スクウェア・エニックス×マイクロソフト×NVIDIAの3社の力が集結し、世界最高峰のリアルタイムCGが実現

 スクウェア・エニックスは、2015年4月30日(現地時間)、米国サンフランシスコで行われた開発者向けイベント“Build 2015”(注1)で公開し、大きな話題を集めた技術デモ『WITCH CHAPTER 0[cry]』を、日本マイクロソフトが開催するエンジニア向けイベント“de:code 2015”(注2)にて、国内初お披露目した。

※注1:Build 2015……2015年4月30日、5月1日(現地時間)にアメリカ・サンフランシスコで開催された開発者向けイベント。
※注2:de:code……日本マイクロソフトが2015年5月26日(火)と27日(水)の2日間、東京都港区にあるザ・プリンス パークタワー東京にて開催された、アプリケーションやWeb開発者や企業のIT管理者などのエンジニアを対象にしたマイクロソフトの最新テクノロジーや製品、サービスの技術情報を紹介するイベント。

DirectX 12を使ったスクエニの最新技術デモ『WITCH CHAPTER 0[cry]』から見えた未来_10
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▲汗や涙が肌の凹凸に合わせて、光を反射。

 既報の通り、『WITCH CHAPTER 0 [cry]』は、今後登場するWindows10ベースの次世代API“DirectX 12”の技術を使って作られたリアルタイムレンダリングCGのテックデモ。最先端を追い求めたサービスや技術を使って、さまざまなコンテンツを開発しているスクウェア・エニックスの第2ビジネス・ディビジョンが中心となって制作された。その第2ビジネス・ディビジョンは、現在、同部門を統括している田畑端氏がディレクターを務める『ファイナルファンタジーXV』を開発中で、『WITCH CHAPTER 0 [cry]』は『ファイナルファンタジーXV』をさらに発展させ、アートと最新のテクノロジーの融合というコンセプトのもと制作された。

 映像は、キャラクターにフォーカスされ、肌に浮かぶ汗、頬に流れる涙、唇の潤いなどの質感がリアルに描画。髪の毛は現実の人の髪の毛と同じ本数をプログラムで生成しているという。また、会場では実機からスクリーンにフルHDで表示していたとのことだが、実機上では4K解像度で計算されている。『WITCH CHAPTER 0[cry]』ディレクターの岩田氏は、「我々にとってこのデモはゴールではなくスタート。これからもワクワクするものを作っていきたいと思います」と意気込んだ。

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▲『WITCH CHAPTER 0[cry]』は、最新のWindowsのテクノロジーや未来が語られた基調講演(Keynote)内の、Windows10ベースの次世代API“DirectX 12”を紹介するパートでお披露目。スクウェア・エニックス 第2ビジネス・ディビジョンの責任者である田畑氏(中央)、岩田氏(右)、江波戸氏(左)も登壇。
DirectX 12を使ったスクエニの最新技術デモ『WITCH CHAPTER 0[cry]』から見えた未来_06
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 ここからは、26日の基調講演のあとに、別室で行われた『WITCH CHAPTER 0[cry]』についてのラウンドテーブル、翌27日に行われた、スペシャルセッションの模様をクロスオーバーさせながら紹介しよう。

 『WITCH CHAPTER 0[cry]』のプロジェクトが動き出したのは、昨年の12月。スクウェア・エニックスの第2ビジネス・ディビジョンと業務部(社外の技術を社内のさまざまなサービスや技術プログラムにどう結びつけるかということを担当している部門とのこと)の取り組みとして始まった。

 この取り組みを進めた理由として田畑氏は、「ゲーム業界では、プラットフォームが切り替わるタイミングで、そのプラットフォームに合わせた新しい技術に対応するということをくり返して、技術を進歩させてきました。つまり、ハードが切り替わる周期で、我々の技術をアップデートしてきたのです。ただ、そのアップデートは、ハードが出たあとに対応していくという流れでした。そのサイクルで戦っていくと、最先端の技術にアプローチできないケースも出てきます。それを避けるために、ゲーム業界の外の最先端の技術にアプローチして、自分たちもワクワクできる、テクノロジーとアートの融合から得られる新しい体験を実現したい、という思いでプロジェクトを企画しました」(田畑氏)。

 そうした田畑氏のプロジェクトは会社に承認され、まずは日本マイクロソフトに打診し、協力を取り付ける。ただ、デモの内容は決めていたものの、実際にはハードの性能によってクオリティーが上下するため、実現できるかどうかは不透明だったという。実現できる目処が立ったのは3月に入って、アメリカ・サンフランシスコで開催されたゲーム開発者向けのイベントGDC(ゲーム・デベロッパーズ・ カンファレンス)のタイミング。マイクロソフトのDirectXやAPIなどのツールを作っている開発チームのコアメンバーと打ち合わせた際、Build 2015を目標に、DirectX 12を使った技術デモをお披露目するという方向性が決定した。

 「マイクロソフトさんとの打ち合わせたその足で、NVIDIAさんの本社にも伺いました。というのも、我々が目指す技術デモが動かせるマシンがなかったからです」(田畑氏)。

 今回、第2ビジネス・ディビジョンが目指したのは、田畑氏曰く「リアルタイムレンダリングCGの最先端技術を作って、最高峰のもの、振り切ったものを、まずは作ってみる」というものだった。それを実現するには、生半可なものでは実現できない。NVIDIAの協力が必要不可欠だったわけだ。結果、『WITCH CHAPTER 0[cry]』を実機で動かすために、NVIDIAの超ハイエンドGPU“GeForce GTX TITAN X”を4枚(と、それを動かすDirectX 12用のドライバ)を搭載したモンスターマシンが用意されることになった。

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▲田畑氏とNVIDIA上級副社長コンテンツ&テクノロジー担当のトニー氏とのあいだには、こんなやり取りがあったという。
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【デモ使用されたハードウェアスペック】
CPU:Intel Corei 7 3Ghz
MB:X99-E
RAM:キーノート 64GB(展示/ブレイクアウトセッション32GB)
SSD
GPU:GeForce GTX TITAN X 4way SLI

キーノート使用PC: UNITCOM
ブレイクアウトセッション使用PC: Sycom

●デモスペック

キャラクター:
キャラクター ライティングパス:1100万ポリゴン
(内訳)
髪:600万ポリゴン
ファー:200万ポリゴン
体、アクセサリーなどその他:300万ポリゴン
AGNI キャラクター シャドー全体:600万

トータル1700万ポリゴン

背景:背景ライティングパス:1100万ポリゴン

バックバッファー:4K
出力解像度:2K (full HD)

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 ちなみに、3年前に技術デモとして公開された『Agni's Philosophy - FINAL FANTASY REALTIME TECH DEMO』は、「近い未来のゲームに落とし込める技術を選択し、あえてトライをしなかった技術もありました。ですが『WITCH CHAPTER 0[cry]』では、ゲームの技術はいっさい考えず、最高峰のリアルタイムレンダリングCGとして、我々が表現したいものに振り切って作りました」(岩田氏)。

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▲こちらは、3年前公開のDirectX 11を使って作られた『Agni's Philosophy - FINAL FANTASY REALTIME TECH DEMO』。『WITCH CHAPTER 0[cry]』にも登場するアグニが初登場。当時もリアルタイムで生成される圧巻のグラフィックに驚かされたが、『WITCH CHAPTER 0[cry]』と比較すると、肌の質感などの違いを感じる。