新たな形式でファンを魅了したバースデーライブ2015
2015年5月16日（土）、東京の豊洲PITにて、声優・今井麻美さんのライブイベント“今井麻美バースデーライブ2015「Wonder Place」”が開催された。今回のバースデーライブは、これまでとは趣向の異なる内容になることを事前に告知。シナリオ原作を祁答院慎氏、オリジナルキャラクターデザインをマンガ家のヒジキ氏、そしてダンサー陣の演出も入るというのが事前情報だった。いままでにはない構成に、ファンもワクワクとした期待感をライブ前から膨らませ続ける。そしてライブ当日、ステージ上でくり広げられたのは、いままでのライブでは見たことがない、不思議で、幻想的な世界だった。
今回のライブでは、今井さんの朗読のほか、ダンサー陣によるダンスや演技で描かれるシナリオに沿って、楽曲が披露されていくという、まるで舞台のような、ミュージカルのような形式に。ステージ上では照明による演出も多様で、雨や夕景、満天の星空を映し出したり、ステージ全体に作り上げられた豪華なセットによる演出が取り入れられるなど、幻想的に描かれる世界を、舞台演出でも大きく表現していた。
物語の大筋は、以下のとおり。開演前に時間があるからと買い物に出かけたミンゴス（※今井さんの愛称）が、不慣れな土地だったため迷子に。開演まであと30分と時間に追われるなか、会場を探してひた走るミンゴスだったが、突然目の前を包んだ光に飲み込まれ、“忘却時空”にある不思議な世界“Wonder Place”に迷い込んでしまう。現実世界へ戻るカギを握っていると思われる不思議なペンギン、アイペンを追って、Wonder Placeをさまようミンゴス。その冒険の中で忘却時空に長く滞在していると、“記憶の魔女”の力により現実世界の人々の記憶からミンゴスの存在が失われるということを知る。バースデーライブが間近に迫るなか、ミンゴスは無事に“Wonder Place”から抜け出し、会場の豊洲PITにたどり着けるか!?
描かれるシナリオを、今井さんがバンドメンバーとともに歌で紡いでいくという今回の構成。『風と猫のStoria』、『この雲の果て - Angel’s ladder ver. -』、『little legacy』などといった楽曲で物語の中のミンゴスの道程を描き、楽曲のイメージカラーや曲のイメージによって時間の経過を表すように『旅人』、『蒼穹ノ月 ～Crystal Moon～』、『Sunny Place』が披露されるなど、セットリストにもさまざまなアイデアが盛り込まれる。人々の記憶から自分の存在が抹消されるという設定と連動するように歌われた『サ・ヨ・ナ・ラ』、記憶の魔女の恐ろしさを表現するかのような『BABYLON～before the daybreak』、『シャングリラ2015』、物語の主人公であるミンゴスの決意や清廉さ、希望を感じさせる『Promised Land』、『無限旋律』、『ガーベラ～今年の花』という流れなど、ライブの冒頭から終幕まで、一時も見逃せないような構成となり、時間を忘れて見入ることのできるライブとなった。
もちろん、ライブとしての見どころも満載で、ライブでは初披露となったテレビアニメ『プラスティック・メモリーズ』のエンディング曲『朝焼けのスターマイン』や、2015年8月1日に公開予定の実写映画『コープスパーティー』の主題歌である『BABYLON～before the daybreak』が、この会場で初お披露目されるなど、最新楽曲が惜しみなく披露された点も注目。今井さんが『シュタインズ・ゲート』で自身の演じた牧瀬紅莉栖をイメージして作詞をしたという『サ・ヨ・ナ・ラ』や、『ほんの少しの幸せ』、『クレッシェンド』、『ガーベラ～今年の花』など、今井さんの持ち味を存分に楽しめる楽曲が披露されたのも、ファンにはうれしいところだ。
物語の中には、ファンの持つサイリュームでミンゴスの行く道を照らす演出も取り入れられ、物語の世界にファンも介入していくという、まるでゲームのような展開も見せる。しかし、最後に用意された“現実世界に戻るため、紫と緑、どちらの扉を選択するか？”というシーンでは、とあるハプニングが。ファンに紫のサイリュームを振ってもらうための誘導策として、イメージカラーが紫色の『Limited Love』のイントロや間奏がBGMの箇所箇所に組み込まれていたものの、そのことにあまり気づかれず、劇中でサイリュームを“光る草”と呼称していたり、印象的に明るいイメージがあることから想起される緑色のサイリュームが数多く照らされてしまったのだ。これにより、半数以上が緑だったのにも関わらずシナリオの都合上、紫の扉に飛び込むという“ライブ”ならではの“事件”も発生した。なお、この事件は翌日に行われる“バースデーイベント2015「反省会」”の材料になることだろうと、会場に集ったファンもきっと思ったに違いないだろう。そうして、現実世界に戻ってきたミンゴスが、『Limited Love』を披露し、「ただいまー」と会場のファンに挨拶をしたところで（※なんとこれが本ライブ初のMC。楽曲としては残り2曲を残すのみ）、まさかの靴を履く時間が足りず靴下のままでステージに登場し、歌っていたというハプニングも暴露。ステージ上で衣装さんに靴を履かせてもらうという、これもまたなかなか見たことのないライブの1シーンが描かれた。
今回のライブ構成は、ずいぶん前から構想だけはあったと語る今井さん。今回は、その夢がついに実現したとのことで、今井さんの「どうでしたでしょうか？」という言葉に、会場からは大歓声が上がった。ライブの終幕には、今井さんが出演しているゲーム『チェインクロニクル ～絆の新大陸～』、『チェインクロニクルV』のコラボ武器がライブ会場で配布されたこともあり、同作で今井さんが演じるキャラクター・ハンフのキャラクターソング『幻月』を披露。そして最後は、今井さんが作詞作曲をした『いっしょ。』を会場のファンとともに合唱すると、間奏では「しゃべり足りないなー、やっぱり（笑）」と語り、会場のファンをより笑顔にさせた。
これまでにはなかった形式でのライブということで、“新鮮さ”とともに、歌手としての、声優としての今井さんの新たな表現方法が垣間見られた、今回のバースデーライブ。いまなお新たなチャレンジを続けるその姿勢には、多くの刺激を受けた。今井さんは「またいつかこういうライブをやりたいけど、当分はふつうのライブになると思います（笑）」と語りながらも、満足そうな、誇らしげな表情。これから今井さんがどんなライブを見せてくれるのか？ そのワクワクとした気持ちは今回のライブが始まる前よりも、いっそう強くなった。
■今井麻美バースデーライブ2015「Wonder Place」セットリスト
00. introduction
01. 風と猫のStoria
02. この雲の果て - Angel’s ladder ver. -
03. little legacy
04. Rain～手のひらのアンブレラ～
05. 夢のMAHOROBA
06. 旅人
07. 蒼穹ノ月 ～Crystal Moon～
08. Sunny Place
09. 朝焼けのスターマイン
10. 満天星
11. サ・ヨ・ナ・ラ
12. BABYLON～before the daybreak
13. シャングリラ2015
14. ほんの少しの幸せ
15. クレッシェンド
16. Promised Land
17. 無限旋律
18. ガーベラ～今年の花
19. Limited Love
20. 幻月
21. いっしょ。
