子どもたちが作ったお城、駅、ジェットコースター、パルテノン神殿は必見!
子ども向けプログラミングスクールTENTOと、東海大学チャレンジセンター情報通信研究プロジェクトは、“Minecraft × Education 〜ゲームがひらく明日の教育〜”と題して、『マインクラフト』をはじめとしたコンピュータゲームを使った教育を考えるイベントを2014年8月31日に開催した。
『マインクラフト』とは、マルクス・ペルソン氏とその会社であるMojang ABの社員が開発したサンドボックス(決まった目的がなく、自由な選択肢がある)型のゲームで、ドット絵のような3Dブロックで家などの建物を自由自在に作ることができるのが特徴のひとつ。2011年に正式にPC版がリリースされて以来、プレイステーション3(北米版)、Xbox 360(北米版)、スマートフォン用アプリ版も発売されており、そのユーザー数はPC版だけで1億人を突破(無料登録者含む)するほどの大ヒットを遂げている。なお、プレイステーション4、プレイステーション Vita、Xbox One版も発売が予定されている。
本イベントは『マインクラフト』を用いた教育の可能性を、ゲーム開発の第一人者や東海大学の学生たちがカンファレンスで語るとともに、実際に子どもたちを対象とした『マインクラフト』のワークショップを開催するというもの。まずは、13時から18時まで開催されたカンファレンスの様子をお伝えしよう。
■Minecraft × Education カンファレンス
TENTOの竹林暁氏は、スクールに来る子どもたちがみんな『マインクラフト』を知っていることと、子どもたちの『マインクラフト』への熱心さに驚いたそうだ。中には、モンスターの特徴や用語の意味をびっしりとノートに書いてきたスクール生もおり、竹林氏はプログラミングやコンピューターに触れるための“入り口と”しての優秀さを、『マインクラフト』に感じていたとのことだ。
獨協大学の教授である堀江郁美氏は、ゼミで『マインクラフト』を用いて、学生たちで仮想の獨協大学のキャンパスを造るプロジェクトを立ち上げそうだ。堀江氏は教育でゲームを使うことに抵抗を感じたこともあったが、設計力、自信、協調性、集団の結束力を培うという点で『マインクラフト』は非常に有効であり、共同作業によりPCが上手く扱えるようになると、教育における可能性を語った。
東京工科大学准教授であり、初代『ファミリースタジアム』の開発プロデューサーでもある岸本好弘氏は、ゲームには“シリアスゲーム”という教育や社会に役立つジャンルがあると語った。その例のひとつがPC上で楽しめる『SUGOI NINJA』だ。これは忍者が敵の動きを予測してから行動するというもので、数学的な規則を学ぶことができる。また、『Riddles in Pieces』では遊びながら英語の文法を学ぶことができるそうだ。
神奈川工科大学の准教授であり、『ことばのパズルもじぴったん』シリーズのプロデューサーでもある中村隆之氏は、「よく遊び、よく学べ」という理念を持ち、遊びの中こそに学びがあると語った。子どもは鬼ごっこなどで自然にルールを追加するなど、遊びをクリエイトする力を持っており、それはゲームデザインを考えることにもつながることだそうだ。これは「ゲームデザインは難しい」という思い込みを覆すもので、氏は“ナチュラルゲームデザイン”と呼んだ。
さらに、登壇者はつぎつぎに『マインクラフト』の魅力と、その教育との関連性などを熱弁した。
■ワークショップ:“理論回路について学ぼう”
別会場では、14時から16時までの2時間、ワークショップ“論理回路を学ぼう”が開催。中学生以上を対象として、『Minecraft edu』を使っての回路の作成体験が行われた。
※『Minecraft edu』とは、『マインクラフト』の教育者向けエディション。本来の『マインクラフト』よりも安く購入できる。なお、日本語対応が10%しか対応しておらず、現在対応を順次進めているとのこと。
回路はマインクラフト内の“レッドストーン”(指向性(方向)をもつ信号を送るパウダー状のアイテム)を使い、機械的な要素を組み入れさまざまな操作を自動化したり、遠隔から操作したりすることが出来るようにする仕組みを実際に体験していた。
ワークショップでは、基本的な“NOT回線”の作成、“OR回線”と続き、最終的に加算機(計算機)の作成におよんだ。なかなか入り組んだ内容となっており、参加者もモニターにかじりつくような状態で真剣に取り組む姿が多数見られた。
■ワークショップ:“プログラミングを学ぼう”
続いて同会場で16時から18時まで行われた“プログラミングを学ぼう”が開催。中学生以上を対象に、“ComputerCraft”(PC版MinecraftのModのひとつ。このModによりマインクラフト世界にコンピュータを導入でき、さまざまな作業を自動化できる)を使ってパスワードドアやブロック作成の自動化、プログラミング言語Luaの学習を、配られた資料を参考に進めていく形で進行。Lua言語を使ったなかなか難しい内容で、参加者も随時質問をしつつ真剣に取り組んでいた。
■ワークショップ:街を作ろう
さらに別会場では、14時から18時までのあいだ、ワークショップ“街を作ろう”が開催。小学生などを対象として、『Minecraft edu』を使っての街作り体験が行われた。
まずはじめに、マルチプレイサーバーを使っての操作練習が開始。ひとつのサーバーに参加者50名を集め、移動・アイテムの使用方法などの説明が行われ、子どもたちは非常に楽しそうにプレイしたいた。
やはり子どもは吸収力が早い! すでに武器を装備し、仲間を襲う子どももや、“TNT爆弾(爆発を起こすのに利用されるブロック)”を設置している子どもも(笑)いた。
※今回すべてのワークショップでは、“クリエイティブモード”を使ってのプレイのため、モンスターの発生やキャラクターの死亡はない。
ひと通りの操作説明が済んだところで、早速街作りが行われた。街作りでは、サーバーにあらかじめ整備と区画された平地が用意されており、外(街の周り)2名の2グループ、お城6名、お店2名の3グループ、遊園地3名の3グループ、お邸(家)4名の4グループ、歴史的建築物2名の2グループ、鉄道1名にグループを分担して作業が行われた。その作品群を一挙に紹介しよう。
■クロージング
クロージングでは、東海大学チャレンジセンター情報通信研究プロジェクト所属の斉藤大輔氏と、TENTOスタッフの斎藤祐一郎氏が登壇。斉藤氏は、急遽作ったというスライドショーを展開し、「皆さん、お楽しみ様でした!」と講評していた。
カンファレンスでの発表の多くで共通していたのは、『マインクラフト』が単なる遊びで終わらないこと、教育や実際の仕事で活用できるということだった。なおかつ、その“創造力”が育まれることは、子どもたちの力作たちを見て、わかっていただけることと思う。
『マインクラフト』はいままでの「ゲームは勉強の妨げになる」「ゲームは娯楽以外の何物でもない」という思い込みを覆し、新たな教育用のプラットフォームとしての活用が始まっている。今後も多くの人が“遊び”以外の価値を『マインクラフト』に見出し、さらなる発展を遂げるだろう。
文・取材・撮影:編集部 オスカー岡部、やぐっち工藤