“ただのファン”が語り尽くす『ムジュラ』の魅力

 『ゼルダの伝説』シリーズの中でも、とくに“濃い”ファンを持つ『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』。2000年にニンテンドウ 64(以下、N64)で発売されて以来、多くの人に強烈な印象を植え付け、2015年2月14日にはニンテンドー3DSで、リメイク版の『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』が発売された。『ムジュラの仮面』が、これだけ多くの人を虜にする魅力はいったい何なのか? 『ムジュラの仮面』ファンの代表として、いまでも数ヵ月に一度は『ムジュラの仮面』をプレイするという、人気声優の青木瑠璃子さんに、その魅力をうかがった。
※インタビューはニンテンドー3DS版の発売前、2015年1月に行ったものです。

■プロフィール

「そうだ、タルミナ行こう」。『ムジュラ』大好き声優の青木瑠璃子さんに聞く、『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』の魅力_01

青木瑠璃子さん

声優。埼玉県出身。3月24日生まれ。代表作は、『アイドルマスター シンデレラガールズ』多田李衣菜役など。いろいろなゲームに造詣が深い。

プレイヤーの熟練度=リンクの熟練度

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――青木さんが最初にプレイされた『ゼルダの伝説』は何でしたか?
青木瑠璃子さん(以下、青木) ニンテンドウ 64(以下、N64)の『時のオカリナ』ですね。当時は小学生でした。発売日に買ったわけではなくて、『ムジュラの仮面』が発売される少し前くらいかな? 近所のおもちゃ屋さんへ行ったときに、店頭ですごく推されていたんですよ。パッケージがグレーと黒で、ちょっと怖く見えるんですけど、なぜかすごく惹かれて購入しました。でもじつは、そのとき私の家にはN64本体がなくて。近くに住んでいるイトコがN64を持っていたので、いとこの家で遊ぶ前提で買ったんです。

――ひとり用のゲームをですか!?
青木 そうなんですよ。それで遊んでいたら「ひとりでしかできないから、みんなで遊べるのにしなさい」とおばさんに怒られて、禁止令が出ちゃいました(笑)。

――そうなりますよね(笑)。『時のオカリナ』の第一印象はいかがでした? 子どものころに遊ぶと怖そうな印象があると思うんですが。
青木 『ゼルダ』で怖いというと、『ムジュラの仮面』のCMを思い出します。『時のオカリナ』は、私はそこまで怖くはなかったんですが、年の離れた弟がすごく怖がっていましたね。

――弟さんといっしょに遊ばれていたんですね。
青木 そうです。いとこの家で禁止令が出た後、やっと私の家でもN64を購入して、それで弟といっしょに遊んでいたんです。弟は、とくに闇の神殿あたりを怖がっていましたね。だから自然と「大丈夫だよ。お姉ちゃんに任せなさい」というやり取りをしながらプレイをしていて。誰かが怖がっていると、自分はあまり怖くならないので、それで怖さが薄れたのかなと思います。

――それが、最初にプレイした『ゼルダ』ですね。
青木 はい。そこから、いろいろかき集めました。順番的には、つぎに『ムジュラの仮面』、そのつぎが『夢をみる島』で、さらに『ふしぎの木の実』……と遊んで、それからファミコンの『ゼルダの伝説』といった初期の作品をたどっていきました。『時のオカリナ』から始めたので、現実の時代は逆行していますが、『ゼルダ』の時間軸としてはヘンなことにはなっていないと思います(笑)。

――あっ、そうですね! ハイラルの時間軸では昔に戻ってないですね(編注:『ゼルダの伝説』シリーズの物語の時間軸では、『ふしぎの木の実』、『夢をみる島』などは、『時のオカリナ』以降の時代という設定になっている。詳しくは、“ハイラル・ヒストリア ゼルダの伝説大全”をお読みいただきたい)。では、『リンクの冒険』などもプレイされたんですか?
青木 もちろんです。ひと通りはバーチャルコンソールで遊びました。Wiiを購入してからなので、相当後になっていますけど。でもやっぱり、私は3D系の『ゼルダ』が好きです。だから『時のオカリナ』、『ムジュラの仮面』、『トワイライトプリンセス』、『スカイウォードソード』あたりが好きですね。

――リアル系の3Dですね。
青木 トゥーンもいいんですが、印象がちょっと違うというか、リアル系のほうが好みですね。『風のタクト』などもプレイしていますが、別の『ゼルダ』という印象なんですよね。ハイラルの時間軸的にまとまっている部分でもありますし。

――『風のタクト』、『夢幻の砂時計』、『大地の汽笛』の流れですね。いやー、本当に詳しいですね! ハイラルの時間軸を語れる女性は初めてです(笑)。
青木 本当ですか!? 高校生のとき、友だちとマックで『時のオカリナ』と『ムジュラの仮面』のすばらしさについて、3時間くらい語りましたよ。

――3時間! それもすごい(笑)。
青木 やっぱり小学生や中学生のころって、多感な時期じゃないですか。だから吸収しやすいというか、遊んだことは全部覚えちゃうというか。複雑な物語も多少わかるようになっているし、セリフも全部覚えているくらいの勢いで。たぶん、現代だと『妖怪ウォッチ』を遊んでいる子たちがそういう時期かも知れないですね。このストーリーはこういう風になっていて、ここでこのキャラが出てきてこういうことを言う……みたいな、登場のしかたや演出も含めて、全部覚えていると思います。それが、私にとってはちょうど『ゼルダ』の時期だったんです。

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――なるほど。そんな『ゼルダ』の魅力は、どこだと思いますか?
青木 うーん。たくさんあるのですが…。クリアーできなくはない難易度と物語性がいいですよね。私はいろいろなゲームをするんですけど、とくにアクションRPGが好きで。『ゼルダ』を始めた小学生のときは、ゲームのジャンルまでは考えていませんでしたが、レベル上げの要素がないところが肌に合っていたと思うんですよ。プレイヤーの熟練度=リンクの熟練度みたいになっていて、自分とシンクロしやすくて、物語に入りやすかったんです。たとえば、レベル37みたいに数値としてハッキリ出る部分があまりないのと、“斬る”というコマンドを選んで何秒後かに実行するというスタイルではなくて、ボタンを押してすぐに反応があるというのもいいですね。あと、エンカウントして画面が切り換わったりせずに、ロードもなく続いていくのが、ゲームということを感じさせないようにしている気がして。

――世界に没入しやすいと。
青木 そうですね。物語が入ってきやすいなと思います。そして、謎解きもおもしろいです。ダンジョンというくくりと、ワールドマップの切れ目がちゃんとあって、わかりやすいのが好きですね。と言っても、『神々のトライフォース2』では、ダンジョンの順番が自由になっていて、ビックリしましたけど。「『ゼルダ』でこれをやるんだ!?」って。

――それまでは、ほぼ固定でしたからね。
青木 でも、イヤだというわけではなくて、おもしろかったです。個人的に、ダンジョンと世界がそれぞれ存在するというのがいいですね。

――ちなみに、『時のオカリナ』から入って、シリーズをさかのぼっていって……というお話でしたが、発売の前から『ゼルダ』の新作の発売日を楽しみに待つ状況になったのは、どの作品からでしたか?
青木 おそらく『トワイライトプリンセス』です。中学生のころは忙しかったので、高校生になってから、いろいろとシリーズをやり込んだ記憶がありますね。『4つの剣』も『ふしぎのぼうし』も後から遊んで。それで、高校卒業くらいのときに、バーチャルコンソールで以前の作品も遊びました。ちょうど、『トワイライトプリンセス』発売の少し前に、私の中で第2次『ゼルダ』ブームが来ていたんですよ。

――第2次ですか(笑)。
青木 第1次は先ほどお話した小学生のころで、第2次が高校生のときです。それで、遊んでいなかったシリーズを全部プレイしたんです。そのタイミングから、『ムジュラの仮面』を年1回以上は絶対にプレイするようにもなりましたね。だから、何回クリアーしたのかわからないくらい(笑)。

――同じ3日間を何度も何度も。
青木 はい。定期的にやらなければいけない気持ちになるときが来るんですよ。

――本能のような(笑)。『ムジュラ』のお話は、のちほど詳しくおうかがいしますが、シリーズ全体の中で好きなキャラクターやアイテムについて教えていただけますか。
青木 何からお話ししようかな……という感じですが、『時のオカリナ』では、ナボールが好きです。

――渋い!
青木 姫川先生(姫川明氏。『ゼルダの伝説』シリーズのコミカライズを担当されている)のマンガのナボールが、とってもかわいいんですよ。少し話はそれますが、『時のオカリナ』で、“ジャブジャブ様のお腹”のボス直前にあるスイッチに木箱を置くのがわからなくて、初めて攻略本を買いまして。そのときの攻略本が、物語やラスボスについても書いてある、先まで見えちゃうものだったんですよ。白と水色の表紙の本で。

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▲これ(N64版の攻略本)でした。すみません。

――……それ、うち(KADOKAWA エンターブレイン)のじゃないですか? (表紙を見せて)これですか?
青木 そうです! 私の人生を狂わせたのはこれですね(笑)。

――うちの本が、すみません(笑)。
青木 いえいえ(笑)。それを先まで読んで、物語とかは全部知っていたんです。それで、姫川先生のマンガも読んで、ピンときたのがナボールでした。あとは、大人のルト姫も好きです。

――カッコいい女性が好きなんですね。
青木 そうですね。『ムジュラの仮面』では、チンクルが好きなのですが……。

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――女性でチンクル好きは、珍しい。
青木 “何コイツ?”感がヤバくて、本当に「ヤバい」としか言いようのない感じがいいですね。ゲームを作っている方々も好きそうなキャラだなと思います(笑)。あとは、『時空の章』のネール、最近では『スカイウォードソード』のゼルダも好きですね。『スカイウォードソード』のゼルダはあざとくていいです(笑)。

――『ムジュラの仮面』はチンクルがいちばんですか?
青木 ほかにアンジュさんも好きですし、クリミアさんも好きです。『ムジュラの仮面』のキャラクターはみんな生きている感じがして、とても好きですね。みんな魅力的なので甲乙つけがたいです。

――それは、やはり行動が見えるからですか?
青木 そうですね。それはあると思います。

――では続いて、好きなアイテムをお聞きできますか?
青木 フックショットです! “クロー”でもいいんですが。あれ、欲しいですね。でも現実で使うと、慣性の法則でだいぶ危ない目に遭ってしまうかも知れない……(笑)。

――ああ、ビルの向こう側にマークが見えて撃つと、壁にぶつかるとか(笑)。でも、撃ちたくなりますよね。
青木 そうですね。家で離れたところのリモコンを取ったり。マジックハンドみたいにも使えそうですし(笑)。あとは、『大地の章』の四季のロッドですね。季節を変えたい。あれを、いまのゲーム機のグラフィックで出していただきたいですね。

――確かに背景変化の表現がすごそうですね!
青木 絶対にスゴいと思います! 2Dだから想像がかき立てられるというのもありますが、いまの技術で作ると、すごく華やかになりそうでいいなと思います。『大地の章』と『時空の章』の両方で連動させる要素もありましたが、あの連動ももっと充実させてフロルさんにも、もっと活躍してもらいたい(笑)。

――(笑)。敵は、いかがですか?
青木 敵では、『時のオカリナ』の炎の神殿の中ボス、フレアダンサーが好きですね。くるくる回りながら、小さな爆弾みたいなのを投げてくる敵です。

――これまた渋い。ちなみに、お好きな理由は?
青木 見た目はキレイですごくカッコいいんですが、炎を剥がした後の中身とのギャップがいいです。もともと、炎の神殿が好きなんですよね。ボスのヴァルバジアもカッコいいですし。あとは、シリーズほぼ皆勤賞のオクタロック。

――『トワイライトプリンセス』だけ出てないんですよね。
青木 そうなんです。凍らせたりできて便利で好きです! あとは、弾を飛ばしてくるデクナッツの敵版のオコリナッツですね。『ムジュラの仮面』のデクナッツの城で、下を見回っている警備兵がいるのに、上で待機している狙撃兵のようなオコリナッツが狙撃していても、下の警備兵が無関心という(笑)。「えっ、仲間じゃないの!?」みたいな。神殿の前にいたりして、守っている雰囲気はあるのですが……。

――やる気が感じられない(笑)。
青木 そうなんです(笑)。デクの樹サマ(『時のオカリナ』)の中では、裏切ったりもしますし。いちおう敵ですが、あの「なんなんだろう?」感がいいですね。

――『ゼルダ』シリーズの強烈な思い出やエピソードはありますか?
青木 やっぱり、謎解きですね。いちばんは、さっきもお話しました“ジャブジャブ様のお腹”で行き詰まったときに、「木箱置けるんだ!?」、「投げないんだ!?」と。ルト姫はいないし、どうするんだろうとずっと悩んでいたので。

――そのときのルト姫は台座代わりですからね(笑)。
青木 (笑)。あとは、『トワイライトプリンセス』のアゲハちゃん。こっちがムシを持っているのに「持ってない」と隠した状態で家を出ようとして、アゲハちゃんから「持っているくせに……」と言われた瞬間は「えっ!」となりました。

――ありましたねー。というか、本当によく覚えていますね!
青木 それまで、私はわりと先にいろいろな情報を入れて遊んでいたのですが、発売と同時に遊んだのは『トワイライトプリンセス』が初めてだったので。まったく知らないことが多くてビックリしました。『ゼルダ』は小ネタが多いですよね。『ムジュラの仮面』のクリミアさんの護衛イベントで、2日目に発生する牛乳を街に届けるイベントの報酬が、ランダムということも知らなくて。ルピーがもらえるか、クリミアさんにギュッとされるかランダムなんですよね。

「そうだ、タルミナ行こう」。『ムジュラ』大好き声優の青木瑠璃子さんに聞く、『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』の魅力_11

――あれ、ランダムでしたか。
青木 だから、クリミアさんにギュッとされたときは「ハッ!」となりました。あれは、好きになっちゃうからダメです(笑)。

――(笑)。
青木 あの牛のイベントで、攻略本に“向かって左”という言葉が書いてあって、当時、小学生だった私には“向かって”の意味がわからなくて、そこで初めて覚えましたね。ゲームから学ぶ言葉が多かったです。デクの棒とかも、最初はわからなくて、あとから知って「あー」って納得するみたいな。

――ああ、あとでダジャレなんだと知るという。
青木 大人が遊ぶと、最初から「あー」となるんでしょうけど、当時は逆だったんですよね。アイテム名を知って、その後「えっ、“でくのぼう”って『ゼルダ』のあれじゃん! ……あっ、この言葉と掛かってたのね」という感覚なんです。