タイトルは旧作と同じだが、リメイクではない完全新作!

 エレクトロニック・アーツが誇るレースゲームブランド『ニード・フォー・スピード』シリーズ。プレイステーション 3、Xbox 360、プレイステーション Vita、PC版が2012年11月15日に同時発売となる最新作は、2005年に発売された作品『ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド』とタイトル名を同じくするという、じつに衝撃的なもの。予備知識がない人には「えっ、以前発売されたタイトルのリメイク?」と勘違いされそうだが、本作はれっきとした完全新作。架空の街を再現したオープンワールド、パトカーとの熾烈なチェイスといった共通点はあるが、それ以外はほぼ別物といっていい。開発元は、『ニード・フォー・スピード ホット・パースート』や『バーンアウト』シリーズなど数々の名作を世に送り出したCriterion Gamesだ。

オープンワールドを過激に爆走! 『ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド』プレイインプレッション_02
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▲2005年に発売された作品と同じタイトルだが、共通するのはオープンワールドと警察とのチェイスくらいで、あとはほぼ完全新作。グラフィッククオリティーは圧巻のひと言で、目的もなく走り回るだけでも思わず頬がゆるむ仕上がりだ。

面倒なことは一切なし! レースに特化したオープンワールド

 ゲームは、簡単なチュートリアルを兼ねた目的地までの短いドライブから始まる。本作にはレースゲームでおなじみのシフト操作がなく、ステアリング、アクセル、ブレーキ(長押しでバック)、サイドブレーキという、じつにカジュアルな操作系が採用されている。視点変更もドライバー、クルマを後方から見下ろすふたつと、これまた非常にシンプル。右スティック左右または下入力で、それぞれ一時的にその方向に視点を移すことが可能だ。

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▲オートマ固定でマニュアルがないことに驚く。視点もドライバーと車外斜め上後方からの見下ろしの2種類と極めてシンプル。

 ドライブテクニックで重要なのは、ステアリングを切りながらブレーキを踏む“ドリフト”と、急加速が得られる“ナイトロ”のふたつ。前者はコーナーを高速で抜けるために必須となるテクニック。コーナーに進入する直前、ブレーキを軽く踏むと後輪が滑り出しクルマの姿勢が変化。あとは出口に向けて姿勢をコントロールすればオーケーだ。
 一方“ナイトロ”は、一定条件をクリアーすると獲得できる装備のひとつ。画面左下のナイトロメーターが溜まっているときにボタンを押すと、急加速が得られる。メーターはドリフトや、ライバルマシンをクラッシュさせると少しずつ増えていく。

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▲“ドリフト”は、なるべく速度を維持しつつコーナーを抜けるための必須テク。
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▲“ナイトロ”はボタンを押しているあいだだけ急加速が得られる。初期装備にはないので、後述のレースイベントで勝って、クルマごとに獲得する必要がある。

 使用車種の増やしかたは、街中に置いてある“乗り換え可能なクルマ”を発見するという風変わりなシステムが採用されている。こうしたクルマは画面左下のレーダーには表示されず、近づいて発見するとレーダーにも表示されるようになる。クルマの乗り換えは、設置されている場所に直接行くか、あるいは方向キー(パッド)で瞬時に直接乗り換えが可能。
 クルマのパワーアップは“モッド”と呼ばれ、タイヤ、ナイトロ、シャーシ、ボディ、パワートレインの5項目がある。各項目をパワーアップするには、後述するレースイベントで一定以内の成績を収めて、必要なものを獲得していく。ちなみにパワーアップはクルマ単位なので、最初のうちは気に入ったクルマから集中的にモッドしていくといいだろう。ただし、性能のいいモッドパーツが手に入るイベントほど難易度は高くなる。

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▲街中に設置されたクルマを発見すると、それに乗れるようになる。乗り換えはその場所まで行ってもいいし、方向キー(パッド)の“EasyDrive”メニューで瞬時に乗り換えてもいい。
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▲チューンナップは“モッド”と呼ばれ、クルマごとにレースイベントで勝って獲得していくシステムになっている。当然ながら、高性能なモッドが手に入るレースイベントほど難易度が高い。

 2005年発売の『モスト・ウォンテッド』は、美麗なムービーを駆使したハリウッド映画ばりのストーリーが展開されていったが、本作はそういったストーリー演出は一切なし。この街で名を馳せる10人のストリートレーサーに挑戦するため、数々のレースイベントに挑戦し、スピードポイントと呼ばれるスコアを少しずつ獲得。一定のスピードポイントが溜まると、“モスト・ウォンテッド・リスト”の下位から順に1対1で対決できる仕組みになっている。ちなみにスピードポイントは、街中の看板などを破壊することでも獲得できる。このあたりは『バーンアウト』シリーズをほうふつとさせる要素といえそうだ。
 レースイベントは、コースを周回して順位を競う“サーキットレース”、街の一部を使った“スプリントレース”、単体走行で目標値以上の平均速度を維持する“スピードラン”、パトカーを振り切る“待ち伏せ”がある。どのイベントも、最初は開催地までクルマを走らせる必要があるが、一度プレイしたものはその後方向キー(パッド)で直接レースに参加できるようになる。

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▲オフラインゲームの基本的な目的は、“モスト・ウォンテッド・リスト”に名を連ねる10人のライバルをひとりずつ倒していくこと。そのためにはレースイベントを順次クリアーして“スピードポイント”を増やし、挑戦資格を満たす必要がある。

 ゲームのおもな目的であるライバルとの対決。前述のとおり1対1の闘いだが、ここで問題となるのがパトカーの存在。2005年発売の同名作品でも脅威となっていた警察車両は、本作でも健在。現行犯でパトカーに追跡されると、画面左下のヒートメーターが赤く点灯。ヒートメーターが振り切れるごとに、右側にあるヒートレベルが上昇していく。レベルは全部で6段階あり、当然アップするごとに執拗かつ強烈な追跡が行われる。クラッシュなどでクルマが停止させられると、画面下のBUSTINGメーターが上がり、MAXになると逮捕されて罰金が科せられる。
 ライバル対決時は、ヒートメーターが上昇した状態からスタートするため、ほかのレースイベントよりもはるかパトカーに捕捉される可能性が高い。最初のうちは「もう、マジで勘弁して!」と泣き言をいいたくなるパトカーとのチェイスだが、慣れるに従い、緊張感とスリルを前向きに味わえるようになる。少々のショートカット程度では絶対に見逃してくれないハイレベルの追跡は、前作を余裕でクリアーした人でも相当やりごたえがあるはずだ。

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▲『モスト・ウォンテッド』といえば、なんといってもパトカーとの熾烈なチェイス! 逃走中にクラッシュしたときの絶望感は、ヒートレベルが高いほど強烈なものがある。

オンラインマルチプレイは最大8人まで。野良はルーム不要の瞬間マッチング!

 本作のオンラインマルチプレイは、最大8人まで参加が可能。不特定多数のプレイヤー同士が集まる(いわゆる野良で遊ぶ)ときは“ルーム作成”を必要としない。“パブリックゲームを検索”を選べば、現在オンラインに接続しているほかのプレイヤーが瞬時にマッチングされる。フレンド同士で遊びたいときは、ルームを作成する一般的なプレイスタイルが選べる。どちらも通常ゲームから自由に出入りできるので「ちょっとオンラインで遊ぶかな」と気軽にやれるのがいい。
 マルチプレイは、画面上に表示される“スピードリスト”に表示された5つのルールでゲームが進行。ざっくりいえば、異なる5種類のミニゲームを断続的にプレイしていく。パブリックゲームのときはランダムでリストが決定されるが、フレンドといっしょに遊ぶときはルールや順番を好きなようにエディットできる。このあたりはマニュアルの説明が大雑把なので、設定メニュー内の“マニュアル”にあらかじめ目を通しておくといいだろう。パブリックゲームでルールがわからないときは、画面下を右から左に流れていくメッセージ“ティッカー”を確認するといい。ちなみに各ゲームは対戦だけでなく、みんなで協力するものもある。
 各ルールとも順位や成績に応じてスピードポイントが付与され、5ゲーム終わった時点でのトータルスコアで最終順位が決定される。すなわち対戦はもちろん、協力プレイのときも“競争”は行われており、実際オンラインでは「協力プレイでも妨害するよ!」という激しいプレイを仕掛けてくる人が多く、ゲームにも相手をクラッシュさせてそのルールから退場させるというシビアな仕様が盛り込まれている。最初は「おいおい、協力プレイで助け合うどころか妨害するのかよ!」と驚いたが、最終順位を見据えての行動とわかったとき、「なるほど、そりゃそうだよなぁ」と納得させられた。

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▲オンラインマルチプレイは、お手軽かつ簡単にワイワイ楽しめるのが特徴。個人的には、野良プレイの簡潔さがお気に入りだが、気心の知れたフレンドたちとルームを作ってじっくり遊ぶのもいいだろう。

“カジュアルさ”と“リアルな走行感覚”がシリーズの新たな味わいを生む

 パッケージ裏の「シリーズ最高峰、Criterion Gamesの『モスト・ウォンテッド』が再び!」という煽り文句にもあるとおり、多くの人は本作と2005年の同名作品を関連付けて考えるだろうし、それは当然だと思う。だが、ストーリー演出が大胆にフィーチャーされた2005年作品と本作では、第一印象があまりにも違う。これはあくまでも筆者の私見だが、正直「『ニード・フォー・スピード』シリーズというよりは、『バーンアウト』シリーズのテイストが強いかな?」とさえ思う。
 最近のレースゲームでは「あって当然」といった感のある“ガレージ”もなし。チューンナップ(モッド)もゲーム内でお金を稼いで買うのではなくレースイベントで勝って獲得していくシンプル仕様。その一方で、クルマの挙動はハンドリングに重さや質を感じさせるリアル路線。とっつきやすさ、遊びやすさ、手軽さを重視しつつ、走りは本格派というギャップがじつにおもしろい。
 ここ十数年のレースゲームは「徹頭徹尾リアルなシミュレーター路線」か、もしくは「ひたすらカジュアル」の二極化で展開されてきたように思われるが、本作はカジュアルさを重視しつつも走行テイストにリアルな“芯”を残した独自のポジションに位置している。『モスト・ウォンテッド』の純然たる続編やリメイクを想像していた人は肩透かしをくらうかもしれないが、それ以外の人なら『ニード・フォー・スピード』と『バーンアウト』の両シリーズのテイストが適度にブレンドされた高品質のレースゲームとして楽しめるのではないだろうか。

■筆者紹介:豊臣和孝
フリーライター。ここ10年ほどはWebゲーム媒体メインで執筆中。レースゲームは、アーケード『ヘッドオン』や『モナコGP』のころから、ずっと“下手の横好き”レベルで進歩なし……。


ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッド
メーカー エレクトロニック・アーツ
対応機種 X360Xbox 360 / PS3プレイステーション3 / PSVPlayStation Vita / PCWindows
発売日 2012年11月15日発売予定
価格 7665円[税込](Xbox 360/PS3)、5980円[税込](PS Vita)、オープンプライス(PC)
ジャンル レースゲーム
備考 開発:Criterion Games