“ホラーを突き詰めたらどうなるのか?”ということへのチャレンジ

 2015年6月14日~16日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開催されている世界最大のゲーム見本市“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2016”にて発表された、カプコンのサバイバルホラー最新作『バイオハザード7 レジデント イービル』。本作のプロデューサー・川田将央氏とディレクター・中西晃史氏へのインタビューをお届けする。

『バイオハザード7』開発者インタビュー! 本作のテーマは“ホラーの追求”!【E3 2016】_01
▲『バイオハザード7』プロデューサー・川田将央氏(写真左・文中は川田)と、ディレクター・中西晃史氏(写真右・文中は中西)。
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――『バイオハザード6』以来、4年ぶりのナンバリングとなりますが、いつごろから開発がスタートしたのでしょうか?

中西 本格的に動き始めたのは2014年の2月くらいですから、2年以上前になります。

川田 企画は、私たちが所属する“第一開発部”の長である竹内(竹内潤氏。『バイオハザード』シリーズの開発には1作目から関わり、『バイオハザード5』ではプロデューサーを務めた)なんですよ。

――お聞きしたいことは山ほどあるのですが、いつごろの時代設定なのでしょうか?

川田 いまはまだ具体的には説明しませんが、『バイオハザード6』よりも後の設定です。今回は、“徹底的にホラーにしよう”ということをコンセプトにしていますので、主人公は一般的な弱さを持つ人間として、この先に何が起こるのか予想つかない作りになっています。ホラーを突き詰めるには、必然的にこういう面を徹底していかないといけないのですが、このようなインタビューのときに話せなくなってしまうな、と気づきました(笑)。

――(笑)。発表の直後に体験版『バイオハザード7 ティザー ~ビギニングアワー~』が全世界でプレイできることには驚かされました。この狙いをお聞かせください。

中西 発表と同時に「この後、すぐ体験できます!」というのをやってみたかったんです(笑)。最初に言っておきますが、この体験版は本編の一部ではなく、体験版のために個別で作っているんですよ。

川田 本編には出てこないギミックもありますしね。ただ、本編を作りつつも体験版も同時進行で制作するという、新たな苦労が生まれましたが(笑)。ちなみに、体験版の主人公にはクリスやレオンのようなキャラクター設定もありません。

――体験版を繰り返しプレイしているユーザーのあいだでは、怖さだけでなく、探索についての話題も尽きないようですが……。

中西 「あのアイテムは何に使うのだろう?」とかですね。話題作り的な要素はいろいろ入れています。

川田 ゲームをプレイしている本人はなかなか気づかない、というギミックもありますね。横でプレイを観ている方が「あれ? いまの何?」と思ったり。ただ、あくまでこの体験版はティザーで、『バイオ7』の雰囲気や触り心地を体験していただくためのものなので、そこを楽しんでいただければと思います。

中西 E3 2016の会場ではPlayStation VRを使っての体験も可能なのですが、VRでプレイしたときの感触を確かめることに絞った内容でもあるんです。また、この体験版だけでは全体的な世界設定やストーリーはわからないですが、これまで続いてきた『バイオハザード』シリーズをなかったことにしているわけではないので、従来のシリーズファンの皆様もご安心ください。

川田 本編が発売されたときにプレイしていただければ、体験版には入れていなかった『バイオ』らしさも感じていただけるのではないでしょうか。

――なるほど。一人称視点などのシステムは本編でも同じでしょうか?

川田 そうです。『アンブレラ・クロニクルズ』を始め、従来作の一部では一人称視点もありましたので、正確にはシリーズ初というわけではないですが、臨場感はこれまでになかったものに感じられますよ。

――タイトルの話に変わりますが、『バイオハザード』の海外版タイトルだった『Resident Evil』が副題になっている点も気になります。

川田 それぞれ直訳すると“生物災害”、“邪悪な住人”という異なる意味となっていましたが、『バイオ7』はその両方の要素がガッツリ組み込まれているので、ふさわしいタイトルになったのではないかと思っています。

――海外版のロゴデザインでは“evil”の最後の3文字を“VII”、国内版では“BIOHAZARD”の“Z”を“7”に見せているのもおもしろいですね

川田 ロゴデザインの際に、最初からデザイナーからいいデザイン案が提案されたので、じつはディテールを触ったくらいで、ロゴイメージは意外と早くに決めることができました。

中西 細かい部分も、けっきょく最初の案がほぼ採用になったんですけど(笑)。

川田 最初にこの案が出たとき、「これではわかりにくいのでは?」という意見も出て、その後二転三転したんですよね。

中西 じつは『KITCHEN』(カプコンがPlayStation VR向けに開発した技術デモ。E3 2015でプレイアブル出展していた)のロゴにも、微妙に“7”が組み込まれていたんですよ。“T”の右上が少し欠けていて“7”になっているという。

――あっ、本当だ! 気づきませんでした!!

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▲『KITCHEN』のロゴ。写真はE3 2015のときのもの。

川田 もともと『KITCHEN』が『バイオハザード』に関連付いているという示唆はなかったので、ほとんどの方が気づかなかったのではないでしょうか。

――まさか、『KITCHEN』へつながっているとは思いませんでした。『バイオ』寄りの話に戻しますが、これまでのシリーズを踏襲している部分はどんなところでしょうか?

中西 もともと『バイオハザード』シリーズは、操作や視点が大きく変わった『4』や今回の『7』に限らず、毎回新しいことに挑戦するシリーズだと思っているんですよ。『2』ならザッピングシステムを入れたりしていますしね。そういう点では、新しいことへのチャレンジもある意味『バイオ』らしいのではないでしょうか。もちろん、従来作にあった『バイオ』らしさもあります。わずかな武器を手に狭い建物の中を進んだりとか、「このまま先に進んでも生き残れるのだろうか?」といった恐怖感など、コアなファンの方も納得していただけるものを最新のハードで作ろう、という思いを込めています。今回の体験版では戦闘要素を入れておりませんが、これまでの『バイオ』タイトルの多くに触れてきた方には、「やっぱりこれこそが『バイオ』だよね」と感じでいただけているのではないかと。

川田 開発中の本編を僕自身がプレイしたとき、第1作『バイオハザード』に初めて触れたときの感覚を思い出させるものになったと感じました。原点回帰という意味ではなく、ホラーの本質について考え抜いた結果、初めて体験したときの感覚に行き着いたんです。主人公が戦闘のプロではなく、一般的な弱い人間であることも、恐怖を突き詰めた結果です。

中西 一人称視点についても同様なので、どの視点にするかで悩むこともなく、すんなり決まりましたね。

――狭い家の中を一人称視点で進んでいく様子が、まるでPOV方式(Point of View。カメラの視線と登場人物の視線を一致させるような方式)の映画を観ているかのような感覚になりますね。

中西 POV方式の映画に通じる恐怖感もあります。映画によっては複数のカメラの視点に切り換わったりするものもありますが、本作の体験版でもビデオを再生するところで似た感じになったりするかもしれません。

――確かに! 話はガラリと変わりますが、“REエンジン”を開発した経緯もお聞きしたいです。

中西 写実的なグラフィック表現を求めた結果、新しくエンジンを作ることになりました。従来からあるエンジンは扱いやすいのですが、特化したことをやろうとしたときに困ることも多いんですよ。それならばと、開発スタッフと一体になったものを作ったほうがやりやすいのかと。

川田 『バイオ7』に限らず、今後、私たちの部署ではさまざまなタイトルでREエンジンを使っていく予定です。

――なるほど。あと、“バイオハザードアンバサダー”もまた新たな試みですね。加入するとどうなるのでしょうか?

川田 さまざまな特典がありますので、皆さまぜひ加入していただきたいですね。

――私も加入します! 最後に、本作で目指していることをお聞かせください。

中西 本作を発表したときの皆様の反響を見て、期待している方がとても多いことに感動しています。このグローバルハイエンドなタイトルで、大きな挑戦をしているところを皆さんに感じてほしいですね。

川田 ご存じの通り、『バイオハザード』は20周年を迎えました。今回発表した『バイオ7』はもちろん、シューターに特化した『バイオハザード アンブレラコア』や公式には未発表の“あのタイトル”など、さまざまな『バイオハザード』があり、もっと多くの方に『バイオ』シリーズを楽しんでいただきたいと思っています。ガチのホラーファンの方にはお待たせしてしまいましたが、ようやく『バイオハザード7 レジデント イービル』を発表することができました。2017年の発売までもう少しだけ、お待ちいただければ幸いです。

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 現在の開発状況は65%で調整段階に入っており、VRもE3 2016にプレイアブル出展しているものから、さらに遊びやすくしたいとのこと。体験版『バイオハザード7 ティザー ~ビギニングアワー~』をプレイしつつ、さらなる新情報を待ちたいところだ。

※ファミ通.com特設サイト“E3 2016 記事まとめ”はこちら

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※画面は開発中のものです。