「次の世界を代表する日本のゲームはインディーから生まれてくる」――『Mighty No.9』新ビデオも公開! 稲船敬二氏がインディーシーンに期待するワケ【GDC 2014】_01

 アメリカのサンフランシスコで開催中のゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス(GDC)から、コンセプトの稲船敬二氏による講演の模様をお届けする。

 自身の原点に立ち返る横スクロールアクションシューティング『Mighty No.9』でクラウドファンディングを成功させて現在開発中の稲船氏。
 その「大手メーカーを離れた大物が、出世作を想起させるゲームジャンルで新作を発表し、クラウドファンディングも成功」というストーリーは、欧米の流れをしっかり掴んだ今風のもの。

 講演のタイトルは「Meanwhile, In Japan」。訳すなら「その頃、日本では」といったところか。内容は、そんな同氏が、欧米のインディー旋風を支える開発者コミュニティの場ともなっているGDCで、日本の事情を明かすという内容だ。
 司会の質問に対して、稲船氏と『Mighty No.9』のクラウドファンディングキャンペーンをサポートした8-4のマーク・マクドナルド氏が答えていくという形で行われ、途中には『Mighty No.9』の2月頃の開発バージョンでのプレイ内容を収録したビデオも公開された。

インディーとしての『ロックマン』!?

 質問は、「日本のゲームは終わったと言っていたが、今はどうか?」という、過去の氏の発言を踏まえたものからスタート。
 稲船氏は、「大きくは変わっていないと思う」としつつも、日本でのインディー事情について聞かれると、開発者が「元気に目を輝かせながら作っている」、「僕もその一員となって、楽しかったころのゲーム作りをやれています」と近況を報告。
 東西のインディー事情の違いについての話題でも、市場の特性もあり、上手くいった時の成功の幅が狭いとしながらも、欧米のインディー開発者と「目の輝きは何ら変わらない」と語る。

 講演で何度も出てきたのが、こうした“魂”、“目の輝き”、“情熱”といった気持ちや姿勢に関する言葉だ。稲船氏にとって、そういった部分で『ロックマン』はある意味インディー的な意味合いを持つソフトでもあるそう。
 いわく、カプコン入社当時はアーケードが主流で、稲船氏が配属されたコンシューマー組は、いわばアーケード用に開発されたソフトの移植部隊。それに嫌気が差して、自分たちのゲームを作るという意気込みで『ロックマン』が始まったのだという。

 もちろん、厳密に言うと『ロックマン』がインディーゲームなわけがない。しかし稲船氏は、インディーで重要なのは、資本的な独立といった言葉の定義ではなく、自分たちが作りたいゲームを作るという気持ちの部分なのではないかと語りかける。確かに、それもまたひとつの真理ではないだろうか?

コミュニティとともにゲームを作る

 『Mighty No.9』では、定期的に開発状況を公開し、フォーラムで意見を募りながら開発が進められている。ただのお客さんではなく、タイトル開発を支える「縁の下の力持ち」として評価しているからだ。クラウドファンディングを採用したタイトルでは特に、コミュニティ運営は非常に大きな要素であると言われている。

 稲船氏は、日本からのKickStarterでのクラウドファンディングの成功例として相談を受けることも多いそうなのだが、「大抵のデベロッパーはゲーム作りの話しかない」と嘆く。『Mighty No.9』では、ゲームの中身がいいのは当然のこととして、コミュニティのサポートも当初からゲーム作りと同じように重要視して取り組んだそう。アメリカ中からコアなゲームファンが集まるPAX(ペニー・アーケード・エキスポ)を発表の場に選んだあたりからも、そういった部分はうかがえる。

この小さな光が何かを変える

 最後にこれから日本で何が起こるのかと問われると、日本人の良さは資源や人材などに制限がある環境下で工夫をすることで発揮されると語った上で、次の日本のヒーロー、世界を代表するゲームはインディーから生まれてくる、その(まだ)小さな光が何かを変えてくれるはずだと期待感を示した。