は、フルシームレスでのゲーム進行がポイントになりそうですね。

名越 プレイステーション2で『龍が如く』を作り始めた瞬間から、ロードの長さは邪魔だなと思っていて。これまでは、ロードはしているんだけど、なるべくそれを短くする努力や、していないように見せる努力をしていたんです。今回は、いよいよロードの待ち時間がない、というところに限りなく近づけています。もちろん、裏でメモリーをうまく管理しつつの、涙ぐましい努力の積み重ねではあるんですが(笑)。その意味では、高いクオリティをキープしたままでストレスフリーのゲーム体験を提供することを、11年目にしてようやく達成できるんだなと。当初の想いを実現するまでに11年もかかりましたが、うれしいですね(笑)。

――7月26日の発表会は、どんな内容になるのでしょうか(※編集部注:本取材は発表会前に実施しました)。

名越 発表会用に、ぜひとも皆さんに見て頂きたい最新映像を作っています。『龍が如く』シリーズとは、桐生一馬がいて、遥という9歳の女の子がいて、その出会いからいろいろな事件が起き、人々の人生や運命が変わっていくという人間ドラマです。その中で、主人公も増えていき、舞台となる土地や街も広がっていったわけです。そうした流れを振り返りつつ、ある重要なメッセージを入れ込もうかと。端的に言いますと、「桐生一馬伝説はここでいったんの終わりを迎えます」というメッセージになります。

――えっ……(絶句)。……それは『龍が如く』シリーズのファンとしても驚きです。そうですか……ついに。これは、かなりの反響がありそうですね。

名越 『龍6』では、“桐生一馬伝説、最終章”ということが大きなテーマになります。今回プレイステーション4専用にする決断をした理由も、それが大きく影響しているんです。桐生一馬の物語に大きな区切りをつけるというところで、もっとも美麗なグラフィック、最高のクオリティで、その舞台を整えてあげたい、という気持ちがありました。

――桐生一馬伝説、最終章ですか……。それはファンには大きな衝撃となる発表ですね。それと、芸能人キャストの豪華さにも驚かされました。

名越 今回はキャスティングも、シリーズ史上もっとも味のある、豪華な顔ぶれになりました。俺が『龍が如く』シリーズを初めて、プロジェクトを続けてきた中で、「こんなことができたらな」とか、「こんな人にお願いできたらな」と考えてきた“こんな人”たちの中でも、もっとも交渉が困難な皆さんにお願いできました。それもすべては、先ほどお伝えしたメッセージのため。何が何でも死ぬ気で揃えるんだ、という決意のもとで、必死になって出演交渉をした結果です。

――出演者に関しては、映画作品でもこんなキャストはないという超豪華な顔ぶれになりました。

名越 そうですね、映画でもそうそう実現できないレベルのキャスティングになっていると思います。しかも、いままでで一番いいエンジンによって最高の仕上がりになっていると思います。

――役者の皆さんがご本人の顔で登場するというのも、『龍が如く』シリーズの魅力のひとつですよね。

名越 プレイステーション3になって初めて、リアルな顔を再現するというチャレンジをし始めて、年々作る側としてのスキルアップがありました。それがついにプレイステーション4で完成を迎える。というか、シーンによっては本当に実写と見間違う絵になりましたね。

――既出情報ですが、やっぱりビートたけしさんの出演は大きな話題ですよね。

名越 たけしさんとは、じつはもともと知り合いではあったんですよ。お酒をご一緒するような仲ではあった。ただ、「うちのゲームに出ませんか?」という仕事の交渉にはとても踏み切れず……。もちろんお願いしたい気持ちはすごくあったのですけど。そんなこと、簡単には叶うはずもなく、なんだか怒られそうな気もして(笑)。何年も言い出せなかったんですよね。

――ビートたけしさんへの出演交渉となると、想像もできないような緊張感ですよね。

名越 そうですね(笑)。ただ、お話した通り、『龍6』を作り始めて、今回は最高のエンジンを作ると。そして、ここで桐生一馬伝説に区切りをつけるんだと。その覚悟が決まった時点で、今回はすべてにおいてありえないことに挑戦して、これまで誰も成し遂げなかったようなことを実現してみたいという想いがあり、たけしさんにお願いしてみました。

――なるほど。

名越 ゲームにはいろいろなタイトルがありますが、それぞれのタイトルが進化する中で、たくさんのことを成し遂げてきていると思うんですよ。オンラインゲームだったらより多人数になって、スムーズに遊べて、ソーシャル要素が作り込まれていって。同じくグラフィックで魅せるゲームの場合は、それがどんどん良くなって、ドラマ感や没入感、ゲーム体験自体のリアリティを上げていったり。場合によっては、その人の感覚や人生に影響を及ぼすようなものが生まれることもあると思います。俺は、『龍が如く』にもそういう意味での成し遂げるべき役目があると思っていて。

――それは、どんなことでしょう。

名越 ゲームは、映画やほかのエンタテインメントに比べれば、まだまだ歴史の浅いジャンル。俺が『龍が如く』というゲームの役目だと思っているのは、エンタテインメントの中でのゲームの立ち位置の向上です。俺は映画が大好きですが、映画ってつねに、芸術的な側面を含めて、上のランクとして扱われ続けていますよね。でも、ゲームはそれに負けているわけでも、劣っているわけでもないんですよ。ゲームだからこそできることもあるんだっていうことを、伝えたいというか。今回のキャスティングもそのひとつの証明です。

――その気合いが十分に伝わるキャスティングですね。

名越 『龍が如く』は、いままでいろいろな方に出演いただいているので、ファンの方からは「つぎはこういう人が出るんじゃないの?」とか、「これぐらいやってくれるんじゃないの?」っていう予想があるわけです。それ自体はよいことです。期待値が高ければ、それに応えようという気持ちになりますからね。ただ、キャスティングのプレッシャーも同時にかかるわけで(笑)。だからこそ、そのプレッシャーを超えるような、ただ期待に応えるだけにとどまらず、「えっ、ここまでやるんだ!?」と言わせるようなものにしたかったんです。

――毎回、豪華なキャスティングには驚かされます。

名越 俺にとっての感動の原点は“驚き”なんです。なにかにビックリして興味を持ってもらって、そのつぎには「ちょっと触れてみよう」という気持ちになってもらいたい。そこで、遊んでみてまた驚いてもらうと。そういう流れが作れるといいと思っています。それにはまず、最初のビックリの仕掛けがとても大事。いつも思い切り高くハードルを設定するようにしています。それを実現するために、プロジェクト化したものが、『龍が如く』シリーズだったということですね。

――少し話を戻しますが、ビートたけしさんの起用は、まさに特大のビックリを我々に与えてくれたキャスティングでした。

名越 なんでそんな気持ちになったかといえば、くり返しになりますが、やはり、ひとつの節目をきちんと迎える舞台を作り上げる要素として、俺にはどうしても必要だったんですよ。もちろん、ビートたけしさんは、俺の夢でもあり、憧れの人です。しかも、お付き合いしていると、俺がメディアを通して知っている、北野武、ビートたけし以上の本当の魅力を知ることになるんです。そうなると、「この人のエネルギーをどうしても借りたい」という気持ちが、会うたびに強くなる。でも、実現したときは「ホントかよ」って思いましたけどね(笑)。「あんちゃん、あれ冗談だよ」って言われる気もして、何回も確認しました。「絶対ですね?」って(笑)。本人にお話しをさせていただいた翌日に事務所に連絡したら、すでに事務所にはたけしさんから連絡があったと。すぐに話を通しておいてくれていたんです。その心遣いは、すごくうれしかった。

――ほかの登場人物のキャスティングについては、今回希望していた方々が全員が実現したのでしょうか。

名越 じつを言うと、過去作ではお願いしたかったけども日程やさまざまな都合で実現しなかった方がいたんです。でも、今回は見事に全員実現しましたね。

――本作の舞台について、お話しいただけますか。

名越 今回の舞台は広島。広島の尾道という土地を選ばせていただきました。選んだ理由については、ゲームのストーリーに関わる部分なので、実際に遊んでみてから「なるほど」と思っていただければと思いますが、ひとつお話しするとすれば、今回は、また別の歓楽街をもう一度作るというのはやりたくないと思っていました。東京・神室町のほか、札幌、名古屋、大阪、福岡の都市を再現してきましたが、できれば、いままでの空気感とはまるで異なる場所にしたかった。『龍3』で沖縄の街を再現したのが、すごく新鮮だったんですよ。あのような新しい風をもう一度入れたかった。

――なるほど、大きく栄えた歓楽街ではなく、これまでの舞台とは雰囲気の異なる場所にしたかったと。

名越 そうですね。かといって、人間ドラマとして濃いものを作りたいし、日本という国の歴史の中で意味のある舞台にしたい。そういうことを念頭に全国津々浦々を考えてみて、広島の尾道がいいんじゃないかということになったんです。

――雰囲気の違う街を、いつも以上のクオリティで再現するというのは、技術面はもちろんですが、製作にかかる時間や手間も大きなものになったのでは。

名越 そうですね。尾道は、まさに昭和の香りのする街ですからね。戦前の匂いさえも少し漂う街である尾道と、現代の象徴である神室町を対比させて登場させるのはおもしろいと思って、コントラストのある舞台ふたつに絞って、それを精密に描くことにしました。今回は、街の中で入れる建物や部屋が増えて、そのぶん描かれるエリアも広がっているので、舞台となる街が増えてクオリティが下がるくらいなら、舞台をふたつに絞って濃く作り上げていくほうがいいだろうという判断です。

――尾道には神室町のようなギラギラとした賑わいはないですが、独特の空気感を持つ街ですよね。再現具合がとても楽しみです。

名越 空気感の再現はかなりできているんじゃないかと思います。『龍3』の沖縄の街はある種に賑やかだったんですけど、今回の尾道は、よい感じに寂れたところもあったりとか。同じ夜でも、華やかな夜と、少し寂しさのある空気感の夜ではまったく違うので。いまから考えると、とてもよい選択だったと思います。

――公開されているゲーム画面を見ると、地酒の看板が醸し出すローカル感がすごくいいですよね。大林宣彦監督の“尾道3部作”など、尾道は映画でも人気のある舞台ですよね。おもしろい舞台なのではないかと。

名越 そうですね。映画でなぜ尾道が好まれるかというと、まずは自然があること、それと意外と都会らしい雰囲気も持っているからだと思うんです。二面性を持っているといいますか。さすがに、新宿の隣に海や山はないけど、尾道にはごく自然に街の近くに海や山がある。そのうえで、さまざまな歴史的な背景を持った街でもあると。だから、尾道がすごく好まれるんだと思うんですよね。それは、採用してみて実際に思ったことでもあります。尾道を舞台にしたがる理由がわかるなと。セットで組もうと思っても、ここまで出来上がった街はない、というくらいの街ですね。

――なるほど。それと、正式タイトルも発表になりましたが、それについてはいかがでしょうか。

名越 『龍が如く6  命の詩。』に決めました。文末の句点は、物語にひとつの区切りをつけるというメッセージもあって、あえて付けています。

――あ、そういう意味が! 桐生一馬伝説の最終章というメッセージがあり、タイトルが『龍が如く6 命の詩。』となると、ファンとしてはいろいろと思うところがあると思うのですが、ズバリ、このあたりの意図を言える範囲でお答えいただけませんか。

名越 うーん……。あえて桐生の話は置いておいて、話せることを話しますか。今回は、いろいろな人間関係の中でも、血がつながっている関係や、つながっていない関係、いろいろあるんですが、人と人とのつながり、人間の絆が重要になっています。その絆が、いろいろな事件につながっていくんです。

――人間の絆……ですか。

名越 絆にこだわる理由は、人によって違います。先ほど言ったように、血がつながっているからだという人もいるし。血のつながりではなくて、そういうものを超えた、義理などの理由があるという人もいる。でも、そこにこだわる理由が千差万別なのはなぜなのか。人間だから当たり前だと言ってしまったら終わりですが、そうではなくて。俺は、命どうしの紡ぎかたというものに、人によって感覚の違いや温度差があるからだと思うんですよね。それを信じて、生きがいみたいなものを見出していく。そこには、喜びもあるんだけど、場合によって誤解もあって、挫折も生まれてしまう。それが人生だと思うんですよ。そういう、人と人とのつながりで生まれていく人間ドラマになります。

――『龍が如く』シリーズはこれまでも人間ドラマを描くことに注力されてきましたが、『龍6』ではさらにその魅力が高まっていそうですね。

名越 そうですね、これまでの『龍が如く』でも俺たちは様々な人間ドラマを描いてきましたが、単純に人の欲望がどうこうという話ではなくて。もちろん欲にかられた人間たちも出てくるんだけど、じつはそこにフォーカスを当てていないんです。シナリオに関わることなので詳しくは言えませんが、先ほどお話した、いろいろな絆を巡る戦いの中で、桐生や遥はどんな選択をするのか。『命の詩。』というタイトルの意味を考えつつ、ソフトの発売を楽しみにしていただければと。

――ありがとうございます。少なくとも、タイトルが物語と深く関わっていることは間違いなさそうですね。

名越 現状だと、うまく言えません(笑)。ともあれ、本編の物語をしっかり表した言葉なので、実際にプレイしていただいて、エンディングを見ていただければと。プレイし終わって、「なんだか寂しい」と思う人、「ずごく良かった」と思う人、反応は様々かもしれません。でも皆さんに感動してもらい、納得していただける内容だと信じています。

――それにしても、桐生一馬伝説の最終章というテーマは、かなり踏み込みましたね。

名越 俺はドラマ性の高いコンテンツには、絶対に終わりがあるべきだというポリシーを持っています。ドラマに終わりがないって、緊張感がないですよね。だから、『龍が如く』にも何らかの形の終わりがいつか必要になる。ずっとシリーズが続いているから、よく「『男はつらいよ』みたいですね」なんて言われるんですが、寅さんの映画は、それが何月何日の話なのかは明示していないわけで、1作目の翌日が2作目であってもおかしくはないんですよ。まあ、それが寅さんの良さでもあるのですが(笑)。でも、『龍が如く』シリーズは現実世界と同じで、リアルタイムで時間が流れていて、桐生も確実に歳を重ねています。

――たしかに、そうですね。シリーズを通して時間は流れ続けています。

名越 たとえばの話ですが、50年後、『龍が如く』のナンバリング作品は確実にないと言い切れます。セガが残っていて、家庭用ゲームのプラットフォームが残っていても絶対に存在しない。なぜなら、登場人物たちの年齢を考えると、無理だから。20年後も怪しいですよね。プレイヤーキャラが還暦を越えていて、遥にしたって、なかなかの熟女ですよ(笑)。もともと、どこかで何らかの形で、区切りをつけていく運命にあった。ただ、だからこそ、人間の人生をリアルに見届けるような面白さが生まれたのだと思います。桐生一馬を演じている黒田崇矢という声優も、毎年、歳を取るんですよね。初期のころのボイスとは、もちろんプロなので似てはいますが、やはり違う。でもそれは、『龍が如く』にとってはとてもよいことなんですよ、人もキャラも時間を積み重ねることで味が出てくるわけですから。

――タイトルが続いてきた、11年間の時間もシリーズの魅力になっているんですね。

名越 だから、桐生もいい年になり、遥も成人した中で、シリーズをどうしていくんだと。そういう意味でのリアルな悩みも、背負い続けてきたタイトルなんです。でも、シリーズを続けたいがために、急に若返らせたり、年齢を止めたりするのは、作り手側のエゴだと思うんです。それでは、桐生一馬伝説の最終章を迎えた『龍が如く』を、その後どうするのという話ですが。俺も横山(本作プロデューサー・横山昌義氏)も、ともかく、今は本作を作り切らせていただいて、そこからつぎを考えさせてもらいたいと思っています。桐生一馬伝説の終わりを先延ばしにするのではなく、最高の舞台で一度区切らせてもらったうえで、落ち着いて考えさせてもらいたい。もちろん、『龍が如く』が大好きで、付いてきてくれたファンの気持ちを一切無視することはしたくないので、それらの想いを受け止めたうえで、次にあるべき姿をしっかり考えます。そこだけは信じて欲しい。その代わりといってはなんですが、今回は本当に、いろいろな意味ですべてを出し切っているので、内容のおもしろさには自信があります。全力を出し切るのはいつものことですが、今回はちょっと気合いが違う。桐生一馬伝説の最終章にふさわしいクオリティのゲームになっているとお約束します。

――『龍が如く』シリーズのファンからは、「桐生が死んでしまうのですか?」ですとか、あるいは「『龍が如く』シリーズが終わってしまうのですか?」という疑問が出ると思うのですが、それについては、いまのお言葉が回答ということでよいでしょうか。

名越 そうですね。

――なるほど、よくわかりました。それにしても、12月8日の発売日が本当に楽しみです。

名越 初作の発売が12月8日ですから、それと同じ日に、ひとつの節目を迎えられるというのも、いいことかなと思っています。たくさんの方にソフトを買ってもらえれば、また新たな未来も描きやすいですから。

――ソフトが売れなければ、当然つぎはできないというお話は、いつもおっしゃられていますよね。

名越 そうですね(笑)。とはいえ『龍が如く』に対して1回カラにした自分たちの気持ちを、再び奮起させてくれる日がいつ来るかな……、という期待も自分にはあります。でも、桐生一馬伝説の最終章と銘打つことに、嘘はない。それがいま現在の偽りなき本心。いつもなら、たとえば『龍6』を作っているいまくらいの時期(編集部注:2016年7月)には、「つぎの『龍7』はどうしようか」みたいな構想の話を、スタッフ間で少しくらいはしていたりすることもあるんです。でも、今回はそういう話は、まったくしていません。

――本当に、区切りをつけるタイトルなんですね。

名越 終わりのないマラソンを続けてきた感覚の中で、ひとつのゴールテープを切る覚悟で、スタッフ全員が鋭意制作に打ち込んでいます。『龍6』が無事に発売された暁には、ファンの皆さんにはまずはゲームをたっぷり遊んでもらってほしいのですが、そのつぎでよいので、いままで11年間マラソンを続けてきて、完走しきった開発スタッフたちを誉めてあげてほしいな、という気持ちが強いですね。迷いなく11作を作ってきたわけですから。これは、人生の中でもなかなかできることじゃない。

――確かにそうですね……。スタッフの皆さんの想いのこもった作品を、大いに期待しています。

名越 東京ゲームショウがつぎの山になりますが、7月26日の発表会を皮切りに、どんどん新しい情報を出していきます。ビックリさせる情報がまだありますので、続報をお待ちください。

PS4専用ソフト『龍が如く6 命の詩。』ティザーPV